ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】 公演情報 ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-20件 / 34件中
  • れしぴえんとへん。
    個人的には過去に観た作品と比べて大分観やすく、脚本協力というクレジットが何処までの仕事を指しているのか非常に気になりました。
    ネタバレBOXは揚げ足取りみたいな内容になっちゃったので、好きだった人はスルーしたほうが作品を観た時の気持ちを保てるかも。

    ネタバレBOX

    兄の臓器が移植された相手を兄に見立てて抱かれる気持ちの異常さは面白い。が、そうなると移植された相手の内の一人だけと関係を持った事に違和感が。移植された相手の複数人とそれこそ性別を問わず誰とでも寝てくれたほうが異常さを感じられたかと。
    そしてそんなに大事にしている臓器を何故あんな簡素な袋に入れてテーブルに直置きしてしまうのか。ラストはインパクトだけ。事故ったからといって望む部位の臓器移植になる可能性は低い訳で。異常な行動や感情のマックス部分を繋ぎ合せて物語が作られている中で、ミニマムな部分での矛盾が雑さに見えた。「うわぁ、そんな所までこだわるんだ…」と思わせたほうが良かった。よく使われる言葉ではリアルさって事ですが、この団体においては「執拗なまでの変態的こだわり」として。
  • 満足度★★★★

    レシピレント編観劇
    無くなった長男?の臓器を提供した家族と臓器提供を受けた人達(長男を殺した人物もいたと思われる)の物語でしたが、最終的には歪んだ家族愛の物語でいいのかな。

    上演時間を短くしているからか、あまり脇にそれることなくラストの展開まで一気に行く感じのシンプルな物語でした。
    シンプルな物語りながらも、歪んだ家族愛はそこそこ描かれておりました。
    ただ、やはり時間が短かったからか、臓器提供者が歪んだ家族愛(恐怖?)を感じるところまで描ききれてなかったかな。

  • 満足度★★★

    両バージョン観劇
    <臓器提供者(ドナー)編>を先に観劇し、翌日に<臓器受容者(レシピエント)編>を観劇。臓器を提供される側の心理と提供する側の心理の差を極端ではあるが、人間倫理の本質をえぐり出した演出は、何とも心にぐさりと突き刺さりました。両バージョンとも、それほど長いものではなかったので、できれば同時に上演した方が、作品の意図を明確に提示できたのではないでしょうか。

  • 満足度★★★★★

    両編とも「This is elePHANTMoon!」
    【レシピエント編】 
    まずは説明的なものがまったくないのに、交わされる会話の中から自然に諸状況が伝わってくる序盤に舌を巻く。
    そんな会話劇的な中からドナーの遺族の気持ちがジワジワと滲み出てきて、しかし迎える結末はショッキング気味?
    ってか、ブラックでありながらも「そうか、そのテがあったか……って、そーじゃねーだろ!」なノリツッコミをしたくなるようなユーモラスなオチは前作『ブロークン・セッション』(前年11月)のクライマックスと同質で、笑っては不謹慎かと思いながらもσ(^-^) は満面の笑み…(爆)
    思い起こせば前述の「会話から状況がしっかり伝わってくる」手口も『ブロークン…』と共通で、前作にウケまくった身として大いに満足。
    その一方、ドナー編の初日をご覧になった方の情報(ってか印象?)と照らし合わせ、この時点で「観る順を間違えたかもなぁ…」とも思う。(笑)
     
    【ドナー編】 
    まず、装置を目にして「あらまぁ」と。
    R編では窓があり外の木々が見えていた装置後方中央部分がコンクリート壁だし、天板が木目で丸いテーブルも黒一色の四角いものだし、などの変化があり周囲の細い縦材まで色合いが違って感じられるほど。
    なるほど、60分と75分という中篇でありながらも通して上演しないのはその転換のため「も」ある(← 内容的にも続けて観るのはヘヴィーそうだし…(笑))のね、と。
    そんな似て非なる(?)装置内で進むストーリーは静かな中にピンと張り詰めた緊張感があり、初日をご覧になった方が持たれた「『ブロークン…』よりも『成れの果て』(前年5月)に近い」という印象に大いに賛同。
    また、ヒロインが悩んだ末に我が子を殺した犯人の臓器を受ける決断を下すものの、決して「めでたしめでたし」にはならず、手術の直前で…という後味の悪さ(笑)もいかにも、な感じ。
     
