嫌われる勇気 公演情報 ウォーキング・スタッフ「嫌われる勇気」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    舞台で見せた「哲学」
    「人は変わることができる」などというアドラーの心理学。自分で何とかできるところとできないところを区別し、自分のできるところをやり、ほかのところは他の人の仕事として目を向けない。

    上記の部分は正確でないかもしれないが、アドラー心理学を教える大学の先生が、それを説明するくだりだ。このように、とっつきにくいとも思われる哲学の本を、舞台の上で戯曲化してしまったのがこの作品だ。果敢に挑戦した脚本・演出の和田憲明さんにまずは拍手を送りたい。

    アドラーの教えを説明するところはあるが、この舞台の核心はそこではない。
    何よりも、特に難しいことを考えなくても、ずっしりと心に残る物語を見せてくれたことだ。相当な力量を持って演じきった利重剛、愛加あゆ、黒沢はるから俳優さんたちに、大きな拍手を送りたい。

    戯曲の力というものを見せてもらった気がする。

    ネタバレBOX

    ありのままの自分として生きていくためには、嫌われる勇気も必要だ。他人の価値観を変えることはできない。自分の譲れない部分を明確にして生きていこう。アドラーの言っていることを、私なりにまとめてしまうとこういうことかも。

    しかし、この舞台はアドラー心理学の説明だけに終始しているわけではない。現実の世界を生きる私たちにとって、「そんなこと言ったって」というささやかな反論も代弁してくれる。

    愛加あゆ演じる女性は、実の母親と義理の父親を惨殺して自首する。自首したのに彼女は警察で詳細を黙秘をするが、それは自分の身を守るためだった。事件の詳細を語って減軽されるくらいなら、死んだ方がいい、と。それは彼女の譲れない一線であったのかもしれないし、乗り越えていかなければならない一線であったのかもしれない。

    生身の人間が目の前で演じる物語の迫力。アドラー心理学よりも心に残るのは、やっぱり舞台の力なんである。

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    2015/10/04 22:17

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