視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました! 公演情報 視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-20件 / 28件中
  • 満足度★★★★★

    楽しかったです♪
    ずっと前から瀬戸山さんの少人数作品を観たいと思っていたのですが、ようやく実現しました。『スプリー』はミナモザ史上最高傑作だったのではないでしょうか?鵺的の『クィアK』もMUの『無い光』も素晴らしく、ほんとに楽しかったです。またこの企画があるのを楽しみに待っていたいと思います。

  • 満足度★★★★★

    面白かった!
    3つとも初めて観る劇団でした。
    ひとつのテーマから紡ぎだされた3つの物語。
    オーガナイザーが自信をもってお勧めするだけあって
    上演時間は30~40分でしたが、それぞれ魅力的で面白かった。

    投票する楽しみ・・・企画としては面白いと思うのですが、
    あの少人数で主演・助演を選ぶのはちょっと難しいです。。。

    ネタバレBOX

    『スプリー』(ミナモザ)→不条理とも思えるやりとりが面白い。終盤、やや急な展開だったような気が・・・。
    『クィアK』(鵺的)→役者さんの存在感がスゴイ。始めはなんとなく気味の悪い感じだったのに、男と女の関係がわかってくるにつれてゾクゾクした。
    『無い光』(MU)→お話としてはこれが一番好きかも。会話のわちゃわちゃした感じと同級生をこちらに留まらせようとする必死さと・・・。
    個人的に、女の子が勢いで告白しちゃった後の「・・・告ってスミマセン」が可愛くてキュンとしました。
  • 満足度★★★★★

    展開の妙、3作品とも素晴らしい!
    3作品とも最後の展開、特に立場が逆転するところなどが素晴らしかったと思います。

    さあ、どの作品が最初に再演されることになるのでしょうか!?

    ところで、始まってすぐにお客さんの一人が体調を崩して退出されたため一時中断しました。俳優さんはそのまま動かずに待機していましたが、結局冒頭から再開することになりました。退出された人には申し訳ないのですが、主催者側の丁寧な配慮に感謝するとともに、珍しい体験をすることができました。

    ネタバレBOX

    『スプリー』(ミナモザ)
    骨折で入院した患者の肋骨を折ろうとする女医の話。胸の圧迫感で気付いた患者と女医の攻防があり、担当医の登場で徐々に真相が明らかになっていきます。

    医師不足の昨今、激務によるストレスが原因かと思えばそうではなく、担当医に振られたのが原因で、意識のない患者が病院に運ばれたときに女医の手を振り払ったというのが対象者に選ばれた要因と分かり、あまりに理不尽で下世話な話に笑ってしまいます。

    しかし、最後に、バイク事故で女子高生を死なせてしまったことを患者が告白すると話は一変します。肋骨を折られることにも意味があり、罪滅ぼしの一つとして受け入れると話すと、女医の気持ちは急に萎えてしまいます。

    さらに、患者が自分の痛みはあなたの痛み、あなたの痛みは自分の痛みなどとカッコいいことを言うと、それじゃあ私の痛みだと言って女医は患者の肋骨を折るところで終了。

    物事には全て道理があり、理不尽なことは何もないという哲学的で滑稽なオチに満足しました。

    『クィアK』(鵺的)
    男が客の男に、部屋にいる女性を奴隷として扱えと傲慢な態度を示します。女性は男たちからの命令に従順に従います。

    しかしその後、20年来ゲイとして生きていた男がこの女性を好きになっていたこと、男のアイデンティティも揺らいでいることが明らかになると、立場が一変し、客と思われた実は男娼から見放されてしまいます。最後は女性からも自分に傾いた心を見透かされ、いいように扱われるという話。

    没落貴族のような、落語の「らくだ」のような逆転劇でした。

    奴隷、実は結構男をたぶらかした女性を演じた鵺的の看板女優宮嶋美子さんの熱演が光っていました。

    『無い光』(MU)
    雑誌のライターが交通事故で臨死体験した同級生のイラストレーターに取材をしています。イラストレーターの女性は光が見えたことなどを話して帰りましたが、その後にライターは彼女の遺書を発見します。利き腕が使えなくなった彼女は自殺を考えているようで、戻ってきた彼女を説得しますが、光の中に進んで行くので怖くないと言い、隙をみて飛び降り自殺を図ります。

    そこでライターは、中学生のときに錠剤を飲み過ぎて同じく臨死体験をしていたのですが、それが単なる事故ではなく、同級生だった彼女に振られたと思い腹いせに自殺を図ったのが真相だと告白し、自殺のときには光が見えないことを話し、次回、最終回の記事にそのことを載せるので自殺はせめて記事を読んでからにしてくれと頼み、女性も涙ながらに思い止まるという話。