    【総括】 
    そんなこんなで、動と静あるいは陽と陰にクッキリ分かれつつも、その両方が「This is elePHANTMoon!」に仕上がっているのが見事。
    で、両編を観終えての結論は「やっぱり観る順を誤った…」(爆)
    しかし事前にD編の印象を耳にしていたので覚悟ができていた(笑)のは幸い。予備知識なしにこの順で観たらヘコんだかも?(爆)

  • 満足度★★★

    リアルな視線、ニヒリズムの罠
    D(ドナー)編、R(レシピエント)篇の両方を観劇しました。

    どちらも苦い終幕。その時に感じたもやもやをどう整理するのか――それにはある程度の時間が必要で、今になって感想を書くことに。

    生きる、ということはすなわち人と関わるということ。人と人との間には、愛も慈しみもあれば、打算や嫉妬、憎悪もある。さらに、それらが交錯し、なかなか1点に一致することがないのが、この世の常。この2本の芝居は、そのことを極めてヴィヴィッドに、スリリングに描いていると思います。また、そのことによって「考えさせる力」も持っていると言えるでしょう。

    が、、私はこういうものを書き、表現できる人にこそ、「ドラマティックであること」に惑わされず、限界まで考えて考えて、考えうる限りの希望をしぼり出し、描いてほしいとも思うのです。

    そこにはきっと、もっと鮮やかで深く、耐用期間の長い感動(ドラマ)があるはずです。

    (むろんそれは、分かりやすい「希望」にはならないでしょうが)




    ネタバレBOX


    D編では、死刑囚からの臓器提供の申し出に揺れる、被害者家族(彼に子どもを殺された夫婦)の葛藤が軸になります。この申し出は一見、「つぐない」として理に叶うもののようにみえてその実、被害者にとっては事件の記憶をイヤでも蘇らせ、さらなる苦しみ、葛藤を与えるものでもあります。冷静な判断など望むべくもない状況に追い込まれた夫婦の感情のやりとりは、ヒリヒリと生々しい。また、友人との間で交わされる、さりげない「決定する/しない」をめぐる会話、移植コーディネーターの女性と母との間に横たわる父の死をめぐるすれ違いも、「臓器移植」という題材を重層的に見せます。

    R編は、もう少し明るいトーンで、ドナーとなった男性の家族がレシピエントに抱く期待と、裏切り、それに対する復讐が描かれます。年に1回集まるレシピエントたちとの食事会に死者との再会と「絶えることのない感謝」を期待する母娘は、滑稽かつ恐ろしく、また無垢です(だから時々かわいくさえ見える)。また、彼女たちの期待をよそに、もらった命をそれぞれ気ままに生きようとするレシピエントたちも、のびのびと魅力的で、それだけに恐ろしい。D編とは違ったドライで明るいアプローチが、物語の面白さと怖さを引き立てます。

    そして、ラスト……なのですが、
    D編では被害者夫婦の妻が死刑囚の臓器を受け入れて生きようとする矢先に、別の被害者に殺害されてしまいます。
    R編では母娘の希望に沿わないレシピエントは、その臓器を取り上げられてしまう羽目になります。実行犯はドナーを事故死させてしまった男(母娘に使われている)。母娘は取り上げた臓器と食事会をした後、ふたたび「ふさわしいレシピエント」を探すことにします。

    どちらも衝撃的で、印象的です。でもちょっと、ドラマティックであること、アンチ・ハッピーエンドであることに流されているような気もしました。クリエーションにとってシニカルな視点は欠かせないものといえます。けれど、それが単なるニヒリズムやドラマ性に帰するものなら、いわゆる(揶揄して言うようなベタな)「いい話」とどこが違うのか――。

    もちろん、この作品はそれほど単純ではありません。D編のラストに登場する殺人者は自ら命を絶っているし、R編の母娘が取り返した臓器もまた、(ドナーがいないため)「瀕死」の状態にある。最終的に「勝った立場」にいるものは誰もいないという意味では多面的ということもできます。ただ……レイプを題材にした「成れの果て」も、同じように衝撃的なラストだったのですが、あの時はその苦さがもっと多層的で(言葉は悪いですが)魅力的にも見えたのは……こちらの方がより根源的で普遍的な問題(生死/相互理解)を扱い、かつその答えとして「絶望」を導き出してしまったからでしょうか。

