sbunshunが投票した舞台芸術アワード!

2017年度 1-10位と総評
ナイゲン(2017年版)

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ナイゲン(2017年版)

feblaboプロデュース

13人の高校生が1つの議題について、2時間話し合います。あれですよ、レジナルド・ローズの代表作『十二人の怒れる男たち』を元にしています。でも高校という舞台なら、それをヒントに作られた高校演劇の傑作『七人の部長』(越智優作)を思い出します。全員一致の最終結論。でも、この作品、やはり異なります。大笑いの連続なのですから。

ネタバレはしませんが、「印象操作」「一党独裁」と今の政治の世界の縮図ともとれる言葉が横行、そして「浮気発覚」というどうでも良いような話まで、こりゃ、よく練られた凄い舞台ですよ。学校側が突然、クラスについての演目を規定するという設定、ありがちな話と受け取りました。作者は良く学校のことを知っています。

ナイゲンとは文化祭の「内容限定委員会」の略。出演者が劇中で見ている会議資料が、観客にも配布されるのです。我々は会議も傍聴人のよう。思わず、問題の「高校生」に説教をしたくなりました。完全に劇中に入り込んでしまいました。。。お恥ずかしい。(笑)

ミュージカル『高松心中』

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ミュージカル『高松心中』

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

久々によく出来た和製ミュージカル。最初の15分で引き込まれました。何より、7人のダンサーが生きている。たまに見かける「ラジオ体操」のような振り付けで全員で踊るのは勘弁してほしい。今日は歌もダンスも上手いし、「本」もしっかりしていた。「人は幸せになるために生まれてきた」「終わりの無い旅」など、説得力ある台詞も多く、笑わせるだけで無く、考えさせる芝居であることも良かった。

笑顔。(すまいる)

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笑顔。(すまいる)

劇団光希

先ず、劇場に入って驚いた。うどん屋のお店のセット、丁寧に作られている。小劇場では、ほとんどセットらしいものがない舞台もよくある。そこで「ほっこり」。女主人が認知症を患う、今、現実的な家族の話。詳しいストーリーは観て下さい。個性的な俳優が舞台を盛り上げ、ダンスもあったり、暗い話なのになぜか「ほっこり」。そうか、どこにも「悪人」はいない。このような舞台を作った作者、脚本家の優しさを感じた。今回、劇団のメンバーも大きく替わったらしい。脚本担当も初めての人。色々な意味での再スタート。でもこの「ほっこり」感は劇団の大切な柱だと思った。

レンジャー

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レンジャー

ミュージカル座

1970年代の、とある特撮番組の制作舞台裏。いきなり「ゴレンジャー」のアクションシーン。「子供番組」の話? そんな雰囲気から始まりました。主役俳優が降板されるあたりから話が面白くなります。スタッフ・俳優たちの人生がその作品のストーリーと重なり合うのです。オリジナルミュージカル、やりますね。藤倉梓作品、期待通りでした。

グランパと赤い塔

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グランパと赤い塔

青☆組

東京タワーが建設中だった頃、私は、あまり覚えていません。そして思い出すのは、映画『三丁目の夕日』。その時代は同じです。ともえが祖父から望遠鏡を買ってもらった。この家族の方がはるかに豊か。特に大きな事件が起こるわけでもありませんが、その時代の人たちの様々な想いを描いています。「良い芝居だ」というイメージなのですが、『三丁目の夕日』同様、やはり「きれい」過ぎる。一部の実業家や商人は別ですが、全体としては、もっと貧しい雰囲気があっても良かったのでは無いかと思いました。

PTA

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PTA

ホチキス

PTA会議の議題は「安井小学校に自転車免許をつくろう」というもの。あの『十二人の怒れる男たち』を元にした「会議劇コメディ」。交通事故で亡くなった女性教師の追悼の意味も込めての提案を議論するのだが、後半の謎解きが面白い。いろいろ笑わせる仕掛けもあるのだが、戯画化しすぎでリアリティーが希薄、今一つ世界に入り込めなかった。

怪談 牡丹燈籠

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怪談 牡丹燈籠

オフィスコットーネ

フライヤーの大きさが2倍のA3。これが目立たぬ訳が無い。俳優陣は豪華。演出は森新太郎。「これは観なきゃ!」。予想通りの素晴らしい作品でした。舞台は暗い。大きな布が回っているだけ。現代人の服装。刀や槍を持っている人も。話は知っている人も多いでしょう。ここでどのように話が展開するのか? 初めて観ても、何回目かでも、演劇の醍醐味を感じる舞台です。

『ラクゴ萌エ』

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『ラクゴ萌エ』

ラチェットレンチ

『ラクゴ萌エ』、タイトルから「落語家を志す少女の面白可笑しい話」程度に考えて観に行きました。前説で、普段はサスペンスをやる劇団、ふと不安が…、落語を上手く出来るのかなあ? いや不安に反して、面白かった。内容もあった。話の落ちは述べませんが、最後の桜舞うエンディングまで十分楽しませてもらいました。落語のしゃべりをすべて落語としてやるのでは無く、複数の役者が立体的に演じるのが上手くいった理由の1つだと思います。勿論その場合も、扇子と手拭いを小道具として使ってました。それにしても俳優さんが良い。特に、「だんまり」役の井上賢吏さんの身体を張った熱演が印象に残りました。

ギンノベースボール

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ギンノベースボール

ラビット番長

うん、独特の雰囲気がある舞台ですね。特に大きな事件が起こることはないのですが、「野球少年?」をもとに、普通に生きている庶民の日常を上手く描いてますね。小劇場演劇の温かさを感じました。

CABACRAT

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CABACRAT

junkiesista×junkiebros.

どんなミュージカルかと思ったら、円熟した女性が活躍する喜劇。若いだけの下手な女優陣よりもよっぽど良い。歌も、ダンスも、演技も上手い。客の乗りが良いのは、固定客がいるのですね。楽しい舞台、有り難うございました。

総評

当たり前のことだが、演劇は観てみないと分からない。そして個人差も大きく、必ずしも良いと言われた作品でも、自分の肌に合うとは限らない。でも、ここに挙げた作品、多くの人に満足頂けることは間違いない。

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