第20回公演 『君♡ふりーく』 第21回公演 『ジェニュイン・ケア』 公演情報 劇団天然ポリエステル「第20回公演 『君♡ふりーく』 第21回公演 『ジェニュイン・ケア』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    深い闇の世界をちょっと覗いてみるもりが、完全にズブズブにハマってしまった件。

    今回も天ポリさんは、豪華二本立て公演!って、欲張ってとか頑張ってとかそういうレベルはもうとっくに卒業してしまって、もう毎回2本やるのが当たり前になっているところが驚愕レベルなんですが、今回は第20回公演、初日のファーストステージの「君♡ふりーく」を見てきましたよ!

    ネットの世界の中には、ほらよくいるでしょ、それなりの年齢になってるけど、定職にも就かずに家から全然出ないで生活してる人って。ご職業は?自宅警備員ですっ!とか言ったりたりしてますが、今回はそんな引きコモラーのお兄さんのお話なのです。
    んでもって、この彼が売れない地下アイドルの強烈なファンな訳ですよ。もう、画に描いたようなわかりやすい引きこもりヲタクさんなわけですね!
    ただよくある話とちょっと違うのは、依存している先は両親ではなくて、真面目でお兄さん思いの良く出来た弟君だという事。両親ももちろん出てくるんですけど、あれ?なんか変だぞ?
    特にお父さんは彼のライフスタイルをむしろ突き通せ!と応援してるぐらいの勢いだったりで無責任を通り越して、むしろ潔いぐらいだったり。

    お兄さん思いの熱心な弟君はお兄さんを外の世界でまともに暮らしていけるようにと、精神科の先生のところに相談しに行くのですが、そこで聞かされた話は結構シリアスで、このままではヤバい!治療できる限界を超えてしまってるかもしれない際どいところ。
    そんな弟君の心配をよそに、お兄ちゃんはなんだかわけわからない理由で、ついうっかり外に出てしまう事になってしまったので、まあ結果オーライ。
    そして外にはお兄さんの仲間がなんと4人も居たのです。あれ?そのうち一人はなんか違和感ありますけど。

    売れなくても地下アイドルに固執していないと、人生やっていけないわよ!って完全に追い詰められている感じの年齢詐称の地下アイドルさんは、5人しかいないファンの為、というか自分のためだけに一生懸命頑張ってはいるんだけど、寄生先のお姉さんの家でギクシャクしていて、ついにお姉さんのほうがキレて家出してしまう始末。
    漫画のようなよくあるシチュエーションの、端から無責任に見ていると他人事ならニヤニヤしてしまうような状況で、これからどうなる?ってところで、観客である私たちは、あらかじめ用意されたすごく深い闇の世界に有無を言わさず一気に引きずり込まれてしまって、見事演出の魔の手にハマってしまうわけです。今回は独特の空間がウリの下北沢の楽園での公演だったのですが、エリアの使い方もお見事!

    いつもはどちらかというとイロモノキャラを演じている客演の吉原さんが、今回は常に目の下にクマを作っていて微妙にイライラしてるけどそれを一生懸命抑えているような精神治療科の六平先生を演じているんですが、その微妙な雰囲気がとても素晴らしい。そしてその先生の助手室井が軽薄なイカれたキャラなのかと思いきや、すごいトラウマを抱えた、共に深い闇の世界を目を逸らさず見てくるしかなかった世界の側の人を大変素晴らしく演じているのがとても印象的です。

    あなたは病気なんです!って自覚がない人に言っても、何言ってんだい?なんて言葉が返ってきちゃったりしますけど、重症を通り越してしまった4人プラス、お兄さんの5人の地下アイドル親衛隊は世間一般では、そりゃ犯罪ですっていう領域を踏み越え始めてしまったり。
    お兄さんは戸惑いながらもやっと認めてくれて受け入れてくれた仲間を失いたくないという思いから、どんどんその行為に身を染めて行っちゃうのですが、皆にはそれぞれそんな所にまでなってしまった切実な理由があって、それが明かされていくと、彼らをケシカランとは思えなくなってしまう絶妙なラインで話が進んで行きます。
    普通、こいつ完全にアウトじゃん!と思われてしまうヤバいストーカー君が、実は彼なりの踏みとどまるラインを実は持っていたりするんだけど、一見一番しっかりしたリーダーシップを取っている親衛隊のリーダー格の彼が、もう修復不能レベルの精神崩壊していたりと、観客の判断力と価値観を巧みに切り崩しをかけてきて、誘拐拉致監禁と最強犯罪級の状況まで行ってしまったところで、思わぬ刺客が現れます。もうね、ラストは見てください!としか言えない感じなんですが、しっかり通ったスジに強力な説得力と、ダメ押しで凄い破壊力の無理押しと、畳み掛けるようなラストの展開で、ここら辺が天ポリさんの絶妙なバランスでなんだか納得させられてしまって、見終わった後今回もマンマとやられたなあと感心してしまう訳です。

    個人的には、売れない地下アイドルさんは、鈴木みその漫画「限界集落温泉」に出てくる伝説のネットアイドルぐらいのダメダメレベルで演じてくれればもっと破壊力があったかもしれません(笑)
    地下アイドルさん本人がそこまで逝っちゃってれば、親衛隊の異常度も、もっと引き出せたかもですねー

    上演時間は1時間40分ほどですが、毎度高密度ハイスピードでとても満足な上演でした。次回公演も下北沢だそうです。楽しみですね!

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    2017/07/31 15:00

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