    俳優はどちらも魅力的で、演技に関する演出も繊細にされているだろうと想像します。これだけ「絶望」をうまく積み上げられるのであれば、やはり、是非「希望」をこそ、考え、表現してほしいと、期待を持ちます。

    小さくてもいい、或いは見つけきらなくてもいい。でも、演劇が、たくさんのシニカルな視線を通過しながら取り組むのは、前提された「絶望」ではなく、ありもしないかもしれない「希望」であってほしい――というのが私の願いです。














  • 満足度★★★★

    両バージョン観劇
    D編
    あまりの衝撃のラストに茫然自失。
    心にズシンと来るテーマであり、内容だった。
    自分だったらと考えると切が無い。
    見応えはバッチリで上演時間が短めだったのを全く感じさせなかった。

    R編
    D編とは異なりホラーチックな作り。
    結末自体は途中で察しが付いてしまうが、
    それでも怖くて観ながら鳥肌が・・・。

  • 満足度★★★

    R編 観劇
    普通に面白かったと思います。臓器移植は個人的に身近で考えた事があるため、そんな臓器提供者側の気持ちにツッコミをいれつつも、まあそこはSFということで、おいといて。
    オチもなかなか。ですが、「考えさせられる」事が多いのは、評判を伺う限り、D編の方なのかしら??

    舞台美術が、大変美しかったです!

    ネタバレBOX

    ただ、実際は50分くらいの芝居ではなかったかなー、と。それで2,800円という価格は…ううーん。初観劇者は二の足を踏みそうになります。R編+D編足しても…¥5,000…うううーん。

    チケプレ当選してなかったら、きっと足を運べない価格設定ですね。
  • 満足度★★★

    シュールな現代ホラー
     臓器移植をテーマに、臓器提供者(ドナー:D編)と臓器受容者(レシピエント:R編)の当事者心理を描いた2本立て公演。作・演出はマキタカズオミさん。私は【R編】【D編】の順番で鑑賞しました。

     舞台は木の茶色とアルミ(素材は不明)の銀色が壁にうまく配置された、品のいい都会的な部屋。中央奥のコンクリート打ちっぱなしの壁から木々の緑が少し覗き、自然の温かみを感じさせます。装置上部をぐるりと囲み、二重らせんを思わせる木の枠がポイントでした。
     そんなさわやかな空間で静かに交わされる現代口語劇ですが、題材が臓器移植ですから内容は重厚。登場人物の感情の衝突は激しく、息が詰まるような緊張感があります。

     前作『ブロークン・セッション』でも感じたことですが、両バージョンともに「その先が見たい!」と思うところで終幕するのが残念でした。「CoRich舞台芸術アワード!2009」の第2位に選ばれた『成れの果て』では、タイトルどおり救いようのない人間の争いとその果てがしっかり描かれていたので、私が勝手な期待をしてしまったせいもあると思います。
     “現代日本を舞台にしたシュールなホラー短編”としては、見応えがあるかもしれません。でも私としては、周囲や自分自身との死にものぐるい格闘と、その末に獲得される何かが見たかったです。

     【R編】初日の上演時間は50分でした。【D編】が1時間15分なので、装置の転換が大変かもしれませんが、できれば途中休憩を挟んで両方一度に観たかったですね。
     【D編】の回はほぼ満席で、場内誘導のスタッフさんたちの客入れの手際の良さにうなりました!入り口が1箇所しかない小劇場で自由席だと、空席がないようにするのも難しいんですが、通路席も見事に埋まっていました。

    ネタバレBOX

    【D編】
     “死刑囚の臓器提供が合法化された近未来”という設定がとても面白いです。臓器を提供する死刑囚と提供を受ける家族だけでなく、その間に入る業者や刑務官の家族、もう1人の被害者遺族の現実を描く群像劇になっており、臓器移植についてより広く、深く考える仕掛けになっていたと思います。死刑囚の「自分の臓器で6人が助かるなら、2人分おつりが来る(殺したのが4人だから)」という発言は、不謹慎ですが興味深いです。

