新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス
NICE STALKER
スタジオ空洞(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
小学生の時、教室で「お楽しみ会」っていうのがあったな~と、会場の配置がまさにその「お楽しみ会」で気持ちの距離間がすごく近いのと、この次何が飛び出すの!?感が全体に溢れていてとても楽しい。
衣装が良い塩梅に凝っているのも心憎かった。
演目の「あわれ彼女は娼婦」はなんと1630年頃の作品。
ちゃんとやれば3時間超えの超大作だそうで、あらすじも知らずに行きましたが、これが笑っちゃうほど分かりやすい。
本来いかに説明的にならずに状況把握させていくかの演劇だけれど、もうバンバン説明(解説)しちゃってるし(笑)
物語の基本をおさえつつ、凄く残酷なシーンを見事に笑いの湧き起るシーンに変身させたり、「NICE STALKERさんって普段こんな感じで演出をつけているのか?」とちょっとだけ舞台裏が垣間見えたり、
一歩先の展開がどうなるのか読めなくてもナビゲートに身を委ねていればちゃんと楽しめるという何とも快楽的な流れになっていました。
実際、この演目に関しては今回の見せ方があってこその「面白い」の部分が多く
「途中過程」という名の完成形と言えば良いのか、ここまで「あわれ彼女は娼婦」を楽しみ味わいつくせば、絶対的に「全編公演」を目指さなくとも、とりあえず賢者タイムで良いのではないかと個人的には思うのでした。
パレードを待ちながら
演劇企画イロトリドリノハナ
テアトルBONBON(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
紛れもなく戦争を捉えた作品 でありながら戦闘シーンは一切なし。
描かれるはご近所同士で集まった国防婦人会の面々。
さぞかし連帯感ある女性達の集まりかと思いきや冒頭のダンスシーンでそうでもない事が直ぐに判明。
このダンスシーン、当然台詞は無いのだけれど登場人物達の個性や微妙な関係性が容易に見て取れて妙に面白い。
観進めていく程に彼女達のバックボーン(夫が出征しているとか志願中であるとか)が実に多様であり、それぞれの事情や思惑が絡み合って何かと摩擦が起きやすくなっているのだと徐々に理解。
前半ではそうした内情をひとつひとつ汲み取っていくのに必死だったけれど休憩を挟んでからの後半、それらを踏まえたうえでの展開にはグッと引き込まれ怒涛で駆け抜けていった感じ、そのあまりの体感時間の違いは驚くほど。
女性だけのキャスティングだからと言う勿かれ、華やかさやドロドロ、弱さも強さも全部入り混ざってめっちゃ女性を描いたドラマになっていました。
何と言っても個性のぶつかり合い
ダブルキャストの(息子の身を案じている)同じマーガレット役でも
田原みずほさんの場合はナチュラルに嫌味を滲み出しながら堅物そうでいて実はむっつり何とかの一面にニンマリ
森下知香さんの場合は辛口発言の連発、どこか引っ掻き回しを楽しんでいるふしがあるコミカルな策士といった感じで全然違った印象。
そこに絡む相手(シングルキャスト)の印象まで変わって見えるのだから実に面白い現象だと思いました。
真っ赤なブルー
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/09/15 (木) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
脚本の取り替えっこ、演出の取り替えっことも言えるけれど結果的に 「生きること」と戦う少女2連作みたいになっていて興味深かったです。
確かに違う個性なのだけれど、何か凄く似た者同士じゃん!的な部分も同時に感じられたり
それぞれに自身が書いたものと同じくらい一体化した状態で落とし込まれているんだろうなーと思いながら拝見しました。
生きていくうえで主人公少女が挑む相手として1作目 結城さん脚本では少女自身(自分の内面)なのに対して2作目平安さん脚本では社会(特に大人)に目を向けているのが特徴的
