catharine3の観てきた!クチコミ一覧

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DISASTER~愛しきあなたへ

DISASTER~愛しきあなたへ

劇団だっしゅ

萬劇場(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

想像していた内容とのギャップ
この劇団の公演は前回公演を初めて拝見したのですが、前回と今回の扱うテーマのギャップに驚かされました。
しかし、根底に流れる劇団としての姿勢は前回を同様に感じる事ができました。
今作では『下ネタ8割カット』との事でしたが、一度『下ネタ一切なし』の芝居も見てみたいと感じました。

観劇後の思いは個人個人で違うでしょうし、芝居としての落とし所もそのような帰結になっていましたが、私個人的には素直に心に響くものもありました。
満足して帰路に着く事ができました。

『そこで、ガムを噛めィ!』

『そこで、ガムを噛めィ!』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

テアトルBONBON(東京都)

2011/04/26 (火) ~ 2011/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

真面目にコメディ
観てきたコメントを書くのが大変遅れてしまいましたが、書き込みをさせて下さい。

とても面白く、良質なコメディに仕上がっていたと思いました。
前回までの、ややもすれば押しつけがましいと感じてしまうところがなくなり、エンターテイメント性が大きく前に出てきたように感じました。
『野球に興味がなくても楽しめるお芝居』という口上に間違いはありませんでした。
観に行ってよかったと思える作品です。

ネタバレBOX

劇場に入り最初に感じた事は、『いつもの作りこまれたセットではないのか?』でした。
8割世界の舞台はいつも丁寧に建て込まれた雰囲気のあるセットという印象が強かったので、あっさりしたセットに意外性を感じていたのですが、場面転換での印象の変化を見て、なるほどと思いました。
まさに場面を転換させるセットはアニメのカット割りのように、見ている者の心を屋内から屋外へ自然と導いてくれました。
今回の舞台はセットの転換に象徴されているように、前半部分と後半部分の印象がはっきりと別れていてそれがとてもいいコントラストになって、最後まで観客の心を離さずに飽きさせる事なく着地できたのではないかと思いました。

野球というスポーツは1チームに最低でも9人が必要で、対戦となると同人数の相手が必要になってくる。
舞台上で野球をやるとなると、いったい何人を舞台に上げるつもりなのだろうか。
登場人物多すぎて、ゴチャゴチャしてしまわないだろうか。
等と考えていた心配を、見事に吹き飛ばしてくれました。
試合シーンのテンポのよい演出はとても好印象でした。
もちろん前半部分のお芝居もとてもよかったです。
前半部分できちんと登場人物の設定を観客に染み込ませてあるからこそ、テンポのよいダンスと動きが面白いと感じられたのだと思います。
相手チームこそ登場しませんが、自分たちのチームの9人。マネージャーと監督もいれての11人の設定がとてもしっかりとしていて、観終わった後も一人一人の印象が強く残りました。
台本がしっかりしていて、さらに絶妙なキャスティングが噛み合ったからこその結果なのだろうと思います。


話としては最後にオチを付けるところも、細かい笑いも奇抜なものはなく、どちらかと言うとスタンダートで老若男女誰でも笑えるような話になっていました。
何か一つフラグを立てたら、それを丁寧に回収しながら話を進めていく。
奇抜さや意外性のある笑いはないけれど、安心して皆が納得して笑えるお芝居でした。
主催の鈴木さんはとても真面目で、とても深く考えながらお話を纏める人なのかな、という印象も受けました。
真面目に考えてコメディを作り上げているので、8割世界の観客は毎回安心して見に来る事ができるのだと思います。


全体としてはとても好印象だったのですが、最終日でも台詞の噛みが多くて気になりました。
せっかく捲し立てる場面なのに、台詞が出てこなくなってしまったのは残念でした。
それでも役者陣の演技も演出も素晴らしかったので、次回作にも期待しています。
恋する、プライオリティシート

恋する、プライオリティシート

コメディユニット磯川家

王子小劇場(東京都)

2011/02/05 (土) ~ 2011/02/14 (月)公演終了

満足度★★★★

期待通りのドタバタコメディ
書き込みが遅れましたが、舞台を拝見しました。
前作と同じノリの、登場人物多目のドタバタコメディ。
楽しめました!
面白かったです。

ネタバレBOX

磯川家は『レストランじゃない』に続き、二度目の観劇。
力技の大人数ドタバタコメディが得意ジャンルなのでしょうか。

前回も思ったのですが、今回も美術が作りこまれていて素敵でした。
劇場に入りセットを目にした途端にワクワクでき、開演までの間に舞台を隅々まで眺めながら期待する時間が持てるなんて、始まる前からとても楽しい時間でした。
劇中の小道具の使い方も楽しく、笑いを引き出す為にタイミング良く使用される演出も面白かったです。
そして、生ピアノの演奏がとても効果的でした。
抑えた丁寧な弾き方から、アップテンポの弾き方まで素敵なピアノでした。
ピアニストは演奏のみの参加かと思っていたら、あの全力疾走は演技ではないのかもしれませんが、実は単純に一番面白かったかもしれません。