     ただ、繰り返しになりますが、私が見たかったのは自分の子供の仇である死刑囚の心臓を移植された妻・百合が、夫とともにこれからどうやって生き延びていくのかです。子供を殺され妻も死に、すっかり絶望してしまったもう1人の遺族・金城が、移植手術直後の百合の心臓をナイフで突き刺して殺し、自分も窓から飛び降りて自殺するという結末では、物足りなかったですね。

     目立った大道具は中央下手寄りに置かれた黒いテーブルとイス4脚のみ。そのまま刑務所の面会室、居酒屋、リビングなどに場面転換します。照明も音響も特に使わず、2つの異なる場面を重なった状態にする演出は、シンプルな会話劇が続く空間に動きを与え、いい刺激を生んでいました。
     例えば金城の部屋を、妊娠中でお腹の大きくなった刑務官の妻・麻子が横切る場面がとてもスリリング。また、同じテーブルに着いているのに、百合と麻子が別の空間にいるのも面白いです。

     木製のテーブルとイスの表面の処理(塗装の仕上げ方)や可動性などは改善の余地あり。緻密な演技の積み重ねから、静かで分厚い空気が作り上げられていたので、わざわざ持ち上げないとイスがスムーズに動かないのはもったいなかったです。

    【R編】
     交通事故で死んだ兄の臓器が3人のレシピエントに提供され、母と妹はその3人に、毎年1回、兄の命日(つまり臓器提供日)に自宅に来て一緒に食事をすることを約束させます。集まった人々は一見ほがらかに言葉を交わしますが、母と妹が「兄は今も彼らの体の中で生きている」と思っていることがわかり始めてから、狂気が加速していきいます。

     登場するのは8人ですが、1対1、2対1といった少人数の密度の濃い会話が多く、人物の出はけや通りがかるタイミングなどがよく計算されていたと思います。でももっと濃く残る後味が欲しかったです。50分の短編だと考えても物足りなかったですね。

     「もう来年は来られない」と告げるレシピエントたちに失望した母と妹は、事故の時に兄を乗せて車を運転していた男を使って、彼らを殺害。切り出してビニール袋に入れた3つの臓器をテーブルに並べ、母と妹がそれを眺めながら嬉しそうにパンを食べます。「年に一度お兄ちゃんと食事をする」という希望が叶ったことを表していたんですね。
  • 満足度★★★

    レシピエント編
    初見。。以前好きな役者さんがブログで絶賛していたので観てみました。2本立てのせいかまだ劇団のカラーがつかめなかった感じです。
    どんな関係性なんだろう?とだんだんわかってくる過程は楽しめました。60分でも短く感じませんでした。
    また次回観に来たいと思います。

    ネタバレBOX

    「別に…」の表情がよかったです。
    そういわれたら、そう言うしかないよなぁ。と心の声とかぶりました。

    最後のシーンはどちらが事故ったのでしょう。
  • ドナー編を拝見
    2010.4.17.1930

    ネタバレBOX

    物語を語るだけの言語情報が多すぎて、逆に、舞台上での情報やノイズを減じさせることになり、薄く感じてしまったりも。
    そういう意味でも、
    夫婦と移植コーディネーターによる3人芝居、ぐらいの濃度で観たかった気が。

    あと、
    舞台前面の美術に照明が当たって、役者の顔や舞台に不要な影を生じさせていたのは、かなり気になったなあ。
  • 満足度★★★

    もっと凝縮を!
    ドナー編のみ観劇だったので片手落ち感は否めませんが…
    話の筋も構成もすばらしく、
    観客を身じろぎさせず、見ることを強いる感覚。
    さすがelePHANTMoon。

    でも、同じ話を、半分の役者でやったら
    もっともっと面白かっただろうなぁと思ってしまいました。
    その場にいない人の名前はどんどん出てくるけど、
    実際に役者が演じない役(人物)がいる。
    それでも解る脚本を、マキタさんには期待してしまうのです。

  • 満足度★★

    あれ
    どうやら私の好みじゃないよう。「ってたより、、、あれでしたね。「もっといろいろあっただろ?!」という感じかなあ。

  • 満足度★★★★★

    はりつめた緊張感の果てに・・・。
    日常の中から劇的なシチュエーションを切り抜くうまさ、そしてその劇的な状況に、さらに衝撃的な結末を用意する演出のうまさ、マキタカズオミの作劇術は円熟味を増している。今回は自らSFというとおり、まだ日本の現実ではありえない話も混ざっているが、非現実的な感じは全然しない。

