としの観てきた!クチコミ一覧

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【東京フール】/【グシャラ】

【東京フール】/【グシャラ】

Theater DIO

ワーサルシアター(東京都)

2012/10/31 (水) ~ 2012/11/04 (日)公演終了

満足度★★★★

あったかい舞台
『東京フール』と『グシャラ』の交互上演。
どちらもノンバーバル(言葉に頼らないよ!な公演)での上演。
『グシャラ』の方を観劇。

どこからか支給された様々な物を使って、音を出しては壺に放り込む、そんな生活を送る二人の男。

舞台から色んな音が飛び出し、それを二人が楽しそうに味わっているのが可笑しく、面白い。

たしかにこれなら、どの国の人でも楽しめるなー。

今年の夏、キジムナーフェスタで観てきた作品たちを思い起こさせる暖かい造りでした。

サクラ大戦奏組~雅なるハーモニー~

サクラ大戦奏組~雅なるハーモニー~

RayNet

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2012/11/01 (木) ~ 2012/11/11 (日)公演終了

満足度★★★

いまだヒットシリーズの凄み
私がバリバリゲームやってた頃からヒットを続けている『サクラ大戦』

漫画連載中の『サクラ大戦奏組』が舞台化という。

すごいなー。イケメンばっかの楽団に、ヒロインが指揮者として配属されるという、逆ハーレム状態。

不協和音を続ける楽団メンバーたちを、ヒロインが一つにまとめあげ、新たな一歩を踏み出す。

というまっすぐなストーリーに、不覚にも感動した。

出演者も皆さん、体のキレがすごかったー。

疾走人魚(オーバードライブ・マーメイド)

疾走人魚(オーバードライブ・マーメイド)

Mamononoプロジェクト

劇場MOMO(東京都)

2012/10/24 (水) ~ 2012/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★

丁寧な温かい作り
絶滅寸前の人魚たちが、子種を得るため男性を拉致して結婚の誓約をさせる!
ただし、人魚は全員オバサン!

という愉快なストーリー。

のっけから妙なテンションだったが、置いていかれる事もなく、笑って、笑って、ほんのちょっぴりだけ感動。

壮大な馬鹿エネルギーを浴び、良い心地で劇場を出られる芝居でした。

新・スチュワーデス物語

新・スチュワーデス物語

イナセナ企画

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/10/11 (木) ~ 2012/10/14 (日)公演終了

満足度★★

意気込みは良し、だが…
文学座研究所の同期、増岡裕子と長田紫乃が演劇ユニットを旗揚げ!
との事で、受付手伝ったり観たりしてきた。

『黄色い月/宮殿のモンスター』で共演した、同じく文学座研究所同期・備本愛香、
そして劇団風来ズの小笠原東院健吉も出演と、
よく知っている人たちが集まっていた。

さてさて、芝居なんですが、
初日に観たせいか、なんだか散漫な印象。
大事なシーンなんだろうな、と思う所が、手から砂がこぼれ落ちるようにサラサラと落ちていく。
バシッと決まらない。
翌日とかに劇場の外から聞いてたら、大分様子が変わっていたので、ちくしょうと思った。

ストリップ小屋の楽屋の皆々様のドタバタ劇、そして女の情念の入り交じる精神世界的な二重の構造なんだけど、
これも私が観た時はあまりうまく機能していなかった。

演出はWANDELUNGの左藤慶。
どうやらインプロとかやる方らしく、今回の舞台でもその手法が用いられた様子。
なんだけれど、舞台上の役者の居方はどことなく腹が据わらないし、
展開も苦しい場面がちらほら。
演出家は何をやりたかったのかしら?が大きな疑問として残る。
演出としての背骨、みたいなものを感じられず残念。

しかし、その分、丸裸で舞台に投げ出された役者達の個人技が光った。
役者の根性でなんとか成立した感じ。

風来ズの小笠原東院健吉の面白さはさすがである。
が、やはり芝居として全体の歯車が噛み合う瞬間がもっと欲しかった印象。
そういうところを見る仕事をした人は果たしているのかしら?

