構成・イプセン―Composition/Ibsen 公演情報 shelf「構成・イプセン―Composition/Ibsen」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    アトリエ・センティオという場
    虚構と現実の狭間で。

    ネタバレBOX

    アトリエ・センティオという場は、shelf との関係がとてもいい。

    shelf はここで観るのが一番好きだ。

    今回の舞台は、タイトルどおりイプセンを再構成した内容だ。
    軸になるのはイプセンの『幽霊』。
    このイプセンの『幽霊』をどう動かすのか、あるいはどう動かさないのかが、最大の興味だった。

    三橋麻子さんたちが、濃厚でこってりとしたイプセンの登場人物を演じるところに、川渕優子さんたちが楽々と演劇空間(虚構)と現実(アトリエ・センティオの舞台の上)を行き来する。
    行き来するたびに、三橋麻子さんたちが体現し、放つ世界が虚構に見えてくる。
    戯曲を上演する、ということにおいて、それを見せてしまう強さがある。

    さらに言えば、川渕優子さんたちも当然のこと、戯曲の中にあり、「虚構」であるのだ。

    この奇妙な関係が、舞台の上だけでなく、舞台のある会場にも広がっていたのだ。
    それは、アトリエ・センティオという会場にある。
    時折流れる水道管を通る水の音、壁一枚隔てて聞こえる東武東上線の走る音。
    それらは、「実際」そこにある「現実」なはずなのだが、「見えない」ことでどこか虚構めいている。

    イプセンの演劇、その場を俯瞰する役者、そらにそれを観る観客、そして、それらがいるセンティオ、そして東上線の気配に代表される外の世界との関係性。
    今回の舞台はそれが活きていたように思えた。
    絶対的な生活音・社会音との対比・関係性が絶えず観客の脳裏に響くということで。

    今回は、衣装に託す「俗」さと「気配」の妙があった。
    それが台詞の割り振りにも活かされていた。
    この巧みさは、読み込んだ者のみが使える絶対的な自信ではないかとも。

    また、音だけでなく、タバコの臭い、ロウソクの炎(&匂い)、オイルライターの匂いをも演出されているようにも感じた。

    ただ、個人的な好みとしてラストは『幽霊』のままのほうがカッコいいと思う。
    『幽霊』のラスト台詞は、俳句のような情景と余韻を残すから。

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    2013/01/07 05:07

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