    総括しますと、最初の2本は普遍的に通用する話で、最後の1本は少し前提を置いた話でした。

    コンペティションに参加するとすれば、私的には、ある人間の立場が根底から覆ってしまう『クィアK』(鵺的)に一票を投じます。
  • 満足度★★★★★

    ある視点
    ☆は企画自体への評価ということで。公演の位置づけがはっきり自覚的だったので、予め観方を準備できたのがよかった。もちろんただ観るだけでも楽しいけれども、せっかく『トランス』との関係を示してるのだから、なるほどふむふむと考えながら観るのがやっぱり面白い。
    今回の公演は「トランス」と「スタンダード」というキィが具体的でかつ解釈の幅が広かったのがいい方向に働いていたように思う。『トランス』のどの面を切りとり返答として提示するのか、三者三様の視点が楽しめた。
    逆に三者三様の視点でそれぞれ良さがあっために、多元的な評価基準を採用しないと単純でつまらない気もするので、結果発表ってどういう感じになるんだろ?とか思ったりも。
    例えば様々な場所で上演されうるスタンダードなバランス感覚は『無い光』が一番ではなかったかと思うが、2010年の立場からの『トランス』への返答を最も抉って表現していたのは『クィアK』ではないかと。ちなみに自分の一番の好みは『クィアK』。
    またあとでネタばれに書く予定なのでとりあえずこれで。

    ネタバレBOX

    舞台とは関係ないけど体調不良で途中で退室した女の人大丈夫だったのかな・・・
  • 満足度★★★★★

    NEWS! (warning: unofficial)
    【Theatrical-Tokyo】 Mr. Ayumu HASEGAWA has awarded the prize of "the best and brightest organaizer on the theatrical scene, 2010."
    This prize has been awarded for such outstanding services upon the theatrical event, named "Shiten vol.1" ("Shiten" meens the point of view in Japanese) as the planning, operating and all of the exellent deeds about the said event.
    Especially, he himself was the play writer and producer of the stage, "the lack of the light," which was one of the stages in Shiten, so that his prominent ability, which was made coped with both the organaizer of the event and the producer of the stage, would have been applauded.

    Note: The above mentioned prize has been awarded from "two_boats," only one of the audience and it has been not cleared that Mr. HASEGAWA would accept it on the present, Oct 19, 2010.

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい企画
    全体的に満足だった。やはり好みは『クィアK』(鵺的)。言葉とはうらはらな心理の真髄が素晴らしい。インパクトでは以前から患者の肋骨を折っていたと思われる精神科のドクターの狂気を描いた『スプリー』(ミナモザ)が抜群の出来。臨死体験で感じた光なんか本当はないと言い切る『無い光』(MU)がちょっと解りづらかった。たぶん感覚が違うのかとも思った次第。
    短編なので展開が速い分、飽きることなく楽しめる。

  • 満足度★★★★★

    これを観ないなんて勿体ない!!
    3劇団による短編3部作。ひとつのテーマから分離し、それぞれの劇団がそれぞれの色を出して見事に表現している。この企画は今後も是非継続して頂きたい!それ程、完成度が高い。演劇を観たことなく尻込みしている人がいるのであれば、これを観ればいろんな劇団があるということを理解出来るであろう。一歩踏み出すには持って来いの企画。まずは先入観を持たずに気軽に観て欲しい。深く理解したいと思ったらもう一度観ればいいだけのことだ。約1週間に渡るこの企画。シルバーウィークも重なっているので、ふらっと足を向けてみてはどうだろうか。

    ネタバレBOX

    私は本質的な事を語るのにはいつも少し時間が掛かります。初日は勢い重視で観ていたので、正直言ってテンポが良いところが中心になって心に残りました。その点だけで言えば、「MU」のテンポは最高。「ミナモザ」も短編であのテンポを放り込んできた点はスゴイ。今までにないものを見せてもらった。「鵺的」はテンポは目立たなかったものの、本質を突っ込めば面白い内容。総合評価など出来る程数もこなしていないし、表現も貧困ですが、千秋楽を観たうえで個人的な感想をどこかにログとして残したいと思います。
  • 満足度★★★★★

    ずっと今後も続けてほしい。
    見応えのあるイベントだった。
    ずっと今後も続けてほしい。

    30分〜40分の短編を3作。
    MU、ミナモザ、鵺的…共に初めて観ました。

    各劇団、個性あふれ、各々違う角度で強い刺激があり
    濃密な丁寧に描かれた作品で本当におもしろかった。
    かなりドキドキさせられたし、大いに笑って、泣けた。
    作品の順番もすごく良かったと思う。
    ギャラリーLE DECOの空間も良かった。

