All My Sons
serial number(風琴工房改め)
シアタートラム(東京都)
2020/10/01 (木) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/03 (土) 13:00
家族・罪・欺瞞・信頼・愛情・隣人……さまざまな要素が重なり絡まりつつ立ち上がっていく物語に息を飲む約2時間半。ずっしりと見応えがあった。キャストも皆さん素敵で、特に神野三鈴さんをはじめとする女優陣の演技に釘付けになった。
審判[加藤義宗 一人芝居]
義庵
シアター風姿花伝(東京都)
2020/09/09 (水) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/09/13 (日) 14:00
劇中で自ら何度も言ったとおり、ヴァホフは平静であった。何度も揺れ動きながら、平静に理性的に言葉を紡ぎ、その上で自分たちの罪について人々に問う。閉じ込められていた間のことを語る時より助けられてからのことを語る様子に胸が痛む。そしてこれは罪ではなく愛の物語なのだと、改めて感じられた。
ときおり、加藤健一氏の語り口に似ている、と思ったけど、それはたぶん親子だからではなく演出家だから、だった気がする。演出家が俳優の場合にはままあることだ。(残念ながら加藤健一氏の『審判』は拝見していない。他の作品で拝見した印象である。双方をご覧になった方の感想を伺ってみたい気がする)
風吹く街の短篇集 第二章
グッドディスタンス
「劇」小劇場(東京都)
2020/08/26 (水) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/08/29 (土) 12:30
『二度ところな!』を拝見。
ある家族の重ねてきた年月を、18年ぶりに会う兄と弟のやり取りで綴っていくオトナの会話劇。クスッと笑ったりじんわりしたり、気がつけばあっという間の約50分。脚本も演出も確かな手腕で、2人のキャストの魅力を引き出していた。
BLACK OUT
東京夜光
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2020/08/21 (金) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/08/28 (金) 19:30
ネット上の感想に惹かれて観に行った。
商業演劇の演出助手をしつつ個人ユニットの主宰もしている主人公の葛藤とコロナ禍に翻弄された公演に携わる人々のを描く私小説的(?)演劇。ステージの上に新しい物語を紡ぐ人々の奮闘と誠実が胸に残った。
天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】
東宝
日生劇場(東京都)
2020/02/08 (土) ~ 2020/02/29 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/02/15 (土) 13:30
戯曲の面白さは重々承知していたけれど、大劇場を満たす祝祭感に圧倒された。鮮やかな色彩と音楽、そして何よりたくさんの言葉が人間の業や愚かさとともに生きるエネルギーを描き出した。
ののじにさすってごらん
やしゃご
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★
近年個人的に赤丸急上昇の見逃せないユニット。
作・演出の伊藤氏の1人ユニットだけど常連の俳優陣もめちゃ好みで、ここ数年楽しみにしている。
今回も、なんていうか痛いくらい切実な日常を描いて胸にしみる。
細やかな生活感が今のリアルを映し出していた。
音楽劇 獅子吼
オールスタッフ
上野ストアハウス(東京都)
2020/10/21 (水) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
戦時下の動物園。老いた獅子と元飼育係の若者。
戦争という理不尽の中で、動物も軍人もそれぞれの矜持と愛情を試される。
浅田次郎の短編小説を音楽劇にした脚本と演出の手腕、少数先鋭のキャスト陣も見事。
特に、生演奏のお二人とコロスのお三方の確かな技術と表現力が物語に深みを加えた。
糸井版 摂州合邦辻
木ノ下歌舞伎
あうるすぽっと(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/10/26 (月)公演終了
満足度★★★★★
昨年3月に拝見し、また観たいと思っていた作品の再演。
壮絶な物語に組み込まれたゆるやかなメロディと動きによる独特の世界観に引き込まれる。
玉手御前役の内田さんや合邦道心役の武谷さんをはじめ魅力的なキャストが揃って目が離せない。
シンプルながら場面によって姿を変える美術も印象的。
物語の随所に過去の幸せな時間が埋め込まれるように描かれいて、それを観るといっそう胸が痛んだ。
「あいまいばかりの世界」
Flying Trip
