latticeの観てきた!クチコミ一覧

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アンチゴーヌ

アンチゴーヌ

パルコ・プロデュース

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2018/01/09 (火) ~ 2018/01/27 (土)公演終了

満足度★★★★★

十文字の舞台上に役者が配置に着くと高橋紀恵さんが力強い声で物語の開始を宣言し、ここにいたるまでの状況を手短に説明します。高橋さんの(良い意味で)芝居がかった声は観衆をそして俳優をこれから紡がれる物語の世界へと一気に運んでくれるのでした。

蒼井優さん演じるアンチゴーヌは人としての道を貫きます。しかし生瀬勝久さん演じる叔父で国王のクレオンは法の支配による国の安定を揺るがすようなことはできません。後半、クレオンは亡くなった二人の兄についてのショッキングな裏話を語ってアンチゴーヌを揺さぶります。意外な話にうろたえるアンチゴーヌはクレオンの前に屈服するのでしょうか…。

生瀬さんはもちろん安定の演技ですし、映画の人というイメージが強い蒼井さんも実に堂々としたものでマイクなしでその声を会場の隅々にまで響き渡らせます。

会場は十文字の舞台によって客席が4つのブロックに分割され、それぞれのブロックが14席×5列になっています。1列目から舞台までは手を伸ばせば届く距離です。しかも舞台は幅およそ2m、高さおよそ70cmのもので本当に目の前で演技を堪能することができます。俳優さんは隅から隅までを動き回りますし、客席にもしばしば降りて来て1列目の前を走ります。その点ではブロックごとにやや当たり外れがありますがどこが当たりかは行ってからのお楽しみにしておきましょう。

演劇としての内容はもちろん悪魔的な魅力のある十文字の舞台も必見です。

宣伝用のポスターが売っていました。大(1030×728)が1,000円で、小が500円です。

近松心中物語

近松心中物語

シス・カンパニー

新国立劇場 中劇場(東京都)

2018/01/10 (水) ~ 2018/02/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

すぐ隣で上演中の「アンチゴーヌ」は観客に色々考えることを求めるのに対し、こちらは観て聴いて感じたままを楽しむものでしょう。有名俳優さん揃いなこともあって私が何かを書く必要はまったくないのですが、あったりまえのことをちょっとだけ書いておきます。

堤真一さん、宮沢りえさんは演技はもちろん、声の魅力(魔力)でぐいぐい迫ります。小池栄子さんは「カンブリア宮殿」の“できる女”とは打って変わった可愛い女を演じます。池田成志さんはすっとぼけた役を演らせると日本一、笑いと哀愁の両面で観客の心を掴みます。市川猿弥さん、銀粉蝶さんのセリフの切れ味にはしびれました。

舞台セットの変化も大きな見所です。スタートは舞台いっぱいに広がった大坂の町で、溢れる色彩と歌と踊りで観客の気分は激しく高揚します。回転する舞台を巧みに用いた場面転換、笑ってしまうローテクやこちらの遠近感が狂ったのかと思わせるようなエンディングなどお楽しみ満載です。

衣装が間に合わなかったのかポスターは洋服(?)で何かひねりのある舞台なのかといぶかしんでしまいますが、ネットで通し稽古の写真を見ればわかるように普通に着物を着ています。その点では王道の元禄時代の物語ですのでご安心を。

戯伝写楽 2018

戯伝写楽 2018

キューブ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2018/01/12 (金) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

正直それほど期待していなかった私は、最初の歌で「ごめんなさい」と心の中で土下座をしてその不明を詫びた。

幻の浮世絵師東洲斎写楽が女性だったという設定で、写楽という存在の出現から消滅までを描くミュージカルである。ストーリーは全くの創作なのだが壮一帆さん演じる花魁浮雲を一方の柱にして巧みに構成されている。

歌麿役の小西遼生さんは女性が男装したのではと思うほど美しく色っぽい。大田南畝役の吉野圭吾さんのしっかりしたとぼけっぷりは巧みすぎる。蔦屋重三郎役の村井國夫さんは張りのある低音をしっかりと響かせていた。壮さん、小西さん、吉野さんも揃って「歌うま」である。
写楽役の中川翔子さんは思ったより小柄の女性だった。変わった人というイメージを勝手に持っていたがそんなことは一切なく芝居も歌も模範的にこなしていた。
写楽の絵から飛び出てきたような座長の橋本さとしさんも安定の歌と演技である。