    観客が選ぶコンペ形式でしたが、結果はどうなったのかな?
    ちょっとだけ結果が気になります。

    それからよく劇場でシナリオを販売しているのを
    横目に見て通り過ぎてしまうのですが、
    休憩中にハセガワアユムさんご本人が声を出して
    オススメしてるのが気になり買ってみた。
    「視点 Re:TRANS」シナリオ集、本当におもしろい。
    空き時間に何度も読んで楽しんだ。買って正解だった。
    記憶が曖昧だった部分が鮮明になっていく過程が
    なにしろ気持ちよかった。次から積極的に買おう。

  • 満足度★★★★★

    圧倒っっ
    失礼な話だけど、会場が小さな雑居ビルだったので着いた時はココでっっ??っ
    て思ったけど、会場内は客席はゆったり作られてて快適。逆にイントレや内壁剥
    き出しな空間が良い味出してた。
    短編3作共に異質な手触りで◎30分位の短い作品の中にもきちんと人間が生き
    てて、濃密な時間がすごく楽しかった。どの作品も、あー、ここで終わっちゃう
    のかぁって寂しい気持ちになるのは、作品を好きになったって事だよね。良い台
    詞もたくさんあったし、何より『トランスへの返信』という、少人数で、どこで
    も上演できる。このコンセプトがステキだ。

    ネタバレBOX

    ミナモザ『スプリー』は、女が、事故で両足と右手を骨折してる男の肋骨を折ろ
    うとする所から始まる。中盤『心の病は脳が原因で、怪我と違って症状が出てか
    ら原因を作り出すんだ』って話が出てきて。『他人の肋骨を折るのに理由はある
    のか』。毎日ニュースで伝えられる事件についても、僕らは自分の解釈でしか事
    件を理解出来ないんだなと思わせる、理由の話。

    鵺的『クィアK』はある男が自分の呼んだ男娼と、自分の事を好きで居着いた女
    と、セックスについて語る話。女が虫のように地べたを這う光景が異様でヒリヒ
    リ。終盤、突然男と女の立ち位置が反転してドキッとする。男の自分の素直な思
    いを告白するラストはなんて本能的なんだろう。

    MU『無い光』は、臨死体験して光を見た人の話を聞いて、雑誌に定期連載する
    ライターの男が、幼馴染みの女の『光を体感した』話を聞く所から始まる。自殺
    だけは光が見えないんだと男は迫り、何で弱った私にそんな話を突き付けるのか
    と女は逃げる。自分の身近な人が『死にたい』と言ったら自分は何て応えるだろ
    うか。そんな事を考えさせる、生死の話。
  • 満足度★★★★★

    リリカルなアンサンブル。
    何かを表現したいひとがいて、それを見たいとおもうひとがいて、そういうひとたちがひとつの場所に集まれば、成立するよね?
    そんな風に演劇の原点に立ち返り、シンプルなことをスタンダードなスタイルとして広めていこう!というすてきなプロジェクト。
    複数の団体がひとつのテーマ性に沿って創作するというコンセプトを持っているため、多角的にひとつのニュアンスを味わえるおもしろさがありました。
    今回の作品群は、フラットな日常を操縦するアンバランスな自意識が感情のメーターごとふりきれてしまった時に溢れだす思いが出口のない闇をさ迷う誰かとシンクロした(かもしれない)一瞬に感じる痛みや余韻を丁寧に描いていたようにおもいました。
    作品ごとに印象に残った点を投票できますので、参加してる感がありますし、上演後の結果を知る楽しみも生まれます。
    人気のあるイヴェントなので会場は混みますが、座席の窮屈さを差し引いても行く価値はあるとおもいますよ。

    ネタバレBOX

    ■ミナモザ「スプリー」
    夜な夜な入院患者の骨を折っている精神科女医(木村キリコ)は、動機はあれど理由なき反抗を繰り返す。そんな彼女のターゲットになったのは、17才の女の子をバイク事故で轢いてしまい、自らも重傷を負った青年(宮川珈琲)。そして精神科女医と不倫関係にある青年の担当医(実近 順次)が織りなすドラマ。

