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2020年度 1-9位と総評
十二人の怒れる男 -Twelve Angry Men-

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十二人の怒れる男 -Twelve Angry Men-

feblaboプロデュース

12日20時回が良かったので、おかわり!で、18日15時回を拝見。


12日(陪審員2号~6号の後部座席)、18日(8号~12号の後部座席)と、席の位置を180度変えてみて得られた感想2点。

まず第一に
既知の6人(安藤悠馬さん、神野剛志さん、夛華正幸さん、長野耕士さん、村松ママンスキーさん、吉田覚丸さん)は勿論のこと
本公演が初めての6人(金田一央紀さん、小林勇太さん、坂本七秋さん、たかぐちさん、田中零大さん、服部紘二さん)も含めて
小劇場演劇のフィールドで(も)トップクラスのチカラを有するだろう役者さん達の存在を、改めて認識させられた。

それから、(これをやると作品のテーマがブレるんだが…)「陪審員5号」役の役者さんに、役柄としては登場しない「スラム街育ちの容疑者の少年」役との二役で演じるバージョンも観てみたいな、と劇中何度も感じた。そう思わされるほどに、セリフの無いときでも、同じスラム街育ちの者が世間からの冷たい眼差しに対して有する葛藤のさまを醸し出していた、安藤悠馬さんの「存在感」を高く評価したい。

【配役】
陪審員1号(陪審員長。学校の教師でフットボールのコーチ)
…吉田覚丸(よしだ・かくまる)さん(3号、10号ほどの確信はなかったものの、やっぱり1号役だった♪)
2号(気弱だが、冷静な判断もできる銀行員)
…たかぐちさん
3号(会社経営者。絶縁中の息子への愛憎が、容疑者の青年に重なってしまう)
…神野剛志(かんの・たけし)さん
4号(常に物事を冷静に判断する証券ディーラー)
…小林勇太さん(はまり役!)
5号(容疑者と同じスラム育ち故に、容疑者の出自に対する10号の偏見に徐々に怒りを募らせる)
…安藤悠馬さん
6号(塗装工。討議が進むにつれて冷静な判断を下すようになる)
…田中零大(たなか・れお)さん
7号(容疑者の運命よりもヤンキースの試合が気になる)
…金田一央紀(きんだいち・おうき)さん
8号(建築家。容疑者の有罪に合理的な疑いを抱いた唯一の人物。米国民主主義の体現者的キャラ)
…坂本七秋(さかもと・ちあき)さん
9号(原作では高齢者だが、本作では高齢者の父親を持つ壮年の男性)
…村松ママンスキーさん(原作と異なる人物設定で、どうやって高齢者の心情を説明できるかな?と心配したが…杞憂でした)
10号(中小企業の経営者。スラム街出身者や移民への偏見に満ちた人物)
…長野耕士(ながの・こうし)さん
11号(移民の機械職人。米国の民主主義に理想を抱いている)
…夛華正幸(たか・まさゆき)さん
12号(人の意見に流されやすい付和雷同な広告マン)
…服部紘二さん
係官…池田智哉さん

アポフェスひとり芝居博覧会

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アポフェスひとり芝居博覧会

銀色天井秋田企画

1本30分の競作短編集、アポフェスひとり芝居博覧会、11日ソワレ3本立てを拝見。
そのうち、わかまどかさんの「わりといつもと同じ夕方」は、突然、東京から帰省してきた一人息子に語りかける形で、ほのぼのとした日常の様子を細かな演技で表現しつつも、徐々に異変の発生を暗示させるセリフが散りばめられ…。
結末の意外性・悲劇性が強烈な印象を残した、今年観た作品の中では出色の出来の30分。
素晴らしい作品だった。
それにしても、一人息子を思う母親の心情…ここまで情感に溢れたゾンビものは初めて!