特筆すべきは舞台中段のガラスの向こうにいるバンドである。キーボード+ドラム+パーカッション+ベース+ホーンの構成で、年寄りの体が思わず動いてしまうくらいスイングしていた。その演奏を最高の音で聴かせてくれる音響も完璧に調整されている。エンディング以外にバンド演奏が1曲あれば最高だった。音響の良さは歌やセリフでももちろん十分に発揮されている。どこの会場もこうあってほしいものだとつくづく思った。

ガラスの動物園

ガラスの動物園

東宝

シアタークリエ(東京都)

2021/12/12 (日) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

テネシー・ウィリアムズの自伝的名作。しみじみと人生の切なさに浸ってみたい人におすすめ。

配役が私の感覚とはちょっとずれていたかな。星4つ半

1789‐バスティーユの恋人たち‐

1789‐バスティーユの恋人たち‐

東宝

帝国劇場(東京都)

2018/04/09 (月) ~ 2018/05/12 (土)公演終了

満足度★★★★★

小池徹平/神田沙也加/龍真咲の回を観劇。

このロック・ミュージカルは2012年フランスで初演、日本では宝塚版が2015年、東宝版が2016年が最初で今回は主役二人がそのままの再演です。会場は補助席が出ていて驚きました。90分+25分休憩+70分くらい。

若手の有名俳優の皆さんということでちょっとなめていたのですが、期待を大きく上回るものでした。

10人から30人くらいで踊るダンスはシンクロするもの、バラバラにダイナミックに踊るものどれも切れの良い素晴らしいものでした。とくに女性だけによる女性賛歌の踊りと歌には今までにないインパクトがありました。ダンスは私の好み(マイケル・ジャクソンの「スリラー」から最近の女性アイドルグループに至るグループのダンス)に完全に合っていました。惜しむらくは時間が短く、“ああもう少し続けて”と何度もため息をついてしまいました。もちろんこれは私のわがままで全体の構成上はこのくらいがベストだということは分かっているのですが…。

歌はみなさん期待通りですがそれを超えるところまでは行きません。また龍真咲さんが序盤になぜか不調で(終盤には復調していましたが)どうなることかと不安になりました。しかし、そこはソニンさんが好調だったので帳消しです。ソニンさんは以前も感心したことがあるのですが、今回もこのうまい人は誰と思ってチラシを見て納得しました(早く覚えろよ→私)。

ダンスも歌も主役級、準主役級以上にアンサンブルの方々が光っていました。そこには個々の力量も発揮させながら全体では調和させるというダンス演出(振付)のうまさも感じました。

お話しはこの種のものに共通のご都合主義のラブストーリーです。私はこういうものが刺さる時期をとうに過ぎていますが、ここをスルーしても十分楽しめるところもミュージカルの利点の一つです。

舞台装置は大掛かりで美しいものがいくつもあって圧倒されました。衣装も豪華でバラエティに富んだものです。そして役者さんも大劇場にふさわしく大人数でした(たまにある、大劇場なのに少人数で貧乏くさい舞踏会は嫌ですよね)。こういう物量作戦は悪くも言えるのですが、やはりワクワク感は小劇場では味わえないものです。

NoBody,NoParty

NoBody,NoParty

東京AZARASHI団

シアターサンモール(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

観客の笑いでシアター・サンモールが揺れてました。喜劇としての面白さに仕掛けの面白さが加わって、すっきりと笑いながら深く感心しました。アイディア勝負の面があるので肝心のところが書けないのが残念ですが、芝居のアイディアとか仕掛けとかが好きな人は必見です。

最後がグダグダべたべたになったので減点したいところですが、秘書役の那海さんにハートを射抜かれてしまったので星は5つです。

なおORICON NEWS 4/13 に那海さんのインタビューが載っています。
“5/16(水)から始まる舞台「NoBody,NoParty」に出演! 那海さんにインタビュー”

少しだけ引用すると

『あるお屋敷で連続殺人事件が発生する』という内容の舞台を上演する劇団の物語で、舞台で行われているお芝居の中でいろんなハプニングが起こってしまい、それをどう乗り越えられるか?というのを見せていく作品です。…

ということです。…から先はネタ晴らしになるので知りたい方は元記事をご覧ください。

ジキル&ハイド

ジキル&ハイド

東宝/ホリプロ

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2018/03/03 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