    骨を折ることを正当化しようとするために、あれこれと御託を並べてめちゃくちゃな論理を振りかざす女医の暴走の切実さ。
    それを頭ごなしに否定できないまま、時々何気に共感しつつ正確にツッコミを入れていく青年がいい味を出していて。
    女医は、猟奇的なひとに見えにくい普通っぽさが人格ベースになっていたので、ひとつアクションを起こしたり、ほんの些細なひとことで精神があっけなく崩壊してしまう心の揺れが繊細に伝わってきました。

    中盤、女医との別れを切りだした青年の担当外科医が窓から投げ捨てた得体の知れないぐねぐねとうごく物体は、気色悪い女医の姿を投影化させているようで恐ろしく、その彼との関係性の後退がかえって女医と青年との関係性を進化させて、『あなたの痛みは理解できる。』という予感によって立場が逆転するばかりか、誰かを傷つけた罰を受けることで『赦し』を享受し、ひとつの世界にのみ込まれていく終盤が興味深かったです。


    ■鵺的 「クィアK」
    男婦の近藤史信(平山寛人)、彼を週一で買ってる木谷鑑(今里真)、木谷を過剰に愛する菅野紗代(宮嶋美子)それぞれのピュアに屈折した愛憎渦巻く作品。

    平面的で絵画的な構図から、徐々に誰かの背景が浮かびあがり、混沌とした時間の流れにのみ込まれていくような異世界が物語として立ちあがり、緊迫した空気が空間を満たします。

    序盤は女卑を中心とした場面が多く、息苦しさが伴いますが、真のセクシャリティを反発している感情をポーズ(代弁)をとるための、パフォーマンスという意味のある行為であって。これに相対する文脈としてアイデンティティの齟齬を克服するためにクィア理論の観点に基づいた便宜的/疑似的パフォーマンスをも踏襲したふたりが『痛み』と『赦し』によってひとつに溶けあっていくという点は、ミナモザのスプリーと繋がるテーマでふたつの作品がわたしのなかでひとつに重なりました。


    ■MU 「無い光」
    臨死体験ルポを雑誌で連載している後藤が連載の最終回のゲストに選んだのは同級生で人気イラストレーターの理英(秋澤弥里)。理恵に片想い中の同級生の修造(武田 諭)と、後藤のアシスタントの朝子(金沢涼恵)も加わって、理恵が不倫相手の家に向かう途中に自動車事故を起こした時に彼女が見た『光』について話を聞いていくうちに、後藤と修造のなかでも『死の記憶』が蘇って・・・。

    自分の気持ちを誰かに話すと気が楽になるものだよ。とはよく言うけれど、誰かに話せばはなすほど、自分の手から離れていって『物語』になる、という発想がすてきでした。
    ひとは結構その『物語』に救われたりするものだから。そこには夢も希望もあるのではないのかなぁ、と。
    そして、『希望の光』とは、みえるものかもしれしれないけれど、また見えなくなる可能性も残されているのならば、光なんて無いモノなんだ。っておもうことにして生きて行くほうがずっと気楽なんじゃないの?っていうメッセージもとても心強かったです。
    小ネタでは、ドナーカードのように遺書を携帯するのがトレンディにな・・・らないあのギャグセンスは突き抜けていて最高でした。あと、理英が10年前に借りたCDとか本を後藤に返す時マイブラのラブレスが入ってたのは個人的には胸キュンポイントでした。笑

    傷ついている誰かと誰かの闇が呼応する・・・というのは3作品とも共通する認識だったようにおもうのですが、この作品ではお互いが傷つけあっているわけではないので、最後は『赦し』をこえた『願い』がきれいな弧を描いているように感じました。
  • 満足度★★★★★

    生命を巡る永遠のサイクル
    別劇団による3本立てでありながら、単なるショーケースになっていないことにまず拍手を送りたい。

    単なる3本の短編を上演したのではなく、きちんと1つのループの中にそれぞれが存在していたように思える。
    それはプロデューサーの意図がきちんと伝わったことではないかと思う。

    その意味で、今回の企画は成功したとも言える。

    ネタバレBOX

    「結果的に」なのかもしれないが、3つの短編が「生・性・死」というきれいな「生命」の連鎖になっていた。
    それが当初からの企てかどうかは問題ではなく、プロデューサーの意図(あるいは感覚)が他者にも伝わったということの証だと思う。

    また、3本ともに貫かれているのは、私がMUを観るときにいつも感じる「虚無」のような「穴」であった。
    連続している生命のサイクルには、「人が生きる」ということにつきまとう「埋まらない何か」がいつもある。
    それがどのようになっていくのか、あるいは何なのかを、そっと指さすような物語が並んでいたのではないだろうか。

