実演鑑賞
満足度★★★★★
海外の作家による日本のしかも日本的なる核の部分に迫る戯曲を、以前読んでいたがこれをどう具現するかに大変関心があった。五戸演出という事で期待もあったが、戯曲に登場する人、事物は純日本製であるのに文体としてはドイツ人ゲオルグ・カイザーの思考が込められている。この両面性を、具象を一定程度削った抽象表現を用いる事で解消し、見事に舞台化した。日本土着の感覚を微かに嗅がせながらも、普遍的・汎用的で骨太なテキストに回収された「物語」は、もはや日本限定のそれでなく、日本の場所と時代設定を用いて国家と人間のあり方を描いた作品と言える。その一方で本作は日本という国に独自のメスで斬り込んだ作品、とも見える。どちらかと言えば後者として私は有難がりたい。
三幕はそれぞれ場所が異なり、三幕三様、展開と共に劇的でダイナミックである。時代はナレーションで確か大正何年、1920年代と認識した記憶。兵卒田中は同じ隊の友人和田と故郷へ帰還する。