登場人数が多いながらも、一人一人の人間模様を丁寧に描き出していて、それぞれの個性を立たせているのも前回と同じく観やすかったです。
障害や自殺といった暗いイメージに偏りがちなものを、馬鹿にするでもなく、ただ笑いにするだけでなく、かといって大仰に扱うのでもなく上手いバランス感覚で取りこんでいたように思えました。
障害や自殺という内容は、たとえ少しでも扱うと様々な意見が出てくるものだとは思います。
その為、どこまで踏み込んでいいのかという迷いがあって、どこか中途半端で最後は力技で纏めてしまったような印象も受けてしまいました。
力技でドタバタコメディで持って行くのならば、もっと突き抜けてしまってもよかったように感じます。

今回はバク転の大技あり、激しい突っ込みありで体を張った笑いも楽しませて頂きました。
期待を裏切らない内容でした。

芝居の内容には関係はありませんが、開演前後の姿勢が素晴らしいと思います。
観客を楽しませよう、評価を引きだそうとする姿勢には好感が持てました。
貪欲で推進力がありそうな磯川家の皆さんには、嫌でも今後を期待させるような何かがあるように感じました。


次回公演も磯川家の笑いを期待しています!
僕を愛ちて。~燃える湿原と音楽~【沢山のご来場ありがとうございました!次回公演は7月青山円形劇場にて!】

僕を愛ちて。~燃える湿原と音楽~【沢山のご来場ありがとうございました!次回公演は7月青山円形劇場にて!】

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2011/01/15 (土) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★

行ってよかった!
何とか予定を無理矢理詰めての観劇。
行ってよかった。
パワーをもらった。

ネタバレBOX

粟根まことさんのドラムに驚いた。
『三姉妹の罠』

『三姉妹の罠』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

テアトルBONBON(東京都)

2010/10/06 (水) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★

ラストのまとめ方が好き
若干、力技でまとめに入っていたように感じましたが、小ネタの散りばめ方もテンポ良く面白いコメディでした。
適材適所のキャスティングで、見入ってしまいました。

ネタバレBOX

実家の八百屋さんを手伝って、実家で暮らしている長女。
売れっ子漫画家の次女。
女優を目指し小劇場で端役として活動していたが、お笑い芸人に転身しようかと考えている三女。
この三人が題名の『三姉妹』で舞台は実家の居間。

舞台美術が丁寧に作りこまれていて、和室の居間、縁側、庭と奥行き感もたっぷり。
箪笥やその上に置いてある小物、壁の賞状等と相まって雰囲気のある『実家の居間』が再現されていました。
劇場に入って公演が始まるまでの間、素敵なセットにワクワクしてしまいました。

役者陣は皆さん演技が上手かったのですが、特に長女役の嶋木さんがよかったです。
最初はただ元気なだけの役回りかと思ったのですが、ラストの西日が差し込んでいた居間での表情で一変していたのに、見入ってしまいました。
二代目役の高宮さん、今回も『一生懸命だけど空回りで、空気読めているのだか読めていないのだか解らないキャラ』を熱演していました。
勝馬の時と同じような印象を受けてしまったので、次回は違う雰囲気のキャラクターを演じているのを見てみたいです。
おじさん役の本多さんの台詞のタイミングが心地よく、掛け合いのテンポを面白く引きたていてたように感じました。
劇場内の受付からの階段に写真が飾られていたので、今回公演で卒業との事を知りました。
次回も本多さんの演技を拝見できると思いこんでいたので、残念に思います。

話の流れは最初の導入部分が長すぎて、姿が見えないままに会話を聞かされ続けて入り込むタイミングを見失ってしまいました。
三女の抱える不満やコンプレックスはよく理解できましたが、長女の心情がいまいち解りにくかったです。
しっかり者で妹達の事をよく考えていて、稼業も手伝う孝行者のイメージなのですが、好きな事をやって成功している次女と将来を模索して自分の都合で様々な事にチャレンジできる三女に対し、長女自身は自分の現状をどのように考えているのかが知りたくなりました。

全体的な印象としては、連続テレビドラマの中の何話目かを見た気分です。
面白い事が始まる事を予感させるBGMの使い方や、『家族』という簡単なようでいて複雑な関係や、各キャラクターの登場が唐突に感じてしまったところが多々あったので、そのように感じてしまったのかもしれません。
連続ドラマなどで土台がしっかりと理解できていれば、もっと楽しめた様に思います。
『灰になる』の台詞や野球ネタは解る人には解るけど、解らない人にはまったく通じなかったのではないでしょうか。
コメディを見ていると、その世代にしか解らないネタを引用する方は大勢いらっしゃいますが、どんなに面白いネタでも伝わらなければ意味不明の台詞にしかなりません。
8割世界のように客層が幅広い劇団は、世代間ギャップのありそうな台詞は扱いが難しいのではないかと思いました。
ラストの終わり方が素敵でした。
次に続くような、それでいていつまでも問題を引き摺らないスガスガしさ。
姉妹だからこそ解りあえる暖かさを感じました。
『罠』とは言うけれど、人を陥れようと画策する罠ではなく、相手の為を思うからこそついてしまった『嘘』のような、そんな印象を受けました。
楽しくて元気になる、面白いコメディでした。
Empty Kingdom

Empty Kingdom

Island

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/09/30 (木) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★

王道シリアス
シンプルなストーリー、シンプルな舞台セットながら、役者陣の熱演と観客の支持もありいい雰囲気でした。
真面目な一生懸命さが伝わってくるような舞台でした。

