空気正常 公演情報 殿様ランチ「空気正常」の観てきた!クチコミとコメント

  • 残された、二つ。
    詳しくは、ネタバレへ。(ほとんどバレてません)

    ネタバレBOX



    鉱山採掘場は、原子力発電所に似ている。
    そこで働く者と地域の者が肉体、精神を犠牲にする代わりに経済的な富を得る。

    誰しも、現実から逃げ出したいが、イカダを造り、大海原へ航海することはしない。

    後方には、人々と都市の消費者とを分け隔てる城壁の役割を果たす、森が拡がっている。

    『空気正常』、その舞台となる地は、日本なのか。それとも、遠い外国の話しなのか。
    怪しいスーツに身をこなした男女が地元の管理者なる人物に名乗った、保健省なる役所は  この国には存在しない。
    つまり、外国の話だということだろう。

    その地では、青年が採掘場で身を滅ぼしながら削った石を、土産品として販売するらしい。夜になると、輝く。緑色を放つ  それは、まるで蛍のコピーである。

    蛍は、緑色の光を尻から放ってしばらくし、役目を終える。悲しい賛歌といってよい。
    都市の消費者に売られる土産品も、結局は、青年の血と汗の結晶である。悲しい賛歌とはいかないが、恋人のため、コレクションのため、手を伸ばす までに至る過程は、悲しい。

    数年前、野良犬を母に持つ2人の少女が発見された。
    吠える、生肉を喰いちぎる、噛み付く。

    しかし、年齢が上の少女は人間として大人になった後、故郷の森へ帰ってしまう。地球の反対側の故郷を訪ねるより、長い距離に感じる。

    彼女は、大海原へ泳ごうとはせず、母の待つ森に帰った。正確には、試みた。

    炭鉱で犠牲を強いられ、都市との経済的なネットワークで生活する  かの地。
    森へ帰る 、彼女の その行為は、今、
    炭鉱を埋めてしまい、都市との経済的な繋がりなど破壊すべきだというメッセージなのか。

    ひるがえって考える。
    原発事故で、この国の歴史上、初めて 大規模な人の空白地帯が生まれた。
    拡がる大海原には汚染水を流した。
    車で、徒歩で、逃れた住民に残されているのは、支配者としての都市か、野良犬に育てられた少女か、いずれか一つしかない。後者は、言うまでもなく森である。


    ちなみに舞台では、保健省を名乗っていた、怪しげな男女の思惑通りことが運ぶ。
    次は、また別の青年が現れるということか。
    ただし、血と汗の量は格段に減少しそうではあるが。











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    2013/03/05 23:54

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