メディア/イアソン 公演情報 メディア/イアソン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 実演鑑賞

    エウリピデスの悲劇『メデイア』とその前日譚にあたる『アルゴナウティカ アルゴ船物語』を再構成し、あらたな演劇に仕立てる意欲作。怪物や魔法に彩られたイアソンとメディアの出会いの物語があればこそ、あの重苦しい悲劇の背景も理解できるというものだ。

    影絵のような無彩色の舞台(装置)は洗練されていて、特に後半では(その陰惨な内容とも相まって)観客の想像力を刺激する。だが、ファンタジー色の強い前半については、しばしば禁欲的すぎて、描かれる世界の奥深さ、すでにすれ違っているイアソンとメディアのあり方、そこでの感情を見えづらくしていた面もあるのではないか。(とはいえ、若き日の二人のどことない頼りなさ、青さの表現は新鮮で印象に残った)

    また何よりもこのプロダクションを特徴づけるのは、メディア/イアソンの間に生まれた子供たちが語り手をつとめる「物語」という構造。終幕の「語り」「子守唄」が、血に塗れた悲劇と共鳴し、鎮魂、そしてわずかながらの希望/祈りの場へと昇華していくさまに、ギリシャ悲劇を「いま」に投げかける意味が込められているように感じた。




  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ま、すごいものである。ギリシャ劇を日本マンガが世界を席巻する時代にあわせて、見せてくれたようなものである。進撃の巨人もあれば、ジブリ風もちゃんとある。あれよあれよとみている内に二時間たって、アンコールになって、さて、この芝居アンコールに出てきた兄弟を演じた二人(井上芳雄、南沢奈央)以外あまりなじみのない全部で五人しか出ていなかったっけ、と頬をつねってみたくなる。それほど、スケール感がある。ギリシャ演劇を現代的に見せてくれたことでは驚異の舞台である。9000円安い。平土間満席。
    切り絵マンガ風な美術を天井の高いこの劇場一杯に作ったのも成功している。海だろうが、宮殿だろうが、みな、そこでやってしまっているのに貧乏くささがない。音楽も上手く使っているし、役者の衣装も黒白と地味にまとめていながら小洒落ている。
    メディアはよく知られているから少しは基礎知識はあるが「イアソン」の方は知らない。なんだか、シェイクスピアのペリクリースみたいな話だなぁと思っている内に終わってしまった。この舞台、ちょっと話がわかりにくいのが残念なところである。折角、語り手の役もあるのに、もう少し状況を解りやすく説明しても良いと思った。前半と後半と人物位置が変わるところがよくわからなかった。フジノサツコ脚本による古典は、面白いと感じたところは何でも入れてしまう癖があって、「怪談牡丹灯籠」などは成功したが、これはギリシャ劇だもんなぁ。予習をすればもっと面白かったろうと残念。前半の展開がわかりにくく、怪獣大暴れの中断に至るまでは周囲のファン女性は結構お休みの方が多かった。彼女たちはお話しかと解らなかったに違いないがそれでもご満足で引き上げていった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    基本的に2つのギリシャ劇をつなげた脚本でずいぶん駆け足の感はあるが、業とか巡る因果といったギリシャ劇の雰囲気は保たれている。実力ある若い5人の俳優で舞台上を廻しきってしまうのには感嘆させられるし、影絵のような背景演出が印象的。子守歌もなかなか聴き惚れる。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「オイディプス」などより知名度は劣る話だが、常軌を逸した怨念と血まみれの復讐で、ギリシア悲劇のすさまじさを堪能した。前半のギリシアのイアソンが「金羊皮」を獲るために東の最果ての国で冒険し、王女メディアと恋する話は、どうってことはない。獰猛な牡牛を手名付け、巨人を倒し、金羊皮を守る大蛇をメディアが子守唄で眠らせというあたりは獅子舞のような牡牛や、長崎くんちのような大蛇など見て楽しめる。

    逃げる二人が、父王の追っ手をかわすために、メディアが自分の弟を切り刻んで海にまく。彼女の尋常ならざる性格が垣間見え、これが後半の「悲劇」の予告となる。

    後半、新しい女を作ったイアソンに対するメディアの怒りと復讐のすさまじさ。奸計に落とすための偽りの和解の演技も含め、まさに鬼気せまる迫力で、圧倒された。こんな南沢奈央は見たことがない。女優として大きな飛躍を遂げたと思う。その点では、井上芳雄も食われそうだった。しかし、井上も負けてはおらず、いつもの甘い歌声とは別人の、野太い声で南沢と渡り合う。

    とにかく後半は圧巻の舞台。さかまく波の山と谷を、いくつも超えていく長旅のような話なのに、終わってみれば2時間ぴったりと、濃縮した時間だった。

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