蜜月の獣 公演情報 小西耕一 ひとり芝居「蜜月の獣」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    独特のグルーヴ
    独特のグルーヴがあって面白かった。

    作品が問いかける内容も、心に迫るものがあった。
    自分の中に潜む男の暴力性を突きつけられた。

    ネタバレBOX

    日常の一断面を切り取った場面という設定を考えると、
    作者の内面を言葉にして表出しているようなモノローグ的な部分が見えて、ダイアローグとしては上手くないなと感じる部分も多々あったが、
    一方で、そのちょっとギクシャクした感じこそが、妙なグルーヴを生んでいたとも思う。
    作者の意図か、偶然の産物かはわからないが、私にはその点がとても面白かった。

    特に前半の笑いの要素が多い部分でそのグルーヴは活きていたと思う。
    日常のテンポの中で、日常的ではない言語の表出が、妙なズレを生んでいた。空転しつづけるスベり芸のような面白さがとても良かった。

    前半はそのように、笑いの要素が多く、コメディかと思っていたら、
    後半、極めてシリアスな問題が起ち上がってくる。

    冒頭で「?」を示し、その「?」が物語の展開とともに徐々に明らかになっていく作りも見事だと思った。この点はとても上手いと感じた。
    特に、作者(役者)がそれを言葉で明示するのではなく、観客自身が「あぁ、そういうことだったのか」と発見できる作りになっていて、とても良かった。

    ただ、これは私の個人的な趣向の問題なのかもしれないが、
    あこそまで劇的な物語にする必要はなかったのではないかとは思う。
    日常の断面の描写を積み上げて創った物語であり、そのリアリティが核心にあるのだから、物語としてのスペクタクルに向かわずに、その細部の中に同質の問題を見出していく作りの方が良かったのではないか。

    それでも、物語としては大仰であったけれど、観客の私の心に残ったものは、微細なものがきちんと残ったので、とても良かった。

    私自身は、この物語で語られるような行為(レイプや暴力など)をしたこともなければ、自分が大切に思う人がそのような事態に巻き込まれたこともない。そういう意味で自分と関係がある話とは一見思えないのだが、この中で語られている暴力性は、小さなレベルであっても私の中(どんな男の中)にもあるのだということを突きつけられたような気がした。これは性や肉体的暴力だけの問題ではなく、言葉の暴力や力学としての暴力性という意味でも。

    (そういう意味で、この作品を女性が観たらどう思うのかというのはとても気になった。)


    役者さんも3人とも、とても良かった。

    特にオールラストでの、河西裕介さんの眼がとても印象的だった。

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    2014/02/27 11:14

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