原作はスティーブンソンの1886年の小説「ジキル博士とハイド氏(の奇妙な事件)」で、これをもとにした1990年のブロードウェイミュージカルが「ジキル&ハイド」である。登場人物を含め内容がかなり異なっている。日本版は鹿賀丈史さん主演で2001,2003,2005,2007年に上演され、2012,2016そして今回2018年は石丸幹二さん主演となっている。

石丸さんはチラシ束を受け取ると必ず主演のものが入っていたり、TVでもミュージック・フェアなどミュージカル関連の番組では必ず引っ張り出されるミスター・ミュージカルである。半沢直樹での悪役支店長が2013年のことだったとは信じられないくらいだ。52歳のこの舞台も絶好調である。私的には最初にハイドになって登場するところが特に何があるというわけでもないのにツボにはまった。

笹本玲奈さんは2012,2016年には献身的で貞淑な婚約者エマ役を演じていたという。しかし今回は妖艶なルーシー役である。これが見事にフィットして、歌も踊りも演技もそして容姿も素晴らしく、10年も前から続けているようだ。

宮澤エマさんは名前も同じなエマ役で新規出演である。前回観た「ドッグファイト」では悪くはないがどうももうひとつという印象だったのだが、今回は実力、オーラ全開で笹本さんとも互角に渡り合っている。勝手に想像するに、宮澤さんはまだまだ発展途上で前回のように主役となると委縮し、今回のようにスーパースター達に囲まれるとめらめらと燃え上がってレベルアップをするという漫画の主人公のような方なのではないだろうか。

田代万里生さんはジキルの友人の弁護士アターソン役で新規出演である。歌声はいつものように素晴らしい。しっかり芯が通りながらも若さ、みずみずしさをたっぷりとたたえている。今回は重要な役柄で演技でも、というか演技の方でより強く、全体を引き締めている。

全体として、どこにも文句のつけようのない出来であって、ぜひ来年の公演では1階中央10列目以内で観ようと心に誓った。

TRUSH!

TRUSH!

劇団6番シード

六行会ホール(東京都)

2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

6番シード結成25周年公演の第一弾はウェスタン・ミュージカル・コメディである。前回の番外公演とは打って変わって、わかりやすさ、楽しさ全開となっている。

ここでは演劇の部分は他の方にお任せして(美少女)ミュージカルの部分に絞って書くことにする。()が付いている理由はお察しください(笑)。

特筆すべきはダンスカンパニー・チャイロイプリン(CHAiroiPLIN)からの4名の参加である。とくにエリザベス・マリーさんは役者の他に振付を担当し、清水ゆりさんはアコーディオンの生演奏とオリジナル曲の作曲を担当している。増田ゆーこさんも当然ダンスの指導をおこなっているだろうし、ミュージカル部分はCHAiroiPLINにほとんど丸投げになっているものと想像される。

出演者32名のうち21名が女性である。実は21名というのはAKB系の女性アイドルグループの選抜チームの人数と同じであり、普段TVなどで見ている彼女らの人数である。多人数による迫力がありながら個々のメンバーの動きが埋もれない、黄金の人数なのである。アイドルグループのダンスも昔はお遊戯だったが、今は一流の振付師がついて、その激しさに歌は口パクになるところまで行っている(行きすぎだが)。今回の振付も、そういう系統のもので、いくつかのパートに分けて細かく動きを付け、集合し、離散し、ダイナミックな動きを作り出している。衣装の統一感がダンスを引き立て、舞台の大きさもドンピシャリで高い完成度が楽しめる。また、この種のステージでは珍しくタップダンスが披露される。樋口靖洋さんのちょっと?なパフォーマンスで観客を不安な気分にさせ、最後に女性陣がビシッ!と締める構成もうまい。

生演奏をする楽団はアコーディオン+歌の清水さん、バイオリンの田村龍成さん、パーカッションの松下高士さんの3人である。清水さんには演奏者、歌手ではなくアーチストのオーラがあった。もっとも初日のせいか歌が一杯一杯になっていたようなところもあった気がする。田村さんは自由自在に余裕の演奏で祭りの主役であった。しいて注文を付けると、悪人どもをおとなしくさせるところではもっとベタで泣ける演奏にしてほしかった。松下さんはパーカッションとは言っても箱一つで迫力のあるリズムを叩き出していた(この箱はカホンという楽器らしい)。