3500円はちと高いにゃあ。
ストリップ小屋の場面などもあり、女優陣がかなりの露出をしていたから、
その意気込みに3000円くらい!
って感じになってしまうが、脱ぐ必然性も薄かった気がして、
総じて役者がかわいそう。
せっかく良い役者集まってたのに。

苦しい船出となったかもしれないが、I.N.S.N.企画には今後ともがんばって欲しいです。

エゲリア

エゲリア

文学座

吉祥寺シアター(東京都)

2012/09/07 (金) ~ 2012/09/23 (日)公演終了

満足度★★★★

真実を求めて
文学座本公演。
Twitterなどで異様に評判が高かった。

岡本太郎の母・岡本かの子の波瀾万丈な生涯を描いた、新時代の『女の一生』な印象を受けた。
良い本だなー、と。
『ガラスの動物園』じゃん!みたいな感想も見て、
「なるほどたしかに。」
と思う節はあるけど、良いもんはどんどん盗めばいいと思う。
随所に岡本かの子の詠んだ唄が散りばめられている構成が好みでした。

結婚していながら、愛人を家に住まわせてしまうトンデモ女・岡本かの子が、
「真実の芸術・真実の生活」
を、取りつかれたように追求し続ける姿が台本の随所にあり、迫力があった。
かの子を演じたのは吉野実紗。
迫力とパワーはあったが、もっと繊細な部分も観たいよー、と。
ただの嫌な女に見えちゃもったいない本ですな。

かの子を支える男たちは実に愉快で気持ちの良い人ばかり。
大場泰正・粟野史浩が演じる男が、すごく良かった。
大場さんのファンになるくらい、あの医者、好き。

全体がドタバターとなるシーンが多く、楽しんで観られました。

女性陣では、完全に贔屓目ですが、我らが同期・増岡裕子の安定感。

しかし、やっぱ休憩挟んで3時間は長いかなー。

この芝居が文学座の新たな財産となるのかどうか、楽しみです。

僕のポケットは星でいっぱい

僕のポケットは星でいっぱい

K-BOX company

遊空間がざびぃ(東京都)

2012/09/14 (金) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

清々しい舞台
キャラメルボックス好きな人たちが、
全身全霊で芝居作ってる感じがして、清々しかった。

がざびぃの空間を大胆に横に切ってたのも新鮮で。

役者の技量はまちまちでしたが、情熱で魅せる舞台。
そんな中で技量・情熱ともに輝いていたのが嶋田健史。
汗も輝いてた。

キャラメルボックスの本、わりかし苦手なはずなんだけど、上演を観ると結構な割合で感動している私。

これで1000円なら、安い。
2000〜3000円となってくると、また別の話ですが。

非家族【ご来場誠にありがとうございました】

非家族【ご来場誠にありがとうございました】

オーストラ・マコンドー

サンモールスタジオ(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

脆さ・強さが愛しい
1930年代の神戸。
3日後に迫る出航を前にした、海外移民収容所の、ある一室の話。

移民の条件は「家族」であること。
そして、移民に希望を見出だす人々は、しばしば偽装家族を作ったとか。

そんな中、この舞台が焦点を当てるのは、
母・娘・息子・父
この構成の、やはり偽装家族。

そして、雰囲気が重い。
空気が、重い。

物語が進むにつれ明らかになってくる、それぞれのどん詰まり感。
移民先に希望を持って!
というよりは、
現状がどん詰まり過ぎて、日本を出ていくしかない、
って空気感。
この抑圧感・緊張感が印象に残った。

舞台の空気感が、そのまま客席も飲み込む力を放ってて、いい感じでした。

映画的な演劇ってあまり好きじゃないのだけど、
この『非家族』は映画的かつ演劇的、みたいなとこがあって、すげぇ、と。

照明の変化や微かな物音に、いちいち集中してしまう。
長い長い間と、人物の行動を、固唾を飲んで見守ってしまう。
すごく繊細な時間を、舞台と共有する感じ、ワクワクした。

