嵐 THE TEMPEST 公演情報 俳優座劇場「嵐 THE TEMPEST」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第一幕75分休憩15分第二幕80分。

    素舞台、というよりも観客に見せたいのは取り壊される俳優座劇場そのものだ。がらんどうのステージ、小道具はそのまんまの箱馬。剝き出しの生身の劇場に役者陣が登場。平体まひろさん演ずる妖精エアリエルの「ドーン!」からスタート。そこは暴風吹き荒れる大海原、荒れ狂う大波、叩き付ける雨粒、右に左に船体は軋み天地は逆さま、為す術もない木の葉の如く弄ばれる船の上。混乱と恐怖、狂乱と混沌、パニック状態の乗客と船員。それを嘲るかのようにエアリエル率いる6人のニンフ(精霊)達が愉快に歌い踊っている。(サロペットのワークマン女子みたいな衣装)。

    ミラノ公国の大公、プロスペロー(外山誠二氏)は魔術の研究に没頭する余り、政務を弟のアントーニオ(浅野雅博氏)に任せっきりにしていた。アントーニオは敵国ナポリ王アロンゾー(藤田宗久氏)と謀り、プロスペローと幼い3歳の娘ミランダ(あんどうさくらさん)を船に乗せて追放。流れ着いた絶海の孤島で二人は12年間何とか生き延びた。到頭魔術を究めたプロスペローは妖精エアリエル(平体まひろさん)、半人半獣のキャリバン(藤原章寛氏)を従え復讐の幕を開ける。

    平体まひろさんのファンならば今作は必見。まさに彼女が彼女たる所以、歌も踊りも演奏も魅力いっぱい。劇場中をヘトヘトになるまで走り回る。ライアーハープの音色。日高哲英氏作曲の歌が印象的。「ドーン!」
    ニンフの一人、蟹澤麗羅さんが大家志津香っぽかった。
    のんべえの執事、ステファノー(上杉陽一氏)の佇まいに観客大受け。十八番。
    ヒロイン、あんどうさくらさんは原日出子や倉沢淳美の若い頃っぽい。登場から涙ぐんでいた。

    主演・外山誠二氏は我儘な頑固爺、魔術を使って好き放題のイカレっぷりはトランプのようでもある。この老人の癇癪に付き合わされて皆ヘトヘト。

    ネタバレBOX

    前半、音が散乱散失して台詞が聴き取りにくかったが、何かこれも狙いなのかなあと。野っ原の素舞台で演し物を眺めている感覚。説明調の台詞が延々続きぐだぐだの展開。続々と居眠りに落ちる観客達。ああ、後期のつまらないシェイクスピア劇って感じ。それが段々と味になる不思議。平体まひろさんが奮闘して劇場中を駆けずり回り何とか盛り上げようとする。第二幕では復讐に燃えていたプロスペローの気持ちが和らぎ萎えてゆく。許したい、自分の心をも平穏に戻したい。シェイクスピアは今作を最後に引退したとされている。400年以上前の作家の心持ち。どうにかハッピー・エンドを、自分の心のハッピー・エンドを。かなり無理がある強引な手綱捌きの展開だがそれすらも俳優座劇場ラストにふさわしい。何もないステージで観客に心からの拍手を求めるプロスペロー。どうか赦してくれ、貴方達自身をも。

    ※エアリエル率いる6人のニンフ達は夢の遊眠社っぽい。

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    2025/04/11 15:01

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