kikiの観てきた!クチコミ一覧

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子午線の祀り

子午線の祀り

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2017/07/01 (土) ~ 2017/07/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

開演時間。半円形のステージを取り囲む客席の間を通って、黒衣の人々がゆっくりと舞台に向かっていく。舞台に灯る小さな火を目指すように。

プロローグで語られる星の運行。『平家物語』に題材をとり、天の視点で観る叙事詩劇と言われる作品である。

一の谷の合戦で義経におわれた知盛は民部の船に助けられる。

船まで知盛を乗せてきた愛馬が、陸へ向かって泳いで行く。敵軍に渡すよりいっそ射殺してしまおうとする民部を知盛が止める。以前の自分なら、止めるどころか自ら弓を手にしていたはず、なのになぜ、と自問する知盛の胸の内。

源平合戦のダイナミックな展開は『平家物語』から引いた語りによるけれど、それについての心理描写はきわめて現代的だ。

登場人物の大半は『平家物語』に登場する人物だが、影身という舞姫はそうではない。主人公である知盛に従い、生と死を超えて彼を見守る。また、知盛以上に敵方である源義経についての場面も多く、それぞれの側からこの戦いの攻防が描かれていく。

この舞台の特徴としてよく言われるとおり、『平家物語』を下敷きにした「語り」や「群読」による日本語の響きの美しさを堪能する。同時に、語られる言葉には意味だけでなく身体性が加わっていくのも興味深い。

そうやって語る人びとの中には伝統芸能の担い手もいれば新劇系や小劇場出身の俳優さんもいて、それぞれの持ち味を生かしつつ、この世界観を支えていく。

シンプルでありながら場面によって姿を変える美術も印象的であった。

そうして描かれるのは、「運命」というより「天の運行」あるいは「歴史の流れ」のようなどうしようもないものに流されていく人びとの悲劇。それは単純な喜怒哀楽を超えて、名付けようのない透明な感情を引き起こしていく。

この上演をずっと楽しみにしていた。そして、その甲斐があったと思える舞台であった。

ブリッジ

ブリッジ

サンプル

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2017/06/14 (水) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

サンプルの10周年記念公演にしてサンプルの解散公演。

奇妙な新興宗教の集会を模しつつ、教祖と使徒たちの生い立ちと遍歴と崩壊(と未来!?)が綴られていく。

半円形に並べられた観客席。そこに座る我々は、ある新興宗教のイベントへの参加者として設定されている。マイクを持って話す男が、客席に声をかけたりする。

ある男の腸内細菌が、高度な意識を持っていて彼に呼びかけてくる。人類が生き延びるためには、裏返らなくてはならない、と。

さまざまな歪みを抱えた男女が、彼によって救われ、信徒として彼と日々を共にする。その人々が順に自らの来し方を語っていく。

彼等はすべてを分け合い共有する。腸内細菌も性的な営みも。

それから彼らの旅について語られる。遍歴の間に起こるマジックリアリズム風の出来事は、いわゆる劇中劇として信徒たちによって、演じられたものだ。

それが終わった時、ステージに上がり込んできた1人の男は、反社会的な事件を起こして世間の非難を浴びた人物だった。彼の起こした事件によって、教会全体も社会の非難を浴び、団体存続の危機に陥ったという。なるほど、それゆえの遍歴なのだ。

奇妙な味の文学的な物語を、荒唐無稽なディテールと個性的なキャストが支えた。そして、そういう枠組みを逸脱するエンディング。

観終わった後、あのポスターが何を示していたのかようやく気がついた。面白かった……というより、じんわりと侵食されるような奇妙な感慨を抱えて劇場をあとにした。

フェイクスピア

フェイクスピア

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

早くから予約して楽しみにしていたが、その期待をしっかり上回った。仕掛けの詰まった戯曲。二階席にも伝わる人々の熱量と技量。終盤、数々の伏線が繋がる快感にも増して、その人が伝えようとした言葉に胸を打たれた。
橋爪功さん、高橋一生さん、白石加代子さんがほぼ出ずっぱりって、もうそれだけで自分好み。加えて野田さんご自身が走り回りしゃべり倒す。俳優陣のご活躍だけでも観た甲斐があった。