君の様に鳥が啼く

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君の様に鳥が啼く

フロアトポロジー×ヒノカサの虜

10月2日(金)19:30の回を視聴。

序盤、セリフが聴き取りづらかった以外は、カット割り?の巧みな画面構成、重層的なストーリーの展開にグイグイと引き込まれ、見応えのあった128分。
なお、個人的には
『あのコのDANCE』に続いての遠藤留奈さん
『水曜、19時、スターバックス』以来の岸田大地さん
がとりわけ印象に残った。

IN HER TWENTIES 2020

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IN HER TWENTIES 2020

TOKYO PLAYERS COLLECTION

観劇前は、柴幸男さんの『あゆみ』風作品かな?と思っていたが、フォーカスを20代に絞った為、上野友之さん独特のテイストが存分に発揮された、「演劇観たぞ〜!」と終演後に叫びたくなるような85分だった。
それにしても、20歳の頃に夢見た諸々が潰えていく過程は色々と滲みたなぁ。
それから…終演間際に、20歳の「彼女」も靴を脱ぎ、履いているのは、もう6時間で20代に別れを告げる、今の「彼女」だけになったが、裸足と靴の意味合いって何だったんだろう?と意図を読めない自分の読解力の無さに、ちょっと苦笑い。

【配役】
20歳…谷川清夏さん、21歳…小島あすみさん
22歳…堀口紗奈さん、23歳…佐藤美輝さん
24歳…榎木さりなさん、25歳…原愛絵さん
26歳…永田佑衣さん、27歳…橘花梨さん
28歳…星秀美さん、29歳…榊菜津美さん

おどる絵本『じごくのそうべえ』無料配信

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おどる絵本『じごくのそうべえ』無料配信

あうるすぽっと

CHAiroiPLIN(ちゃいろいぷりん)メンバーを中心にした座組による
絵本「じごくのそうべえ」(作・たじまゆきひこ)
上方落語「地獄八景」(作・桂米朝)
を基にした、おどる絵本『じごくのそうべえ』(50’04”)を19日に視聴。

会場である「あうるすぽっと」のシアターツアーも兼ねた「じごく巡り」は、舞台の代替などでは決してない、よく練られた構成・演出(特に、役柄紹介と、身体の各部位で表現する「鬼」の描写は秀悦!)の動画作品として、オトナのワタシでも存分に愉しめた。
31日まで視聴可能。
【配役】
映像中、清水ゆりさんの唄と共に、役柄と死因を紹介していく演出が素晴らしかった。
そして、この各々の役柄=特技が、後々、三途の川や様々な地獄を切り抜けていく鍵となっていく。

楽師…清水ゆりさん
大工…ジントクさん
呉服屋…小林ららさん
医者…香取直登さん
山伏…鈴木伽実さん
下肥業者…ジョディさん
殿…柏木俊彦さん
軽業師そうべい…スズキ拓朗さん
しょうづか(正塚)のじいさん・ばあさん(☜あしゅら男爵?!かぁw)
/かっぱ/えんま大王/じんどんき(人呑鬼)
…佐藤誓さん

物狂い音楽劇「リヤ王」

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物狂い音楽劇「リヤ王」

鮭スペアレ

11日18時開演回(95分)を拝見。

2018年12月に北千住BUoYで観た『マクベス』の剽げた味わいから一転、シェークスピアの四大悲劇らしい、シリアスな舞台となった。
作品の有する無常観に、会場(能楽堂)や(衣装・音楽も含めた)団体の作風がハマり、シェークスピアの、ではなく、鮭スペアレ・お手製の『リヤ王』を「魅」せて頂いた気分。
良い時間を過ごすことが出来た。
なお、演じ手では
凛とした佇まいが悲劇性を一層際立たせた、コーディーリャ役の宮川麻理子さん
悪役・エドマンド役の、清水いつ鹿さん
が印象に残った。

【配役】
リヤ王(ブリテン国王)…葵さん
阿呆(リヤ王の道化、従者)…一瀬唯さん
ゴナリル(リヤ王の長女)…田中孝史さん
リーガン(リヤ王の次女)…若尾颯太さん
コーディーリャ(リヤ王の三女。フランス王の王妃に)…宮川麻理子さん
グロースター伯(リヤ王の家臣)…水上亜弓さん
エドガー(グロースター伯の嫡子、長男)…上埜すみれさん
エドマンド(グロースター伯の庶子、次男)…清水いつ鹿さん
ウタイ(謡)…フルハシユミコさん、中込遊里さん
バイオリン…中條日菜子さん
パーカッション…五十部裕明(いそべ・ひろあき)さん

