今が、オールタイムベスト 公演情報 玉田企画「今が、オールタイムベスト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ■100分弱■
    玉田企画作品の安定感は、視点のブレなさに由来するのだと本作を観てようやく気づいた。本作含めどの作品も、序幕から終幕まで一貫して、多感な中学生男子の目線で描かれている。それも、少しひねた草食系中学生の目線で。
    これまで主に中学生や高校生、大学生の生活世界、すなわちほぼほぼ等身大の世界を描いてきた中学生がこのたび活写するのは、自分を取り巻く大人の世界。
    その大人たちのやり取りが、学生たちのそれと同様、子供っぽくて滑稽なものとして描かれるのは、人生で最も目の利く中学生の視界に、大人たちがガキ同然に幼く映っているからに他なるまい。中学生時代の私の目にも、大人はそんなふうに見えていたと今になって思い出す。
    タイトルと内容に齟齬があるのはいつものこと。従来通り“あるある”な可笑しみ、共感を誘う可笑しみに満ちた楽しい作品でありながら、内容はタイトルほどノーテンキじゃなく、複雑な思いを抱えて劇場を後にした。
    それにつけても、人間の綾を細やかに描出した精緻な脚本は相変わらずの素晴らしさ。玉田主宰は、そろそろ名のある戯曲賞を与えられてもいい頃なのでは?

    ネタバレBOX

    挙式に備え湖畔にある式場附属の宿泊施設にやってきた父と継母(ままはは)、そして息子の男子中学生。この一家の挙式前夜の話。
    宿泊用のコテージには3人のほか、父が営む小さな会社の部下たちやウェディングプランナーのバツイチ男などもいて、様々な人間模様が描かれるが、物語の軸になるのは、宿まで持ってきたお気に入りのサンダルを継母に勝手に穿かれて穿き跡をつけられ、挙式間近な両親に反抗的な態度を取り続ける先述の息子。
    クライマックスではフテ寝する息子のもとへ継母が詫びにくるが、継母は「ごめんね。でも分からない」と息子がおかんむりな理由を汲み取れていない様子。息子が以下のように説明しても母の無理解は変わらない。
    なんでも息子は、経営者の父が部下たちを連れてきて家飲みしてはしゃぐことにも、最近まで赤の他人だった継母と暮らすことにも耐えており、くだんのサンダルを穿いてのお散歩だけが唯一の楽しみだったのに、そのサンダルまでを破損されて不機嫌なのだという。
    これを聞いても「わからない」を繰り返す継母との間の溝は広がるばかり。
    私には息子の気持ちが痛いほど分かったのに、継母はどうして分かってあげられないのか!?
    溜飲の下がらない結末であった。
    いくら若くて美人でも、こんな母親と良好な親子関係は築けまい。
    あえて断絶を描いて話を終えるあたりはとても玉田氏らしいが、ここは和解をもって幕を閉じるハッピーエンドでも良かったのではないか?

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    2017/07/19 08:12

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