ネタバレBOX

舞台は中世ヨーロッパのどこかの国。
戦に明けくれ領土拡大のみを考える女王と、戦闘の急先鋒として戦地を駆け巡る女王の姪である皇女のミラ。
重税のためにクーデーターを画策する民衆と、ミラの幼馴染で鍛冶職人のカーティス。
幼い頃はいつも一緒だったミラとカーティスが再び出会う時は、笑いあえる時ではなかった。

ミラとカーティスの関係を恋愛関係にせずに、人間として対等な関係にした事にまず好感を持ちました。
『生きる為に、理想の為に戦う』ミラと、『生きる為に逃げる事も大切』な考え方のカーティス。
二人のコントラストが物語そのもので、とてもよかったです。

シンプルなセットながら舞台への出入りの場所や、立ち位置などを工夫していて広く舞台を使っているのがよく解りました。
せっかくの見せ場なのだから、もうちょっと殺陣をカッコ良くして欲しいかなと思います。
それまでの演技が良くても殺陣に入ったとたんに緊張感が消えてしまいました。

王道シリアスファンタジーを楽しませて頂きました。
号泣してらした方もいました。
世界観の作りだしは素晴らしいと思います。
Root Beers-ルートビアーズ-

Root Beers-ルートビアーズ-

劇団東京ヴォードヴィルショー

ザ・ポケット(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

カッコよかった!
芝居が始まる前の前説も凝っていました。
舞台セットも音響、照明、演出、もちろん役者さんも素晴らしかったです。
引き込まれてしまいました。
よく練られた作品だと思います。

ネタバレBOX

ワケありの人間しかいないロサンゼルスのコリアンモーテルの一室。
敵対組織の相手の命を狙い、日本からやってきた武闘派ヤクザ二堂とその舎弟二人。
誤って二堂と接触してしまい交通事故を引き起こし、責任を取らせる為に連れてこられた不運な男と、二堂の動向を探って情報を金に換えようと画策していて捕まってしまった男。
三人のヤクザと、捕えられた不運な二人の男。
暴力的なシーンからの幕開けが、二堂がルートビアーを飲んで意識を失い、暗転が明けたところから一転していた。
武闘派ヤクザ二堂は記憶を失い、死んでしまった妹の冬子の事も忘れ、小心者で暴力を恐れる人間に変わっていた。

二堂の二面性を巧みに演じていて、冬子が現われる時の演出とも相まって、素晴らしかったです。
ワケあり人間が次々と登場するのですが、どのキャラクターも強烈な個性を放っていて目が離せませんでした。
台風の影響でホテルから身動きできずに時間が経過し、その経過の中での人間関係の移り変わりも無理のない演出で表現されていました。
ロサンゼルスのコリアンモーテルの一室が舞台なので、台詞も日本語、英語、韓国語が必要に応じて用いられていて、『韓国人の話す日本語』アクセント等はイメージ通りでしたし、韓国語はまったく解りませんが雰囲気はとてもよく伝わってきました。
強烈な個性を放つ人間達しかいない舞台でしたが、『幸せ』『生き方』をそれぞれが模索し精一杯生きている『人間』がカッコよかったです。
ラストの暗転直前まで目が離せない舞台でした。
ファイナル ウィーク

ファイナル ウィーク

遊々団★ヴェール

SPACE107(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★

アニメ的な演出
ストーリーに目新しさはないけれど、役者さんも一生懸命で楽しんでいる様子が伝わってきて、客席の反応もとてもよく楽しい舞台でした。

ネタバレBOX

経営状態が良くない為に取り壊しが一週間後に決定になったお化け屋敷が舞台。
お化け屋敷の従業員は皆、お化け屋敷で働きたかったわけではなく、夢破れて仕方なく、何となくお化け屋敷で働いているような人々。
それでも、取り壊しが決定してから一週間で皆それぞれの道を見付け、お化け屋敷が無くなるからクビになって去っていくのではなく、次の道を見付けて自ら去っていくと言う前向きで明るい終わり方が良かったです。

一週間を現わすのに『○○曜日』と書かれたものが提示されるのですが、舞台登場時に効果音がなり照明が光るのがとても解り易く、何だかアニメのキャッチのように感じました。
音響係の天の声、効果音やBGMでの遊びはアニメに詳しい人はとても楽しめる内容になっていたみたいです。
丸々一日を天の声だけだったり、毎回効果音が鳴ってBGMで煽ってなので、やりすぎてくどくなってしまった感じを受けました。
音ネタも豊富だし効果音の選び方も秀逸だとは思うので、もうちょっと頻度を落としてここぞという時にだけ使用すると、音に対する印象値が上がって注目を集められるのではないかと思いました。

初日だったからか、役者陣の台詞噛みがちょっと多かったように思います。
天の声が録音で完璧なので、余計に目立ってしまっていたのかもしれません。
それでも役者さんは皆さんとても楽しそうでのびのびとしていて、お客さんの雰囲気もよくて楽しい舞台でした。
ペトロヴィッチに逢いたくて

ペトロヴィッチに逢いたくて

劇団SHOW&GO FESTIVAL

アイピット目白(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★

舞台の雰囲気が好きです
シチュエーション・コメディと銘打ってあったので笑いを期待していたのですが、コメディではなかったように思いました。
しっかりとした脚本と演出で、楽しませて頂きました。