1作目は自分の意志というものが全く無い自分をとことん見つめ直して追い込んで、結果 自意識をめっちゃ肥大させながら(笑)自身のあるべき姿を追い求める結城さんらしい作風。
2作目、これを観ている自分って少女からピストルを向けられる立場にあるのだなぁと、ちょっと哀しくもあるけれど、そうかもね、そうだよね、頭の片隅でそう意識しておいた方が良いよね、と
周りの同級生よりちょっと真面目で繊細と言えば良いのでしょうか、こちらの少女も生きづらそう、でもってハードボイルドファンタジーな世界観
やっぱり主人公と同年代の人が観ると(頭で考えてじゃなく感覚的に)同調できる部分があるのかなと、そんな目線からの感想も聞いてみたいと思いました。
女子高生を対象に上演するっていうのも良さそう。
笑顔の砦
庭劇団ペニノ
吉祥寺シアター(東京都)
2022/09/10 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
隣り合った二つのアパート部屋。
ストーリーが展開するというより二つの生活そのものが営まれていたと言った方が全然しっくりくる演出。
しかもストーリーよりもずっと強く感情を揺さぶってくるのだから凄い、何なんだこれは!という感じ。
生活の匂い、凍える寒さにとる暖、無遠慮な会話、人と、家族と生きていくという事・・・
観進めるほどに五感が研ぎ澄まされていく様で、皮膚感覚ごと舞台世界へと引き込んでいくなんて相当。
86歳認知症役の女優さんがカーテンコールでシャンとした立ち姿だったのに何だかホッとなる。まるで別人。
フライヤーの人がリリー・フランキーぽいと思っていたけれど、やっぱりちょっと似てた、と言うかちょっとフランキー似の本物の漁師にしか見えなかった。
これは全ての役者さん然りで「あてがき」なんていうレベルを超えていたのも凄いと思った。
舞台「学徒隊」
NPO法人文化活動支援会まつり
南大塚ホール(東京都)
2022/09/09 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第一幕はレトロでのどかな学園風景。
ちょっとコミカルにも感じるショートショート集からは、校内での人間関係や人物像が浮かび上がってきます。
そして第二幕、沖縄戦に動員された彼等の姿が
当然ながら第一幕での恋バナなど微塵も無くなって、戦場の描写はこれでもかと容赦ない。
敗戦の匂いを充分に感じながら戦っている彼等
いや これがもし優勢であったなら、という問題でもない。
観ていてとても辛い、辛いけれど最後まで見届けなければ
せめてこの時代に彼等は何を体験したのか、いや させられたのか、目に焼き付けておかなければと観続け、そして燃え尽きました。
フラフラになって外に出て、暑さも和らいだ日常風景に有難さの実感。
若い役者さん達、凄く頑張っていました。
シンデレラストーリー
サンライズプロモーション東京/パルコ
日本青年館ホール(東京都)
2022/09/06 (火) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
演技力と歌唱力、ストーリー展開、舞台美術、楽曲 どれをとっても一級品
ゴージャスでコミカルそしてドラマチック、思わずため息が漏れてしまう極上のラブストーリー、まさに夢の世界でした
シンデレラと王子が歌い上げる切ない旋律の数々、王と王妃の歌声の豊かさで更にうっとり
破壊的に面白い魔法使いのアンミカさん、歌にも迫力がありミステリアスな一面も
とことん底意地悪い義理母の佐藤アツヒロさん、自己中勘違い姉妹の ゆいP&まりゑさん、このトリオにはもう散々ハラハラさせられ且つ笑わせて頂きました
あぁ他にも・・・華やかに舞台を盛り上げてくれた登場人物(&動物キャラ)や演出の楽しさを拾い上げればキリがなく
そんな思いはひとつとなって、満場一致のスタンディングオベーション
感動的で超贅沢な時間でした。
待ちぼうけの町
劇団俳優座
シアターX(東京都)