    作品としてはドナー編の方が完成度が高く、レシピエント編は、若干細部に感情移入しづらい部分があったが、それでも作品の質は高い。

    75分と60分という、通常の芝居に比べると短いが、その間、はりつめた緊張感を維持するのは並大抵のことではない。エンターテイメントとは全く逆の道を進む、エレファントムーンの姿勢が潔い。

  • 満足度★★★

    レシピエント編
    しほりの兄に対する想いが狂気的な愛情で怖い反面、二人または真柴家の話が観てみたい。

  • 満足度★★★★★

    レシピエント編、淡々とした強さ
    ドナー編に続いてレシピエント編を鑑賞。

    キャストの変更があったようですが
    その影響を感じることはなく、
    淡々とした世界に現れる
    逃げ場のない世界に浸されました。

    ネタバレBOX

    ドナー編とほぼ同じ舞台なのに
    どこか開放感を感じます。
    そこでは年に一度のバーベキューが
    行われるらしい・・・。

    冒頭から、淡々としたトーンで
    登場人物感のニュアンスが積もっていきます。
    その中から、彼らがここに集う背景が
    次第に明らかになっていく。

    家族の臓器を提供した側の想いと
    受け取った側で風化してくもののギャップが
    次第に姿を現していく。

    命を与えられることによって
    生きることへのの制約から解放されようとするレシピエント達、
    命のかけらを与えることによって、
    家族とのつながりを守ろうとする母娘。
    それぞれの望むことの相違に
    本来中心にあるべき、命本来の重さへの価値観が
    すっと消えていくのです。

    さらには、家族を死に至らしめた男の存在が
    物語の構造にエッジを作っていく。

    役者たちのお芝居が
    その滅失感に
    しなやかな理を編み込んで、
    気がつけば、観る側がその感覚に
    深く浸されているのです。

    まるで、マニュアルどおりに機械をメンテナンスするように
    亡くなった兄との関係を維持する母子の姿。
    予想どおりにやってくる事態に
    どこか崩壊感がなくて、
    そこから見えてくるモラルのブランクに愕然となる。

    しかも凄く自然に感じられる母娘のすがたに
    なにかがしみとおってくる感覚があって
    観る側をゆっくりと戦慄させるのです。

    ドナー編とレシピエント編、全く違う色であり、
    なおかつ心の同じ部分に深く残る。

    マキタ作劇とそれを支える役者たちの技量に
    がっつりやられた2作でした。

    ☆☆


  • 満足度★★★★★

    しばし呆然
    初日、ドナー編。

    淡々とした空気がつながっていく中に、
    様々な想いの機微が重なって、
    終盤に一気に降りてくる。

    その感触に圧倒されて、
    観終わって客電がついても少しの間動けませんでした。
    そのあともしばし呆然としておりました。

    ネタバレBOX

    ネタバレボックスとはいえ、
    もし、この作品をご覧になる予定があるのなら、
    ここからの文章はお読みにならない方がよいかと思います。
    通常の舞台にも増して、
    作り手側が提示する以上の作品の姿を知ることなく
    舞台の空気に触れたほうがよいと思われる、
    そういうタイプの作品だったので・・・。


    物語はそれほど複雑なものではありません。

    とある連続殺人事件で死刑を待つ男、
    臓器提供のコーディネーターに
    自らの心臓を被害者の家族に提供したいと告げる。

    そこに端を発して、
    死刑囚、看守、自らの子どもを殺した男から心臓提供を申し出られた家族、
    その親戚や友人、さらには死刑囚の妹や他の被害者の、
    死刑執行の二日前からの
    いくつかも風景が連なっていきます。

    オーバーラップするシーンからやってくる質感。
    あるいは光の変化。
    クロスワードパズルの使い方などもうまいと思う。

    一つずつのシーンは、
    研ぎ澄まされていても
    どこか淡々とした空気に満たされていて。
    にもかかわらず、シームレスにつながったシーンから
    次第に登場人物たちの想いが積み上がっていく。

