妖怪酒場 公演情報 物の怪エンターテイメント企画 『妖-AYAKASHI-』「妖怪酒場」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    バランスの取れたシナリオだが
     主人公、信一のエピソードを何処まで、深刻に受け取るかで、作品解釈に大きな差が生まれよう。

    ネタバレBOX

     妖怪好きの小説家、佐藤 誠は、人間好きの妖怪、豆腐小僧と知り合い、妖怪と人間の交流の場にと設えられた妖怪酒場の馴染みになる。そして、ここでの取材を基に、連載小説を書き、見事なヒットを飛ばし、大賞を受賞するが、授賞式翌日、交通事故に遭って亡くなってしまった。彼は、小説家として名を為す為、単身東京へ出て暮らしていたのだが、故郷には、息子が一人在った。彼は、受賞後直ぐに、未だ5歳だった息子、信一に初版本に手紙を添えて送っていた。無論、この時点で息子は父の本を読めた訳ではない。然し、明日のわが身がどうなるかなど知らぬ人の子は、将来、息子も、自分と同じように妖怪に明るい人間になって、酒を酌み交わしたい、と書き送っていたのであった。20年の歳月が流れた。信一は、矢張り血だろうか? 父のような妖怪好きの青年に育ち、雑誌に関連記事を書いて生計を立てていた。然し、出版社の代替わりで、経営陣、編集長が変わった途端、いきなり首を切られてしまった。失意のうちに彼女と会い、甘えようとする信一に彼女、ハルミは言い放つ。「小説家の息子だっていうから、何か才能があるかも知れないと思って付き合ってあげただけじゃない。収入も地位も無い、仕事の出来ない男なんかに興味はない」と。踏んだり蹴ったりで、信一は、かつてアルバイトをしたが旬日を俟たずしてバックれた店の従業員休憩室で首を吊ろうとしたが、この部屋の天井は低く、おまけに天井には、ロープを引っ掛けることのできる箇所が無く、失敗する。そこへ店長が現れ、自殺はできないと諭した上、夜、飲みに行こう、と誘いを掛けた。信一は、店長の話に乗るが。
     店長が連れて行ってくれた店は、津軽三味線をポップなアレンジで演奏すると、その伴奏に合わせて、舞姫が舞う、というライブをやっている、ちょっと風変わりだが、魅力的な店であった。酒も頗る旨い。飲み進むに連れ、何故、店長は、この店へ信一を誘ったのかが明らかになる。店長は、人間界で暮らす為に人間の姿を纏った烏天狗であり、美しいママの手は氷のように冷たい。雪女である。アシスタントの可愛い女の子は、座敷童、旨い酒を奢ってくれたのは、河童。ボックスで河童と一緒に飲んでいるのは、ろくろ首、津軽三味線を弾いているのは、古三味線等々。ここは、妖怪酒場だったのだ。20年前、在る事件が起こった。それ以来、オーナーである福の神のエネルギーとネクタルの源泉を確保する為、人の魂を抜き取り、ネクタルの原料と神のエネルギー源にしていたのである。然し、罪も無い人間を連れて来た上、魂を唯、抜き取るというのは、余りにも可哀そうだ、というのが、バーに集まる人間好きの妖怪達の立場であり、神と協議の結果、人間にも生き残りのチャンスを与えることになった。して、その方法とは、アルコール度数108度という在り得ない度数の酒の飲み比べで妖怪チームに勝った場合、人間は魂を抜かれずに、人間界に帰ることが出来る。然し、その場合は、負けた妖怪が魂を抜かれ、死ぬことになるという厳しいもの。然し、人間がこの20年間に妖怪に勝った験は2度のみ。だが、一度、自殺未遂を図ったとはいうものの、死ぬことはできなかった信一は、無論、命に未練を持ち始めていた。死の恐怖を目の前に突きつけられた彼は、死にたくない、とハッキリ意識する。だが、生き残る方法は、飲みっくらに勝つことのみ。上演中故、これ以上のネタバレは控える。後は、観てのお楽しみ。

    0

    2014/08/14 12:16

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大