latticeの観てきた!クチコミ一覧

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桜の園

桜の園

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/08/07 (月) ~ 2023/08/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最初は♪チェーリー、チェリベイビー♪と「シェリー」の替え歌で始まり昭和のおっさんはニヤッとしてしまうが、こういう軽めのコミカルな演出がこの舞台の売りである。最初は「面倒くさいなあ普通に演ってよ」とイラっとしたが、チェーホフが題名に続けた「喜劇」の意味はこういうことなのかと最後には説得されてしまった。嘲笑とか冷笑とかではなく普通の軽めの笑いである。まあそれに本当に何の工夫も施さないと退屈な舞台になりそうだし。他の「桜の園」よりかなり長めの 90分+20分休憩+70分。

演出のショーン・ホームズさんは昨年「セールスマンの死」を手掛けた方。いろいろ変わった演出が出て来るが半分も意図は分からない。特に最後のあの機械の轟音はいったい何の意味があるのだろう?(追記:意味が分かったのでネタバレへ)そういう個々の不満もあるのだが全体としてはかなり心地良い。そういうわけで3rd callでやや迷いつつも立ってしまった。立ち上がり率は40%くらい。まあ今日はまだプレビューだし、こんなものか。

ラネーフスカヤ達はどんどん落ちて行き、そのことも分かっているのに何も変えられない、というと最近ずっと日本について言われていることと同じだ。…とボヤキを書こうとしたが救いがないので中止。

ネタバレBOX

・豪邸なのに本棚と椅子がひどい安物だったのは意味が分からない。
・舞台の主要部に覆いかぶさるコンクリート製(風)の大きな箱は皆を閉じ込めている古い枠組みを表しているのだろう。全員がそこから抜け出し、最後に残るのは老執事だけ。
・最後の爆音チェーンソーの登場は全員(除く老執事)と桜の園(=これまでの人生)とのつながりを断ち切るためなのだと1日経ってようやく分かった。なんと鈍い(汗)ここは原作の「はるか遠くで、まるで天から響いたような物音がする。それは弦(つる)の切れた音で、しだいに悲しげに消えてゆく。」に対応している。

以下追加の考察:
手持ちの神西清訳では表題が以下のようになっています。
・かもめ ーー喜劇 四幕ーー
・ワーニャ伯父さんーー田園生活の情景 四幕ーー
・三人姉妹 ーー戯曲 四幕ーー
・桜の園 ーー喜劇 四幕ーー
「かもめ」と「桜の園」が喜劇となっています。「かもめ」は主人公が自死してしまうのでカッコつきの喜劇です。それに対して「桜の園」では誰にも悲劇的な出来事は起こりません。ラネーフスカヤは財産は失いましたがパリにいるおばさんのところで大して違わない生活を送るようです。他の皆さんも新しい生活に期待しています。残された老執事だけは今までの生活を続けることが幸せなので最後の場面は恍惚の中で息を引き取っているようにも見えます。まとめると「いろいろ心配しなくても人生何とかなるものさ」的な喜劇なのです。この戯曲は1904年の作品でロシア革命まではまだ13年の時があります。我々はロシア革命を知っているので、ここですでにラネーフスカヤがとんでもない悲劇にあったように錯覚してしまうのです。
Proof

Proof

ハルナツ

シアター風姿花伝(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/29 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

【日本語版】を観劇、【英語版】もあり(60分+10分+55分)
亡くなった天才数学者ロバートの遺稿から画期的な証明(proof)が発見される。状況から故人の手になるものと思われたが娘のキャサリンは自分が書いたと主張する。さて真実は…。

というミステリー風な看板を掲げているが、実は数学でもミステリーでもないラブストーリーなのだ。キャサリンのことを恋人のハルは信じたいのだが彼の数学者としての理性はそれを拒否する。証明を精査している内にハルはあることに気づく…。

そういう葛藤と昇華の物語。と続ければかなり正確な紹介になるだろう。前にダルカラード・ポップ版を観たときは数学でなくても小説でも何でも良いだろうにと反発したのだがこの舞台も観て数学であることの必然性に少し理解が深まった気がする。

この公演は小林春世さんと佐藤千夏さんによるユニット「ハルナツ」の旗揚げ公演。お二人は持ち味全開というかやりたい放題(笑)。私はロバート役の高川裕也さんの落ち着いた良き父親振り(と静かな狂気)に好感を持ったが、会場で一緒になった知り合いの女性はハル役の祁答院雄貴(けどういん ゆうき)さんがいたくお気に入りの御様子。確かにイケメンでオーラが出ていた。ああしかしロバート役はダラカラード・ポップ版の中田顕史郎さんの派手な演技も良かったなあ。原作の設定は静だと思われるがそれを外した中田節は誰にも真似はできない。

二回目は一回目とは真逆に下手後方から観劇。
場所のせいか熟成が進んだのか私に余裕ができたのか前回とはかなり印象が異なる。特にロバートが感情を激しく表すようになったと感じたが観る場所の違いかもしれない。主宰のお二人はやりたい放題と書いたが小林さんはNYKのセレブ風から田舎のマイルドヤンキー風まで声色も変えなが表現力の幅を試す一方で佐藤さんはひたすら自分の道を追求していて対照的であった。

