Deep in the woods 公演情報 Deep in the woods」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    東京を離れ、地方の林間部へと移住した旧友のもとを同級生の男女二人が訪ねる。祖父の別荘のあるこの森に一人で住んでいるのは、フリーランスのアニメーション作家と思しきシノダ(武田知久)だ。その幼稚園時代からの友人であるサトウ(高橋あずさ)とアオキ(串尾一輝)はともに既婚者で、アオキには2歳の子どもがいる。シノダの移住からは1年だが、3人が再会するのは4、5年ぶり。そのまま明け透けに懐かしい夜は明けてゆく。
    (以下ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    異変は翌日の昼頃に起きる。あと数時間で二人が帰るとなった頃に、息も切れ切れ、会話の応答もままならないシノダの異変に二人は気づく。そこでシノダが心を病んでいることをようやく、はっきりと悟るのである。
    心を病んだシノダに「大丈夫?」と数回尋ねた後にサトウが「何かできることある?」と質問を変えるシーンが印象的だった。そこには小さな変化の中に他者に寄り添う気持ちが忍ばされていた。そして、シノダは二人に「また来てくれる?」とたずね、二人は「もちろん」と応える。

    人は他者の心の異変にどこまで気づくことができるのか。
    本作を通じてそんな命題を問われたように感じた人は多かったかもしれない。
    しかし私が本作で最も強く感じたのは、人一人の存在が与える影響の大きさであった。私たちは、あなたたちは、私も、あなたも、存在しているだけでいい。それだけで誰かの今を少し救っているのかもしれない。たとえばこんな風にふらっと久しぶりに旧友に会いに来ることなんかで。それを戸惑いながらも迎え入れることなんかで。この「会う」ということのエネルギーの大きさを、孤独の沈黙を一つ破るだけで変わる風景もまたあるのかもしれないということを感じることのできる演劇だった。「大丈夫?」を「何かできることある?」に変えることでようやく聞こえるSOSがあるのだということも。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    せんがわ劇場のコンペで前回観客賞を獲ったユニットの新作とのこと。俳優に知った名があった以外は未知数。なかなか良かった。
    一時間の作品。話の幹は、二人の来訪者(男女)とそれを迎える男の、一夜のこと。大きな事件は起きないが、旧交を温めつつも微妙に流れる不思議な空気、違和感と安堵感の間を揺れ動く、その時間の中に、彼らの過去の接点から現在の「目に見えている相手」との時間が、リアルに立ち上がる様が心地よい。「あるなあ」と思わせる会話の中に、時として「現在」の本心の吐露が僅かに、為されて行く。その延長線上、三人はどこに行き着くのか、と見ていると、最後にある種の「きつい謎解き」が待っている。だが私はそれも含めてその自然な時間の流れ方が好きであった。
    トークゲストの徳永氏(コンペの審査員でもあるが、この人の斬り込み方には大概、首肯させられるものがある)は、最後にもっと、「彼」への具体的なコミットの意思を表す台詞が欲しかった、といった意味のコメントをトークの冒頭の感想として述べていた。 実際には、二人はその男に、ある意思を示していると見えていたのだが、あれでは足りなかったのか・・(徳永氏は「劇的なあり方として」といった前提を言っていたが、、)

    蛇足ではなく、役者の貢献は大きかった。

  • 実演鑑賞

    2022年の『idk.』以来の観劇。会話が(まずは作劇の面で)巧みになっていて驚いた。俳優の演技に拠る部分も大きいが、特に明確な「引き」のない会話が続くつくりにも関わらず、飽きずに集中して見続けられる上演になっていた。ただ、その上演を通して立ち上がってくるものとして会話や場の空気以上のものが感じられなかった点は大いに不満。巧さは十分にあるのでそれで何を書くのかを観たい。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第13回せんがわ劇場演劇コンクールでオーディエンス賞を受賞した団体「終のすみか」の公演。僕自身は、劇場でしっかり公演を観るのは初。男女3名による60分の会話劇。劇中に流れる時間は大体1泊2日くらい。会話はほぼ途切れることなく、お互い距離感に気を遣い合いながら交わされる。静かで、けれど情報量多めの物語。

    ネタバレBOX

    幼稚園からの幼馴染みである男女3名。学校で同じクラスになったことは1度しかないが、大学卒業程度までそれなりに交流があった。そのうちの男性の一人が、祖父の別荘へ移住して一年が過ぎ、残り二人の男女が別荘へ遊びに行く。これまで定期的に交流を重ねてはいるが、決して親友と呼べる距離感ではない。一人は結婚し、一人は結婚したが離婚秒読み、もう一人は独身。うっすらと恋情の空気感も流れるーー。ドラマの隆起を連想させつつ、あまり沸騰し過ぎず、穏やかな時間と気遣いの心が交錯する。終点はどこだろう?と興味をもちながら観劇できた。自身の感情を明確に表現するのではなく、どこか配慮を伴いながら交わされる現代口語会話劇は見応えがありました。世の中が激動し、社会的な問題提起をしようにも目移りしてしまいそうになる現代において、自身の生活と自分自身を見つめようとする内省的な創作が、僕には好印象でした。

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