yozが投票した舞台芸術アワード!

2018年度 1-3位と総評
ただいま

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ただいま

劇団こふく劇場

過去と死者と記憶と感情がない混ぜとなった幽玄の世界が舞台に立ち昇る。高い修練とコンビネーションがないと成立し得ない公演。田舎のよくある風景を描きながらも観客の心の底にタッチするような深遠さを併せ持つ。2時間のお芝居でありながら、同時に2時間の合唱曲を聴いていたかのような高い音楽性。
いやはや、今年ベスト級のお芝居を見せて貰った。

逢いにいくの、雨だけど

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逢いにいくの、雨だけど

iaku

せせらぎの様な小さな日々の暮らしが突然の事故によって不意に濁流と化し、次第に2つの家族を飲み込み戻れないところまで運んでいく様が、ナチュラルで密度の濃い会話によって紡がれていて唸らされる。

1991年夏と2018年冬の2つの時間の流れが絶妙なタイミングで交錯するのも見事。時間の出し引きによって徐々にいろんなことが明らかになっていくので「この先どうなるの?」と思いながら2時間ずっと惹き付けられっぱなし。

猪俣氏演じる父親のエゴむき出しの態度や近藤氏演じる優柔不断で鈍感な台詞も「こんな人実際にいるんだろうなー」と思わせてくれる。(僕たちが好きだった)川村紗也さんのあっけらかんとしながらも我が子のことになると俄然強くなる母親役もよかった。

舞台美術も凝っていて、これはこれで凄かったけど、このお芝居を新宿眼科画廊で観たら一体どれほどの迫力があったのだろう?と想像したりもした。

長いお別れ

3

長いお別れ

富山のはるか

「(500)日のサマー」のような「あの時あんなに仲良かったのに今はもう・・」という、ほろ苦く甘酸っぱい恋の物語。BGMのセンスが良く、Alvvays"In Undertow"が流れたときは「たまらんっ!」って気持ちになった。
登場人物の女性がニコ生主をやる場面で映像と女性が掛け合う箇所があったり、ハンディラップを用いて時間や空間を分けるといった、キラリと光るアイデアが随所にあったのに生かしきれていない感があったのは勿体無かった。とはいえ楽しませてもらいました。余談ですが、主役の男の子の声がニノに似てました笑。
ゲームをプレイ中の主人公と友人が恋愛に関する会話をしている最中、唐突に友人が「あ。そこにアイテムあるよ」とつぶやくところや、理想の女性について語る主人公に彼女が「石原さとみはCGだから」とさらっと言うところなども気が利いていてよかった。
開場時のBGMを含め、音楽に拘るところに好感を持っただけに、最後に流れる物語の肝となる曲が「今夜はブギー・バック」だったのは、安易な気がした。なぜ彼女がぶち上がる曲が「今夜はブギー・バック」なのかの説明もないし。年代もずれていて、物語とリンクして歌詞から掬い取る意味合いも特段ないような気がした。
せっかくならFor Tracy Hyde"Leica Daydream"とか爆音で流れたらよかったのにって思った。過ぎ去った恋の記憶って、振り返ってみれば「白昼夢」のようなものだし、主役の女の子は常にカメラを携えていて、歌詞の内容も合ってると思うのですが。いかがでしょう??

"過ぎゆく瞬間が「いま」を都合のいい幻に変えてゆく。
誰もが気づかぬうちに手にしてた、そんなありふれた魔法。
砕けたしゃぼんが音も立てずネイヴィーのブラウスを濡らした、風の日。
ありのままの退屈さえなぜか美しい色になって、
頼りない陽の光のなか、君は記憶の世界で呼吸をする。
ねえ、小さな過去を重ねてやっと巡り会えた愛しい人。
何千の色を束ねた君の光がやがて白になる。
瞬きの狭間で捉えたしぐさ――ときめきはいつも君のそばにある。
「好きな花を選び取っても、そこには永遠はないの」と笑う、
そんな君 を永遠にしたくて、僕はファインダーの向こうを覗いて見るよ。
ライカ・デイドリーム・・・。"
For Tracy Hyde"Leica Daydream"

総評

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