もれなく漏れて 公演情報 ぬいぐるみハンター「もれなく漏れて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    常識と非常識では言い過ぎかもしれないが、何が世の常識なのかを問うような鋭い指摘にハッとさせられる。物語の大半は世間では常識と思われていること、その知っている人と知らない人のかみ合わない会話が面白可笑しく描かれる。その観せ方は会話(内容は重量級だが、喋りは軽妙)中心で、動作(格好)は笑いを誘う程度のもの。

    しかしラストは、しっかり物語としてオチがある見事な展開である。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手側に住んでいる家屋のようなものが作られている。中央は幕に山奥をイメージさせる絵(子供が描いたような山・雲・空)が描かれているだけ。その幕繋ぎ部分から出入りすることで、山奥(非日常)と外界(日常)を区別している。

    物語は、山奥で暮らす少女・満天は大好きな爺さん(実は叔父さん)、山羊飼いの少年、相棒の犬(のような生き物)と共に穏やかな日常を送っていた。
    純真無垢に育った満天は、この世界の仕組みを知らない。その満天の体調が優れない。治療のために山を降りようと提案する周囲だったが満天はそれを激しく拒む。已む無く治療のために街から医者がやって来たが、その非現実的な日常に驚き...。

    不便だが、そこには何か大事な忘れ物を思い出させてくれるような、懐かしさ優しさがある公演。都会暮らしに夢・希望を求め、一方で現実の生活に先が見えにくくなった場所で彷徨う現代人への清涼剤のようにも思える。純真無垢であるがゆえに、逆にリアリストでロマンチズムを紡ぐ。その少女・満天の目を通して見た世間は”スラッジ”かもしれない。

    全体的に少女の記憶に幽かな光を当てるような繊細さも感じられたが、ラストは殺人事件という衝撃的な現実が遮ってくるという展開に驚かされる。その伏線と思える 相棒の犬(刑事の隠語=犬)を早い段階で登場させている。

    自由な知的遊戯を展開する印象を与えているが、純粋・単純な疑問・質問という言葉(セリフ)を発するだけのもの。そこには難しい問題が潜み、複雑な思考を要するようだ。言葉に込められた内容、その肯定・否定の混乱するような議論が高尚な哲学のようにも...。現実・可能・論理世界という異なる視点を整理して観るようだが、場面は役者の演技力もあって可笑味をもって観られる。ちなみに満天の変顔を含め、その表情の豊かなことが面白さを倍加させているようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/02/26 11:05

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