会場は2回とも満席で新団体まずはめでたし。

灰色の街

灰色の街

Project JUVENILE

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

殺人請負会社のお陰で成り立っている街というブッ飛んでツッコミどころしかない設定は良い。そして主要な役者さんは自分のキャラを確立し演技もしっかりしている。

だが、そこで展開されるのは時代劇やヤクザ映画や刑事ドラマなんかで見たようなシーンばかりだ。こういうお話はいくつかキーワードを与えるとChatGPTなんかのAIが作ってくれるようになるだろう。人間はもっとワクワクするものを作らないと。

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

意外性の全くない筋書きだった。
追記:
…と書いてから考えた。何か別の意味があるのではないかと。次の二つがすぐに思い浮かんだ。

1.これはEpisode1ですべての差別がなくなった未来を描くEpisode2がある。
2.実はこの戯曲はあらすじを ChatGPT で作った実験戯曲なのである。

この二つを検討して行くうちにEpisode2をChatGPTで作るとどうなるかが俄然気になって来た。長くなるので結果はネタバレBOXへ。

ネタバレBOX

以下は無料版 ChatGPT との質疑応答です。

まずはテスト

質問1
CoRich舞台芸術って何ですか

ChatGPT
CoRich舞台芸術(コーリッチぶたいげいじゅつ)は、日本の演劇情報プラットフォームであり、演劇関連の情報を提供しているウェブサイトです。CoRichは、「コミュニケーション(Communication)」と「リッチ(Rich)」を組み合わせた造語であり、演劇に関わる人々が情報を共有し、舞台芸術の豊かな体験を実現することを目指しています。

CoRich舞台芸術では、演劇公演やイベントの情報を掲載しており、舞台作品の上演情報や劇団・俳優のプロフィール、チケットの購入などを提供しています。利用者はウェブサイト上で公演を検索し、気になる作品や劇団を見つけることができます。

また、CoRich舞台芸術では、演劇制作に関わる人々が自ら公演情報を登録・掲載することもできます。これにより、新人劇団や個人の演劇作品も多く紹介され、幅広い舞台芸術の情報が集まっています。

CoRich舞台芸術は、演劇を愛する人々にとって便利な情報源となっており、演劇文化の発展と舞台芸術の普及に貢献しています。

質問2
「ベニスの商人」でのシャイロックへの差別をどう思いますか。

ChatGPT
「ヴェニスの商人」におけるシャイロックへの差別的な扱いは、多くの人々にとって懸念の対象となっています。劇中では、シャイロックがユダヤ人であることに基づいて、彼に対する偏見や差別が描かれています。

シャイロックは劇中で商取引を行う金貸しとして描かれ、キリスト教徒のキャラクターたちからは嫌悪や侮蔑の目で見られ、冷たい扱いを受けます。また、彼が復讐を企てる場面も描かれ、その行動によって彼が悪役として描かれることもあります。

このような描写は、当時のユダヤ人に対するステレオタイプや偏見を反映していると指摘されています。ユダヤ人は中世から近代にかけて迫害や差別にさらされてきた歴史があり、その背景を考えると、シャイロックのキャラクターがユダヤ人コミュニティに対する差別を助長する要素を含んでいると感じる人々もいます。

ただし、文学作品は時代や文化の産物であり、当時の社会の偏見や価値観を反映することがあります。シェイクスピアの「ヴェニスの商人」もその例です。これにより、作品を批判的に読み解くことや、その中の差別的な要素に対して議論を起こすことが重要です。

重要なのは、作品を通じて差別や偏見を助長することではなく、むしろそれらを問いかける、議論を呼び起こす、または反省を促すきっかけとなることです。また、ユダヤ人差別や他の形態の差別を根絶し、共感と理解を促進するための努力を続けることが重要です。

質問3
すべての差別が無くなった世界の良いところと悪いところは何ですか

ChatGPT
仮にすべての差別が無くなった世界が実現した場合、以下に良いと考えられる点と悪いと考えられる点を挙げることができます。ただし、これらは一般的な観点からの考察であり、個々の意見や文化によって異なる可能性があります。

良いところ:

平等な社会: 人々は性別、人種、宗教、性的指向などに基づく差別を経験せず、平等な機会と扱いを受けることができます。
多様性の尊重: 個々の個性や文化的背景が尊重され、多様性が受け入れられる社会が形成されます。これにより、異なる視点や経験からの豊かな意見やアイデアが生まれる可能性があります。
社会的結束力: 差別がなくなることで、人々はより一体感を持ち、協力や共同の目標に向かって働くことができます。
平和と調和: 差別による対立や紛争が減少し、平和的な社会が実現する可能性があります。

悪いところ:

失われる多様性: 差別がなくなることで、文化的な多様性や個々のアイデンティティが薄れる可能性があります。
競争の欠如: 社会的な差別がなくなることで、競争の要素が減少し、モチベーションや成果の向上に影響を与えるかもしれません。
問題の不可視化: 差別がなくなることで、過去や現在の社会の不平等や問題が見えにくくなる可能性があります。これにより、改善や対策が遅れる可能性があります。
以上は一般的な観点からの考察ですが、実際の社会や個人の経験や価値観によって評価が異なることを念頭に置いてください。

質問4
すべての差別が無くなった未来を悲観的に描く小説のあらすじを書いてください

ChatGPT
タイトル: "The Price of Uniformity"

