OIL 公演情報 燐光群「OIL」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『OIL』(燐光群)を観た。石油が「新しい光」だった時代から、遠い未来まで——母と娘の関係を軸に、人類の繁栄と暴力、依存と正当化の歴史を折りたたんでいく構造は野心的だ。時代も土地も跳ぶ。その跳躍を成立させるために、俳優陣は人物の温度を落とさずに繋ごうと踏ん張っていたし、舞台が抱える情報量の多さを身体で支えていたと思う。

    ただ、私自身は不思議なくらい「刺さる台詞」が残らなかった。言葉が弱いというより、観客が人物に感情移入していくための“撚り”——関係のねじれが積み上がっていく感じ——が薄い。場面ごとの情景は追えるのに、主題の輪郭が像を結びにくい。とくに核に置かれているはずの「愛」が、何の比喩/隠喩として立っているのか掴みにくかった。愛=依存、愛=支配、愛=世代間責任……読み筋はいくつもあり得るのに、その複数性が「意図された余白」というより「手がかり不足の余白」に見えてしまい、観客の側が芯を握り損ねる。

    終盤の着地も、予定調和というより既視感が勝った。結末そのものが悪いのではなく、そこへ至る増圧が足りず、“そうなるよね”の地点で止まってしまう感覚が残る。壮大な時間のスケールと、家族という最小単位のスケールが最後まで噛み合いきらず、世界史の叙事と私的な倫理が、並走したまま終わったようにも感じた。

    とはいえ、題材の射程は大きい。豊かさの源泉だったものが、暴力や分断の燃料にもなる。その二重性を「家族」という器に注ぎ、観客の生活感覚へ沈めようとする企て自体は、いま必要な挑戦だと思う。だからこそ、「愛」という語が綺麗事ではなく、支配や依存や責任と地続きに見えてくる瞬間を、もう少し舞台の側から手渡してほしかった。野心の大きさに対して、感情の導線がもう一段、太くなれば——そんな悔しさを残す観劇だった。

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    2026/01/13 05:26

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