2022/09/02 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
東日本大震災から7年、ほぼガテン系のお客さんで賑わう居酒屋さん
その土地(三陸の港町)での情景がそのまま舞台上に宿っているよう
それ以降も三陸での情景を通して自然と物語が身体に入って来る上質な舞台。
女店主の夫は漁師、震災で行方不明になったまま
7年、待つ といっても何を待つという事になるのか。
夫が「ただいま」と帰って来る事なのか、それとも死亡した証拠が発見される事なのか。
被災地で生きる人々
どういう理由であれ必ず訪れる「死」に対して悲観だけではないと受け取れるシーンに救いを感じます。
自然と顔を上げたくなる「前向き」に元気をもらえます。
老獣のおたけび
くちびるの会
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/09/03 (土) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「象」に変態化していく一人暮らしのお父さん。
客演 中村まことさんの魅力がフル稼働
その凄味ある怪演っぷりに思わず笑ってしまったり、思わずビビッてしまったり
これって古い価値観の権化だった老人の不条理な末路にも思えるし、本人的には変わっていく姿に無自覚だったところから認知症を思わせるところもある。
この現象を「人前にはとても出す事ができなくなった父親」と置き換えて観ても興味深いのだけれど、とにかく着実にお父さんは象(老獣)へと
渋々東京から駆け付け、唖然とする次男(本作の主役)そして彼の恋人。
父の希望に叶った生き方をしてきたはずの長男。
父が暮らす家のお隣さん親子(まだ異変に気付いてない)
決して多いとは言えない登場人物なのに、それぞれの反応・言動から滲み出る人間性が観るに充分なほど多岐にわたっていて、じっくりと味わいのある物語になっていくのでした。
舞台「ドロシー」
ドロシー
草月ホール(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/09 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
開演前、スポットライトでほんのり照らされた立派な舞台セットはセピア調に染まり「これからオズの魔法使いの大アドベンチャーが始まるよー」と言っているみたいだった。
いざ開演、ライトアップされると、目の前には全く異なる印象の光景が
え、騙されたっ!
いやいや、事前にあらすじに書いてあるし・・・そう、ここは廃墟となった遊園地の機械室
どうやら この「え、騙されたっ!」感が全体に張り巡らされた胆なのではないかと
素性を全く知らない者同士、呼び名は「オズの魔法使い」の登場人物、問題をクリアーする毎に垣間見えてくる素顔、案外良い奴かも、いや おかしいでしょ、やっぱり裏切り者が・・・
無邪気な笑いとブラックユーモアを交錯させながら謎解きを進めて行く銀行強盗犯たち。
あぁ、これは完全に「決して、結末は外で話さないでください」のやつ
『OH!Myゴ-スト』
東京ハイビーム
あうるすぽっと(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素直に面白かった、そしてちょっと泣いてしまった。
成仏できない理由も含めて厄介な恋愛案件だろうと大方の予想はしていましたが、なんと三角関係ならぬ、五角関係!?
どんだけ多角形なんだ(笑)
どちらにしても普通じゃない恋愛相関図と天国の使者、部員たちの奮闘ぶり、霊界を巻き込んだすったもんだで、めでたく魂の救済となるのか…大いに楽しませてもらいました。
湖畔の別荘のセットもリアルに良く出来ていて、リアルに出来たどさくさに紛れちょっとした仕掛けも。
難しいこと一切ぬきで、元気印の役者さん達を楽しんで、笑って、ちょっとホロッとして、沢山の元気をお土産にして劇場を出る・・・これが東京ハイビームなのでしょう
SHINE SHOW!
