天一坊十六番 公演情報 劇団青年座「天一坊十六番」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    「僕の使徒行録」というサブタイトル付き
    もともとは青年座こけら落とし公演作「天一坊七十番」というタイトルだったらしい。作者の矢代氏が「再々、再々演されたらその年の数字を記そうと考え」その流れで今回が「十六番」となった模様。

    その当時の戯曲をそのまま(多分)改訂せず、上演しているので「昭和」という下地を感じながら見ていたが、2016年の現代には、初演当時の劇中の「首相」や「て」の人の昭和の人物をすぐには想像できず、上演当時の世俗をイマイチ把握出来ていなかったため、そのセリフにいささか戸惑った。
    ジャズのような生演奏に、コンドルズ風味のキレがあって賑わいあるの狂乱のような祝祭のようなオープニングダンス、コロスにあたるそのメンバーに山野さんがいることにもまたびっくり。
    とはいえ、劇中劇に黒電話が出てきたり捩り鉢巻き姿の女性や70年代前後のヒッピー風にも見える衣装などで、なんか変な話で面白いなとは思ったが、最終的に小骨のような不条理感も残り、70年代の摩訶不思議古典劇を見た感じ。

    終演後、公演プログラムを読んでサブタイトルがあったことを知る。それだけでネタバレになるとは思えないが、チケットにでもあらかじめ記載していた方が良かったのではないかな。

    ネタバレBOX

    現代パートで作家が講談や歌舞伎題材の「天一坊事件」をベースに戯曲を執筆してて、そのお話が『八代将軍吉宗の御落胤と称する天一坊がインコから教わったという「私たち人間は、あと一年足らずでみんな死ぬ」という啓示を説いて回り、江戸の民衆をも巻き込んで〜』と史実とは若干異なっている展開。が、やっているうちに現代の劇団員は、いつしか江戸の住人になったと思ったら、稽古途中の現代へと戻ったりと、慌ただしい。

    現実世界の場面では、劇団員?が執筆中の作家に対し不平不満を漏らすも、作家はこの天一坊にはモデルとなる人物がいる、それはイワン・イワノヴィッチという日本で一番偉い人の御落胤、つまり「て」のつく名前の人の隠し子で、天一坊の台詞はほぼイワノヴィッチの言葉」だと言い切り、劇団員を驚かせる。

    ここらへんから、天一坊とイワノヴィッチが一緒くたになり始めるけど次第に達観してくる天一坊の行動がキリストのようにも見えてくる不思議。戯曲書いた矢代氏がクリスチャンということもあり、キリストに重ね合わせたのかな、と、ほかの登場人物もペテロやマグダラのマリアやマルタにあてはめたら、そう思えてきた。
    インコの予言以後、民衆に崇め奉られたのに、事情を知った大岡越前からキチガイ呼ばわりされて、憑き物が落ちたように元に戻るが、近しい人々には不平不満罵詈雑言を言いまくり、最後の晩餐よろしく狂乱の場から、忽然と居なくなり終わる。
    幕切れは鮮やか。傍らで作家はウトウトとしながら眠りから覚める、頭上からインコ?鳥の羽が落ちてくる。最後まで姿を見せなかったイワノヴィッチに、全ては作家の頭の中で思い描いた単なる夢オチだったのだろうか。
    登場人物が勢ぞろいし、歌舞伎場面よろしく見栄を切る姿はかっこよかた。

    最近キリスト教にまつわる舞台を立て続けに見ていたので、多少の知識は持ってはいたが、初見だったらすぐには理解できなかったと思う。
    終演後、公演パンフレットを読んで舞台の内容を補完したが、どこか小骨がひっかかているような詰まりもあって、せめて現代版の部分を平成の時代にしていれば、違った感想もあったかも。

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    2016/06/17 19:14

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