    また、今回の企画は、「短編1本だけでは上演できないので」というハセガワさんの発言は横に置くとして(笑)、「少人数、どこでも上演可能なスタンダードを目指す」というコンセプトは素晴らしい。演劇全体のことを視野に入れての公演、つまり、劇団の主宰とはまた違うレベルの発想になっていたことも、ハセガワさんがきちんとプロデューサーとしての役割を果たしていたのではないかと思うのだ。

    ==================

    ミナモザ『スプリー』
    異様な緊張感で、女医が患者にまたがり胸を押すという行為と、その行為の意味がつかめてこないことへの不安が、密集した観劇状況と相まって、一種息苦しさを醸し出していた。
    ときおり、挟まれる笑いの要素には救われはするのだが、その構造は男性医師が登場しても治まらない。
    そして、患者の突然の独白になるのだが、これが唐突すぎて、たぶん笑いに変わっていく(すべてが「苦い笑い」に変わっていくというオチ)のだろうと思う自分がいた。そう思って見ていたので、結果「あぁ…」ということに。
    ラストの台詞はちょっと短編っぽく、いい感じの幕切れ風にになっていたのだが。

    絶対に埋めることができないとわかっている自分の心の穴を他者の痛みで埋めようとする女医の物語。
    痛めつけようと思っていた患者が、女医の行動から、自分の「痛み」の「意味」を見出す。そして、そのことと、女医の行為とが偶然に交錯することで、1つの光が見えてくる物語になっていくものだと思った。
    つまり、患者が、自ら「痛み」を差し出して、女医の心の穴を埋めようとする犠牲的精神を見せるラストにつながるということだ。「犠牲」に「暴力」で応えるというラストに。

    この一瞬の光を見せるには、やはり、患者の「生き様」のようなものを、全編の台詞の中で感じ取れるようにすべきではなかったのだろうか。そして初めて、2つのベクトルが交差するという構造になっていくべきではなかったのだろうか。

    短編だからこそ、うまく省略し、観客にある部分をゆだねながらそれは可能ではなかったのかと思う。それが、「長編の舞台ではできない醍醐味」ではなかったのか、と思うのだ。残念。


    鵺的『クィアK』
    これも息苦しい雰囲気を持った作品だった。
    中盤までは「プレイなのか?」という言葉が頭をよぎったが、そういう「余裕」がない。強い言葉と、それに惨めに従う女性と、それを不快に見ている男性の3人がいる。
    その3人の関係が、微妙な力関係にある(力関係が移動しつつ)、三角形を描いていることが終盤に見えてくるという趣向がうまい。

    こちらは、「愛」という言葉はタブーのごとく、それをひたすら「肉体」と「お金」に置き換えて進行する物語。
    逆に「愛」と言ってしまえば、すべてが崩れてしまうことが恐ろしい3人が、結局埋めることのできない心の穴を「肉体」で埋めていこうとする。

    言葉にしないことで、逆に言葉に縛られてしまった3人なのだ。

    常に大声を出している男が一番弱く、ほとんど口をきかない女が一番強いという構図も見えてくる。

    ただし、大声は、全編でなくて、静かな怖さのようなものも感じたかったというのが本音でもある。


    MU『無い光』
    「死」もって心の穴を埋めようとする(した)物語。
    「死」は最後の手段である。逆に最初の手段でもあろう。したがって、3本ともがこうなっていなかったことは、幸いでもある。下手をすると3本ともそんな方向に進みかねないからだ。

    死をもって心の穴を埋めようとしながらも、「光」がほしいという欲望は、いいと思う。「生」への「光」もそこに同居しているからだ。
    ほんとうにすべてに絶望していたら、「光」なんてどうでもいいことかもしれない。
    「光」が救いのある話のもとになっている。

    事故を起こした女性は、すでに「穴」は埋まらないことを知っている。それは、淡島通りを鎌倉通りあたりまで行ったところで、車がスピンするなんていう、正気の沙汰ではない走らせ方をしていたことでわかる。つまり、死んでもいいと思っていたということだ。

    その事故ですべて終わりにすることができなかった女性は、運命にいろいろなものを奪われていくように見え、その実、手にしているモノが、確実にあるということが見えてくる。
    彼女が手にしているのは、「自分を気に掛けてくれる人がいる」ということだ。
    それが本当の意味での、彼女にとっての「光」であり、彼女はそれに向かって進むということなのだ。

    これは、何ごとにも代え難い。
    実は、前2本ともに、それが「隠れた」キーワードになっている。
    横に誰が「いるのか」「いないのか」それが大切であり、それが「光」でもある。
    「光」の前には「闇」はない、なんて陳腐なことは言わないにしても。