あらすじ:
「The Price of Uniformity(均一性の代償)」は、すべての差別が無くなった未来社会を舞台にした悲観的な小説です。

物語は、近未来の地球で展開します。科学技術の進歩により、人類は差別を根絶し、均一な社会を実現しました。人々は性別、人種、宗教、性的指向などによる差別を経験せず、平等な機会を享受しています。しかし、この均一性の代償として、社会には深刻な問題が生じています。

主人公であるエミリーは、この均一な社会で生きる若い女性です。彼女は感情や個性を抑制することを求められ、異質なものを排除する文化に疑問を抱いています。彼女は自由や個別性を求め、均一性に疲れ果てていきます。

物語は、エミリーが均一性を打破しようとする決意を抱き、抵抗運動に参加することから進展していきます。彼女は秘密のグループに加わり、人々に異なる意見や感情を持つことの重要性を啓蒙しようとします。

しかし、エミリーの抵抗運動は社会の安定と均一性を脅かすと見なされ、徐々に反対派の弾圧が始まります。言論の自由は制限され、個々のアイデンティティや文化的多様性を表現することは危険となります。

最終的に、エミリーは絶望感に苛まれながらも、自由と個性を求める戦いを続けます。物語の結末では、エミリーが均一性に立ち向かう決意を持ちながらも、社会の力によって押し潰される悲劇的な結末が待ち受けています。

「The Price of Uniformity」は、均一性がもたらす問題や自由の喪失を通じて、現代社会における多様性と個性の重要性を考えさせる小説です。

*少し時間が経ってから再開

質問5
差別の無くなった未来を悲観的に描く小説を書いてください

ChatGPT
タイトル: 意味のない平等

第一章: 幻影の平和

それは、差別のない未来、人々が永遠の平和を享受する世界であるとされた。しかし、その幻想的な平等は何かが欠落していることに気づく人々によって徐々に明らかにされていく。

主人公、アリアはその世界で生まれ育った若い女性である。彼女は自由に選ぶことができる職業を持ち、教育を受け、政治に参加する機会も与えられていた。人々は外見や出自に基づく差別をなくし、法律は公平に適用されていた。しかし、アリアはなぜか内心に違和感を覚えていた。

第二章: 虚構の均一性

アリアが探求するにつれて、彼女は差別がないとされる社会においても、隠れた差別が存在していることに気づく。個々の人々の違いや特異性は否定され、均一性が求められる社会で、多様性や個性が失われていることに彼女は驚愕する。

人々は全員が同じような考え方や興味を持ち、感情を表現する自由も制約されていた。文化や芸術の多様性は抑圧され、単一の基準に基づいたものが奨励されるようになっていた。アリアは、自分自身が本当に自由であるのか疑問を抱く。

第三章: 偽りの平等

アリアは徐々に、差別のない社会がどのようにして支配と統制に変わっていったのかに気づく。政府は平等という名の下に、人々の行動や思考を監視し、コントロールするシステムを築き上げていたのだ。

個人のプライバシーは侵害され、思想や表現の自由は制限されていた。政府は個々の幸福や満足度を定義し、人々の人生に介入する権限を持っていた。アリアは、この偽りの平等が本当の自由とは程遠いものであることを悟る。

第四章: 絶望の目覚め

アリアは抑圧された現実に対して闘争心を燃やし、秘密の抵抗運動に参加する。彼女は他の人々とともに、本当の自由を取り戻すために闘い始める。しかし、政府は彼らの存在に気づき、容赦なく追い詰めてくる。

過酷な戦いの中で、アリアは友人や仲間を失い、苦難に立ち向かう。彼女は自らの存在意義と、本当の平等とは何かを再考する。差別のない社会がもたらした偽りの平和と自由の喪失を痛感しながら、アリアは最後の戦いに臨む。

結末: 灼熱の闘争

アリアと抵抗運動は、政府に立ち向かう最終決戦へと突入する。彼らは勇敢に戦い続けるが、政府の圧倒的な力に対して苦しむ。

しかし、アリアは最後の瞬間に、差別や不平等のない社会が本当の平等ではないことを理解する。真の平等とは、個々の人々が異なる存在であり、それぞれが独自の才能や欲望を追求できることであると悟る。

アリアはその認識を抱えながら、自らの信念を貫き、政府との壮絶な戦いに挑む。彼女の犠牲と闘争の意義は、未来の世代に受け継がれることとなる。差別のない社会は終わりを迎え、人々は再び多様性と自由を求める道を歩むのだった。

注: この小説は、差別がない社会が持つ可能性とリスクを探求するためのフィクションです。差別のない社会を望むこと自体は素晴らしい目標ですが、その達成には慎重なバランスと個人の多様性の尊重が必要です。

質問6
戯曲にしてください

ChatGPT
タイトル: 「均質化の闇」

登場人物:

アリア: 若き反抗者
エリック: 政府の高官
サラ: アリアの友人
レオン: 抵抗運動のリーダー
ガード: 政府の手先
場面: 均質化された未来の都市。政府の本部や市民の居住エリアが描かれる。

第一幕: 憂鬱な均質化

(舞台は都市の中央広場。アリアとサラが話しながら歩いてくる。市民たちは皆、同じような服装をしている。)

アリア: (不満そうに) サラ、この都市はなんだか憂鬱で均一な気がするわ。どこを見ても同じ景色、同じ顔、同じ考え方…何かが違う気がするわ。

サラ: そうね、アリア。政府は差別を無くし、平等を実現するために頑張っているんだけど、でも私も何か物足りないって感じがするわ。

(エリックが現れる。彼は堅苦しい服装をしている。)

エリック: 二人とも、都市の均一性を疑問視しているのですか?

