プレイヤー 公演情報 Bunkamura「プレイヤー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    黒沢清監督で『散歩する侵略者』が9月に映画化される前川さんの台本を、
    阿佐ヶ谷スパイダースの長塚さんが演出したガチのホラー作品。

    序盤の伏線がラストの台詞に活きていて、思わずゾワッっとなります。
    不気味な雰囲気の作品が気になる人、サイコホラーが好きな人はぜひ
    観に行って涼しくなってください。残暑払いにもってこいだと思います。

    ネタバレBOX

    今作は、結構複雑な物語構成なんですが。

    舞台はある地方都市の出来てまもない劇場。新しく就任した劇場監督は、同地出身で旧知の
    劇作家が遺した作品をいの一番で手掛けることを試みる。劇作家は本作の初稿だけ書いて
    自室の一室で孤独死しており、作品は至る場面が穴だらけ、結末も途中で尻切れトンボで
    終わっているという有様。

    しかし、監督は、死後一か月ほど経って発見された作家が「無職」と報道されたことに
    心を痛め、作品の上演によって作家の記憶をとどめようと計画する。作家は生前、同作
    完成の暁には、台本をネットで公開する計画だったそうな。

    さて、この作家の遺作『プレイヤー』の物語は、アマノマコトという名の女性が山奥の
    小屋で遺体として見つかったことから始まります。友人だったアマノの死の謎を探るうち、
    主人公の警察官は「サトリオルグ」という、名前からして怪しいサークルに行き着く。

    ある環境団体の代表が主宰する本サークルでは、意識を集中させることによって、肉体から
    解脱することに成功した(=死んだ)魂が、自身の記憶を持つ知人や友人を依り代にすることで
    永遠の生を手に入れることを目指しており、なんでも魂は全存在の過去現在未来を言い当てる
    能力を持ち得るという。最初、半信半疑だった警察官もいつしかサークルに深入りし始め…。

    って感じの台本を、上述の監督が集めた役者や演出家勢で苦心しながら完成作品にしていく、
    ってのが大きな流れ。1幕目は稽古の情景を描きつつ、物語の概略をまとめていく感じで
    さほどおかしなことは起こりません。

    しかし、2幕目の中盤あたりからいきなり物語が狂ってきます。それまで活発に役柄や
    設定について口をはさんできた役者たちが、まるで人形のように何も話さなくなり、
    ただのモブキャラと化します。そして、稽古を外部から見ていたはずの演出家がなぜか
    積極的に物語の「いちプレイヤー」として参加し始めます。

    演出家はいつのまにか物語に飲み込まれてしまったのか、それとも、あくまでまだ劇の
    外部の存在として声を出しているのか。誰もツッコまないので、モヤモヤしたまま、
    作品は続行していきます。

    全員が物質世界を去って、「向こう側」に行ってしまう場面。スラっとしたビジュアルの
    成海瑠子がナチュラルにヤバい台詞を吐いていくとことか、仲村トオルのカリスマ然とした
    危うさとかよかったですね。このあたり、青白い照明の中、無言でただ棒立ちする役者たちが
    気持ち悪すぎて、ひとつの画として印象に残っています。

    そして、修行が足りず、向こうの世界に行けなかったという警察官が、なぜか稽古を外で見て
    いたはずの監督に呼びかけた言葉。これは怖すぎですね。お前、一体誰なんだ、と。

    「プレイヤー」って、作家の台本にあるように、過去現在未来という運命に動かされる
    「演じ手」であり、向こうの世界の霊的存在が憑依する「依り代」なんですが。同時に、
    舞台の外部から見たら、もう死んでいるはずの作家の意志に従って、定められた役割を
    寸分違わず演じていく「役者」でもあるんですよね。そのメタ構造が面白い。

    制作の女の子が、「今、演じているものって、なんか今こうしている現実とおんなじ
    ですよね」みたいなこと言ってたけど、まさにその通りでしたよね。

    全部が丸々劇だったのか、それとも、いつの間にか劇とは違う現実に飲み込まれてたのか、
    セリフもいくらでも深読みできるので、再鑑賞に耐える作品かなと思います。

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    2017/08/27 19:06

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