第37回公演『ライダー』 公演情報 激団リジョロ「第37回公演『ライダー』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    二度目の観劇。公演情報を入手したのがそれ以来なので久々の東京公演か、と勝手な想像をしていたが、劇団否激団の拠点は東京であり(旗揚げ2年後には関西から上京し、経緯あって東京にて改めて旗揚げした模様だが、それでも20年経っている)、また前回と今回の間に既に2公演やられている。前回観たのは2021年であった。
    激団の名が表わす体は「熱い」。ただし前回は日韓の歴史を遡った(植民地時代から現代)リアル基調の劇で、尖った切っ先の熱とは異なり人情部分の熱(だから上がっても40℃位?)。だが今作は相当に現実離れしたフィクション。時空を飛ぶ。エッジの効いた鋭い「熱」にはこちらの方が親和的。で、これが中々面白かった。
    過去公演の履歴を改めて眺めるとゾンビが登場する話もある。基本「激烈」な、啖呵を飛ばし合う劇の様相が浮かぶ解説文だったりするが、今回、作・演出の主宰は壮年期、他俳優が若手なのでこの「激しさ」「熱」を仕込む指南役とその弟子といった空気がやや舞台においても流れる。
    おや?と思わせるのが冒頭、5、6歳位と見える女の子が登場し、最後も締める。普段っぽい表情で客席を眺めつつ動いたり台詞も言う。これが主人公の女性役の子供時代の設定で、何だろう?と目を引く。ツーリストと呼ばれる、操縦桿(一本のバーを床に据えて左右前後に動かす)一つで宇宙を旅するいかつい男(主宰・金光仁三)が現われ、女の子にこう告げる。「そうだと思った事が本当になる。何がしたい?」「宇宙に行きたい」「ならそう願えばいい。」大きくなったこの女の子は、AIと人間のハイブリッドこそ新たな時代の理想だと語る国のリーダーの下、潜在的な敵対関係を持つ事となり、「戦い」が徐々に始まっていく。
    ディストピアな未来を生きる彼女は「そう願う」「そう信じる」いや「そう思っている(だけ)」でそれが実現するというそれが一つの「能力」である事を、自ら知る。かのツーリストが彼女を再発見し、これを告げた。彼は彼女の誘導役となるが、やがて前線から退場し、最後に彼女一人で戦う段階が来る。
    AIと人間とのハイブリッドを高らかに歌う国のリーダー(女)のバックには、化け物的な、人間の肉体という宿を持ったAIの存在があった。だが、人間とAIの融合の実態とは、脳にチップを埋め込み、情報処理能力は高めるものの、指示者に対し従属的となるような代物。主人公の父はこれを悟って従わず、抹殺されるが、事が一巡りした後、国のリーダーも「理想」が欺瞞であった事に気づき、対抗勢力となる。だがその時点で主人公は先行してAIとの対決と撤収を繰り返し、逃れる過程で彼女はツーリストに紹介された避難先として訪れた星で、それぞれに個性的な存在たちと出会う。彼らに助けられ、また助け、学んで行く。
    これはスターウォーズの構図だな、と途中から思い始める。「本当にそうなる」と心から信じていないならば、その力(映画ではforce=理力と言ったっけ)は生じて来ない。
    彼女は旅の中で、この力を使いこなすコツを習得していくのだが、ラスボスであるダースベーダーと決定的な対決を行なうまでに、人間力を高める修行の中に様々な星の住人との出会いがある、という構図は、古典的だが力強い。

    この荒唐無稽なSF物語が、ストーリー完結の辻褄合せに付き合わせるだけに止まらず、心が広がるような感覚を持たせたのは、ユニークな各星人たちを始めとしたキャラの魅力。
    こういうタイプの芝居はそういえばあまり観ていないが、キャラ創出の才は中々ではなかろうか。最後まで「熱力」で押すドラマに相応しい精神論(根性論?)だが、スポ根とは異なり、最後には静かな心を希求している。
    とは言え、その心を勝ち取るために、激烈な戦いを戦わねばならない物語の宿命は矛盾と言えば矛盾なのだが。
    いずれにせよ、かような舞台を疲れず面白く観られた自分に気を良くして、帰路についたものであった。

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    2024/04/18 23:38

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