アリア: あなたは誰?

エリック: 私はエリックと申します。政府の一員です。均一な社会は誰にとっても公平で安定したものです。個人の違いは問題のもとですから、我々はそれを排除したのです。

サラ: でも、私たちは自由に選ぶことも、個性を表現することもできないじゃないですか!均一な社会だからこそ、私たちは自分らしさを失っているんです。

第二幕: 反抗の火花

(アリアはレオンと出会う。彼は抵抗運動のリーダーである。)

レオン: アリア、君の考え方に共感する。政府は自由を奪い、均一性の名の下に我々を縛り付けている。私たちは抵抗しなければならない。

アリア: でも、どうやって?

レオン: 私たちの存在を政府に示す必要がある。行動し、声を上げることで、均一な社会の闇を明るみに出そう。

(アリアとレオンは抵抗運動を組織し、政府の監視カメラや制限を回避しながら行動する。)

第三幕: 抑圧と真実の闘い

(政府の手先であるガードがアリアたちに気づく。追跡と逮捕のシーンが展開される。)

ガード: 逃げられると思うなよ!均一な社会の秩序を乱す者たちよ、お前たちは罰せられるべきだ!

(アリアとレオンは奮闘しながらも、政府の追跡をかわす。最終的にアリアはエリックと再び対面する。)

アリア: エリック、もう十分だわ!均一な社会は偽りの平和であり、私たちの個性と自由を奪っているのです。

エリック: それが君の意見か…では、私たちは終わらせるしかない。

(アリアとエリックの対決が始まる。アリアは自分の信念を貫き、エリックに立ち向かう。)

最終幕: 希望の息吹

(アリアはエリックを打ち破り、抵抗運動は勝利を収める。市民たちは政府の支配から解放され、個性や自由を取り戻す。)

レオン: アリア、君の勇気に感銘を受けた。この勝利は私たち全員のものだ。

アリア: ありがとう、レオン。この闘いはまだ終わりではないけれど、私たちは希望を持って前に進まなければならないの。

(舞台は変化し、市民たちは自由な表現や多様性を大切にする社会を築いていく。希望の未来が描かれる。)

注: この戯曲は、均一な社会が個性や自由を抑圧する可能性を描いたフィクションです。個々の違いや多様性が尊重される社会が望ましいとされる一方で、均一性の追求は慎重に行われるべきであり、個人の自由と幸福を重視する必要があります。
或る女

或る女

演劇企画集団THE・ガジラ

シアター風姿花伝(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

会場に入ると赤ん坊の悲しげな泣き声が流れている。それが開場から開演まで休むことなく続く。あまりに気持ちが悪いのでトイレに行ったりしてできるだけ聞かないようにしていたが、ほとんどの皆さんは何事もなく着席している。この時点で来てはいけないところに来てしまったと悟るべきだった。

お芝居が始まると今度は怒鳴り声が飛び交い、ところどころ何を言っているのか分からない。そして突然の大きな音、特に大きな鉄の蓋をバタンと閉める音は心臓に悪い。金と時間の無駄は良いけれど健康まで蝕まれては困るので中休みで退散した。

まあ蒙古タンメン中本に行って辛いと文句を言っても仕方がない。迷い込んでしまった私が悪いのだ。この団体には二度と近寄らないだけだ。

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。

という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。

実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。

登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…

ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。

SUNNY

SUNNY

梅田芸術劇場

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/06/26 (月) ~ 2023/07/05 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

あらすじ:夫や娘との生活もまあまあ順調な奈美(花總まり)は母親の入院先で偶然30年前の高校時代の遊び仲間「サニー」のリーダー千夏(瀬名じゅん)に会う。千夏はガンで余命1か月だという。彼女の願いで昔の仲間を探すことになる。彼らはある事情で連絡を取り合うことが無くなっていたのだった……

舞台は二段に分かれ、主に下の段で現在を上の段で高校時代を展開する。同じ人の現在と過去の姿が全然似ていなかったりするのはあまり気にしないことにしよう。

よくあるお話で普段なら絶対に行かないのだが「SUNNY」という題名に引き込まれてしまった。「SUNNY」は1966年のBobby Hebbの大ヒット曲。もっとも1976年のBoney M.のディスコバージョンの方が私の耳には馴染んでいる。それでこの曲を中心に60-70年代のアメリカンポップスが歌われるのかと思いきや、他は80年代の日本のポップスであった。オープニングは花總+スクールメイツもどきの「センチメンタル・ジャーニー」である。たしかにこの時期のJ-POPは大豊作なのでこれも良しと頭を切り替えた。何にも考えずに歌とお話を楽しんでいる分には結構快適である。

母娘混合のダンスは体操のレベルだったが、若者だけになって「ダンシング・ヒーロー」の2017年登美丘高校ダンス部版「バブリー・ダンス」で一気にスピード&パワーアップして盛り上がる。ミュージカルとしての不満はここから始まる音楽の怒涛の大波であらかた吹き飛ばされてしまう。
…としても満足度は3つ星半だなあ。