15 Minutes Made Volume13

15 Minutes Made Volume13

Mrs.fictions

王子小劇場(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/25 (火)公演終了

満足度★★★★★

祭りのあと
7月のVolume12から続く2ヶ月連続のショーケースイベント。

15分の短編を6本、よくもこんなにいろんな舞台があるものだと思うような個性豊かな創り手を集めた見応えのあるラインナップと、今回トリを務めて2ヶ月続きのイベントを締めくくったMrs.fictionsの作品の完成度が印象に残った。

廃墟

廃墟

劇団東演

文化アトリエ(東京都)

2015/05/29 (金) ~ 2015/06/01 (月)公演終了

満足度★★★★★

骨太な芝居
観念的な長台詞の応酬が続くのに、なんでこんなに面白いんだろう。それが最初の印象だった。

キャスト陣の熱演に圧倒されると同時に、骨太な脚本を生き生きとよみがえらせる演出が戦後の混乱に生きる人々の姿を明確に立ち上げていたように感じられた。

15 Minutes Made Volume12

15 Minutes Made Volume12

Mrs.fictions

王子小劇場(東京都)

2015/07/08 (水) ~ 2015/07/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

濃密で贅沢な約2時間
15分なんて、ぼんやりしてたらあっという間に過ぎてしまうだろう。そんな短い時間の中で上演された6つの作品は、いずれも、それぞれの世界、それぞれの物語をきっちり立ち上げて見せてくれた。そういう濃密で贅沢な約2時間。

トップを飾った『ミセスフイクションズの祭りの準備』は、これまで拝見してきたMrs.fictionsとは違う手触りもありつつ、でもいかにも彼ららしい、と思える作品だった。

残花―1945 さくら隊 園井恵子―

残花―1945 さくら隊 園井恵子―

特定非営利活動法人 いわてアートサポートセンター

座・高円寺1(東京都)

2016/06/01 (水) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/06/03 (金)

重い題材を、丁重かつ誠実に物語へと落とし込む姿に胸を打たれた。

観終わって、長い息を吐く。深呼吸というより、まるでずっと息を止めていたかのような心持だった。そういうある種の緊張感を背負いながら観る舞台だったように思う。

げんない

げんない

わらび座

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/06/24 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/06/24 (金)

江戸中期の見世物小屋を舞台に、平賀源内という天才と彼を取り巻く人々が、封建時代の日本で「自由」を求める姿を描くミュージカル。

キャッチーなメロディ、ユニークなダンス、アクロバット、浄瑠璃や殺陣、さまざまな工夫と見どころを盛り込んだ贅沢な舞台。

中でも主人公の源内が語る言葉が、時代を見通し、未来を夢見、進もうとする意志を伝えて、この舞台を希望の物語として観る者に印象付けた。

再生ミセスフィクションズ

再生ミセスフィクションズ

Mrs.fictions

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

珠玉!
『伯爵のおるすばん』以来1年数ヶ月ぶりのMrs.fictions単独公演は「再演とかしない村」出身の彼らが禁を犯して挑んだ(!?)再演作品集でした。

それぞれ趣向を凝らした(作・演出・キャストすべて初演通りだったり、外部演出家を起用したり、別メンバーの戯曲のリメイクだったり)ラインナップに加えて、インパクトの強い怪人ビジュアルのチラシや怪人カードみたいなチケット、予約者全員に公演DVDプレゼントなど、いろいろと面白い試みもあり、企画力の確かさを感じました。

かねてから評価の高い『東京へつれてって』や『お父さんは若年性健忘症』の安定感はもちろん、登場人物のチャーミングさが印象的な『ねじ式』、奇妙な味わいでじわじわとしみてくる『まだ僕を寝かさない』など、まさに珠玉の作品集だったと思います。