ネタバレBOX

離島以外では東京都唯一の村である檜原村を舞台に、村おこしで村を盛り上げて行きたい大人、こんな田舎は嫌だと出て行きたがる子供、観光客や田舎生活に憧れてやってきた人の人間模様を軸に物語は展開される。
題名にある『ペトロヴィッチ』は村で昔から信じられてきた神様なのだけれど、特に何かをするわけではなく、ただそこにいて人間達の行動を面白がっているだけ。
しかも『ペトロヴィッチ』という名前も実は『ダイダラボッチ』を勘違いして名乗ってしまったものらしい。

とてもしっかりしたセットで雰囲気もよく、始まる前から期待が高まりました。
民間伝承や自然信仰、言霊論等も織り交ぜていてとても興味深かったです。
登場人物がちょっと多いかなと思っていたのですが、最終的には全て繋がってきちんと纏め上げたように感じました。

『ペトロヴィッチ』役の二人が出てくるタイミングも演出も素晴らしかったです。
ダンスも面白かった。
レストランじゃないっ!!!【終了いたしました。ご来場ありがとうございました!!!】

レストランじゃないっ!!!【終了いたしました。ご来場ありがとうございました!!!】

コメディユニット磯川家

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

照準にブレがない
当日のパンフレットに書かれていた「バカバカしいのです」「気楽に見て下さい」「連続ドラマの途中の回のような作品」、この言葉通りでした。
舞台全編通しても内容にまったくブレがなく、ただ気楽に笑って観る事ができました。
面白くて笑える、しっかりしたコメディでした。
面白かったです!

ネタバレBOX

元々売上が低く経営状態が悪かったレストランの目の前に、大手レストランチェーン店が新規出店してきて、これはもういよいよ閉店するしかない。
残り一週間で売上1.2倍にしないと閉店の危機を迎えるレストランが舞台のコメディ。

100分程の芝居にしては登場人物が多目でしたが、それぞれの役付けがしっかりしているのと、芝居上に登場するタイミングが的確なので、舞台上で入り乱れてもそれぞれの立ち位置が見にくくなる事もなかったです。
暗転が入ると一日が経過するという設定なので、まるで毎週放映のドラマかアニメを見ているような気持ちになりました。
暗転前の次の日に繋げる終わり方も、事件の予感を入れたりとテレビ的な引っ張りが上手く散りばめられていた思いました。
食い違い会話のタイミングも絶妙。
様々な伏線の回収も面白く、脚本も秀逸だと思いました。

役者陣の動きにも躊躇いが無く、大きな動き方が凄く良かったです。
転ぶ時のダイビングやドロップキックの思い切りのよさには、少し驚きました。
関西の方にはあれぐらいは普通なのかもしれませんが、怪我しないか心配してしまいます。
ただ、あれぐらいの思い切りの良さが面白さに繋がっているのも事実なので、怪我しないように頑張って下さい!と無責任な事を思っています。
キャラとして一番美味しかったのは和泉さん。
派手な動きもなく、台詞もほとんどないのに衣装の着方にも特徴を持たせて、一番のキーポイントでした。
最後の挨拶もそうですが、観客が帰っているのに一人で舞台に残ったり、最後まで貫き通したキャラクターは、終わった後も気になる存在でした。

初日ではなく二日目の観劇でしたが、すでに声が出ていない役者さんが数人いらっしゃったのが少し気になりました。

舞台美術もとてもしっかりと作ってあって、開演前からワクワクできました。
開演前と終了時には劇団シンボルの影絵が投影されたり、前説や終了直後の挨拶でも観客を楽しませようとしたりと、とにかく楽しい空間を作りだしている印象を受けました。

楽しい時間をありがとうございました。
とても面白い芝居でした。
D.C.2359 - A Minute to Midnight -

D.C.2359 - A Minute to Midnight -

空想天象儀

荻窪メガバックスシアター(東京都)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

満足度★★

設定は確かにSF
チーム・ウラヌスを拝見しました。
サイボーグだったり、世界終末時計だったりと設定には様々なSF要素が詰め込まれていて、『こう言うのが好き』な事がよく解りました。
SF&ファンタジー専門劇団と銘打っている劇団ならではの内容だと思います。

ネタバレBOX

サイボーグ技術が発達し、それでもなお地球上では戦争がなくなっていない近未来が舞台。
人類を守る為に作りだされた10体のサイボーグはマザーコンピューターの「イレーネ」にちなみ、「イレーネの10戦士」と呼ばれていたが、ある作戦の遂行中の事故で仲間は4体まで減り、さらに残された内のサイボーグの1体のゼロが突然人類に反旗を翻し、人類を滅亡に追いやろうと宣戦布告をする。
ゼロ以外の残るサイボーグ戦士のナイン、シックス、フォウは、各々の事情と葛藤を抱えながらも人類を守る為にかつての仲間であるゼロに立ち向かう!
なぜゼロは人類に反旗を翻さなければならなかったのか、ナイン、シックス、フォウは人類を救えるのか!?
人類は、世界は、各国政府はこの事態に何を考えるのか・・・。

