時代絵巻AsH 其ノ拾『黄昏〜たそがれ〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾『黄昏〜たそがれ〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    実に素晴らしい舞台だった。未だ興奮が冷めない。時代劇を観てこのような体験をしたのは初めてである。この数年で2千本程度の作品を拝見しており、時代劇に限れば10分の1としてもである。というより、これだけ印象に残る作品は観劇した全作品の中でも10作に満たない。そのうちの1本である。絶対観るベシ!! 花5つ☆

    ネタバレBOX

    ところで、芝居好きなら誰でも気付くソフォクレスの傑作に出てくる科白を想起させるシーンが今作にもあるのだが、これも偶然ではない。今作の構造が、ギリシャ悲劇の構成に近いのだ。コロスのように現れる将門側近によって語られる意(おもひ)はポリフォニックな大音声となって幕開きから観客を引き込む。実に上手いオープニングである。而もかなり早い段階で陰陽師が登場して、これから起こるであろうことを予言するのである。そして、陰陽師の予言は、神ならぬ人の世の浅ましさを通じて具現化してゆくのだ。その只中に置かれた将門と平家一門の総領として歩まねばならなかった貞盛の悲運を軸にした展開こそ、この物語の核である。天性の資質として自由闊達な気性と天衣無縫な大らかさそして希代の優しさを持つ将門が、都の貴族たちの陰険で悪辣、而も無慈悲な政争の具に貶められ命を失うまでの一大叙事劇でもある。この時、武者として最も大切な二つの価値が、貞盛、将門それぞれに、一つずつ守り通されたことも見逃せない。
     いつの世も権力闘争に群がる者たちの精神は穢れ、血と汚辱そして悪徳に塗れているものだが、その実態を見事に描き出している点でも秀逸である。
     ギリシャ悲劇以来の演劇の伝統を見事に作品に活かしつつ普遍的なレベルに迄作品を高め得たシナリオ、演出の見事さ、役者陣の演技の良さと役を通じての間合いの取り方のバランス感覚、合理的且つ美的な舞台美術に適確な照明、音響の効果何れも優れたものである。
     初日が終わったばかりなので、余り詳しいことは敢えて書かないが、観ておくべき傑作である。

    0

    2017/06/08 00:31

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大