衣装は映画でよく見るアメリカ西部開拓時代のもので、しっかり作られた舞台セットと相まって観客の気分を高揚させてくれる。

BLIND HERO

BLIND HERO

演劇集団「バックドア」

小劇場B1(東京都)

2018/01/23 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

いやあ、面白かった。久しぶりにスカッと笑えました。

チラシではシリアスな感じがするのですが(企画段階ではそういうテイストだったのかも)実際にはそんなところは微塵もありません。意外性重視でそういう表現にしたのでしょう。それも良いのですが観劇検討中の人をミスリードする恐れがあります。私もピアノとバイオリン目当てでした。

あからさまなキャッチコピーを作るなら「ゲス人間バトルロイヤル」とでもなるのでしょうか。私は“そうくるか”、“それはないよ”、“まさかあなたまで”という感じの呆れた仕業の連続に笑いが止まりませんでした(ちょっと盛ってます)。ナンセンス(?)・コメディ・ファンには絶対のお勧めです。

まだまだ試行錯誤を続けているようですし、俳優さんが一杯一杯になる場面も見受けられました。千秋楽に向かってどんどん進化して行くことでしょう。

ネタバレBOX

私のツボは終盤になって聖子ちゃんが首のあたりを見せるところです。十字架でも出てくるかと思ったらまさかの…でした。
I LOVE YOU,YOU'RE PERFECT,NOW CHANGE

I LOVE YOU,YOU'RE PERFECT,NOW CHANGE

Score

d-倉庫(東京都)

2017/10/21 (土) ~ 2017/10/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

(木村花代、麻田キョウヤ、安達星来、今村洋一、今井端、池田海人の回を鑑賞)
いやあもったいない。この出演者、この内容で空席があるとは。
主催者はもっと宣伝に努めてほしい。最近はかなりいろいろな劇場に行っているが、このチラシをチラシ束の中に見つけることはなかった。宣伝さえしっかりやっていれば満席は楽々達成できたはずだ。

場所は誰も知らない d-倉庫。期待せずに行ってみると中は傾斜のついた客席からステージが非常に見やすく、音響もなかなか良いのでびっくりした。女性ボーカルがすっきりと伸びて、変な残響がないのである。演劇、ミュージカル用にきちんと機材を選び設計したものなのだろう。トイレの配置は問題ありだけど水回りはお金が掛かるからこの辺が限界なんだろうねと同情した。

内容は男女の出会いから破局そして死別(後)までを小話でつづって行くコメディー・ミュージカル。こういうものはアメリカ人がやらないと様にならないだろうと避けていたのだが、人名、会社名はアメリカンでエアーの車は左ハンドルであっても、ちゃんと日本の話として楽しむことができた(宗教系は無理だけど)。日本版の脚本、演出がかなり工夫されているのだろう。

出演者は男女3人ずつ、計6人の実力者が歌って演技して少し踊る。この方々をこれだけ近くで観て聴けるとは実に優雅な時間であった。ここまでのレベルになると歌がうまいとか下手とかは考えることも忘れて楽しむことができた。
歌は曲も良く訳詞もこなれていて、「ただしゃべった方が良くね?」というミュージカル嫌いの方にも受け入れられるものと思う。
贅沢を言うとマイクなしで聴きたかったのだが、結構いい音だったので良しとしよう。

電子ピアノはよくスイングしており、ピアノとバイオリンだけにも一場面分の時間を割り振ってほしかった。ただしピアノの音が大きくて歌を消してしまうところがあった。相対的にバイオリンの音が聞こえにくくなって、音程までも怪しく感じられたのは気の毒であった。PA担当の方はヘッドホンでモニターするだけでなく、客席で自分の耳で聴いてほしいな。

それから幕間の大道具(?)さんの無駄のない動きはなかなか楽しめた。

なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

アガリスク、スピードが速すぎ、情報量が多すぎだよ。ちょっと取り残された感があったのがつらい。

いつもの1シチュエーションコメディだが、今回はタイムスリップ物である。4つの時代がそれぞれ問題を抱えながら一つの場所に集まる。そこをしっかりと交通整理して進行させる、いつもの匠の技がさえる。