ネタバレBOX

前にも書いたがBrillia Hallは音響が良くない。今回も歌がマイクに乗らず、伴奏や環境ノイズに埋もれてしまう。花總+瀬名の「待つわ」も歌声が浮き上がらないので自分の耳で二つの声を取り出しバランスをとってデュエットにしなければならない。
…と書いてからYouTubeで検索してみると、ゲネプロの歌唱があった。観客ゼロ(でマイク直結?)なので歌声は鮮明だが溶け合っていない。元々お二人の声が合わないのか合わせる気が無いのか、練習回数が不足しているのか、はたまたマイクの音質が硬すぎるのか要因はいろいろあるのだろう。
さらには会場でもこのYouTubeでも感じるのは、プロの歌手でもこういう聴きなれた曲を歌うのは苦手なことがあるということだ。
『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

Pカンパニー

西池袋・スタジオP(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

いやあこれは私には難しい方の別役だ。何かそれらしいことを書いてみたいのだが「説明」にあること以上にはつかみ取ることができなかった。もちろん実際に観たのだから短い文章とは全く違う膨大な情報を浴びているはずだ。しかしそれを沈殿させ言語化することがまるでできない。
まあでも「わが町」も「ガラスの動物園」も観たことがあったのは演劇ファンとしての基礎ができているようで単純に嬉しい。

ダ・ポンテ

ダ・ポンテ

東宝

THEATRE1010(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

素晴らしくて大絶賛ということはないが、地味に良い舞台だった。音響が良くて歌もセリフも明瞭に聞こえる。小編成オーケストラの生演奏も素敵だった。ダ・ポンテ役の海宝直人さんの歌声は朗々と響き、後半の一曲でこの舞台全体の満足度を一段上げてくれる。モーツアルト役の平間壮一さんはセリフは良いが歌声は力が入りすぎて潤いに欠けていたかも。

演出では歌の終わりの拍手の求め方が下手だ。これは音楽劇の基本だと思うのだが他の舞台でも設定をしっかり考えていないなと思うことが多い。この舞台では拍手を求めない曲では間髪を入れずセリフが発せられるのはうまくできていたが、この曲で拍手はないでしょうというのもあった。あの沈黙が辛い。俳優さんには地獄だろう。

ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749-1838)は、イタリアの詩人で台本作家。モーツァルト(1756-1791)の3つのオペラの台本を書いたことで知られている。『フィガロの結婚』1786、『ドン・ジョヴァンニ』1787、『コジ・ファン・トゥッテ』1790。(ウィキペディアから抜粋)

このダ・ポンテ氏、なぜか日本で人気で昨年には
音楽劇『逃げろ!』〜モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ〜
が上演されている。ダ・ポンテは天才ではなかったという設定で音楽もロックだったが本日の舞台では彼は天才であり音楽もクラシックである。

この公演はこの後は名古屋に移り再び東京に戻ってから大阪でフィナーレとなる。
カーテンコールの写真撮影がOKだった。「追記」これはプレビュー公演だけの特典で続く本公演では撮影禁止となった。

池袋Brilliaホールの本公演も行ったが完成度がずっと上がっていた。上で苦言を呈した平間壮一さんも全く問題のない仕上がりだった。また何度かBrilliaホールは音響が悪いと書いたが今回はコーラスの一人一人が聞き分けられるのにしっかり融合していて文句のつけようがない。オーケストラの音が明瞭なのも素晴らしい。どうやらホールのせいではなく音響技術者の問題のようだ。この池袋公演の満足度は星5つ。納得のスタンディングオベーション。

カーテンコールでの観客の動きが面白かった。2ndで立つ人が中段席でチラホラ、しかし前方席は微動だにせず(まあここは私も早いと思った)そして3rdで全員起立。リピーターなんでしょうね。NYの本屋の場面で奥さんが歌った後で食い気味に拍手を入れていたのも彼女らなのだろう。普通は短すぎる歌なので戸惑ってしまう。全体に拍手をするかどうかに困るのは相変わらず。16日の東京千秋楽は2ndで全員起立となると予想。

楽園

楽園

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/06/08 (木) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

こんな田舎あるあるの聞き飽きた話は退屈なだけだ(まあいろいろ現代の日本をまぶしてはいるけれど)。最初の1時間はもう拷問。もっとワクワクするお話を作ってよ。もっとも村長の娘と区長の妻、どちらも嫌味さが秀逸で、かなり興奮させられた。

R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム

R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2023/06/09 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

一人の男が二つの家庭のお父さんを交代交代せわしなく演じる。そんなカオスなオープニングでつかみは十分。理想の家庭とほころびのある家庭、お父さんもなかなか大変だ。そして突然お父さんは殺されてしまう。

犯人は誰かとあまり考えずに舞台に集中しよう。テンポの良い展開でそれは容易だ。そうすれば大きなカタルシスを得ることができるだろう。まあしかし、いつものことではあるけれど、犯人の動機は1ミリも私の心に入ってこない。

初日だったせいか登場人物が多いせいか、俳優さんたちの演技が融合していなかった。同じく恒例のmoveダンスも劇団員抜きで行われたため似て非なる何かになっていた。どちらもしばらく寝かせておけば自然と熟成して行くものと期待している。

ネタバレBOX

劇団の看板俳優が演じる二人の刑事は宮部みゆきの別の作品の主人公であって宮部ファンには嬉しいものらしい。しかし他作品の設定をここで語られてもこの作品には何の関係もなく余計な思考を強いられるだけだ。そういうセリフはカットしても良かったと思うが作者が認めなかったのだろうか。
『カミの森』『<花鳥風月>短編戯曲セレクション1・2』

