黒澤優美 宮崎玲奈 ムニ『つかの間の道』『赤と黄色の夢』二本立て公演

ムニ（神奈川県）

公演に携わっているメンバー：8人

【団体紹介】

　劇作家・演出家の黒澤優美と宮崎玲奈の作品を上演する演劇カンパニー。 2017 年より活動。2020年より青年団若手自主企画宮崎企画としても活動してきた。2024年から黒澤優美がメンバーに加わり、作家二人体制となる。演劇活動を持続的に行うため、時間を掛けて新作執筆に取り組むことのできる環境を整えるなど、無理のない劇団運営にも取り組んでいる。虚構とフィクションを問いながら、20代の女性を主人公とした物語を多く制作。第11回せんがわ劇場演劇コンクールファイナリスト、『真昼森を抜ける』で演出家賞。
　宮崎はレズビアンアイデンティティを巡る八時間の作品『ことばにない』(2022/2023)を約二年間掛け上演を完結。今後も主体やアイデンティティの問題を戯曲にし、上演する可能性があることから、2024年よりリアリズムの形式に縛られない形での新たな演出形式の開拓を試みている。
　黒澤は「身軽さ」や「突然何かが起こること」を戯曲・演出の特徴とし、一回性の“出来事”を劇場で発動させ、出来事の連続である日常を劇場で再認識させる。
　わたしたちは、物語、上演が現実以上に現実的であるべきだ、と考えている。

【応募公演への意気込み】

　2024年に黒澤優美がメンバーに加わり、作家二人体制となっての初めての公演である。宮崎は2020年1月に青年団若手自主企画vol.81宮崎企画として上演した『つかの間の道』をリクリエーションし、上演。黒澤は新作『赤と黄色の夢』を上演。コロナをきっかけに一人になった部屋で編み物をする主人公の由紀子を中心とした物語である。
　宮崎は『ことばにない』という大作の創作を経た今、作家としての戯曲創作の創造性を更に拡張するべく、戯曲に縛られずに上演が上演として自立することを目指す演出手法を試行している。これまでに取り組んできた「〜に見える」を基盤としたリアリズムの演劇手法について問い直し、⑴劇場空間そのものがそこに「ある」こと、⑵俳優がそこに「いる」こと、を意識した上で、役・物語・フィクションを立ち上げることによって、上演が上演として自立することを図る。「言葉が言葉として伝わる」ことを目指し、創作を行っている。
　本応募を通して、現在のムニの試行錯誤中の作品成果を新たな観客に観ていただく機会と、作品批評の機会に立ち会えるのではないかと期待し、応募した。

※二本立て公演等の場合は審査対象を一本に絞ると明記されておりますが、団体のアイデンティティが作家二人体制であるということを考慮し、可能であれば二作品を審査対象としていただきたく思っております。難しければ『つかの間の道』を審査対象としていただければと存じます。

【将来のビジョン】

　持続可能な演劇活動を第一とし、⑴発表の場、⑵作品を振り返り語り合う批評の場、⑶実験の場の三点を基盤とし、今後も活動を続けていく予定だ。具体的には、新作長編を年度ごとに宮崎、黒澤が交互に発表しながら活動を継続していく。今年度は黒澤が新作を発表する。⑵については、「演劇の支持体は集まりである」と団体として仮定・宣誓していることから、小作品の発表機会を提供し上映イベントを含めて企画している「ムニの発酵シアター」等の作品を振り返り批評する場も同時に持ち続けていきたいと考えている。⑶としては、上演を目的としなくてもよい定期稽古などを行なっている。上記に挙げたような、作品を発表しっぱなしにしない、畑を耕す作業がクオリティの高い作品の創造性を高めるのではないか、とわたしたちは考え、将来のビジョンとする。
　強度のある新作戯曲・上演を発表していくことを目標としたい。まだムニの作品を上演したことのない劇場で上演することも視野に入れた上で、「今、ここで上演するということはどういうことか」集まりの意味を問いながら、活動していく。