Aga-risk Entertainment
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ちょっと桁違いなコメディー作品。
ビジネスマンそれぞれの思いの丈が交錯する会社対抗のど自慢大会。
これに関わる出場者、司会者やマスコミそして影の主役であるスタッフ陣等々。
晴れの場に、みんなが持ち込んでくる様々な悩み・トラブル、ここから滲み出る人間味がめっちゃ可笑しく、時には哀愁も。
何が凄いかって、これだけの(笑いのもとでもある)悩み・トラブルがひとつひとつ、きちんと味付されていて単独でも美味しいし、別の味と絡み合ってもこれまた美味しい。
それにこれだけボリューミーだと、途中から何の味か分からなくなったり、盛り上がるだけ盛り上がって収集がつかなくなったり、といろいろ危惧しそうなところ、しっかり旨味を味わいつくしながらのショウ・マスト・ゴー・オン
常に新鮮な感動と笑いでもってラストへと駆けのぼっていくのでした。
実にうまいこと考え抜かれ、そして演じられています。
歌のところではひとつ、またひとつと思いが昇華していくようで、この構造もまた巧い。
シュレック・ザ・ミュージカル【8月18日~24日公演中止】
フジテレビジョン/アークスインターナショナル/サンライズプロモーション東京
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2022/08/15 (月) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
少女時代から塔のてっぺんで20年間ず~っと囚われの身。
「きっといつかイケメン王子が…」と待ち望むプリンセスの長い長い年月を表現した演出が凄く贅沢で素晴らしい。
ようやく念願かなって救いに来てくれたのはイケメンとは真逆のシュレック、しかも「臭っ!」という現実(いやファンタジー)
子供が悶絶大爆笑シーンも用意されている一方、大人客のニーズもしっかり見据えているところはさすがブロードウェイミュージカル。
とにかく刺激的で鮮やかなシーンが目に、耳に、次々と迫って来てとても楽しい。
欲をいえばシュレックの特殊メイクがかなりガッツリしていてフリーなのが目と口元だけのところ。
造形として見事だけれど顔の表情が伝わりにくいというのはやっぱり勿体ないと思う。
瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった
おぼんろ
Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
揺らめく光源の中、目の前に浮かび上がってきたのは精巧にできた“飛び出す絵本”みたい。
そこにダンサーのアンサンブルが加わって、得も言われぬ大海原の景色が目の前に広がっていくのだけれど、それは現実とは異なるミステリアスな大海原。
水面を妖しく輝かせる時もあれば、漆黒のうねりで皆をのみ込んでしまう時も
劇中度肝を抜かれる演出もあったりして、美意識の高さと拘りには完全に舌を巻いてしまいます。
この拘りの世界観、大人を童心の世界へと誘っていく吸引性と中毒性にはディズニーワールドと類似した要因があるのではないかと。
コロナ禍が過ぎ去って、それこそ手を伸ばせば、その手を繋いで連れて行ってくれそうな距離間での演出、いずれあの世界観も戻ってくると良いですね。
伯爵のおるすばん
Mrs.fictions
吉祥寺シアター(東京都)
2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
気の遠くなるような壮大な物語。
その壮大さに負けないくらい舞台セットや衣装等、美術に力が入っていて延々と移り行く世界、生活の場へと瞬時に入り込ませてくれる。
冒頭から すっかり目を奪われてしまいました。
きっとお金もかかっているだろうけれど、何よりセンスが良い。
そして決して死ぬことのない伯爵が持つ独特のトーンといい、それぞれの時代を彩っていく登場人物達の多彩さといったら、笑いのスパイスもしっかり効いて 演技の方も驚くほどにセンスが良い。
伯爵は死なないだけでなく、いつまでも若くて美しい。
本物の若さに囲まれて、その中にちゃっかり溶け込んでいる伯爵はひょうひょうとしながらも、どこか一歩引いた立ち位置を必死に維持しているようでどこか物悲しい。
出逢いや別れは長い年月と共に風化していく。
そんな出逢いや別れに意味があるのか・・・
そんな問いかけに胸をしめつけられ、その後の導きにまた心打たれてしまうのでした。
ナイゲン(R04年新宿版)
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「ナイゲン」は登場人物13人、その全員が主人公。
長所、短所 色んな側面を持ち合わせた生徒“全員”が舞台上を生きていなければ全て台無しになってしまう作品。
難問だけれど、乗り越えれば超絶面白くなる作品。
コロナ禍を乗り越え、その難問にもキッチリ答えを出した「R04年新宿版」は凄く頼もしくて力強かった!