強いて主役を上げれば伊藤圭太さんと淺越岳人さんなのだろう。その中でも淺越さんの不思議な魅力が全編に行きわたっている。CoRich舞台芸術まつり!2023春 演技賞(『令和5年の廃刀令』)受賞は言われてみれば確かにという不意打ち感があったが、今作は受賞記念的なこともあって台本でも特別扱いがされているのだろう。堂々の存在感である。CoRichの審査委員さすがの慧眼。

山下雷舞さんもようやくアガリスクの仲間と認められたのだろう。主役級の大役を与えられて全力で応えていた。

クールビューティー鹿島ゆきこさんは今回は見せ場なし。榎並夕起さんは他の舞台とか映画とかの役作りなのか、激やせに見えてちょっと心配。江益凛ちゃんは全編元気で普通で私は不完全燃焼。おっさん目線ではどこか不安定で守ってあげたいと思わせてほしいのだ。そして今回の推しは雛形羽衣さん。ちょっと軽目のキャラだが将来の目標は国連難民高等弁務官であるという。この国連難民高等弁務官というリズムの良い言葉で3割うまい(何が?)。

アフタートークに登場した鈴木保奈美さん、去年の「セールスマンの死」ではどうもしっくりこなかったのだが、このフリートークでは頭の回転の速さが分かってさすがだなあと感心しきりだった。適切な話を反応よく繰り出してきてよどみがない。中田顕史郎さんによるとシアタートップスのトップスはあのチョコレートケーキのトップスなのだそうだ。昔は1階に店があったという。

『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2018/08/10 (金) ~ 2018/08/15 (水)公演終了

満足度★★★★★

「漂流ラクダ…」を観劇

基本的に独立した色々な形式の短編集です。それぞれのお話を無心に楽しむのが吉でしょう。

女性の割合は85%というところでしょうか。開演前のBGMも「ラ・ラ・ランド」でターゲットもそういう人達なんだなあと納得しました。

ネタバレBOX

形式的にはNPO法人(エヌピーオーのりひと)さん演じる作家が宇宙人と交換する一連の物語ということになっています。この作家と宇宙人のやりとり(「ラクダのこと」)は乃木坂46の「シンクロニシティ」を連想しました(ラクダと乗っている男の会話は偶然ではないのだ)。冒頭の老夫婦と娘の会話(「君といつまでも」)は途中で切られて、作家の話になりますが、また最後に再開されます。終わってみれば二つに分けた意味に深く納得するでしょう。他SFあり、一人芝居あり、女の一生あり、…と盛りだくさんです。
卒業式、実行

卒業式、実行

Aga-risk Entertainment

サンモールスタジオ(東京都)

2018/02/17 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

「〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』」以来のアガリスク鑑賞。
文句なく面白い。外れても裏切られても小劇場通いを続けていて良かった。

一言でいうと、卒業式実行委員長に降りかかる数々のトラブルメーカーを巡るドタバタ喜劇である。ドタバタとはいっても、どついたり、転がったり、裸になったりするものではなく下ネタも一切ない。また奇妙奇天烈な人物もいないし、悪人も聖人もいない。普通から微妙に外れた人たちが予想のわずか上をクリアして行く、その匙加減が絶妙な正統派会議系コメディーである。

皆さん芸達者な中で、生徒会長の熊谷有芳さんと美術教師の中田顕史郎さんがとくにツボだった。

詳しい説明は他の方にお任せして、とりあえず1番ゲット。

リア王2018

リア王2018

三越劇場

三越劇場(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

横内正さん渾身の「リア王」は今年で3年目、会場の三越劇場は三越本館6階にある512席の劇場です。今回は下手に舞台を増設したため座席がかなり減らされています。少ない下手前方席はすぐそばで戦闘シーンがあったりするのでお勧めです。この戦闘シーンは人数も多く、時間も長く、この舞台の売りの一つです。ちなみに原作では数行のト書きのところです。

高橋かおり、渚あきの悪女の姉も正直者の妹役の棚橋幸代さんも見事でした。特に棚橋さんは堂々としてベテラン二人に一歩も引けをとりません。忠臣ケント伯を演じる加藤頼さんは常に舞台上で動き回って王を守る姿が印象的でした。