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2020/06/24 (水) ~ 2020/06/30 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/06/27 (土) 13:00
感染症が流行している現在と3年前を行き来しつつ描かれる、ある男の生と死。
登場人物それぞれの思いが伝わってきて切ない。
両隣も前後も空席として密を避けた座席配置、係員が目視で確認したチケットを観客自らモギる入場方法、ロビーでの飲食や会話の制限など、感染防止対策についての運営サイドの工夫と努力が感じられた。
緊急事態軽演劇八夜
新ロイヤル大衆舎
ザ・スズナリ(東京都)
2020/06/11 (木) ~ 2020/06/18 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/06/13 (土) 18:00
『新作・おもてなし』の追加公演を劇場で拝見した。
劇場での観劇は約3ヶ月ぶり。
観客35人でもアクリル板に遮られていても、舞台と客席の一体感が身にしみる。
手練れ揃いのキャストが生き生きと演じる姿と、いかにもありそうな登場人物たちのやりとりに笑いが絶えない。
客席と舞台上との感情の行き来が感じられる、生の舞台の醍醐味があった。
謁見
やみ・あがりシアター
スタジオ空洞(東京都)
2020/06/18 (木) ~ 2020/06/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/06/20 (土) 14:00
1公演につき観客8名限定とし、架空の国の女王への謁見という劇中の設定がそのまま感染症対策となる仕掛けにまず興味をそそられたが、観ているうちに物語や設定、そして登場人物たちの想いに引き込まれた。
ある国の女王が抽選で選ばれた国民1人と毎日謁見することとなり、職業も経歴もさまざまな相手と女王との会話を描くうちに、国の情勢や女王の人柄、評判、置かれた立場などが見えてくる。
そして描かれる思いがけない結末。
伏線も寓意もたっぷりの物語にひたる約80分、しっかり楽しませていただいた。
カストリ・エレジー
ゼータクチク&ACTACTION by TEAM HANDY
新宿眼科画廊(東京都)
2020/02/21 (金) ~ 2020/02/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
途中でアッと思った。そうか、『二十日鼠と人間』がベースになってるんだ。
そう気づいてもヒリヒリするような緊張感は微塵も緩まない。抗えない運命のようにラストの一点に向かって行く人々の息遣いまで聴こえる。
あの空間であの芝居、贅沢が過ぎる。座席の位置を変えてもう一度観たかった。
かげぜん
オフィス・REN
紀伊國屋ホール(東京都)
2020/01/22 (水) ~ 2020/01/26 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/01/23 (木) 19:00
一人暮らしの老婦人みつの家に、孫になりすました詐欺師の神代大吾が住み着く。事業家だった夫を亡くし一人暮らしのみつは目が見えない。
財産目当てのなりすましだったのに、みつの言動に翻弄される大吾。たえというお嫁さん候補まで現れてますます思うようにことは運ばない……。
過酷な時代の中で営まれるささやかな人の暮らし。その中で行き交う人の想いを立体的に描いて、観終わったあとじんわりと温かいものが胸に残った。
雉はじめて鳴く
劇団俳優座
俳優座劇場(東京都)
2020/01/10 (金) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★
iakuの横山拓也さんの脚本を俳優座の眞鍋卓嗣さんが演出。
チラシの文面や写真からの漠然とした(メロドラマチックな)予想などかすりもしない切実な内容にしっかりと惹きつけられた約2時間。
戯曲・演出・キャストそれぞれの確かさが美しく実を結んだ、見応えのある舞台だった。
老舗劇団らしいしっかりと細やかで誠実な舞台。よいものを見せていただいた、と思う。
笑う、夜の果てにて
オフィス上の空
Corus 赤坂(東京都)
2019/12/14 (土) ~ 2020/06/01 (月)公演終了
満足度★★★
不思議な力を持ち、テレビ等でも活躍していた「エスパーカズキ」のファンが集まる恒例の行事に、見慣れない女が現れた。
手の触れられる距離で演じられる物語は、その女性の動機、グループ内での疑惑、エスパーカズキの現状など、さまざまな謎を含みながら進んでいく。
劇中の時間が朝を迎え、物語は終わりを迎える。土曜の朝9:30に始まって、まだ10:30くらいの時間に「いってらっしゃい」の言葉に送られて会場を出る。いつもの少し違う週末の始まり。
いい時間だった。いずれまた観に来たいと思いつつ、土曜日の街へ歩き出した。
口火きる、パトス
コロブチカ
live space anima【2020年4月をもって閉店】(東京都)
2019/07/13 (土) ~ 2019/07/18 (木)公演終了
満足度★★★★★
くっそ面白かった!