恐怖時代

恐怖時代

花組芝居

ザ・スズナリ(東京都)

2016/07/06 (水) ~ 2016/07/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/07/08 (金)

凄惨な悲劇を、様式美と遊び心で夏の夜にふさわしい美しい舞台に仕立てた。

浴衣姿でメイクもなし、舞台も蚊帳をひとつ吊っただけのほぼ素舞台。そういうシンプルな道具立だからこそ、キャスト陣が観せる大人の余裕と艶やかさが際立ったのだろう。

銀のロバ

銀のロバ

オペラシアターこんにゃく座

大平文化会館(栃木県)

2015/10/10 (土) ~ 2015/10/10 (土)公演終了

満足度★★★★★

物語は旅をする
劇中で歌われていた「物語は旅をする」というフレーズが、観終わって帰る道すがら何度も脳裏に浮かんだ。うわぁ、これはたぶん観ているとき以上に、あとからじんわりくるタイプの作品だ、とそのときになって気づいた。

森の中で幼い姉妹が出会ったのは、眼の見えなくなった脱走兵だった。彼の語るロバの物語は、ひとの優しさと温かさを思い出させる。それを聴くキラキラした少女たちのまっすぐなまなざしがいつまでも胸に残った。

観終わったあと、彼らの想いに共鳴することで自分まで少しだけ浄化されたような気がした。

ワンピース

ワンピース

松竹

新橋演舞場(東京都)

2015/10/07 (水) ~ 2015/11/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

期待を上回る楽しさ
アニメは少し見たことがあるが、熱心な原作ファンとはいえない。
歌舞伎だってそれほどちょくちょく観る訳じゃない。へぇ、『ONE PIECE』を歌舞伎でやるんだ、と思ったときはだからまあほとんど他人事だった。

観に行きたい!と思ったのは、脚本と演出に横内謙介氏が参加すると知ったからだ。横内さんが料理するんなら、その組み合わせは面白いものになるに違いない。異質なものをきちんと面白く化学変化させてくれる、と思えるだけの信頼感がある。

その期待を裏切らない、充実したエンターテイメントであり、同時にいい舞台を観た、と感じられた。

ネタバレBOX

二幕の滝のように流れ落ちてくる大量の水を浴びながらの立ち回りでは、キャスト陣が楽しそうに(?)客席に届くくらいに水を跳ね飛ばしてくる。(前方の席には、あらかじめビニールシートが配られていた)

水だけでなく、炎や紙吹雪、宙乗りや早変わり、映像やフライングなどさまざまな仕掛け。殺陣・踊り・ダンス・アクロバットなど見応えのある芸。見得や六方、ツケなども印象的に使われており、
そういう歌舞伎らしさと、歌舞伎らしくなさとが同居する舞台となっていた。

波に乗って頭上を横切るルフィに思いきり手を振り、
通路で踊る人々とハイタッチする。その空間にいるたくさんの人々が、心から楽しいと感じていたはずだ。

しかし、そういう芸や仕掛けを見せるだけでなく、
芝居としての、いや、物語としての面白さをもはずさない。

血のつながらない兄を助けようとする主人公の前向きな一途さ。
同じ目的を持つ者やそれを手助けする者。

人が何を大切に思うのか。何のために生きるのか。
そういうシンプルな問いに対する答え。

生身の人間が目の前で息づいている、そういう実感。

ストーリーや登場人物の魅力。印象的な台詞。

これが歌舞伎かどうか、あるいはワンピースらしいかどうか、そういうこと以上に、ああ、これは演劇なのだと感じられたことが個人的には印象的だった。
penalty killing【18日14時追加公演決定!!】

penalty killing【18日14時追加公演決定!!】

風琴工房

ザ・スズナリ(東京都)