リア王では二つの家族が描かれます。一つはリア王と3人の娘であり、もう一つはグロスター伯と2人の息子です。志村朋春さん演ずる弟の悪役エドマンドは強いセリフ回しが響きまくって、存在を強く印象付けます。中島尊望さん演じるエドガーは、最初は弟に騙される愚鈍な兄ですが、後半になって父を助ける優しい息子として見せ場を作り、最後は対決シーンで盛り上げます。リア王の主役はこの兄弟だったのかと思ってしまいました。

皆さんシェイクスピアの世界にとっぷり浸かっている中で田村亮さんは一歩引いているような気がしました。それが持ち味かもしれませんが、もう少し強めの「芝居がかった」演技がほしいと思いました。(後日追記)しかし、長女の夫がしっかりした人ならリア王は3分割なんて考えなかったわけで、もともとこういう設定なのかもしれませんね。

海援隊のギタリスト千葉和臣さんが何で出ているのと不思議に思っていましたが、その落ち着いた声が回りを安心させる医者の役にぴったりで納得しました。

ポスターが売っていました。厚手の紙で少し大きめなB2版(515x728)が500円です。

人狼TLPT S『未来への十字架』

人狼TLPT S『未来への十字架』

私立ルドビコ女学院

新宿村LIVE(東京都)

2018/02/07 (水) ~ 2018/02/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

ミステリーファンで美少女グループファンの方は必見です。

まずは13人の美少女による近未来の巨大生物との戦いの寸劇があり、続いてグループの歌と踊りが続きます。ここまでが「アサルトリリィ×私立ルドビコ女学院」の部分でこれまでの活動の様子は YouTube で見ることができます。今回はここから、この世界観、メンバーで「人狼TLPT」の指導の下でメインの「人狼」ゲームが始まります。観客は彼女らと一緒に(やや有利な条件で)推理して人狼を当てるのです。

【私立ルドビコ女学院ホームページ】 には【宣伝動画】があります。
注意書きには「多少のネタバレを含みます。」とありますが寸劇、歌、踊りの一部があるということで人狼ゲームの解答には無関係です。行くかどうか迷っている方には見ることをお勧めします。美少女度は、さすがに乃木坂には負けるものの「まゆゆ」の抜けたAKBとは良い勝負ではないでしょうか。

会場に入ると、開演前ながら教官役のお二人が「人狼」ゲームのルールを説明していました。配られる紙にも書いてあり、ゲームの途中でもかなり述べられますが、いきなり行って理解するのは結構辛いので、あらかじめ【人狼TLPTホームページ】で調べておくのが良いでしょう。

誰が誰に投票したかをきちんと記録(記憶)していれば、かなりの確率で正解が得られると思います。ただし、普通は老若男女、様々な職業の人々が13人ですが今回は全員が同じ制服を着た美少女なのでほとんど区別がつきません。特別に胸に番号札を付けても良かったのではないかと感じました。まあ番号札なんて世界観が壊れますし、真剣に当てに行かずとも、彼女らのやり取りを無心に楽しんでいれば十分幸せになれるでしょう。

前方の観客は100%男性でした。後方にはチラホラ女性の姿も。
1,300円のチェキは全員分が完売とのアナウンスが。

ネタバレBOX

「人狼TLPT」のルールでは本番の直前にくじを引いて役割を決めるということなのですが、アドリブにしては女優さんの対応がうますぎます。当然いくつかのパターンは事前に練習してあるでしょうが、それ以上の何か秘密がある気がします。最初に考えたのは、夜になって引っ込んだところでアドバイザーの指示で次の準備を大急ぎですることですがちょっと難易度が高いですね。公演の回数分だけ練習しようにも公演ごとに出演メンバーが違うので難しいし。ここが一番の謎である気がします(私がひどく誤解しているの?)。
*「そんなつまらないことを考えるな」と叱られそうなのでこちらに移動しました。
キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

劇団四季

キャッツ・シアター大井町(東京都)

2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

2012年11月に千秋楽を迎えた横浜公演から久しぶりの東京圏公演は新設なった大井町のキャッツ・シアターで行われています。この建物はグーグル・マップではまだ見ることはできませんが四季劇場「夏」の西隣にあって、大井町駅を出てゆるい坂道を下って右手のガードをくぐると目の前にひろがっています。

ネットで調べると「キャッツ」にはストーリーがないのでお話の流れを追う人には向いていないと書かれていて、私もまったくその通りだと思いました。その分、歌と踊りが素晴らしいので短編集とでも思ってそれぞれを楽しみましょう。とくに踊りは均整が取れ、体の大きさの揃ったダンサー達がキレの良い動きで見せ場をしっかり決めるのが快感です。しかし、この皆さんは一体いくつの関門をくぐってきたのでしょうか。