実際は催し物がひとつ無くなったところで文化祭には悲しいほど影響がない。
だけれどここに集まったのは皆クラスの意志を背負った身、そんな軽いもんじゃぁない。
学校サイドの一方的な押し付け感も気になるし…これはもう嵐の予感。
観終わった後に残るのは、最後まで会議をやり遂げた燃え尽き感と、清々しい充実感。
これは舞台上の役者さん達であり劇中を生きた生徒さん達の感情なのだろうけれど、
同じ空間に身を置いてその一部始終を見守っていた観客としても, 着地点の見えないジェットコースターみたく君達と思いを共有していたんだよ って言いたい感じ。
強烈な「青春」の1ページ。
もうあんな時間は戻ってこないという一抹の寂しさ。
誰もがそれをまた追い求めて「ナイゲン」はずっと生まれ変わっていくのかもしれない。
観るお化け屋敷「カーテン」
下北沢企画
ザ・スズナリ(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
さすがお化け屋敷プロデューサーが一枚噛んでいるだけあって「怖い!」と感じさせるメカニズムが満載。
これと演劇人が融合するって、面白く無いわけがない。
受付を済ませていつもとは全く違うルートで会場にたどり着くまで、さっそくの「お化け屋敷」仕様。
案外あっという間の距離だったのかもだけれど、迷うようにして「ううぇあっ」と驚かされながら、同時に「えッスズナリのこんな場所に足を踏み入れられるのかい!」と思わず興奮したり。
あれよと会場の意外な所から入場、お出迎えしてくれるのは怪しげな進行役の役者さん。
上演時間は約55分の表記ながら、個人的には入場時からこの進行役による案内時間もカウントして良いと思った。
その間にも辿って来た奥の方からキャーキャー言ってる声が聞こえてきます(笑)
そして本編。
スズナリ劇場をそのまんま いわく付き現場にする事で、怖みと面白味が増していくまさに「観るお化け屋敷」
ニヤついて面白がっているところで突如ホラーに豹変すると、もう怖さ倍増。
ちょっと気付いただけでも映画『ブレアウィッチプロジェクト』とか『キャリー』の要素が垣間見えて、これには「怖い!」というよりゾクッときて痺れるっていう感じ。
企画の大胆さと驚きの実行力に対しては文句なしで★5つ。
今回はワンシチュエーションの直球でしたが、物語に肉付けして演劇色を更に濃厚にすれば、もう最強、最高になると思えました。
魔ガサス幻想-MAGASASU FANTASY-
エンターテインメント風集団 秘密兵器
「劇」小劇場(東京都)
2022/08/13 (土) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
フライヤーのイメージ通り、滅茶苦茶楽しい舞台。
始まる前から、まるで漫才みたいな前説で会場を温め
先ずは3つの日替わりコント。
特筆すべきはこれらがただの前座的コントではなく、後のメインストーリーに直結、なだれ込んでいくという丸っと伏線コント、心憎い構成力。
3つの全く異なった内容&登場人物で大笑いした後、み~んな繋がっていく面白味が待っているという優れ技。
どう繋がっていくのか、きっと予想もつかないので目の前の流れに身を任せて、ただただ楽しんで観るのが正解。
メインストーリーではしっかりドラマ要素も加わっていくし、笑わせ方も含めて中々の実力派集団である事を確信。
色んなタイプのおじさん5人、体も張っての熱血系、そこにキレイどころとか沢山加わって、もう最後の最後までたっぷり楽しめる構成。
サービス精神というかファミリー的な温かさがある生の良さ
コロナ禍のルールに乗っ取った中でもこの部分はしっかり伝わってきました。
明けちまったな、夜。
ゴセキカク
王子小劇場(東京都)
2022/08/13 (土) ~ 2022/08/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