改めて筋書きを思い出してみるとやっぱりSFだし、設定は面白そうです。
詰め込まれた作品へのオマージュも好きです。
設定自体は好きなのですが、詰め込み過ぎなのと、色々な要素を絡め過ぎて台本の辻褄が合わなくなってしまっていたのが残念です。
使用されていた楽曲や、オマージュされたサブカルチャーは確かにお手軽でイメージが湧きやすいものですが、そのイメージ御自身が作り上げたものではなく、他人が苦労して想像したものであり、各作品にたいする印象は人それぞれ異なるものです。
きっと好きな作品ばかりなのでしょうが、様々な作品の設定を繋ぎ合せてしまうと、纏まりきらなくなるばかりか自己満足だけで終わってしまう危険性を孕んでいるのだと感じてしまいました。

役者陣は、滑舌がはっきりしない方が何人かいたのが気になりました。
アクションシーンをいれるのであれば、もう少しカッコイイ見せ方をして欲しかったです。
殺陣を売りにしている劇団ではないのは解っているのですが、せっかくサイボーグ対ロボットの戦闘シーンを使うのであれば、動きの特徴に気を使えば、それだけでも違う印象を与える事ができるのではないかと思いました。
台詞を噛まずに言えていた人もいなかったですし、動きも完璧とはみえませんでしたので、チームを分けてのダブルキャストにする意味は解りませんでした。
それぞれが役をモノにするという観点から考えれば、一つの役に集中した方がよかったように思います。

ゼロ役の加羅さんの声が素敵でした。
声のトーンや節回しも、ゼロのイメージに合っていたし、抑えた演技の時の声はもう少し聞いていたかったです。

独自の挑戦をしていると感じましたし、ファンタジーはともかく、小劇場でSFに挑戦する劇団を初めて知りました。
一生懸命な劇団員の方達が印象的でした。
オマージュに懐かしくなり、帰宅した後に『サイボーグ009』を読み返してしまいました。
PRESENT あ・げ・る

PRESENT あ・げ・る

ももいろぞうさん

劇場HOPE(東京都)

2010/09/11 (土) ~ 2010/09/21 (火)公演終了

満足度★★★★

ももいろのプレゼント貰いました
CRAZYチームの舞台を拝見しました。
舞台上はピンク系のポップな色合いがふんだんに使用されていて、プレゼントの箱が開いたり、大道具の仕掛けもメルヘン。
芝居の内容も説明にある通り、『可愛くてCrazyでドキドキハラハラな贈りモノ』でした。

ネタバレBOX

他人との関係が上手く築けない、内気で読書が好きな小学生の女の子リンの日常と、成長した大人のリンの日常をクロスしながらの展開。
上演開始直後からしばらくは、展開に着いて行けずに中々入り込めませんでしたが、気付いたら後半は引き込まれていました。
コメディではないけれど、とてもコミカルでポップな演出は可愛らしかったです。
踊る『銀の友達』、子羊達、人形二人組に肉食植物は衣装もメイクも雰囲気があって、見ていて楽しめました。

『銀の友達』や子羊達のダンスを踊った三人組の動きも可愛かったのですが、人形達のダンスが好きでした。
バレエ経験者の役者さんだとは思うのですが、もっと広い舞台で見てみたかったです。

オチに持って行くまでのストーリー展開は若干強引にも感じましたが、オーバーな演技と相まってそれもありかなと感じてしまいました。

ももぞう様はどこから来て、どこに行ったのだろう。
ももぞう様もリンの空想だったのかな。
Disney's MY SON PINOCCHIO Geppetto's Musical Tale

Disney's MY SON PINOCCHIO Geppetto's Musical Tale

Seiren Musical Project

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/09/03 (金) ~ 2010/09/07 (火)公演終了

満足度★★★★

やっぱり面白かった。
役者陣はとても一生懸命で、楽しそうで、観劇後はとても楽しい気持ちになりました。
観終わった帰り道に楽しい気分になれる舞台は、それだけでも価値があります。
もちろん内容もよかったです。

ネタバレBOX

ディズニーの『ピノキオ』を下敷きにして、ピノキオを生みだした親のゼペットの視点から描かれた物語。
そもそもの下敷きに『ピノキオ』があり、ディズニーのアニメも見た事があるので話の展開に劇的なものはありませんでしたが、

よく消化してあり、解り易く纏め上げられていたように思います。
最終的な着地点には、少し教訓的なあざとさが気になってしまいました。

役者陣は歌も踊りも、そうとう練習したのが伝わってくるような堂々とした立ち姿。
個人的にはストロンボリとボンラガッツォ教授が目を惹きました。
特にストロンボリは一人で長い尺を請け負って、観客を見事に引き込んでいて、思わす引き込まれる演技が印象的でした。

このSeiren Musical Projectは舞台に立つ役者だけでなく、裏で支えるスタッフがとてもしっかりしていて凄く好感が持てます。
音響、照明、衣装はもちろん、誘導スタッフもきちんと仕事をこなしていて、本当に学生なのかと感心してしまいます。
この中から今後も舞台に関わる方が何人いるのかは解りませんが、この舞台を作り上げた人達はとても素晴らしいと思いました。
メリッサのゆりかご ジルの監獄

メリッサのゆりかご ジルの監獄

メガバックスコレクション

あうるすぽっと(東京都)