『カミの森』『<花鳥風月>短編戯曲セレクション1・2』

ティーファクトリー

座・高円寺1(東京都)

2023/05/31 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

一度に3つの舞台が交互上演されているが、今回は2時間を超す長編『カミの森』を観た。あとの2つは短編集。

滅茶苦茶簡単に言うと「兄(今井朋彦)は新興宗教の教祖、弟(加藤虎ノ介)はゾンビ映画の監督。そういう兄弟の20年前に失われた関係の再生の物語」ということになるのだろう。「崩壊した別の家族の修復」も外せないか。

それを様々な演出技法で展開し拡大して行くのだがこちらの頭が回らない。笑いを取りに来る場面があっても一般観客はとまどうばかりでプロらしき一角で反応があるのみ。

今井さんと加藤さんの持ち味は楽しめた。

ネタバレBOX

あらすじ
舞台中央の一段高い台の上で新興宗教の教祖(今井朋彦)が拠点である森の素晴らしさを語っている。

会社を首になった中年男が家族には会社に行くと言って動物園に来ている。それにまとわりつく教団の勧誘の女性。中年男は見学に行くことになる。

森ではゾンビ映画のロケが行われている。実は監督(加藤虎ノ介)は教祖の弟で20年来音信不通であった兄をニュースで見て会いに来たのだった。

ぎこちない再会を果たした兄弟だが、なんとか信徒がエキストラとして出演する折り合いをつける。撮影が順調に進んでいたある日、若い役者が信徒の一人とトラブルになり殺してしまう。この若者、実は入信してその場にいた件の男の子供であった。男が身代わりになることで隠蔽の合意ができる。

事件後、教団は森を追われ、撮影は中止となる。やがて刑期を終えて出所する男の前には迎える家族の姿があった。教団は森から街へ活動拠点を変え、インチキ臭さを倍増してたくましく生き延びる。母の死に際して兄弟の関係が修復される。
『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』

『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2023/05/20 (土) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「クロノス・ビギンズ」を観劇

原田樹里様を久しぶりに拝みに出かけたのだが、かなり後ろの席だったのとどんどん悪くなる視力のために御本人かどうかもよく分からなくて涙目だった。

演目はこの劇団が舞台化を進めている梶尾真治の小説「クロノス・ジョウンターの伝説」の新作「クロノス・ジョウンターの黎明」の最初の上演なのだった。旧作では設計図を渡されその通りに作ったとしか書かれていないが新作ではその辺の事情が少し明らかになる。

シリーズものだがほとんどリセットに近く私のように初めてこのシリーズを観る者にも支障はない。タイムマシン+ラブ・ロマンスがこのシリーズのコンセプトで本作もそのど真ん中である。新しいものや尖ったものはないが普通に楽しめるエンタメ作品であった。

ホロー荘の殺人

ホロー荘の殺人

ノサカラボ

三越劇場(東京都)

2023/05/03 (水) ~ 2023/05/08 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

三越劇場は5月を「ミステリー月間」として二つの公演を行う。
第1弾が本作、アガサ・クリスティーの戯曲版「ホロー荘の殺人」である。1946年の小説版ではポワロが登場するのだが1951年の戯曲版はポワロ無しに改作されている。また論理的にも物理的にも構造が簡素化され舞台映えのする解決篇になっている。70分+15分休憩+90分

5人の女優さんのうち4人が元宝塚である(凰稀かなめ、紅ゆずる、旺なつき、綾凰華)。4人も揃えるのは犯人が誰かを分からなくするためだが、なぜに宝塚なのかは後半になって犯人がブラックな感情を爆発させるところで分かる。普通の女優さんではできない表現をプロデューサーの野坂実さんが期待したのだろう。…って犯人が4人の誰かだって言ってしまった(汗)いやでも4人を差し置いて元アイドルの高柳明音さんが犯人だったりしたら詰めかけた宝塚ファンが暴動を起こすでしょう。配役表を見ると河相我聞さんが犯人臭いけど殺される方だし。

執事役の佐々木梅治さんがさすがの良い味を出しておられた。

夜叉ヶ池

夜叉ヶ池

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/05/02 (火) ~ 2023/05/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初日観劇。いやあ素晴らしかった。今年のナンバー1だ。
泉鏡花というと私的には受験勉強で覚えた名前で作品は読んだことがなく、時代遅れの作家という認識で、あまり期待しないで出かけたのだった。しかし、静から動へのダイナミックな話の展開、美しく斬新な衣装と踊りにすっかり引き込まれて3回目のカーテンコールでは周りの人に先んじて立ち上がってしまった。もちろん視界の端でどなたかが立ったのを確認してからなのだが(笑)

1913年(大正2年)の戯曲、つまり110年前の作品である。大正初期というと日本でもまだ人間と妖怪が共存していた時代だ。雨乞いで若い女子の生贄を捧げることも毎年どこかの村で行われていたという(「大正風俗大辞典」民明書房刊より)。そんな時代のお話……おいおい大正の人に叱られるぞ。

