草莽崛起 公演情報 劇団宇宙キャンパス「草莽崛起」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    くるものがある
     ソウモウケッキと読む。舞台は1922年(大正11年)に、1人の新聞記者が、高杉晋作が創始したことで有名な奇兵隊の生き残り、浦部 五郎に、その内実を訊ねるという設定だ。名もなく歴史の闇に溶けていった庶民勇士へのレクイエム。(追記2014.12.8)
     

    ネタバレBOX

     草莽とは、草原を指すが、転じて民間、民間の士を表すのは、今更言う迄もあるまい。が、念の為。最近、日本語が碌にできない人が多過ぎるからにゃ。そういう自分にした所で大したことは無いのだが。
    閑話休題。で、五郎の語るのは、奇兵隊草創期である。当然、幕末だ。明治元年迄あと5年の文久三年(1863年)、安政の大獄で吉田 松陰を失った長州は、高杉らが台頭、御殿山に建設中であった英公使館焼き討ちなどの行動で攘夷を示す。然し、藩内は、幕府に恭順を示すべきだ、との佐幕派も隠然たる勢力を持ち、攘夷派に反対して勢力は二分された為、藩内に於いてもいつ内紛が起きてもおかしくない状態にあった。而も、長州は、下関事件で外国との戦闘も覚悟せねばならず、幕府との関係は朝敵とされて以来最悪のものであった。四面楚歌である。このようなニッチもサッチも行かない状況で高杉の下、頭角を現して来たのが赤根 武人であった。高杉が、佐幕派との衝突の責任を問われて、奇兵隊から外されると、統率を任されたのが、赤根であった。然し、武士でもない所から成り上がった赤根が、自分より上位に就くことを山県 有朋は嫌う。
    今作では、この確執が、赤根は冤罪と知りながら、幕府の攻撃に晒される長州を離れたとして罪に問い、斬首刑に処す、という解釈をしている。彼と共に、馴染みの店に居た3人の隊士、修造、伝之助、仙吉も共に処刑された。
    奇兵隊きっての腕っこき、伊之助が、命に代えても守ると約束した赤根を助ける為に、斬首時に刑場へ到着。然し、間に合わなかった。それでも未だ命のあった友人らを助けようと奮闘するが、多勢に無勢、終に斬り殺されてしまった。止めを差したのは山県である。腰ぬけの五郎も、流石にこの時、腰の物を抜いた。だが、姉と断末魔の伊之助に、語り部として残るように赤根と約束したことを指摘され、生き残ることを決意。その後、奇兵隊を抜け、生き残りを図ったのである。五郎が、特に称揚したのは、名も無く死んでいった勇士、伊之助と皆に好かれ裏切り者として殺された赤根のことであった。
    まあ、草莽の志は、己の中にそのような思想を持つ者にしか分かるまい。一般的に言われる「英雄」というのは、下衆レベル迄自らの精神を落とした人間に過ぎないが、その程度の下衆を喜ぶ手合が多いのだ。草莽とは、自らの命を賭けて義の為に闘う者の謂である。

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    2014/12/07 12:38

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