「偽装家族」から
「家族」へ。

いろんな言葉ぶつけあって、
汚い部分を見せあって、
どん詰まりからさらにどん底に落ちていってから、
しっかり立ち上がる。

そんな人間の、家族の強さ・脆さを見せつけられました。

クライシス百万馬力

クライシス百万馬力

ホチキス

シアタートラム(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/16 (日)公演終了

満足度★★★★

ホチキス初観劇
ホチキス初観劇。
空想組曲で何度か観て「この人おもろい」と思っていた小玉久仁子さんの所属先という事で、前々から観てみたかった劇団。

いやー、面白かった。
まさにエンターテインメント。
脚本の深さとか緻密さとか、そういったものはあまり無かったが、
それを補って余りある情熱とパワーがあった。

出演者全員(30人くらいいた)が、同じ所へ向かっている感覚が素晴らしい。

パワー・スピード・アクション。
ハリウッド映画を観ているような感覚。

登場人物全員のキャラが異様に濃く、見終わる頃には続編を期待してしまう自分がいた。

役者たちの動きもダイナミックでキレがあり、観ていて飽きない。

そんな中でも、やはり群を抜いて変なのが、小玉久仁子さんであった。
周囲の空気感を小玉ワールドに染め上げるかのような芝居の質感。好きだなぁ。

大学の同期・齋藤陽介が、ぴったりな役柄で楽しそうに暴れまわっていたのも印象的。


しかし、この人数で歌とか歌われると、無意識のうちに涙が込み上げてきますな。

人形の家

人形の家

現代演劇協会

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2012/09/07 (金) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★

丁寧な作り
『人形の家』観るのは、いつぶりだろう。
前に観たのはたしか現代っぽく演出されたやつ。
外国のカンパニーで、ノーラがバイオハザードのジル・バレンタインのコスプレしてたのが印象的。

今さらですが、『人形の家』って面白い戯曲だなー。

すごい劇的な場面が沢山あるし、人間が、面白いくらいに変化していく。
このカオス!演劇観てるぜー!って感じでワクワクする。

嘘を抱えてる共同体に、真実を明らかにしようとする人がやってきて真実を突きつけ、
カタルシス、崩壊・再生、
みたいな流れが美しい。
ギリシャ悲劇か、と。

王道といえば王道だろうけど、やっぱ王道は面白く、そして美しい。
こういう作りの現代戯曲をもっと見たいわ。

ヘルメルが嘘つきを罵倒する際の台詞が、そのままノーラにかかってるとことか、すごい皮肉。
ドラマティックなアイロニー。
わくわくしますな。

「僕のヒバリちゃん」とか「僕のおしゃまさん」とかいうヘルメルの台詞は、
現代、そして日本ではもはや別の面白さも孕んでしまうけども。

ネタバレBOX

7月に『黄色い月/宮殿のモンスター』で共演させていただいた、劇団昴の石田博英さんがヘルメルを演じる。
ヘルメルのクソ野郎ぶりが、豹変ぶりが、すごかった。

クログスタ(=松橋登)の雰囲気は良かったものの、色々大事故が起きていたような…
ゆする側が台詞飛ぶと、ノーラ(=井上薫)としてもどうしようもないからなぁ。
だいぶ、リードしてはいたけど、ヒヤッとした空気感。

しかし、外人の演出家って、
幕の終わりとかにバッと照明変えて印象的な台詞をモノローグ的に言わせるのが好きなんすかね?
去年観たNLTの『検察官』でも同じような手法を観ましたが。
音楽劇 オリビアを聴きながら

音楽劇 オリビアを聴きながら

劇団扉座

青山円形劇場(東京都)

2012/08/22 (水) ~ 2012/08/31 (金)公演終了

満足度★★★★

抜群の歌唱力に魅せられる
扉座の芝居観るのは、実に大学の時に観た『きらら浮世伝』以来だろうか。

音楽劇、というだけあって、随所に楽曲が散りばめられた作りでした。

中年サラリーマンの勝也(=三木眞一郎)がピアノを習い始め、
そのピアノの先生の広美(=小牧祥子)に恋をして…と、『shall we dance ?』的な冒頭だが、
物語中盤から雰囲気は一転。
人々が闘うのはピアノコンクールではなく、己が人生となる。
現在と過去の挫折に、ラストでしっかり向き合わせて前に進めてくれる、観ていて元気の出る作品。
それらの物語を、尾崎亜美の音楽がとても上手く一つにまとめている。

元・劇団四季の小牧祥子・柳瀬大輔の歌唱力がとにかく抜群で、
あの劇場の広さで贅沢な限りである。
歌っていいな。
そして舘形比呂一の肉体のキレが素晴らしい。

ただ、普通の台詞は、マイク通さずに聞きたかったな、とも思うが、
ともあれ贅沢な、良い芝居でした。

また悪だくみをしているのね

また悪だくみをしているのね

電動夏子安置システム

シアターKASSAI(東京都)