2015/02/12 (木) ~ 2015/02/18 (水)公演終了

満足度★★★★★

劇場の中のアイスアリーナ
ザ・スズナリにアイスアリーナを再現した風琴工房の『penalty killing』は、日光市に実在するアイスホッケーチームをモデルに、男たちの熱い戦いを描いた舞台だった。

チームの中心選手の引退試合を軸に、シーズン前からその試合にかけてのさまざまな出来事を通して選手たちのそれぞれの個性を浮かび上がらせる。

それぞれの想いが、リンクの上でぶつかり合う試合の場面は圧巻で、敵チームも含めた選手全員が、惚れてしまいそうなくらいカッコよかった。

毎日のように通っている観客もいて、その気持ちが痛いほどわかる。
できれば自分ももう一度観に行きたかった。実際のスポーツのように、今日と明日で試合の結果が違ったりはしないけれど、リンクの上で生きる選手の息遣いは間違いなく毎回新鮮に感じられたはずだ。

Father Christmas, Don’t Cry ~2008 下北Ver.~

Father Christmas, Don’t Cry ~2008 下北Ver.~

しゅうくりー夢

駅前劇場(東京都)

2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了

満足度★★★★★

8月のクリスマス?
悲しいからじゃなく、愛しいから泣けてくることもあるんだ……と、この舞台を観て知りました。
笑いあり、涙ありの2時間15分。ちょっと照れくさい言葉でも言ってみたいような、人恋しい気持ちになりました。

ナイゲン(全国版)

ナイゲン(全国版)

Aga-risk Entertainment

新宿FACE(東京都)

2015/11/13 (金) ~ 2015/11/14 (土)公演終了

満足度★★★★★

よく練られた脚本
いやぁ~、お・も・し・ろ・か・っ・た!面白かったよ~!!

劇団の代表作とも言うべき作品で、すでに何度か再演を重ねてきている。それゆえ、ということもあるだろう、よく練られた脚本だ。

伏線がビシバシ回収されていく爽快感に観ていて思わず声を上げそうになる。提示された条件や人物像と展開が密接に結びつき、笑いと緊張感の双方を無理なく生み出していく。

なるほど、評判のいいのもうなずける。観ることができよかっと。

【ご来場ありがとうございました】雑種 花月夜

【ご来場ありがとうございました】雑種 花月夜

あやめ十八番

王子小劇場(東京都)

2016/08/02 (火) ~ 2016/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/08/03 (水)

神社の参道に連なるお団子屋さんを舞台にした、やわらかな土地の訛りが美しく響く物語。三人姉妹のそれぞれの個性やお母さんのチャーミングさ。蜜に想いを寄せる梢の、電話での母親との温かいやり取り。蜜の幼馴染である鵜澤の言葉にしきれない誠実さ。兄の死に際したときの久保木の表情。ミュー研メンバーとの懐かしいやり取り。劇中劇での、昔の洋画の吹き替えめいて不自然なくらい歯切れのいい台詞。

登場人物の一人ひとり、劇中劇の場面のあれこれ。語り始めたらキリがない。

しかも今回はミュージカルということで、上手な方の歌はもちろん、場面やキャラクターの雰囲気に合わせた素朴な歌声も、さまざまな場面で演奏されるたくさんの楽器も、雨戸の開け立てやカエルの声などの効果音を生でつけていく様子も、それぞれに物語を彩っていた。

パンフレットや台本にも歌詞が記されていて、読んでいると、場面とともに自然にメロディが浮かんでくるのだ。

たくさんの歌と楽器に彩られた物語は、土地の訛りや華やかな稚児行列や剣舞、お囃子の響きなどに支えられて、ひとつの歴史を持った架空の町を浮かび上がらせていく。

訛りも桜の咲く季節も違う土地から来た人にも、他所の土地に行ってしまった人たちにも、そして小堀屋の人々にも季節は巡り、また新しい物語を連れてくるのだろうか。

あの町で、また彼女たちに出逢える日が待ち遠しい。

この町に手紙は来ない

この町に手紙は来ない

monophonic orchestra

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2016/09/02 (金) ~ 2016/09/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