いやこれはつまり最上級の褒め言葉であって、なんていうかこういう問答無用に面白いモノを観たときに、美辞麗句より先にとりあえず(あーくっそ面白いじゃんか!!)と思うわけなのだ。
約45分間、自意識とプライドをこじらせた男子高校生の初恋の顛末を1人芝居で綴っていくんだけど、もうね、その間パトスだだ漏れ。
あーこれ汗びっしょりになるのも当然だわ、という熱演で、もちろんそれだけで面白くなるわけじゃなく、キャラクターも展開も演出も、なるほど1人芝居でこう見せるかと舌を巻く巧さだし、コロさんはもういまさらだけど、いい役者さんだなぁ、と改めて思った。
素直になれない柳の無駄なプライドや自負も、そのくせ古典的な一目惚れでジタバタする様子も、いや、これから全国47都道府県で上演するであろう作品だからあまりネタバレしないでおくけれども、とりあえず気持ちのいい演劇だった。
Solace-慰め-
さくリさく企画
APOCシアター(東京都)
2019/08/20 (火) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★★
さくリさく企画『Solace ~慰め~』2本立てのうちB面『遥かなる高速の旅路』を観た。
深夜のパーキングエリアで偶然出会った2人の女の交流を、笑い多めで描く道中記。
主人公はマジメで抑圧され気味の教師。同棲中の彼氏との微妙な温度差や職場の人間関係などの鬱屈を抑え込み、自分が頑張ることで乗り越えようとしていたように見えた。
パーキングエリアで高速バスに置いてきぼりを食らったライブ帰りの女に、ほとんど無理やり同乗されることになる。
2人の会話や1人の時の携帯電話などで、主人公の背景や悩みが観客にもわかってくる。と同時に乗せた女の気ままそうなキャラクターからしだいに見えてくるものも。
バスを追って深夜のパーキングエリアをハシゴする2人の奇妙で優しい一夜の旅。出会う人々や事件も少しおかしくて。
タイプの異なるキャラクター同士が次第に理解し合っていく感じや夜明けに向かっていく感じが王道ながら気持ちよかった。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
(わ、観たい!)というより(観ておかなくてはいけないんじゃないか……)という強迫観念めいた何かに背を押されてチケットを確保した。
それぞれ独立した作品として鑑賞することも可能だけれど、この日は通し券のみの販売で、第一部と第二部、第二部と第三部の間は30分ずつしかない、
なので、別々の作品を続けて観るというよりひとつの長い物語として観ることになった。
題材の重さや丁重な取材が注目されていてるし、もちろんそれはこの作品にとって大きなウエイトを占めていると思うけれど、実際に拝見すると演劇としての面白さや完成度の高さもしっかりと備えていた。
キャストはそれぞれに見応えがあって、それだけでも1日座っている甲斐があった。
第一部は、そもそもの始まりについて、故郷を離れようとする若者とその家族を中心に据えて描く。東電、政治家、そしてそこで暮らす人々、それぞれの立場や思惑や夢。町の青年団で活動する次男が、桜を植え続けていつかこの町が桜の名所として賑わう、という夢を語る。見渡す限りの桜並木とそれを見に訪れる人々の姿を思い描き、すぐに実現するはずがないのはわかっている、「50年後でいい」という言葉にその胸が痛む。その50年後は2011年なのだ。