2012/08/07 (火) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★

翻弄されるとはこの事
電動夏子安置システム、実に4年ぶりに観た。
前に観たのは『笑うフレゴリ』
知的な仕掛けが沢山だった印象が未だに残っている。

そして今回。
舞台装置がかっこ良かった。
いくつもの部屋を一つの舞台空間で華麗に魅せる空間作りが、
なんかモダンな感じ。
ドアが沢山、壁はなし。
やっぱ舞台は物が少ない方がかっこ良い。
その一つの空間を、照明でテンポよく切り取って場面転換、という手法が観ていて心地良かった。

企業内対立を抱える会社の重役の家を舞台に、誘拐事件やら悪だくみやらなんやらが入り乱れてごっちゃごちゃ。
みたいなあらすじ。

「勘違い」というのが一つ、芝居を面白くしていた。
それぞれが、自分の持っている情報のみを頼りに、そこに引き付けて話を進める。
その、誤差が次第に破滅的になっていく過程に思わずニヤリ。
勘違いされたらイヤだな、なんて思いながら人は言葉を選んで暮らしているが、
実際には世の中、勘違いとすれ違いに満ちているのかもしれない。

役者陣はバランス良く色んな個性が揃っていた。
会社の重役・江島伸年(=道井良樹)の雰囲気、
家政婦・二宮實智子(=なしお成)のコミカルさ、
警察・佐地兼生(=小原雄平)の渋さといい加減さ、
そして謎の女・三橋由子(=田口愛)の存在感。
素敵でした。
この内3名は劇団員との事。

面白い人が揃ってるな。


「勘違い」ネタで初めから終わりまで強引に攻めきった感はあるものの、リズムとテンポで愉快に観られました。
多少、伏線を張りすぎてこんがらかる部分はあるものの、
劇場出た後に
「あれ、なんだったんだろう?」
とパンフレットを開いてしまうのも、
この手の芝居の醍醐味だろう。

私(わん)の村から戦争が始まる

私(わん)の村から戦争が始まる

非戦を選ぶ演劇人の会

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2012/07/18 (水) ~ 2012/07/19 (木)公演終了

満足度★★★

朗読劇としてはどうなのか。
沖縄、高江。米軍のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)建設やオスプレイ配備と、それに反対する住民たちの座り込み運動。
それらを現地で取材した作家が描く、ドキュメンタリー的な朗読劇。

これだけの人数が、これだけの規模で、
「非戦を選ぶ演劇人の会」
として集まり、一つの作品を作り、収益を募金に充てる。
その行為自体は非常に気高い精神で、心を打たれる。

オスプレイの巨大さを、全労済ホールに例えて説明するとこなんかは非常に実感が湧いた。

オスプレイ、デカい。

そして、沖縄で起きている事への私たちの無関心ぶりに警鐘を鳴らす効果も十分にあったように思う。

が、朗読劇としてはいったいどうなのよ、というのが正直な所。
結構な人数の俳優陣が出演しているが、読みが薄っぺらく感じてしまう人がわりと多い。
大事なとこで噛んだり、タイミングがずれたり。
全員が本を持っているのだが、
台詞をなんとなく覚えているものの、台本見ずに台詞を発したらちょっと覚束ない…なんて場面もちらほらあり。
はたして十分な稽古は行われたのだろうか、と。

実際に起こっている、こういった問題を扱うにしては、覚悟のレベルが低いように思えた。

台本にしても、良く言えばドキュメンタリー的、悪く言えば学生のレポート的な印象があり、
どうにもしっくりこない。
これならNHKのドキュメンタリーを見たい、というのが正直な所。

せっかく素晴らしい企画なのだから、作品ももっとクオリティが上がればいいのに、と。


問題に我々が目を向けるきっかけにはなっているのだが…。


出演者の中では、寺田路恵さんの朗読が、心底響いてくるものであった。

NASZA KLASA 私たちは共に学んだ

NASZA KLASA 私たちは共に学んだ

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2012/05/18 (金) ~ 2012/06/01 (金)公演終了

