実演鑑賞
災害(津波)のイメージと日常の断片が交錯する。
白塗りの登場人物たちが演じるシーンに、潮来らしき女性を通して台詞(声)が与えられるという形式は、確かに「生」でもなく「死」でもない、狭間の世界を思わせる。
幕開き直前から舞台に一列に並んで観客の動きをトレースする遊びも、思えば、ささやかな生活の記憶を伝えるものなのかもしれない。波の表象はもちろんだが、そうした仕草、表現にも妙味があった。
都市に暮らす女性の孤独や同性愛カップルの妊娠など、現代社会に生きる多様な個人に目を向ける一方で、演じられるドラマはやや典型にすぎるようにも思える。とはいえ、この形式で、物語を複雑化するのも難しいはず。ならば「典型」をより意識的にやりきったうえで、巧みに抜け出す面白さを見たいという気もする。