江戸系 宵蛍

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江戸系 宵蛍

あやめ十八番

15日14時開演回を拝見。
今の若い人には「史実」とも言えるだろう成田闘争という重厚なテーマが、あやめ十八番のこれまでの作風とはひと味もふた味も異なる感動をもたらしたかなぁと。
具体的に言うと、個人的には浄瑠璃だと勝手に解釈していた、あやめ十八番の作風に、今回の『江戸系 宵蛍』は浄瑠璃のテイストは残しつつも、シェークスピアの史劇の重厚さが加わったようにも感じられた。
いずれにしても、とてつもなく凄い演劇体験をさせてもらった。感謝!

なお、上演時間は、前・後半70分の150分に途中休憩10分を合わせて150分。
演者では
前半は
新宿公社の舞台で馴染みのある、凛とした声音の以織さん
後半は
吉祥寺シアターの申し子・中野亜美さんと、その父親役・酒井和哉さん
そして作品全体を通しては
谷戸亮太さん
がとりわけ印象深かった。

【配役】
~2020年東京五輪篇~
千年(ちとせ)哲平(空港反対同盟代表)…北沢洋さん
千年雛子(哲平の妻、ナツの娘)…井上啓子さん
千年花(娘)…木原実優さん
千年忍(息子。航空機のパイロット志望)…木原理貴さん
但馬栄吾(豊郷市・市長)…酒井和哉さん
粟国奈々子(豊郷市・広報課、前・全国紙記者)…内田靖子さん
宇部さやか(豊郷市・広報課)…溝畑藍さん
天草武人(空港運営管理部・室長)…谷戸亮太(やと・りょうた)さん
石見竜彦(空港運営管理部。外大出)…武市佳久(たけいち・よしひさ)さん
黎美帆(中国人ジャーナリスト)…以織さん
湯麻美(中国人カメラマン)…河西美季さん

~1964年東京五輪篇~
千年宗五郎(空港反対同盟「千年派」代表)…村上誠基(むらかみ・まさき)さん
千年ナツ(宗五郎の妻)…大森茉利子さん
千年雛子(宗五郎・ナツ夫婦の娘)…井上啓子さん
但馬守(空港反対同盟「千年派」事務局長)…酒井和哉さん
但馬カツ子(守の妻)…三科喜代さん
但馬友子(守の娘。父親の徹底抗戦の姿勢に疑問)…中野亜美さん
出雲幸太郎(援農学生。五輪ランナー)…吉川純広(よしかわ・すみひろ)さん
小値賀静子(運輸大臣)…蓮見のりこさん(都知事かと思ったw)
天草善次(運輸官僚。第二東京国際空港公団・役員)…谷戸亮太さん
客室乗務員…旦部遥奈(たんべ・はるな)さん
学生1…田邉将輝さん
学生2…溝口悟光(みぞぐち・ごこう)さん
アナウンサー…堀越涼さん

【追記】
書こうかどうか迷ったが、自分も含めて絶賛の嵐ばかりなので、敢えて…。
吉川純広さんの熱演、役柄の性格設定もあって、客席から好感をもって受け入れられた「出雲幸太郎」だが、ネタ元である故・円谷幸吉氏のリアル遺書を、故人の意図とは全く異なる文脈で採用したことには、大いに引っ掛かりを覚えたことを付記しておく。

獄窓の雪―帝銀事件―

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獄窓の雪―帝銀事件―

ISAWO BOOKSTORE

出演者のお一人、上田尋さんに「おととい来やがれ!(劇中のセリフ)」と言われる前にw 15日19時開演回(115分)を拝見。

その上田さんの他
『旅とあいつとお姫さま』『二輪草』の若松力(ちから)さん
殿様ランチの板垣雄亮さん
といった既知のお三方
そしてお初の皆さんが構築する115分の社会派ドラマは、とても歯応えがあった。