登場人物は
・山奥の釣鐘堂を守る晃(勝地涼)と百合(瀧内公美)、そして失踪した晃を探しにやって来た学円(入野自由)の3人。
・夜叉ケ池に封じ込まれた竜神の白雪姫(那須凜)とその乳母などの家来たち。家来たちは魚の精のようだ。
・干ばつにあえぐ村人たちと議員に雇われたヤクザ者たち。雨乞いを企てている。
の3つのグループに分かれる。
と書くと皆さんストーリーの大筋は想像が付くだろう。まあでもそんな余計なことを考えずに目の前に展開する美しきものことをただただ楽しめば良いのだ。

瀧内公美さんのはかなげな美しさ、那須凜さんの躍動する美しさが堪能できる。私の推しの勝地涼さんはもちろん素晴らしく、眼鏡姿の入野自由さんはぴったりの雰囲気を醸し出している。

原作は短いもので争うシーンの記述も簡素でもちろんダンスシーンなんて書かれていない。そこを限界突破に膨らませたのが演出の森新太郎さんと振付の森山開次さんだ。満足度は余裕の星5つ。

***
千秋楽も観劇

序盤の芝居はほとんど舞台下手で行われるので上手席の今回はかなり退屈であった。しかし魑魅魍魎がワラワラと湧いてくる歌舞伎風「スリラー」の踊りでダイナミックモードに入ってからはそうそうこれこれと膝を打っているうちにそのままエンディングまでハイテンションで持って行かれた。

本当は初日と千秋楽を比べてどう進化したかを比較するはずだったのだが三週間も空いてしまうと今の記憶力では無謀な試みであることを思い知った。

カーテンコールで一番に立つぞと意気込んでいたのだが2nd callで皆さん立ってしまって涙目だった。千秋楽と初日では違って当然。しかし2ndで真っ先に立つ勇気はないなあ。

*当日5/23はPARCO劇場50歳の誕生日ということで入口で御礼の大入袋が全員に配られた。中身は恒例の5円玉1枚。

令和5年の廃刀令

令和5年の廃刀令

Aga-risk Entertainment

としま区民センター・小ホール(東京都)

2023/05/01 (月) ~ 2023/05/02 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

アガリスクらしさが満喫できる一作。文句があるとすればもう少し長くて変化があればなあということくらい。まあでも建前はタウンミーティングなのだからこんなものか。

私が参加した回の投票は廃刀令賛成が6割、反対が4割くらいだった。アメリカの銃社会の置き換えなので日本人が真面目に考えればほとんどが賛成だろう。しかし、それでは投票後の舞台がつまらなくなるので敢えて反対をした人(あるいはただのひねくれ者)が4割いたということだと思う。私ももちろん条例案には賛成だが投票は反対に入れた。

やさぐれた江益凛ちゃんが最高だった。

ネタバレBOX

作家って便利だなと思ったのは登場人物に毒を吐かせることができることだ。「(被害者の)関係者の意見を重視するのは間違いだ」とか「規制のために特定の産業が無くなっても仕方がない」とか言わせる。私なんかは聞いただけでドキドキするのだが、ナチスもお笑いにしてしまうこの作者にとっては塩を一振り二振りする程度のことなのだろう。
二次会のひとたち

二次会のひとたち

エイベックス・エンタテインメント

紀伊國屋ホール(東京都)

2023/04/14 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

美村里江さんってあのミムラさんか。どこかで見た顔だなあと思いつつ終演後検索して初めて分かった。相変わらずの透明感が嬉しい。その美村さんは新婦の先輩同僚役で、披露宴には出席しない二次会の幹事という微妙な立場の4人を、幹事長として仕切って行く。かなりタカビー(死語?)で言葉はきついが苦労もしてきたらしく角は丸い、その微妙さを美村さんが見事に演じる。

前半は初回の打ち合わせ。新郎新婦や上司の悪口がちょうど私(そしておそらく多くの観客)のレベルに合っていてかなり笑える。休憩なしに後半は結婚式当日。すっかり調子が変わって4人のこれまでが語られる。意外な人が意外な過去を引きずっている。

素直な人もひねくれ者も楽しめるように入念に作られたお芝居である。一つだけ私には??なエピソードがあって星4つにしたいところだが、他があまりに良くて満点以外にできない。舞台セットがしっかり美しく作られていることも満足度を上げる。

劇中でこんなクイズがある。「私がこう答えるような質問は何でしょうか?」というもの。たとえば、私(lattice)が「最近はしていません」と答えるような質問は何かということである。クイズのくせに曖昧さが肝なのだ。劇中の問題は色々な要素からなるほどと思われるものなので会場では先回りして答えを考えよう。今のクイズの答えは「マスクをしていますか?」となる。少しは面白さが伝わっただろうか。例が悪くて分からないよと愚痴ったそこのあなた、ぜひ会場へ!