満足度★★★★

重厚な戯曲、真摯な芝居
良かったです。
骨太な戯曲に真摯に挑んでいた印象。
役者のパッション押しの演技は賛否分かれると思うが。
特にこの戯曲の性質を活かすならば、語りの部分はフラットに行くべきだったかと。

詳しくはブログに書きました。

絶頂マクベス

絶頂マクベス

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了

満足度★★★★

初・柿
小劇場界のトップランナー・柿喰う客の芝居を初めて観てきた。

女体シェイクスピアシリーズという事で本公演とは違うのだろうが、素直に楽しめた。

ほぼ素舞台に、役者の肉体のみ。
潔い、演劇らしい作りに好感。
スピード感溢れる展開、空間の切り替えも魅力的で、シェイクスピアはこうじゃなくちゃ、って快感が味わえる。

かなりブッ飛んだ翻訳をしていたが、うまい。そして、しっかりした劇構造を持ってる戯曲の懐の深さを知る。
独白の味わいが薄まってしまってる感はあったが、このスピード感はそれを補って余りある。
こんだけやっても、ちゃんと『マクベス』なのね、って印象。

年月を経てきた古典の背骨はやはり偉大だ。
演者がどれだけ遊んでも、ポイントさえ押さえればしっかり感動出来るという点では、日本の古典・落語が思い出される。

アフタートークで「役者の芸がそこに存在する事の重要性」って感じの話をしてたが、
肚を決めた女優陣のパフォーマンスを通して確かにそれが伝わってきた。
壁があってもブチ壊し進む、くらいの勢いが心地よい。

マクベスに「社畜」のイメージを重ねたという演出も新鮮だった。
「大抵のマクベスは、王冠かぶるとそこそこ似合っちゃう。だから、王位が似合わないマクベスを作りたかった。王様が来てた服を着ても全く似合わない。敬語も抜けない。」
的な話が出ていたが、これが実に味わい深かった。
地位を衣裳に例える事が多いマクベスだけに、服が似合わない、ってのは余計にこたえる。
分不相応な物を手にしちゃった人間の悲劇として、非常によくマクベスが描かれていた。
周囲の、マクベスに対するプレッシャーのかけ方も実に面白い。

野心で破滅する、ではなく、重みで破滅する。
現代型のマクベスって感じだろうか。

色々マクベス観てきたけれど、深谷由梨香のマクベスは、かっこ悪いがかっこいい、初めて出合うマクベスであった。
きれいは汚ない、汚ないはきれい、冒頭の魔女の言葉が実に効いている。

そうそう、魔女といえば二の魔女を演じる新良エツ子が、魔女の台詞を巧みに歌い上げていてかっこ良かった。
実はこの方、昨年の11月に『羽山誓朗読会』でご一緒しているので、びっくらこいた。

終演後、見事な怪演を放った岡田あがさと少しお喋り。
演技に対しての、肉体的・外面的アプローチと、精神的・内面的アプローチについて。

「結局、行き着く先は同じとこなのよねー。」と。

負けてらんねぇと、闘志を奮い起こされるお喋りでした。
話せて良かった。

SAMURAI 7

SAMURAI 7

ネルケプランニング

青山劇場(東京都)

2012/04/01 (日) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

エンタメの何が悪いか!
黒澤明の『七人の侍』をアニメ化したものを、舞台化。再々演らしい。
前説の方が名乗りをあげて客席に呼び掛ける。
「この芝居は観客参加型です。お気に入りの侍が出てきたらエールを送ってあげて下さい。では練習してみましょう。」
客席の大半は女性。