前半12曲、後半10曲が歌い踊られますが、鉄板の「メモリー」は前半の最後と後半の8曲目にあります。前半はテンポの良い曲が続いたので一旦冷却して休憩に導くためのものですが、後半は天に召されるグリザベラ(江畑晶慧さん)が朗々と歌い上げるもので、歌はここが絶対の一押しです。ただし短いデュエットをする若い人は江畑さんを引き立てるためにわざとやっているのかと思うくらい平板な歌い方でした。不思議なのはグリザベラが歌った後で拍手が少ないことです。これはYouTubeで観ることのできるアメリカ版もそうなので理由があるのでしょうが私には謎です(後日記:YouTubeにあるのはDVDからの抜粋で観客を入れない撮影なので拍手はない。実際の舞台では当然拍手があってしかるべき)。
踊りの一押しは前半4曲目おばさん猫ジェニエニドッツのところのゴキブリの集団タップダンスです。やっぱりタップは良いですね。後半にもほしいところです。*2回目(10/30 18:00)はタップがバラバラでがっかりしました(観る側の私の体調も関係したでしょう)。
残念だったのは、私の観た回(9/19 18:00)では魅力的な声質の若い女性の歌が聞けなかったことです。松田聖子や薬師丸ひろ子みたいな艶のある声が聴けるなら毎日通うのですが。

今回、私は初「キャッツ」ですが、原作は子供向けということで「ライオンキング」みたいだと嫌なので外れでも良いようにお試し席(?)のC席(3,240円)のサイド側にしました。円形舞台を横から観ることになるのでちょっと疎外感があるのと舞台の奥が見えないのは難点ですが、キャストが近くを通って、最後には握手もできるのはどこでも同じです。握手が男性キャストだったのが残念ですが、お目当てのキャストと握手できるように席を選ぶ人もいるくらいなので、そこに文句を言ってはいかんですね。「ライオンキング」と違って大人に(も)超お勧めです。

すでに今年の分のチケットは完売で当日券頼みですが、来年6月末までの分が発売になっていますので確実に入手するにはそちらをどうぞ。しかし、かぶりつきのS回転席は6月末まで完売です。まあ集団の踊りには広がりがあるので少し離れた方が良いようにも思えます。C席は「劇団四季」でも「ぴあ」でもずっと売り切れですが、「カンフェティ」では10月分でもほんの少しだけですが売っています。「カンフェティ」で売り切れでも実店舗のTicketsTodayにはあったりするようです。

秘密の花園

秘密の花園

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2018/01/13 (土) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

伝説の初演とかいう話を聞いて何か難しいものかと思っていましたが、ストレートに驚き楽しめました。田口トモロヲさんはナレーションのイメージとはまるで違うユーモアと迫力に溢れていました。寺島しのぶさんは二人の女性をあるときは区別し、あるときは曖昧に、片乳を出しての熱演です。柄本佑さんは最初の早口長ぜりふを見事にこなしながらも、田口さんに「DNAが…」「奥さんが…」とかいじられると素に戻ってはにかむなどベテランに押され気味でしたが好演でした。

後半では暴風雨ということで下手奥から盛大に放水があって、とくに上手前方席にはかなりの水が届きます。そのため休憩時間に前方席にはビニールシート(1m?x2m?)が配られます。放水を防いでも役者さんが溜まっている水をわざと蹴とばすのでそのたびにビニールを持ち上げて防ぐことを繰り返します。次回の公演のときには上手最前列が絶対のおすすめです(笑)。

内容については東京芸術劇場の広報誌「芸劇BUZZ Vol.22」P6から、演出の福原充則さんが唐十郎さんの作品に初めて出会った時の印象を引用しておきます。
* ここから *
 躍動的で詩的な長ぜりふ、理屈では追いかけられないストーリー展開、思いもよらないスペクタクルな演出、生活感と妄想が一体化したビジュアルなど、静かな演劇とは真逆の世界が目の前に広がっていた。
* ここまで *
いやあ全く今回の私の印象もこの通りです。さすがにうまく表現するものですね。

ライク・ア・ファーザー

ライク・ア・ファーザー

自転車キンクリーツカンパニー

OFF OFFシアター(東京都)