2010/08/19 (木) ~ 2010/08/23 (月)公演終了

満足度★★★

子供の為の舞台
広い舞台に作りこまれたセット、話の筋立ても解りやすい内容でキャストにも子供が多く、まさに子供の為の舞台だったのではないかと思いました。
一生懸命舞台の上で演じている子供達は微笑ましく、舞台に立つ事が楽しそうでした。

ネタバレBOX

開始直後の子供達の台詞が聞き取れなくて、他にもピンマイクを付けている子供と付けていない子供の差や、マイクの切り返しの粗が目立ってしまっていたのが残念でした。
曲と声のバランスも悪く、音響的はまったく入り込めませんでした。
音響スタッフが素晴らしいと、それだけで役者の粗も隠せてしまえますし舞台の印象もまったく変わってしまいます。
今回のPAは舞台を盛り上げるというよりは、足を引っ張っていた印象でした。

ジル役の雪乃さずきさんの歌が、他の役者陣より目立って上手かったです。
他の役もキャスティングがぴったりで、ハマり役だと思いました。
前説にも歌を取り入れたり、途中の15分休憩中にも役者さんがずっと出ていて色々と観客と話をしたりと、楽しませようという気持ちが伝わってきました。

物語の筋も家族の愛情、海賊達の絆、子供達の友情や信頼関係を上手く取りこんでいて、複雑なストーリーや劇的展開はないけれど、最後に希望を持たせるいい話だと思います。
演じた子供達も、観に来た子供達も、何かしら得るものがあった舞台だったんじゃないかなと思いました。
『マグダラなマリア』

『マグダラなマリア』

ネルケプランニング

サンシャイン劇場(東京都)

2010/08/12 (木) ~ 2010/08/22 (日)公演終了

満足度★★★★

独特な世界
男性版宝塚、と言うとちょっと違うのかもしれないけれど、エンターテイメント性が濃縮された作品でした。
それぞれ歌も踊りも上手いし、幕間にも観客に対して過剰な程のサービスを行っていました。
大人なお嬢様限定のステージと言うだけあって、観客の男女比では圧倒的に女性が多い芝居でした。

ネタバレBOX

舞台は大戦時のヨーロッパでの高級娼館
ドイツのSS将校、ベルギー帰りのスパイ、スペイン人娼婦、日本人、他にもひと癖もふた癖もありそうな国籍も様々なキャラクターが多く、とても賑やかな印象。
役者は全て男性で、少女娼婦や女性将校も演じていたが、とても可愛らしくて驚きました。
ただのドタバタした芝居なのかと言ったら、歌も踊りも素晴らしかったです。
特にマリア・マグダレーナの歌と、エスメラルダのダンスは魅力的でした。

政治的駆け引きや、プロパガンダ制作に対する考え、虐待や少女買春等の問題も多く提示されるけれど、物語の本筋は最終的には全て丸く収まるという、コメディ仕立て。
あんまり難しい事は考えずに、煌びやかな世界観を楽しむ為の舞台だと思います。

下ネタ、オタクネタが多く、意味が解らない人にはまったく面白くないんだろうなと思ってしまう箇所が少しありました。
体を張った突っ込みや、言葉の暴力的なものも多少あるので、抵抗ある人は楽しめなさそうだと感じました
トップ・ボーイズ

トップ・ボーイズ

劇団フライングステージ

OFF OFFシアター(東京都)

2010/08/05 (木) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★

それぞれの生き方
過去にゲイとして生きた人達と、現代をゲイとして生きている人達の2部構成のお芝居。
カミングアウトするかしないか、生き方も考え方も色々あるだろうけど、ゲイではないノンケだって、人それぞれ考え方も生き方も違って、それが当たり前なんだよと思ってしまいました。
それでも、ゲイという少数派に属している場合、まだまだこの世界は生き辛いのだなと感じました。

ネタバレBOX

前半部分では過去に生きた有名なゲイの人々が登場し、それぞれの生前の功績や考え方を披露しあいながら、持ち寄り形式の結婚披露パーティを楽しむというもの。
それぞれ活動していた時代の事なる故人達の掛け合いは、観ていて楽しかったです。
三島由紀夫のデフォルメのされかたが面白く、三島由紀夫の潔癖さやかたくなな一面がよかったです。
フレディ・マーキュリーのパフォーマンスシーンはとても好みでした。
それぞれのキャラクターの特徴をうまく演じていて、各個人の主張ともリンクしている演出が素晴らしかったです。

後半部分は現代が舞台で、結婚式まであげたゲイカップルが主人公。
この主人公は前半部分の結婚パーティの主役だったのだが、前半部分終了時にはこの物語の結末が何となく解ってしまっていたのが残念です。

過去にゲイは迫害されていて、現代は多少は寛容になってきたとはいえ、それでもカミングアウトしないまま隠れて生活をしている人が大部分なのだと思います。
過去も現在もゲイにとって住みやすい環境ではなかったのに、過去に生きたゲイ達に「自分たちは幸せな人生だった」と言い切らせたのは凄いと思いました。
一生懸命生きて、精一杯人を愛して、前進を止めなかった生き方をしたのだろう、そういう人達にだからこそ言える言葉だと感じました。

ゲイが受け入れられる世の中だったら、主人公の二人の結末も変わっていたのだろうか。
考え方が違いすぎる二人だから、やっぱり悲しい結末になってしまったのだろうか。
誰もが自分らしく、偽ることなく生きられる世の中がいつか来る事を願いました。