    て、言うか、最初にかかっていたVelvetのSunday Morningでネタバレしてたってことだったりして(笑)。

    ヘヴィになりがちな物語に、恋愛模様をうまく絡ませるあたりが、ちょっとおしゃれでMUっぽいかもしれない。

    やはり短編を多く手がけているからか、手際がいいし、締まりもいい。観客への興味の持たせ方を心得ているようだ。1つひとつの動きに無駄がなく、うまい具合に引っ張っていく。

    ==================

    3本のうち、2本上演後、休憩が入ったが、全上演時間や準備を考えてもその必要はないのでは、と最初は思っていたが、前2本の重苦しさで、休憩に救われた感がある(笑)。

    「少人数、どこでも上演可能なスタンダードを目指す」のであれば、何をもってスタンダードになり得るのか、というレギュレーションも必要だったのではないだろうかとも思う(実際は、そんなことは、誰もわからないのだが・笑)。

    また、「どこでも」ということはあるのだが、一番上演される可能性がある「劇場」を意識した作品であったほうがよかったのではないか、とも思った。というか、劇場で観たい。

    今後、この企画はどのようになっていくのか興味津々である。
  • 満足度★★★★★

    短編は素敵
    ハセガワ作品は短編慣れしてるなぁと思わせる、うまさが頭ひとつでている。でも木村キリコの必死顔も素敵。

  • 満足度★★★★

    素晴らしい企画
    3人か4人の役者のための30~40分程度の作品のコンペで、それぞれ異なる質感を持った魅力的な作品で楽しめました。

    ミナモザ
    理由もなく肋骨を折ろうとする医者と患者のやりとりが古典的不条理劇みたいでした。サスペンス→コメディ→感動モノ(?)と緩やかに切り変わっていく脚本が見事でした。

    鵺的
    性的マイノリティの中のマイノリティという特殊な立ち場を描いていて、何が常識なのかを考えさせる内容でした。途中で女の立場が明らかになった後の展開が圧巻でした。殺駁とした演技が素晴らしかったです。

    MU
    臨死体験の記事のライターを軸に生と死を書いた作品。笑いとシリアスさのバランスが良く、分かりやすい作品でした。エピソードを膨らませて長編にしても良さそうです。アシスタント役の演技がいかにもいそうな感じで、しかしわざとらしくもなく印象に残りました。

    良い企画だったので、今後も継続して行って欲しいです。

  • 満足度★★★★

    順番もよかった。
    以前、レストランルデコでも3劇団合同公演がありましたね。
    今回はちゃんと縛りがある公演、3者3様に異質な恋愛模様もあって
    落ち着いた所は恋愛じゃない所へそれぞれ落ちたのも面白いです。
    今回は人数が少ないのに主演・助演を選ぶのだけが困難でしたが
    それ以外は楽しめました。企画に+★です。感想はTBにて

  • 満足度★★★★

    現代を切り取る三劇団の競演!
    ルデコで観客を巻き込んだ3劇団のフェスティバル。なかなか見応えがあった。

    それぞれ作風は違うものの、現代を切り取って見せるというところでは共通部分もある。

    鴻上尚史の名作にトランスという3人芝居があるが、新たに、3人(あるいは4人)芝居のスタンダードを生み出そうとう試み。その心意気やよしである。

  • 満足度★★★★

    それぞれに味わいがありしかも濃密
    「ミザリー」を想起させるミナモザの「スプリー」、会話に緊張感のある鵺的の「クィアK」、いかにもハセガワアユム的(私見)なMUの「無い光」それぞれに味わいがあり、しかも濃密。
    2編の後に休憩が入るのも道理、みたいな。(笑)

  • 満足度★★★★

    面白かった
    なかなか面白かったです。
    しかし、ミナモザ上演途中でタイミングピッタリにカミナリが鳴ったのは、ある意味凄かった。

    ネタバレBOX

    ミナモザ「スプリー」
    面白くない事はないのだが、ちょっとインパクトに欠けるかな。
    また、病室が舞台と思われるが、あまり病室らしく見えなかった。どちらかというと、監禁室に見えてしまった。
    少し惜しい出来かな。

    鵺的「クィアK」
    役者の相当の負担をかけてるなあと感じる。また、役者もその負担に負けない演技を見せつけた。
    少し平山さん演じる役が、少し絡みが弱いかなと感じるものの、面白かった。

    MU「無い光」
    これだけ4人芝居となっていたので、感情の多数決が出せたり、物語中に1人遊ばせる事が出来たりする分、物語に動きが出てるように感じた。3作品の中では1番面白かったかも。