出て行く自分には何も言えない、という長男に向かって「覚えておけ、お前は反対しなかった」という祖父。観る側が50年後に事故が起こることを知っているからこそ響く台詞だろう。町の発展と託した新しい事業の始まりは、希望の中にすでに不穏な空気をはらんでいた。
第二部では、第一部で桜を植えることについて話していた若者が年を経て、町長になりチェルノブイリの事故を受けて日本の原発の安全性を主張するまでの物語だ。
原発反対派だった彼が容認派として町長になり「日本の原発は安全です!」と繰り返すブラックな政治コメディ風の展開を、死んだ飼い犬の優しい目線を通して描くことで主人公の悲しみや葛藤にフォーカスをあてた。一方で、彼を翻弄するメフィストフェレス的な人物の造形が印象的だった。もちろんあの曲も劇中で使われていた。
第三部では、報道の立場から震災と原発事故への向き合い方を問う物語で、大きな災害を一人ひとりの物語として再構築することで、まだ終わってない、という認識を新たにさせられた。
冒頭で震災を表現するシーンにインパクトがあって、そんなはずはないと思いつつ劇場が揺れているように感じられた。
現実とのつながりが、物語で描かれるそれぞれの痛みや希望に切実さを加えた。
三部作を通して、原発事故にまつわる膨大な出来事を、ひとつの家族の50年に集約して1本の物語として立ち上げていた。第三部で登場した一人ひとり誰を中心にしても長い物語が紡げるかもしれない。
多くの方に方々に現在も影響を与え続けている原発事故について、どうやって語るべきか、という問いの答えのひとつがここにあった。
アルプス
PAPALUWA
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
チラシ等から学園スポーツコメディかな、と思って観始めた。高校の野球部が舞台でユニフォームを着たたくさんのプレーヤーが舞台に立っているし。
ところが、始まって少しするとまさかのSFだということがわかってくる。パラレルワールドもので、ある野球部の3年生たちがふとした拍子によく似た別の世界へ飛ばされてしまい、そちらの世界の同じメンバーがこちら(わかりにくいね)に来てしまったらしい。
似たような世界だけれど、異なっているのは一方で弱小な野球部がもう一方では強豪でまもなく甲子園の決勝戦を迎える、というところ。そしてあと一つ、弱小チームのマネージャーと強豪チームのマネージャーが(名前は同じなのに)学年もルックスや性格も異なる別人となっていること。
それぞれが元の世界に戻ろうと悪戦苦闘するあたりはこういう話の定番だけど、同じ顔ぶれながら性格や関係性は異なっていたりする2つの世界を演じ分ける様子なども面白くてハラハラしたりもした。
ちょっと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の1作目みたいなラストもけっこう好み。
登場人物では、強豪チームのマネージャーが最初は厳しそうなのに面倒見が良くて頼もしい感じが素敵だった。
よく練られた脚本と大人数の出演者の熱演で、気持ちよく笑った約120分。
オペラ『遠野物語』
オペラシアターこんにゃく座
俳優座劇場(東京都)
2019/02/07 (木) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
『遠野物語』を記した柳田國男と語り部としての佐々木、そして2人を引き合わせた水野の関係を軸に、佐々木や祖母の眼に映るこの世とあの世が当たり前に重なる景色と、ままならない現実に流される佐々木らの姿を抒情豊かに描く。
遠野を再び訪れた水野と佐々木の会話に滲むそれぞれの孤独が胸に残った。