一つひとつの物語は饒舌ではない。どちらかといえば素っ気ないほどシンプルに感じられるのに、それらが重なるうちに、それまでの会話や人物像に込められた多くの情報や想いがじわじわと見えてくる。

創り手が、観客を信頼しているのだ、と思った。

気づいてみると、冒頭の物語が最後の物語につながっていく。少人数のキャストで描く200年以上の年月。ラストまで観て思う。これは、ある種の贖罪の物語なのだ、と。

人々がそれぞれの罪を背負いながら生き続けていく姿を柔らかく描く。罪の象徴とも言えるある種の欠落さえ、責めるのではなく、罪も含めて生きることを肯定しているように感じられた。

ずっと昔読んだ懐かしい小説のような、セピア色に染まる遠い思い出のような、そういう舞台だった。

燦々

燦々

てがみ座

座・高円寺1(東京都)

2016/11/03 (木) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/11/05 (土)

江戸の絵師の話である……というか、葛飾北斎の娘 お栄を軸に描く、父と娘、師匠と弟子、妻と夫、女と男、そして人間の話であった。シンプルな舞台の上で、竹竿と白く透ける不織布を使って江戸の人々の暮らしを生き生きと描き出していく。町に生きる人間の息遣いが聞こえる。

長田育恵さんの脚本の確かさはもちろん、それを立体的に立ち上げていく扇田拓也さんの演出がまたとても好みだった。いま私が観たかったのは、こういう芝居かもしれない……観終わると同時にそんなことを思った。

夢の劇 -ドリーム・プレイ-

夢の劇 -ドリーム・プレイ-

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2016/04/12 (火) ~ 2016/04/30 (土)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/04/29 (金)

美しいものを観た。久しぶりに、そんなふうにシンプルに感じられる舞台と出逢った。

遠い昔どこかで観た絵画のような物語。その非現実感を醸し出しているのは、逆説のようだけれど生身のダンサーたちだったかもしれない。ありえないくらいしなやかな身体が物語を牽引していく。

キャストもそれぞれ味わいのある演技で物語によく似合っていた。

詩的な言葉に満ちたどこか懐かしい物語。それを彩るしなやかな舞踏と生演奏。描きだされた世界に浸って、しばし日常を忘れた。

三英花 煙夕空

三英花 煙夕空

あやめ十八番

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2017/10/07 (土) ~ 2017/10/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

大阪での公演は、浄土宗應典院というお寺であった。本堂はホール仕様で、「シアトリカル應典院」と名付けられ、演劇や音楽など様々なジャンルの催しが開催されているとのこと。

会場が変わり、音の響きや照明が変わり、キャストが変わって、東京公演の濃密な仄暗さとはまた違う、エッジの効いた明暗を感じさせる物語となっていた。

硬質な印象を与える音と光。碁盤を模した床の上を人々がうごめく。

大阪公演では島田さんに変わってあやめ十八番主宰の堀越さんが尼子鬼平を演じた。なるほど、演じる人が変わるとこれほど印象が変わるのか、と思った。

古物商の屋敷の中にあって、どこか異質だった尼子鬼平が、ここでは古物たちと同じ匂いを感じさせる。

本堂をイベントホールとして使用するとき、通常はお姿を見えないようにされているご本尊を、この公演では正面に据えての公演であった。碁盤状の床の上で、傀儡であったのは刑事ばかりではあるまい。差し手は誰なのか、因果応報という言葉が刻んだように脳裏に残る。

物語の輪郭が鮮やかに浮かび上がって、なるほど、なるほど、と思う。

ご本尊の見守る中で、妖怪めいた器物たちや人間たちの織りなす運命と皮肉の物語。

東京と大阪、両方でこの作品を観られたのは稀有な経験だったと思う。

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