    死刑囚の想いや看守の気遣い。
    被害者の家族の犯人の心臓をもらうことへの嫌悪感と、
    妻に生きてほしいと願う夫の気持ち。
    その命をパーツにして受け渡す
    実務にたけたコーディネーターがむきあう
    臓器移植では修復できない母親の病の質感。
    さんざん迷惑をかけられた死刑囚の妹の次第に溢れるような愛憎・・・。
    さらには死刑囚のつぐないが他の被害者に与えられることを知った
    別の被害者の想いの揺らぎまで。

    登場人物から伝わってくる想いにはそれぞれに理があって、
    しかも不思議に均質な質感に閉じ込められていて。
    キャラクターたちの事情や思いが封じられた箱が
    シームレスに展開していく舞台上に
    一つずつ積み上げられていく感じ。

    そして箱が積み上がる感覚の先で
    死刑が執行されて・・・。
    一つの命の滅失して
    物語が収束しようとする刹那に、
    ひとつの箱が押し潰されて
    全ての中味が崩れ落ちてくる・・・。

    舞台上でしなやかに表現されていたキャラクター達の想い、
    淡々と舞台上にあったものが
    ラストシーンですべて観る側になだれ込み
    決してステレオタイプなものではない
    いくつもの質感や重さが
    観る側を愕然とさせるのです。

    キャラクターたちの真摯な想いに浸潤される一方で、
    コーディネーターの母親の姿や、
    妹に対する死刑囚の受け応え、
    さらにはレシピエントの妻に夫が渡す懸賞の商品などからやってくる
    事実や時間に対する不確かさのリアリティにもぞくっとくる。

    死刑囚が自らの時間を切り捨てるように昇華していく中で
    看守や観る側が感じる命の軽重と、
    移植された心臓にまで因果を染み付ける
    犯罪者の業。
    同じ命の果てから伝わってくる表裏の、
    つかみ所のない薄っぺらさも深く心に残って。

    結果、
    マキタワールドとでもいうべき
    行き場のない突き抜け感のようなものが
    終演後の観る側に醸成されていくのです。

    舞台美術や照明も秀逸。
    舞台全体を包み込むような格子上の造詣は、
    照明の変化とともに、
    時にその場に監獄の冷たさを醸成しながら、
    真逆の居酒屋や家庭の日常感をも生み出していきます。
    重ならない二つの曲線には
    観る側の内側に
    ひとつずつのシーンを閉じ込める力があって。
    また、一番奥に見える木々が
    その世界に観る側を繋ぐような
    実存感を与えていました。

    1H15mとそれほど長い作品ではなかったし、
    観ているときには何も感じなかったのですが、
    帰り道、良い意味でがっちり消耗していることに気づいて。

    この舞台の観る側を引き込む力の強さに改めて瞠目したことでした。
    ☆☆
  • 満足度★★★

    チラシの文章にやられた!
    以下はネタバレ欄にて。

    ネタバレBOX

    ひざを正して見ていたのに、この展開!騙されました。元々こういう劇団さんなんでしょうか?(初見なので)真面目に見ていた自分を笑いました。
  • 満足度★★★★

    ドナー編を見ました。
    初めてのelePHANTMoon。
    虚無感と脱力感に包まれたラストシーン、好きです。
    他の方も書いているように、舞台美術がとっても素敵♪
    レシピエント編も楽しみ!

    ネタバレBOX

    あらすじの「あなたは自分が生きるためなら、たとえどんな人物の臓器でもほしいですか?」という問いをまさに突きつけられた作品。
    見終わった今も考えています。

    BGMはほぼなし、暗転も1回だけという演出は潔くて好感が持てました。

    永山さんの滲み出る演技がとっても良かった。
    登場シーンは少ないながらも芝さん、根岸さん、小西さんも印象深かったです。
  • 満足度★★★★★

    拍手も起きない・・・圧倒
    レシピエント編観てきました!
    緊張感あふれるセリフの連続
    かと思うと、思わず笑ってしまうシーンという不条理
    舞台は終わっているのに拍手も起きないことを、とてもポジティブに感じた
    周りのほかの人がどう感じていたのかは分からないが、自分は圧倒されてしまっていた
    舞台装置も美しい空間芸術作品
    おまけに小1時間の凝縮された構成で、切れがある
    いやぁ、こりゃ、まいった!

  • 201004121930
    観劇

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