「しまった!間違えた!」

心の中にそんな言葉がよぎる。

まさか野太い声でエールを送るわけにもいくまい…。

この規模の、こういう芝居を観に行くのは初めてだったのでかなり戸惑う。

ファンサービスに溢れているのは確かに良い事だが、なんか慣れない。


そして幕が開く。

機械化された侍が村を襲う、用心棒を雇おうという事になり、七人の侍が集められる。

なるほど、設定はパンクだが、ちゃんと七人の侍してる。

七人は結構なスピードで集まり、村をなんとか守りきるとこで一幕が終了。

不思議だ。
俺、泣いてる。

あれだけ戸惑ったんだが、不思議と馴染んで、涙まで流している。

スピード感のある展開、無駄にカッコイイ台詞回し。
派手な装置に照明・音響。

…この感覚、どこかで…

そう、劇団新感線にノリが近い。

こりゃ面白い。

一見、度が過ぎたファンサービスが多いようにも見えるが、しっかり本筋に復帰してくるので嫌な感じはしない。

演者が楽しんでやってるので、もうなんでもいいやと思える。


ボロボロ泣いてしまったのは、一幕終わりのゴロベエ(=高橋広樹)の死に様、そして二幕もラスト、キクチヨ(=住谷正樹)の最期。

どちらも、守るべきものの為に命を賭けた大勝負を仕掛ける。
生きたいと願いながら、守るべき命の為に散っていく様は、まさにサムライスピリッツ。

非常に漫画的でベタな展開であるが、この、ベタで漫画的というのが私のツボのど真ん中なのだから致し方ない。

深い事考えずに、清々しく号泣した。


ちなみにキクチヨを演じた住谷正樹さんはあの、レイザーラモンHG。
良い仕事してたなぁー。

後日、Wikipediaで色々調べたのだが、七人の侍の半数くらいが、『テニスの王子様』のミュージカルに出演しているらしい。
そして演出の岡村俊一さんは、結構な数、つかこうへいの芝居を演出している。
どうりでテンポが良いわけだ。

個性豊かな侍たちを束ねるカンベエを演じた加藤雅也さんが、燻し銀なかっこよさだった事は言うまでもない。


イケメンが大勢出てきてワーキャー!って芝居を心のどこかで敬遠していたのだが、そんな先入観を取っ払ってくれたいい芝居でした。

これぞ、エンタメ。

エンタメはあかん、演劇は芸術や!みたいな主張もあるだろうが、
私としては、お客様が楽しんで観てくれる事が何よりの正義です。

名探偵・蘭光太郎シリーズ/「朝に別れのギムレットを2012」

名探偵・蘭光太郎シリーズ/「朝に別れのギムレットを2012」

劇団冒険倶楽部

青山円形劇場(東京都)

2012/04/04 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★

うーん。
ちょい残念な出来でした。
初日だったからかしれないが、特にベテラン陣の空気が硬く、台詞忘れてるオーラ漂う箇所もあり。

台詞の掛け合いのテンポはまずまずだが、深みがない。加えて、台詞で出してるテンポを、挿入歌やダンスで崩してしまっているように感じました。

脚本が求めるエネルギー量を役者が出せていない感が強く、どうにもキレの悪い舞台に。

アフタートークで「小劇場の良いとこは技量はないけど情熱があるとこ」
って話をしていたけれど、
情熱のこもった舞台には見えなかった。

テンポを上げて、台詞に酔わず、本気で遊べば、もっと良い物になるはず。

  ∞    (メビウス)

∞ (メビウス)

乙山×ト Produce Project (o.p.p)

Geki地下Liberty(東京都)

2012/03/15 (木) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★★

骨太で誠実
非常に骨太で、誠実な作品でした。
このテーマを芝居にするにあたり、
腹くくったんだろうなという覚悟が伝わってくる脚本。
とても好感が持てました。
斜に構えた視点ながらも、しっかりと人間讃歌している。
こういうテイストの作品だとは予想もしなかったのでびっくりしましたが、良作でした。
演出次第で、もっともっと良くなるだろう所が隠されている気がします。
また観たいですね。

青春のプロ

青春のプロ

ライオン・パーマ

王子小劇場(東京都)

2012/01/26 (木) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

満足度★★

なんだかんだ好きかも。
全体クオリティ的には不満な出来。
演技がうまいかというと、お世辞にもそうとは言い難い所が多々。
初日だってのにしても台詞の噛み合いが悪すぎて、「あ、忘れてる…?」って感じがちらほら。
なので、全体クオリティは不満です。もっと上がるはず。
2500円という価格では、もっと求めたいです。
1500円ならば、と思いました。

ただ!
ただ、演技上手い=良い芝居、とかクオリティが高い=良い芝居、
って訳では決して無い!という事もまた言っておきたい。
クオリティ不満、とか書きましたが、
個人的な感想を言うと、
「なんだかんだ好き」
という事になります。
クオリティ面では☆2つくらいな気持ちなんですが、
個人的には☆4つくらい。
醸し出す雰囲気、それが良かった。
決して達者な演技ではないし、脚本にも難が無い訳ではない。
けど、