観劇後、チラシデザインに虹が使われた意味を考えました。
観る前とは虹に対する印象が随分と変わりました。
新明治仁侠伝

新明治仁侠伝

劇団め組

吉祥寺シアター(東京都)

2010/08/04 (水) ~ 2010/08/08 (日)公演終了

満足度★★★★

生き方を問う内容
大政奉還、明治維新、国と時代が大きく揺れ動き、その中で生きた人々の思いをうまく纏め上げていたと思いました。
土佐弁や薩摩弁、東京弁の方言の言い回しは素晴らしかった。
独特のイントネーションの言葉をとてもよく消化していて、観ていて違和感を感じませんでした。
2時間ちょっとの壮大な物語でしたが、とても楽しませて頂きました

ネタバレBOX

西郷隆盛が西南戦争勃発に追い込まれ、落命するその時まで傍に仕えた晋之介の生き方と、その周りの人々を軸に物語は展開して行く。
あまり日本史に詳しくない人でも知っているであろう歴史上の人々も数多く登場するのだが、大胆にデフォルメされていてそこも面白さの一つでした。
それでも、伊藤博文はちょっと情けなさすぎるなとか、岩倉具視は確かに京公家だけどそこまでステレオタイプの話し方にしなくても、というちょっとしたやり過ぎ感はありましたが、それさえも解りやすい解釈なのかもしれないと思えてしまいました。

物語の主軸にも絡む大久保利通の隠し子の義明と、徳川慶喜の落胤である狂四郎の対比も見どころでした。
義明は子供染みて我儘で、大人になりきれない思いが情けなく描かれていて、その中に大人の打算が見え隠れする、哀れとは思ってに同情はできないタイプなのに対し、狂四郎はと言えば最終的には自分を捨てた父親も時代も、自分を利用しようとした人間も全てを許し、自ら死に場所を探そうとするちょっと人間らしさが感じられない役どころに感じました。

役者陣はどなたも大変素晴らしく、引き込まれて観てしまいましたが坂本龍馬と岩倉具視の2役を演じた藤原習作さん、晋之介役の秋本一樹さんは特に引き込まれました。
他の役がとても人間臭く、一生懸命時代を生き抜こう、自分の生き方を模索しようとあがいていた中で、一人飄々としていた狂四郎は、やはりあまりにも印象が薄かったです。

殺陣は期待値が大きかった分、それ程重要には感じませんでした。
舞台映えする殺陣ではなかったように思ってしまったので、必要最低限だけでよかったのではと思いました。
故人となった人々が話すシーンでのエフェクトの掛け方や、照明演出は素晴らしく雰囲気の作り方で引き込まれました。
お肉体関係

お肉体関係

ぬいぐるみハンター

王子小劇場(東京都)

2010/07/28 (水) ~ 2010/08/01 (日)公演終了

満足度★★★

ちょっと中途半端
チラシ通りで、セットも登場人物も衣装も内容も、ポップでキッチュでキュートな印象。
とにかく音が大きい、声が大きい。
舞台上は大勢の人。
がなり過ぎや滑舌の悪さで台詞が聞こえなくても気にしない、舞台のノリについていけるかどうかが、この芝居が楽しめるかどうかの境界線なのだと思う。

ネタバレBOX

一応のストーリーは、感染者がゾンビ化してしまう新種の性病が渋谷を中心に広まり、その騒動に巻き込まれる若いカップル達の思い、が中心にくるのだろうか。
正直、観終わった後に何か残るものがあるわけではなく、ストーリー自体もそこまで意味があるとも思えませんでした。
カップル達も「私のこころの中のうさぎちゃん」や「チンパジーの素晴らしさ」等の色々な事を言っていましたが、そのにあるかもしれない象徴的な何かを読み解くのではなくて、何言ってるか解らないもどかしさそのものを感じればいいのかな、と思いました。

勢いとノリだけで意味深長な台詞を叫んでいるだけかと思えば、言いたい事があるらしくちょっぴりシンミリとした台詞を織り交ぜてくる。
言いたい事がそこにあるのならばそのまま聞かせればいいのに、とつぜん照れたようにまた大騒ぎを繰り返す。
そこに意味を求めてはいけないのかもしれないが、照れくさい事を勝手に言い放ち、笑いにごまかし無かった事にしてしまうと言うのは、とてつもない置いてきぼり感とあざとさを感じてしまいました。
面白そうで大胆な事をやっているように見える割には、男の子は下着一枚になるのに女の子は薄着の子もいれば、きっちり着込んだままの子がいたり、大騒ぎの動きも見た目よりも統一されている印象を受けました。

大騒ぎの舞台で、役者が色々な事を叫んだり表現したりしていましたが、結局は『そんだけーーー!!!』の台詞に集約されているのかなと思いました。
幸福な職場

幸福な職場

劇団 東京フェスティバル

小劇場 楽園(東京都)

2010/07/21 (水) ~ 2010/07/25 (日)公演終了

満足度★★★★

また観たい
「こころに優しいお芝居、いかがですか?」の言葉にふさわしい内容でした。
大不況に見舞われている現代日本。
健常者でも、働く事に意義を見いだせない若者が数多くいる日本。
働くとは、社会との関わりとは、他人との関係を築く事の意味とは、様々な事を考えさせられました。
もう一度観たい作品です

