ケイが投票した舞台芸術アワード!

2017年度 1-7位と総評
手を握る事すらできない

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手を握る事すらできない

劇団時間制作

初、劇団時間制作。舞台上は教室のセット。小劇場の中に作られたその教室の中で繰り広げられるリアル過ぎる「いじめ」。痛々しいシーンが続くけど、目が離せない、目を背けたくはなる、、、感情揺さぶられまくった。。大人は学校で子供たちに「居場所」があるかどうかなんて考えない。というより、あって当たり前だと思い込んでる。自分の娘は来年から小学生になる。娘の一日を監視することなんてできない。この舞台を観て怖くなった。うちの娘は大丈夫か?「居場所」見つけられる?その「居場所」は間違ってない?不安が胸を押し付けてきた。
主演の村田を演じた田名瀬さんの芝居、1日たった今でも心を揺さぶってくる・・・
演出、役者さん、素晴らしかった。稽古中も本番中もきっと心も身体も結構追い込んだんじゃないかな。。
観てよかった、本当に。

世界は嘘で出来ている

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世界は嘘で出来ている

ONEOR8

良かった。孤独死した弟の死体、部屋を片付ける特殊清掃員の兄。なんともシュールな設定だし、とにかく切ない・・・兄役の甲本さんはさすがの演技。弟役の恩田さんの演技は観ていて苦しくなるくらい哀しかった。嘘をついて生きながらも決して1人にはなれない。誰かに、何かにすがっていないと生きていけないけど弱みも誰にも見せたくない。虚勢を張って生きる弟。その演技を見ているだけで涙が出てきた。
終盤、清掃が終わったガラリとした部屋で兄は岡山に住む母親に電話をかける。
「苦しまずに亡くなったみたいよ。友達なんかもたくさん駆け付けてくれて・・・」
嘘などつかず、実直に弟を守りながら生きてきた兄の「嘘」。ここの甲本さんのシーンにすべては集約されていた舞台だった。
笑わせようとせずとも笑えるし、泣かせようとせずとも泣かせる。ONEOR8は物語も演技も素晴らしい。
個人的には、兄弟の「母」を演じた異議田夏葉さん、最高!

以心伝心311

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以心伝心311

劇団PIS★TOL(ゲキダンピストル)

東日本大震災、原発に揺れ動く福島の街をテーマ、舞台にした作品。
日程的に観にはいけないと思ってたんだけど、やっぱり気になったし急遽観に行ってきた。
結果、観に行って大正解!だった。楽しかった、哀しかった、感動した。
難しいテーマを「タイムスリップ」という手法を使って観客を引き込み、随所に笑い、個性の強いキャラクターをちりばめ、飽きのこさせない作りになってたと思う。なにより、作り手やキャストたちの一生懸命さ、情熱がヒシヒシと伝わってきた。これはカーテンコールの後にも続いたお客さんの拍手でも感じ取れた。みんなで共有できた舞台になってた。
多少粗い芝居もあったけど、それもまた良しとして、作り手、キャストみんなに拍手を贈りたい❗️

夕顔

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夕顔

日穏-bion-

栃木のかんぴょう農家の3姉妹を軸とした物語。人物の設定も良かったし、無駄のない演出も良かった。出演者のみなさんがみな芸達者なのでまるでネイティブな栃木訛りもはまった。笑わせようとする芝居ではなく、観ていると自然と笑えてくる仕草や言葉が好感持てるし、中盤からのシーンでは涙をこらえるのに必死になったほどだったんだけど、これも強引に泣かせに入った感はなしで良かった。
脚本、演出、キャスト、みんな好みで大満足の芝居が観れた。もう一度観たい。家族にも観せたい。

売春捜査官

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売春捜査官

稲村梓プロデュース

初見。前回公演の評判がよかったので、再演されれば必ず観ようと決めていた。結果、ものすごい物を観られた。稲村梓演じる木村伝兵衛、惚れた。
前半の小気味のいい芝居に演出、少し飽きがくるような場面もあったにはあったけど、こういうやりとりが結果、後半の緊張感漂う場面に生きてくる。後半の熱海でのシーンは圧巻。鳥肌が立つほどの役者の迫力だった。
次回また再演があるとしたら必ず観たい。中毒に似た感覚、稲村梓の木村伝兵衛をまた体感したい。

山笑う

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山笑う

小松台東

演出、役者、空気感、客席、スタッフ・・・みな星5つ!最高な空間だった。
会場に着くなり、スタッフさんみな喪服。「あれ?今日ここでなんかあるの?舞台だよな??」とちょこっと心配になっちゃうほどの細かい演出。セットも葬儀場の親族控室にテーブル1つといたってシンプル。けれども登場人物は、濃い!濃いんだけどもいたって「普通」の人たちを描いているんだよね。要はキャラクターの設定、作りこみ、役者の入り込み加減。すべてリアル。宮崎弁もとても心地よく聞けるようになってきたし。1幕もので、効果音などは一切なく、セリフと仕草と登場人物たちの「間」とで空間が成り立ってる。セリフを噛んだら大変だな~なんて思ったけど、心配することはなかった。もう、登場人物になりきった役者さんたち、役者でなく、「家族」になってた。。
すごい好き、小松台東。と、今回の役者さんたちも。

おいしい鍋と愛の話

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おいしい鍋と愛の話

HitoYasuMi

カフェ公演なんかはしていたみたいだけど、劇場公演は初というユニット。初見。
大村仁望、川村美喜、飯坂泰子の3人の女優ユニットに男優ゲストを1人迎えての公演だった。この3人は実はかつて所属していたストレイドック時代から見ていて、その頃はかなり勢いのいい、ちょこっと悪く言うと勢いだけの・・という感覚もあったんだけど、今回の芝居は素晴らしかった。出来上がってた^^演出も良かったし、3人の距離感も抜群に良かった。合宿までして挑んだらしいけど、見事に実を結んでいた気がする。ゲストの佐藤正和さんも楽しかった!とにかく3人の成長を感じた良い芝居だった。
言いたいことがあるとすれば、お客さん。自分も含めて男が多い。。。3人の娘たちのユニットだから仕方ないのかもしれないけど、女性が共感できるような内容なだけにもっと女性のお客に観てもらいたかったなと。自分が言うのもなんだけども^_^;

総評

今年は「劇団時間制作」「劇団PISTOL」等々、はじめて観劇する劇団の芝居に驚かされた。特に1位に上げた時間制作の演出、役者の演技は身震いすら感じるものだった。
ONEOR8の「世界は嘘で出来ている」もショッキングな内容ながら濃いキャラクターを生かして随所に笑いも交え、「孤独死」という重いテーマながらメリハリのある観客を引き込む作りだった。
役者でいうと、もっとも印象に残ったのは時間制作の「田名瀬たかとし」。気持ちの入った素晴らしい役者さん。今後も大注目。女優さんは「異議田夏葉」。この人の表情、大好き。
今年は外れもあまりなく、いい観劇が出来た1年だったように思う。

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