    後、アンケート用紙による観客が参加できるコンベティションとなっていたが、今回の方式だとあまり参加している意識が弱いかな。
    何人か選べるというより役者1人だけ選択方式とか、また、終演後に選択するパターンであったが、1本終了後に審査の時間を設けた方がよかったかも。(終わった後だと、どうしてもラストのが印象に残ってしまうので)
    まあ、ここらへんはか今後いい方法を模索していくしかないかな。
  • 満足度★★★★

    カジュアルに対バン形式で
    3劇団の短編が観れる対バン形式の公演。こう言うのって演劇じゃあんまりないから、もっとやった方がいい。目当ての劇団以外の作品に触れられて、新規の観客獲得出来て公演費用も折半出来るし、演劇界隈が活性化するんじゃないかな。

    僕は普段は音楽や映画やゲームやアニメに興味がある人間で、今年に入ってから10年ぶりくらいに色々演劇を見るようになったんだけど、未だに演劇は「出会い」の機会が少ないと思う。ちゃんとしたレコメンドをする媒体がほとんどないため、人気の火の付け方が未だ口コミだけだし。その口コミすら凄いニッチな部分だけでぐるぐる回ってるスノッブな印象。

    だからこう言う対バン形式は見る側としては、色々な出会いがあるから嬉しいよね。対バンになるとある程度作風も似てるから、口コミの効果ももっと広範囲になるし。これだけカジュアルに上演できる作品ならば、その演目だけで3ヶ月くらい別の劇団と対バンしたりも出来る気がする。コントもお笑いも似たような形でやっているのに、同じ様式でも演劇になった途端、少しかしこまりすぎてないかな。

    ネタバレBOX

    さて、肝心の舞台の内容ですが、少人数でどこでも上演できるをコンセプトにしただけあって、その縛りがいい方に働いて、どの作品も短いながらも非常に濃密でした。人数と時間がしぼられる分、登場人物の立ち居も主張もはっきりしてくるので、会話も物語もテンポよく、言ってしまえば極端に展開するので、その分濃度が上がります。

    前半は会話劇としての面白さを見せ、後半スピリチュアルな共有観へと消化していくミナモザの「スプリー」。人間のエゴのドロドロしたプレイを見せつけたかとは思いきや、その奥にある純粋な欲望と愛の真理へと到達していく鵺的の「クィアK」。

    個人的に特によかったのはやはりMUの「無い光」。まあ簡単に意訳すればシャブ中がシャブ中に「そんなラリっても救われないよ」と教えてあげる話ですけど、重いテーマを絡ませたかと思えば、重さを感じさせないようシチュエーションコメディ的な笑いも入れて展開し、油断したところでラストに強烈なパンチを打ってくる。主人公の職業だからこそ、知らず知らずのうち生まれてしまった罪。それに対する戦い方と落とし前の付け方もやはり主人公の信念の元に帰結していて、脚本の妙を感じます。このバランス感覚はやはり突出しているなという印象。
    小道具にマイブラのCDやキンソンに「sunday morning」のBECKのカバーを使用していたりで細かいところでにやりとさせるのもいいですね。
  • 満足度★★★★

    原典を広げる力
    どの作品にも、ベースにある「トランス」の世界に対する実直さがあって。
    一方で作品ごとに、作り手の鋭利な感覚が伝わってきました。

    個々の作品の品質に加えて
    企画としても、とてもよい試みだと感じました。

    ネタバレBOX

    初日を拝見。

    「トランス」はずいぶん昔にサードステージ版(記憶が間違っていなければ)で観ています。

    その時に感じたものが、個々の作品を観る中で、実直に蘇ってきて。
    なおかつ、作り手の更なる創意をとても力強く感じることができました。

    ・ミナモザ 「スプリー」

    物語の入口は不条理な感じすらして・・・。
    患者と肋骨を折ろうとする女医の感覚、
    さらには主治医と女医のつながりの焦点があわない。

    でも、主治医と女医の関係、
    そして主治医と患者の関係には腑に落ちるものがあって、
    質感がざっくりと編みあげられていくなかに違和感がない。
    そして、気がつけば、
    男と女医の間にも
    太くて不思議な説得力をもった関係性が
    編み上げられているのです。

    ボーダラインの感触、
    依存、憎悪、無関心、哀願といった
    女医の内心の変化に目を奪われているうちに
    いくつもの「理由」の枠組みが
    観る側に取り込まれている。
    一見乖離した医師たちの関係性と主治医&患者の関係性が
    次第に編み上げられて立体感をなしていく・・・。

