いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」 公演情報 劇団東京イボンヌ「いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ”コラボ”から”融合”へ
    東京イボンヌは2度目だが、改めてこの表現形式に衝撃を受けた。
    オーケストラと声楽家、それにバレエダンサーのレベルが非常に高い。
    下手すると芝居を食ってしまいそうなクラシックの迫力だが、
    やはり芝居がなければ成立しない作品であるところが素晴らしい。
    世に認められた天才ヨハネス・ブラームスと、才能のない弟フリッツ・ブラームス。
    それぞれ孤独な葛藤を抱えつつも、互いを思い合う兄弟のストーリーがあり、
    そこから生まれた音楽やウィットに富んだ挿入歌が背景を得て生き生きと立ち上がる。
    以前観た時はクラシックと演劇との単なる“コラボレーション”だと思ったが、
    今回は“融合”という印象を受けた。
    若干脚本の無理が感じられるところはあるが、全体の流れがそれを上回って自然だった。

    ネタバレBOX

    むせ返るような花の香りのロビーで受付を済ませて中へ入ると
    舞台正面奥、一段高くなっているところに既にオーケストラが控えている。
    下手にピアノ、その手前にバーカウンターと止まり木、上手にはソファとテーブルがある。

    作曲家ヨハネス・ブラームス(モリタモリオ)は、才能はあるが人づきあいが下手、
    自意識過剰で心配性。
    その弟フリッツ・ブラームス(いしだ壱成)は、人懐っこくて明るく楽天家、彼女もいるし
    誰からも好かれる。
    弟は兄を励まし、作品を見ておらおうと一緒に大作曲家シューマン(吉川拳生)を訪ねる。
    ヨハネスの才能にほれ込んだシューマンのおかげで、
    彼は一躍有名作曲家の仲間入りを果たす。
    ところが彼はシューマンの妻、知性と気品溢れるクララ(川添美和)を愛してしまう…。

    かの天才ブラームスに、才能に恵まれない弟、という対比が面白かった。
    天才は何かが欠落しているものだというところに説得力がある。
    互いに孤独な葛藤を抱え、それを初めて終盤さらけ出すところが良い。
    その時明らかにされるクララとの隠されたエピソードも効いている。

    そして兄弟のストーリーを柱に随所に演奏されるクラシック音楽が本当に素晴らしい。
    他人の作品を自分が生み出したと勘違いする性格のフリッツ…という設定には笑ったけど
    そのおかげで自由な選曲が可能になったのは楽しい。
    藤原歌劇団の鳥木弥生さんのカルメン、一瞬にして舞台で花になる存在感がすごい。
    表情豊かな歌声、ビシッと決まる仕草と振りで
    「このカルメンもっと観たい聴きたい!」と思わせる。

    阪井麻美さんのバレエも素晴らしかった。
    絵のような美しい動きに目が釘づけになった。

    余計なお世話だが、マネジメントも稽古も大変だっただろうなあと思った。
    クラシック音楽もバレエも演劇も、本来分かれていたファンが一堂に会した感じ。
    幕の内的楽しさ満載でアイデアの素晴らしさを感じる。
    そのうちの一つだけを愛したい人は、それだけを追いかければ良い。
    でもいろんなものが融合すれば、相乗作用でこんなに豊かな空間が広がることを
    今回改めて知った以上、私はこれを新しいジャンルとして存分に味わいたい。

    これは着想と脚本にかかっている。
    主宰の福島氏が言うように「必然的に出来るモノ」だったのかもしれない。
    だが必然的なものは不自然さに対して厳しく、小さな違和感が破たんを招く。
    誰に注目して、どんなキャラ設定にして、何を聴かせるか。
    期待の風を孕んで大きく船出した東京イボンヌ、舵取りに注目しつつ応援したいと思う。

    ひとつ、終盤のフランツの号泣、いしだ壱成さんだからついやらせたくなるのも分かるけど
    あそこまで悲痛にならなくても、フランツの苦悩は切なく伝わるような気がした。
    それにしてもブラームスのあの髭が、ストレスのせいだったとは、妙に納得したのだった(笑)

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    2015/06/04 23:28

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