結婚式流れからの部活版プチ同窓会。
同じ10年間でも学校卒業からの10年というのはやはり大きい。
かつては毎日顔を合わせ、共有する時間の居心地の良さ、それが空気みたいに当たり前な日常だったのに・・・同じ時間が戻ってこないのは分かっていても、こればかりは何とも寂しいもんだなぁと思いながら観劇。
一部例外があるにせよ、個人的にはほとんどの友人がサラリーマンの道を進んでいるので、本作のように演劇部繋がりの集まりというのは、未知なる空気感もあって、なんかもう興味津々。
ドロドロな展開になっていくのには「マジか」と驚いてしまう一方、いや 知らないだけで巷(演劇人の間)では無きにしも非ずな展開なのかと思えたり
「演劇」という魔性、これが若者の陥りやすい迷路や落とし穴となって惑わせている様にも感じてしまうアラサー男女の迷い道。
確かに、自分にはコレだ!と思えるモノが無ければ不安になって当然な年齢。
無様だろうが嗚咽にも似た人間味に救われます。
その後が気になる登場人物も多くて(いや、皆気になる!)様々な想いが交差するホント猥雑な一夜でしたが、凄く貴重な人生の1ページを見せてもらった気分になりました。
夜明けのディストーション
劇団とりもち
アトリエ第Q藝術(東京都)
2022/08/13 (土) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
天候は台風と予報された旗揚げ初日。
劇場に入ると美しく響き渡る音楽、白くて柔らかそうな布が一面に、
そして薄っすらとしかモノを写さない不思議な鏡(?)これが幾つも
足を踏み入れた瞬間から現実が遠ざかっていく感じ
安易に「そして彼女は王子様と楽しく暮らしました」とはならないファンタジー
内容は如何様にも解釈できそう。
個人的には、一人の若い女性の思考を介して描かれた一人称の世界観だったのではないかと
沢山の愛に囲まれていても、遠い街からやって来た美青年に告白を受けようとも、それが幸せへと直結しない他者との距離間。
キーワードのひとつでもある「死」
愛する者とひとつ道を進めなかった傷心と再生の物語とも受け取られ…
若い人の感性が飛び交って、それがとても美しかったり、ある意味こじれている気もしたり、でも若さってそういうものか…なんてグルグル思いを巡らせながら帰路に着いたのでした。
稲見和人に彼女ができる公演
宇宙論☆講座
OFF OFFシアター(東京都)
2022/08/10 (水) ~ 2022/08/10 (水)公演終了
実演鑑賞
「彼女をつくるため」のみならず、本人がやりたい事をありったけ作品に詰め込んで「役者 稲見和人」の最も輝いた姿を愛でる公演。
一人500円あげるので、なるべく拍手で盛り上げてね。という相当に異色な企画作品。
鹿児島から上京した頃には、まさか下北沢でこんな単独公演を打つ事になるとは思いもしなかったという稲見さん。
観に来た方も上京した頃には、まさかこんなマニアックな演劇世界に足を運んでいるなんて思いもしなかったので、ある意味お互い様ですね。という気持ち
「宇宙論☆講座の公演ではない企画」と銘打っていたのですが、いやいやこれは初めて宇宙論☆講座の公演を観に行った頃の感覚に似た宇宙論☆講座っぽさ
むしろクレイジーな状況なほど光り輝くというその特性は、クレイジーな企画のもと水を得た魚のように光り輝いていたのでした
稲見さんの他に6人の役者さん、そして観客席エリアには彼女さん候補
無計画、無鉄砲な様でいて結構に計算づく、
でもどこまでが計算で、どこまでがガチなのか線引きするのも野暮なので、この公演に全収入をつぎ込んだという涙ぐましさを胸にラスト 交際申込の結果を見守るのでした。
(線引きしないと言っておいて何だけれど、間違いなくここでのやり取りはガチ、ついでに言うならバラシに残された時間がかなり切迫しているというのも間違いなくガチ!)