「そんなんどーでもいいわ!」

と思える魅力が確かにあった。
技術がうんぬんではなく、素敵な、そしてどこか笑っちゃう空気感。
演者が、自分の信じる道を貫いている感。
しっかりと舞台に立ってる。
極論ですが、それがあれば演劇って、面白いのだ、と思います。

すげーくだらないし、おいおい、それどうなのよ、って思う事も一杯あるけど、
それでもどことなく愛せてしまう、
「しょーがねぇなぁ」
と思えてしまう、そんな芝居でした。
クセになるかもしれません。

ネタバレBOX

脚本、前半の特にコント色が強い部分(バスや万引きのくだり)が若干長く感じてしまいました。
何が始まるのかがなかなか掴めず、暗転暗転の展開が若干…。

それだけに、物語の歯車が噛み合い始めてからがテンポ良く、楽しく観られました。

「青春のプロ」が後半はかっこ良く、感動的にすら思えてきて、
「なんでこんなんでちょい感動してんだ自分…」
と思いつつも、しっかり心を掴まれている。
なんだか不思議です。
ベタな事を、気持ちよくやってくれると、こちらも嬉しいのです。

ギャグも、色々飛び出してましたが、クスッと笑ってしまう物が多い。
緊張と緩和が鮮やかに描かれていて素敵。

役者陣では父(=ロベルト清水)の見得切る感じ、松山(=加藤岳仁)なんとも言えない雰囲気が良かった。
宇宙の旅、セミが鳴いて

宇宙の旅、セミが鳴いて

conne-colle

ART THEATER かもめ座(東京都)

2012/01/12 (木) ~ 2012/01/15 (日)公演終了

満足度★★

人物に説得力が…
もうすぐ地球に帰還する宇宙船の中で繰り広げられる人間模様。

全体的に、演技の説得力が薄いような…。

「宇宙」という感じがからきし無い。
空気感、とでも言おうか、滲み出る何かが欲しかった。

台詞にしても、丁寧に喋ってはいるが、それだけな人が多いように感じた。
発語する際の「目的」
相手を言葉で「どうしたいのか」
そういった情熱・欲望・エネルギーが台詞から伝わってこない場面が多い。
動作にしても同様で、
動きに根拠や思いがいまいち感じられず、振付で動いている感が漂ってしまっているように思えた。
なので演劇が立ちあがらず、
ただ、物語が進んでいくのをただ観ていた印象。

役者同士の心のやりとり、というよりは予定調和感が強く、なんだか説得力に欠ける舞台でした。

十一ぴきのネコ

十一ぴきのネコ

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2012/01/10 (火) ~ 2012/01/31 (火)公演終了

満足度★★★★

遊び心満載
いやぁ、面白い芝居でした。

絵本で有名な『十一ぴきのネコ』
私の住んでる北区では、図書館のカードの絵柄にもなってました。
ただ、内容そんな覚えてなくて、新鮮な気持ちで観に行きました。

なんとも賑やかで、軽快で、皮肉で、遊び心満載な舞台でした。

ネタバレBOX

ほぼ何もない空間を、ネコたちが縦横無尽に踊り、歌いまわる。
それがまず観ていて楽しい。
十一ぴきそれぞれのキャラクターが立っていて、
役者たちの楽しそうな空気が伝わってきます。

そして、舞台に施された仕掛けが実に演劇らしい。
帽子が飛んでったり、釣りをしたり、畑から大根引っこ抜いたり、
飛行機に乗ったり、魚を引っ張ったり。

そういったネコたちの冒険が、実に想像力に満ち溢れた形で舞台の上に立ち上がる。
大きな魚の演出にはテンションマックスに上がりました。
すげぇなぁ。
長塚圭史の演出、観るの初めてなんですが、ケレン味と遊び心に溢れていて好みな感じ。

にゃん太郎(=北村有起哉)とにゃん十一(=山内圭哉)がなんともステキでした。

井上ひさしの仕掛けるラストシーンも見事。
さすが井上ひさし。
だいぶ長いけど、全然気にならない舞台でした。

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