ただ、杞憂を承知で言うと、当日パンフや劇中の説明だけで、帝銀事件はさておき、七三一部隊とかの事情を、若い観客が理解出来たかなぁ?とも感じたことを付記しておく。

演技陣では、生き残った銀行員の一人を演じた石井玲歌さんが、髪型?衣装?佇まい?のためか、事件当時(1948)の新しい日本人像を体現しているかのように感じられ、とても好感が持てた。
【配役】
平沢犯人説に懐疑的な新聞記者・竹内(本作における狂言回し)
…若松力さん
唯一、平沢は犯人とは違うと証言する生き残った銀行員・村田正子氏
…石井玲歌さん
正子氏の母親・トキ(本作唯一の架空設定の人物)…上田尋さん
弁護士・山田…児島功一さん
検事・高木…板垣雄亮さん(どこかで聞き覚えのある声…殿様ランチの方だぁ!)
吉田支店長代理…菊池敏弘さん
刑事・居木井…モリタモリオさん
生き残った銀行員・田中…松田真織さん
生き残った銀行員・芳子…優木千央(ゆうき・ちひろ)さん
平沢貞通氏…加藤忠可さん
裁判長(声)…高橋いさをさん

ゼガヒデモ

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ゼガヒデモ

CONTE-RIBUTE

22日20時開演のTeam-是・初日舞台(90分)を拝見。

でっ、初日故に内容は伏せなきゃ!ということもあるが、常識を突き抜けた設定といい、息苦しくなる程の笑いの爆発力といい、カカフカカ企画の公演を何度か観ている自分が事前に想定していたレベルをはるかに超えた、ちょっと的確な表現に窮する位の凄い舞台だった。

(観た方ならばおわかり頂けるだろうが)出演者の皆さん、どうかお怪我のないように!
【配役~Team-是・22日回】
凹道ピンスケ(もこみち・ピンスケ。相方に辞められてヤケ気味の漫才師。浮気がバレて激怒しているカノジョと漸く寄りを戻そうとしていたところに、招かれざる客が次々と!)
…海田眞佑(うみだ・しんゆう)さん(当て書き?と思うくらいのハマり役)
仁木田凡子(にきた・ぼんこ。殺しでなく笑いで悪人を世の中からなくすのだと決意し、組織から抜け出そうとしている殺し屋)
…星澤美緒さん(何度も舞台を観ているが、ヒロイン役で拝見するのはお初?!)
街流田レオン(まちるだ・れおん。殺し屋の最終試験で凡子に刺殺された訓練生の同期)
…藤本悠希さん(肋骨蜜柑同好会でお馴染みの役者さん)
壱卑木乙子(いちひき・おとこ。ピンスケ・ポン太のマネージャーで、ピンスケのカノジョでもある)
…小島望さん(『狂乱フリーク』以来、何度も舞台を拝見している女優さん)
長宝院光(ちょーほーいん・ひかる。凡子と同期の殺し屋。凡子、そして…に恋心を抱いている)
…フジタタイセイさん(肋骨蜜柑同好会のボス)
♨井大作(すぱい・だいさく。殺し屋組織の教官)
…高野憲太朗さん(昨年9月の『ヘニーデ』でユーチューバーの「蓬沢啓汰」役だった方)
凸山ポン太(でこやま・ぽんた。ピンスケの元・相方)
…林太久磨さん

<序盤に登場する漫才コンビ>
貞操観念ズ…高野憲太朗さん&北川純子さん
青春サブリミナル…堤総一朗さん&はしもとなおやさん
野方の野望…高山銀平さん&高野憲太朗さん
リチャードジェイ(昨年6月に結成した、アマチュアながら、ほんまもんの漫才コンビ)

総評

2020年は、コロナ禍による公演の中止・延期の影響をモロに受け、ナマの観劇108本、動画配信19本の計127本と、例年と比べ50本以上も観劇本数が減った。
さらに(コロナ禍との関連は不明なれど)CoRichでの告知をする公演も激減し…ベスト10を選ぶ枠を頂戴したものの、最後の1枠を埋めきれない結果となった。
玉石混合の小劇場系演劇、やはり全体の本数が増えなければ、玉の数も限られてくるということか。
コロナ禍が終息するであろう来年に期待したい。

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