エンジェルス・イン・アメリカ【兵庫公演中止】

エンジェルス・イン・アメリカ【兵庫公演中止】

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/04/18 (火) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

第1部が 60分+(15分)+60分+(15分)+60分の3時間半で
第2部が 90分+(15分)+65分+(15分)+55分の4時間
という演じる方も観る方も限界に挑戦の大作。
第1部第2部日替わりでも大変なのに一日で第1部第2部をやってしまう日もある。
これが4月18日から5月28日まで21セットも続くのだ。

第1部初日は満員の盛況。
ここまではゲイやクスリやレーガン政権中枢にも近い剛腕弁護士のお話が真面目かつ不真面目に進行する愉快な舞台だ。当時のアメリカ事情を知っているとより楽しめるのだろうなというところもあるが、長いのに全然疲れないので安心して7時間半を楽しもう。
第2部初日は空席がある。
前日の第1部を観た人でも第2部は後日にすることがあるし第2部から観始める人はいないだろう。第2部は第1部以上に脱線して楽しい。さすがに最後の55分は尻が痛くなったが驚くほど疲労感がない…ってもちろんクスリはやってませんよ(笑)

一番の見どころは那須佐代子さんの第1部第2部冒頭のスピーチである。扮装、声色、身のこなし、すべてが過剰な演劇史に残る怪演である。絶対に遅刻してはいけない。
第1部ではユダヤ教のラビに扮して葬儀で故人がコミュニティの本拠地を西部に移したことを讃える。これはモルモン教が各地の住民との衝突ののちソルトレイクシティーに本部を移して発展したことを指すのだろう。何故ユダヤ教のラビなのかは不明。
第2部では古参の共産党員に扮して(ゴルバチェフのペレストロイカに対して)理論なき改革は蛇が新しい皮なしに脱皮するようなもので死を招くと大アジ演説をぶつ。

全体の内容は政治的な側面もあって判断に困っているので書かない(書けない)。主な人物だけ挙げておく。他にも皆さん二役三役といろいろな味を出すのでそこも見どころである。

ベリーズ(浅野雅博)看護師、黒人、同性愛者
プライアー(岩永達也)名門の末裔、同性愛者、ルイスなどの愛人、エイズ患者
ルイス(長村航希)裁判所ワープロ係、同性愛者、プライアーなどの愛人、反共和党、ユダヤ系
ジョー(坂本慶介)ハーパーの夫、裁判所書記官、モルモン教徒、同性愛者
ハーパー(鈴木杏)ジョーの妻、薬物中毒者
ハンナ(那須佐代子)ハーパーの母、モルモン教徒
天使(水夏希)アメリカ大陸担当の天使、かなり保守的
ロイ・コーン(山西惇)政権中枢に近い剛腕弁護士。同性愛者、エイズ患者、ユダヤ系、ここまでの8人中唯一の実在の人物

ミスター・ライズ(浅野)ハーパーの夢の中の旅行業者
エセル・ローゼンバーグ(那須)夫とともに原爆の機密をソ連に渡したとして死刑になったユダヤ人。検察官時代のロイ・コーンが死刑の画策をした。この戯曲の書かれた当時は冤罪の疑いが強かったが今では実際にソ連のスパイであったことが分かっている。

役者さんは皆さん素晴らしく私の下手な感想は邪魔なだけだ。
よく分かっていないけれど見栄も込みで満足度は星5つ。

彼女も丸くなった

彼女も丸くなった

箱庭円舞曲

新宿シアタートップス(東京都)

2023/04/12 (水) ~ 2023/04/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

題名とはかなり違って、実際の内容は作者の最近の社会問題についてのエッセイだ。大雑把にまとめると「ハラスメントについて」ということになるだろうか。一番目立つのは「*ネタバレbox参照*」な大迷惑正義の味方野郎である。まあこの件は右も左もないが、他では最近の風潮に軽く疑念を呈するところもあって新鮮に感じられた。これは私の誤解かもしれないので各自確かめていただきたい。

演劇の作りは時系列不詳のピースを提示されて終演にかけてどんどん全体像が見えて来るものだ。面倒くさいが頭の体操にはなる。まあそれは良いのだが、ほとんどの会話が遅延の大きな電話越しのようにぎこちないのが疲れる。「あっ」とか「はっ」とか言って発言を繰り返させてしまったりする。私自身が電話ではこういう会話になりがちなのも不快だった原因ではある。しかし、タイミングの合わない会話を続ける役者さんたちには本当に感心してしまう。単にタイミングが合わないのではなく“微妙に”合わないのだ。そして合わない間隔は一定でなければいけない。地獄だと思う。そこは凄いのだけれどもやはり不快なのでこの作者の作品はもう観ないとなってしまう。

ネタバレBOX

大迷惑なのは「飲み会で女性が潰れるのを止めなかったのは結果的にその後の(別の人物による)レイプの手助けをしたことになる」として謝罪のために過去をほじくり返して関係者の閉じた傷口をまた開いてしまうこと。
Call me Connect you〜交渉人遠山弥生〜

Call me Connect you〜交渉人遠山弥生〜

劇団6番シード

六行会ホール(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

4年ぶりの6番シード。出演者に土屋兼久さんのお名前がないので調べてみると2021年に退団されていたのだった。そこは残念なのだが新人の補強もあって今作は素晴らしい出来上がりになっている。

交渉人が主役のコメディー。人質事件の緊迫感もあり、謎解きの要素もあって雨の中遠くまで出かけた甲斐があった。1時間45分休憩なし。

二階建ての舞台を使ってスピーディーに場面が転換して行くのはTVか映画のようだ(褒めてます)。そして舞台装置、衣装、もちろん硬軟自在の演技すべてに完成度が高くどなたにもお勧めしたい。

犯人役の小林亜実さん、本番中は当然ながら怖い表情だったがカーテンコールでは穏やかな笑顔がとてもチャーミングで一瞬でファンになった。

ネタバレBOX

唯一、残念なのは真相がうやむやのまま終わったことである。そこで星を一つ減らした。

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