2018/10/24 (水) ~ 2018/10/31 (水)公演終了

満足度★★★★★

信頼している'CoRicher'の方々が満足されているので千秋楽に行ってきました。これが大当たりで皆さんに感謝。

いやあ、うまいものです。役者さんも脚本も。うますぎて嫌味なくらいです。結構笑わされ、泣かされますが大笑いが止まらないほどではなく、涙を絞り尽くされることもありません。この辺の匙加減は絶妙ですね。

内田亜希子さんのキリリとした美しさに脱帽しました。若いころの真行寺君枝かジェニファー・コネリーですね。酒屋の息子をまるっきり相手にしないのは冷たくもありますが、「なまじかけるな薄情け」が正解なのでしょう。

考えてみると歌川椎子さん演じる女性ゴーストは一番元気だったけれど、もらい事故の被害者で人物描写もなくちょっと可哀そうでしたね。

それにしても、チラシのイラストや文章とお芝居の内容が全く異なるのは全く不思議。これはやっぱりまずいでしょう。

メリー・ポピンズ

メリー・ポピンズ

ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2018/03/18 (日) ~ 2018/05/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

平原綾香/柿澤勇人/駒田一/木村花代/島田歌穂の回を観劇(80分+休憩25分+70分)

歌、ダンス、舞台装置が高度に完成され融合していて圧倒されました。
今までの私の基準では星は6つは必要です。どこにも文句のつけようがありません。絶対のお勧め。

出口へ向かう途中で、おじさんも、おばさんも、お兄さんも、お姉さんも、子供も、みんなニコニコという絵に描いたような幸せなミュージカルでした。ひねくれジジイの私としてはあまり使いたくない表現ですが他に書きようがありません。

あらすじはご存知の通り「厳格な父親に反発していたずらをする子供たち。躾係にやってきた宇宙人(?)メリー・ポピンズは数々のマジックで一家の綻びを繕って去って行く」というところでしょうか、ここを押さえておけば観劇には十分でしょう。もっと詳しく調べたほうが楽しみは増えます。映画をレンタルして観ておけば相違点を探す楽しみもあります。子供の身長を測るところは小さい点ですが映画を観ていないと意味不明でしょう(巻き尺に性格が表示されるのですが舞台では工夫してそうやっていたとしても見えません)。

歌とダンスの凄さというのは想像がつくでしょうから舞台装置の凄さを少し書いておきます。まずオープニングの舞台上は一家が住む家の前の通りです。家は平面の書割で、なんとも安っぽいなあとがっかりしていると、その家だけ前に出て来て中央から両側に開くと居間のセットになるのです。目の錯覚かと思うほどの鮮やかさです。子供部屋になったり、公園になったり、セットが次々に変化していきます。舞台裏はどうなっているのか見てみたいものです。ワイヤーでの天吊りも何度か効果的に使われます。フィナーレ直前にはそこまでやるかと唸ってしまいました。

始まってちょっとしてから観客席にライトが当たるので、どうしたのかと見回していたら、その隙に舞台にメリー・ポピンズが現れていたなんてこともあったので、舞台から目を離してはいけません。

終盤からカーテンコールにかけて、ここまで盛り上がるのは私には初めての体験でした。これからリピーターが増えてくると大変なことになりそうです。

十二人の怒れる男

十二人の怒れる男

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2020/09/11 (金) ~ 2020/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

9月の11本目。「行って、観て、書く」と年齢のせいか今年は昨年までの2倍疲れる。自粛による運動不足とマスクの影響もあると思う。

舞台すぐ横の、観客がフェイスシールドをさせられる席に座った。やはり近いは正義だ。このお話は映画や変種も含めかなりの数を観ていて、いつもはそんなアホなとかツッコミを入れてしまうのであるが今回は何も考えずに舞台と一体化することができた。

3番山崎一さん、10番吉見一豊さんの暴れっぷりはやっていて面白いだろうなあと思う。主役8番堤真一さんはオリジナルのヘンリー・フォンダ並みに正義の味方風味がきつくて少し鼻についた(まあ、そういうお話なのだが)。私の一番の押しは4番石丸幹二さん、理性的というか単純というか、機械のような人物を生き生きと描いていた。あれ、もしかして4番はAIでこれはSF劇だったのか?

かぶりつき席から観た満足度は星5つ。

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