ネタバレBOX

テレビのドキュメンタリー番組でも取り上げられた事がある、日本理化学工業の実話を下敷きにされた内容。
1959年の設定なので私が実際に知る事はできなかった時代ですが、所謂「古き良き日本」の高度成長化時代が時代背景。
今でこそ、障害者雇用の窓口は多少は広がりましたが、まだまだ知的障害者の雇用は少ないのが現状です。
50年以上も昔の日本は知的障害者を雇用する企業はなく、彼等は一生働く経験をすることもできず、自分の家か施設に閉じ込められて一生を過ごすのが当たり前だったようです。
知的障害に対する偏見が今よりも強く、今では放送禁止用語になっている別称を誰もが使用していた時代に、知的障害者雇用に踏み出した日本理化学工業の専務の決断と、辛抱強く頼み込んだ養護学校教諭のお二人の演技に引き込まれました。
知的障害者の聡美役をやった古地香織さんの、演技も素晴らしかったです。
どうしても大げさに演じる方が多く、時にはそのあざとさが見ていて不快感すら覚えるような演技をする役者さんもいるなかで、知的障害者の感情の中にある「こだわり」「混乱」「困惑」を見事に表現していたと思いました。

一回だけ原田が「知的障害者となんか働けるか。介助してたらその分、自分たちの仕事が増える」と反発しますが、同僚の久我の身の上話と説得に合いあっさりと一緒に働く事を認めてしまう。
放送禁止用語を吐き捨てるように使用していた人が、あまりにもあっさりと引きさがった事に少し拍子抜けしました。
偏見をもつ人はどの時代にも、どこにでもいます。
偏見を持って人を判断する人の意見を変えさせるのは、とても難しい事です。
そう言う意味では、このお芝居に出てくる人はみんな「いい人」な印象しか受けませんでした。

全体としては90分の中でとてもよく纏まっていて、観終わった後は前向きな気持ちになりました。
このお芝居を見て思い出したのが、知的障害者の作業所にあった言葉でした。

「よろこび」
私たちの職場には
いろいろな喜びがあふれている

ものを創る喜び
中間達とふれあう喜び
社会の中の一人となる喜び

どんな形にせよ働くという事を
社会の中で私が生きている証にしたい
そんな気持ちで今日もはたらいています


現在の日本は障害者自立支援法案の元で、働きに行っているのにお金を払わないければいけない理不尽さが発生しています。
このお芝居を観る事ができて、様々な事を思い出し、考える事ができました。
何かを感じて考えるきっかけになる、そんな素晴らしいお芝居だと思いました。
多くの人に観てもらいたいです。
再演があれば、誘って観に行きたい人がいる、「こころに響く」そんなお芝居でした。
イカロスのかけら

イカロスのかけら

NICK-PRODUCE

シアター711(東京都)

2010/07/13 (火) ~ 2010/07/19 (月)公演終了

満足度★★★★

雰囲気はとてもよかったです。
チェロとピアノの音の絡み合いと照明の雰囲気がとてもよく、大人になってよかったなと思わせてくれました。
映像作家志望である役者が手にしているカメラで撮った映像を、リアルタイムに壁に映し出す演出も面白かったです。
色々と実験的な内容なのかとも思いましたが、最後には全ての伏線をキレイに回収し、とてもいい70分間を体験させて頂きました。

ネタバレBOX

兄と弟の二人兄弟の母親はある日突然失踪をし、数年後に骨壷が送られてきた為にもう死んでいると思っていたら、実は南フランスで生きていてしかも大成功して資産30億、でも末期の膵臓癌の為に入院して死にかけていて、死んでからの遺産相続だと税金が掛かるから自分が生きているうちに生前贈与をしたい、と代理人を通じて関係者が集められたところから芝居は始まる。
30億の資産だけでも驚くのに、いきなり種違いの兄弟が登場し、実は母親は再婚で駆け落ちだったと知らされたり、兄嫁の実の父親は女装趣味の変身スナックの店長であり、しかも兄弟の両親そろってその店の常連であったりと、いきなり付き付けられる情報量の多さに、全ての伏線を回収できるのかと心配になってしまいました。
確かにどのようにでも膨らませられる内容ではあると思うが、それをあえて『あっさり』としたところが良かったように感じました。
30億の資産を巡ってドロドロとした人間模様を描いたり、逆にキャラクターの心情を全面に出してコメディにしたら、音と映像と芝居の丁度良い関係性が崩れてしまっていたように思います。
全ての原因を作りだした母親は一切登場せず、父親も登場しないまま、30億の資産もいきなり増えた親族も、ほとんど受け流して物語は進められて行く。
最後の最後で南フランスの母親から『資産は次の事業に使うから遺産相続はやっぱり取りやめ、ごめんね』の電話で騒動は終わりになるのだが、遠く離れた南フランスにいて声も姿も登場しない『母親』に、振り回されるだけ振り回される人々の喜(悲)劇、この振り回され感がこのお芝居の中核なのかなと思いました。
『まあ、あの人なら仕方がないか』で済まされてしまうあっさり感。
軽い雰囲気の芝居を楽しませてもらいました。

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