満足度★★★★
中々
ワイルドの「サロメ」が余りに有名な為か、戯曲シナリオというより、
作家性の競争を挑んだ頭でっかちになってしまったようである。
作家として、決して、それが悪いということではないが、ワイルド版「サロメ」が
内包している内容をあたり前の事として受け入れ得る現代ヨーロッパの文化的情況に比して日本のそれは余りに貧弱で殆ど瀕死の状態と言って過言ではない。その分、説明的になった部分を煩いと感じるのだ。演出も、この辺りは、難しい判断を迫られたに違いないのだが、事情が許せば、矢張り演劇の本旨に立ち帰って肝心要の所だけを、象徴を使うなどして、もっと様式的に
作っても良かったのではないだろうか。音楽もサティーの曲を想起させるような生演奏が入るもので、それなりに楽しめたし、役者陣の一所懸命な演技もあるのだから、その辺りを上手く、分解し、余分な所は切り、更に緊密な再構成を図ることで、一段、演劇的に高い場所へ行くことが出来よう。