イノセント・ピープル 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/03/16 (土) 14:00

    畑澤聖悟さんの脚本を劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんが演出、
    今上演する意義を改めて強く感じさせる作品。
    観客を引き込む役者陣の熱量がすごい。
    これが”戦争の現実”なのだ。

    ネタバレBOX

       ●~○~●以下ネタバレ注意●~○~●

    舞台中央、横長に広がる階段は茶色くギザギザしたがれきのような装飾。
    手前のテーブルや椅子もすべて倒れたり転がったりしている。
    殺伐としたこのブライアン・ウッドの家に、18年ぶりに昔の仲間が集まって来る。
    口々に「いい家だな!」と言う友人たちにまず強い違和感を覚える。

    ブライアンは科学者で、”プルトニウムが核融合を起こすための研究”をしていた。
    5人の男たちは、町から離れた研究所に隔離されたような生活をしつつ、
    与えられた使命を果たすべく日夜励んでいた。
    全ては「JAPを叩き潰すため」だ・・・。

    ”100%アメリカから見た原爆”が容赦なく描かれる。
    教育の賜物と言うにはあまりにも犠牲が大きいが、
    まさに「イノセント」無垢で純粋な人々ほど教育の効果は絶大だ。
    だが、5人はそれぞれに「新型爆弾の成功」と引き換えに大きなものを喪う。

    終盤のエピソードが衝撃的だった。
    5人のうち余命が長くないと知った医師の男が、仲間のひとりに告白する。
    「昔研究所で爆発事故があった時、本当はお前の被爆量はもっとずっと多かった。
    自分はお前の健康診断データをずっと観察していたのだ。
    データを集めるために多くの人間にプルトニウムを注射してきた」
    身内を危険にさらしてまで戦後長く秘密裡に継続する実験とはなんだ?
    この医師にとって、戦争は終わってなどいない。

    ストーリーは時系列ではなく、5人が研究所で過ごした1945年の出来事を
    何度も挟みつつ、グレッグが90歳になるまでを描いている。
    少し物足りない印象を受けるのは、グレッグの息子が車椅子になって帰還したり
    中佐の息子がベトナム戦争から戻ってから肺炎で死んだり、といった
    ”修羅場”を見せないせいだろうか。
    全ては済んだこととして淡々と場面から観客に知らしめる。
    月並みな後悔かもしれないが、親としてどんな風に受け止めたのか、
    その苦悩が”正義に対する疑念”の始まりではないか。
    だが役者陣は確かにその苦悩を体現しようと熱演だった。

    原爆を挟んで、二つの国が全く違うものを見ている。
    日本の「イノセント・ピープル」も観てみたいと思った。
    自分も含め、国民の多くが純粋で愚かなのはどこの国も同じだ。




    0

    2024/03/17 02:29

    4

    0

このページのQRコードです。

拡大