    受け入れられないことと受け入れること・・・。

    物語のふくらみの中で、
    冒頭の女医と患者が醸し出す理不尽さも、
    霧散して
    女医が肋骨を折るというシーンが
    観る側にとってすら成り立ってしまう。


    物語の様々な部分に違和感はあるのです。
    でも、その違和感を受容させてしまうような関係の重なりにこそ、
    心を捉えられて。

    終盤、女医との関係を受容していく男の姿に、
    もう違和感やバラツキはない・・・。

    ラストシーンに、
    ひとつの世界の形成と
    淡々と柔らかく
    なおかつ濃密な空気を感じて息を呑みました。

    ・鵺的 「クィア K」

    冒頭からある種の閉塞感が漂います。

    女性の従属の行き場のなさ。男のいらだちともう一人の男のとまどい。
    そこには観る側をも立ちすくませるような濃度があって。

    その緊張感が緩む中、
    男たちの会話が生まれ、
    世界が少しずつ解けていきます。
    二人は男娼とその客であることがわかる。
    二人の女性に対する想いの表れに
    バイアスの掛かり方の違いのようなものがあって
    そこからさらに世界が解けていく。

    女性は揺らがずに貫くのです。
    その貫きの確かさがあるからこそ、
    男性の内側から滴るものがある。

    それぞれの表層にある乾いた感じが次第に崩れ、
    内側に潜んでいたものが場を染めていきます。
    一様に滲んでくるわけではない。
    時には沈黙や無表情から、
    あるいは怒りからそれぞれの色が醸成されていく。

    そこには、
    「スプリー」の組み上げられていく感覚と真反対に
    解けていく中で醸成される広がりがあって・・・。
    女性の鳥肌が立つような貫きに加えて
    男たちがそれぞれに抱える深い戸惑いが
    強くしなやかに伝わってきたことでした。

    明らかにデフォルメされた世界があるのに
    人間の生臭さのようなものまで
    緻密にやってくる・・・。

    舞台上の空気感にも圧倒されました。



    ・MU「無い光」

    二つの作品に比べて、
    観る側にとってナチュラルな質感を持って
    物語が流れていきます。

    雑誌のインタビュー、
    編集者との会話のなかで、
    次第に編み込まれていくるものがある。

    他の2作品とが刹那を切り取った印象があるのに対して
    この作品には、時間への俯瞰があって、
    そのことが、物語をしなやかに広げていきます。

    本来の3人芝居にもう一人の人物を加えることで
    物語のコアにある感覚が
    照明を当てられたがごとく
    浮かび上がってくる。
    従前の2作品では、
    ある種のバイアスをかけることによって抽出されてきたものを、
    この作品では4人目の登場人物が
    しなやかに強く押し出していくような感じ。

    観る側は
    次第に明らかにされていくものを
    そのままに受け入れながら
    個々のキャラクターが持ち合わせていたものを
    ナチュラルに受け止めることができる。

    そのベースがあるから、
    物語の世界がさらに踏み込む部分が
    とてもくっきりと伝わってくるのです。
    観る側と同じ空気を持った世界のボーダーに、
    他の2作品と同じような、
    作品の原典がもつ
    それぞれの想いの関連と憑依、
    さらには死につながる狂気との境目が
    したたかに醸し出されていく。

    他の2作品とくらべて、
    語り口はいたって馴染みやすいのですが、
    そこには、しっかりと深く残る肌触りがあって。

    時間の軽さや重さの質感を
    しっかりと感じることができる作品でもありました。

    *** ***

    全部の作品を観終わって、
    それぞれの醸し出す世界が
    ことなる色で
    ある共通の感覚を醸し出していることに
    瞠目。

    それぞれの作品が
    恣意的にそうなったのかどうかは別として、
    他の作品を照らす力になっているようにも感じた。
    個々の作品の力量に加えて
    3つの作品が作りだす
    共通部分と異なる感触の綾織りにも
    深く心を奪われたことでした。

    とても秀逸な試みに満ちた公演であったと思います。

  • 満足度★★★★

    いいイベントだと思う!
    15分とか短い作品だとなかなか見に行く気にならないんですが、これだけ濃いー内容だったら満足でした!各団体とも見たかった劇団さんだったし、きちんとセレクトされてる感じもあってこれはすごくいい企画ですね!
    僕はMUが一番好みでした。ルデコのMUは毎回すごく面白い!
    キャスティング、衣裳、何より台詞が抜群によかった。

    ネタバレBOX

    「今からそいつ殴りに行こうぜ」「ドナーカードすら流行ってない」「恋バナ」のパンチラインは最高でした。

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