その流れを渡れ 公演情報 各駅停車「その流れを渡れ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    もう少し緊迫感が
    極限状況に置かれた人間ドラマ。その状況を端的に表現していたのが、冒頭の豪雨・雷鳴の音響であろう。状況設定はシンプルで、山奥にある旅館が、紅葉時期を迎えた某日、大雨(100年に1度)の影響で橋が崩落し、今にも山崩れが起きそうである。そこに居合わせた人々の焦燥と思惑、旅館従業員の対処と困惑が描かれる。

    この状況は、2015年9月にあった栃木県・鬼怒川温泉が大雨(こちらは50年に1度)で被害を受けたことを思い出した。もっとも災害の様相は似ているが、人間ドラマは関係ない。

    この公演のラスト、観客の好みが別れそうだ。自分は嫌いではないが...。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、ほぼ素舞台に近い作りである。あるのは木の縦格子のような衝立、縁台1つ、木椅子2つ。そしてランプ灯。なお、最後まで気になったのが天井にある梯子(階段)?のような造作。
    全体的にモノトーンな照明、沈滞するような雰囲気が人の憂鬱な感じを表現しているようだ。

    登場人物は、大別すれば客(大学生カップル、離婚寸前の夫婦)と旅館従業員、それに旅館社長とその幼馴染である。客のうち、大学生・彼氏と夫婦の妻が早く帰りたい派、大学生・彼女と夫婦の夫がそれぞれの相手とじっくり話し合いたい派、という態度の違いを見せる。それに従業員の世間話、噂話が入る。

    大雨による山崩れの危険性、ライフラインの寸断が伝えられる中、その危険的状況に対する緊迫感がないようだ。原因は自然現象であり、旅館による責任がないことから従業員もどこか他人事。だから客と従業員との間に緊張感がない普通の会話になっている。

    自分としては、この旅館(周りに何の観光名所もない所)に来る理由を描いてほしかった。例えば天然温泉(公演では 沸かし湯)とか名物(山菜、川魚など)料理など。そして大雨で温泉装置が壊れる、料理が食せないという不満が客と従業員の間に不穏な空気を流すなど、人間の欲、責任を絡ませて極限における人間模様が垣間見えると...単純な構図では勿体なかった。

    ラストは、社長が客を連れて山越えし、また旅館に残った人たちの二次災害の危険性、さらには社長の幼馴染(教師)の暴力事件の経緯と真相は、など思わせぶりに...。その結末は観客へ委ねたのだろうか。ここは余韻と捉えるかブツ切りと観るか、観客の好みが分かれるところ。この先にある不穏な兆し、天災(地震津波)から人災(原発事故)へ被害が拡大するかのような、本公演を通じて”人の行動”を改めて考えてしまう。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/02/01 00:31

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