桜姫東文章 公演情報 木ノ下歌舞伎「桜姫東文章」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/02/02 (木) 18:00

    タイル張りで段差のあるセット、客席に対して斜め向き、くすんだ色のカーテン(定式幕的な使い方だったけど浅葱幕っぽかった)、開演5分前アナウンス後、演者たち自ら細々としたセッティングをしに出てくる。
    近くの人が「昔のお風呂みたい」と言っていたけど、このセットはたぶんプールじゃないかな。大きな窓、青を基調にしたタイル、大きな浴槽のような部分から突き出た鉄の手摺...これはプールに入る時に使うあの梯子に違いない。室内プールだと思う。朽ちてボロボロになった。
    衣装はクラブにいそうな、渋谷系やお兄系。高貴な身分の桜姫と僧侶たちはファーを身に纏う。お付の局はしっかりしたロングコート。庶民になるにつれスカジャンやダメージジーンズ、柄シャツなどになっていく。侍は革ジャン。

    木ノ下歌舞伎は初めてなもので、毎回こういう感じなのか今回だけなのかわからないけど、あえてテンポ感を外した間をたっぷり使う演出。今何待ちですか?みたいな時間がちょいちょいあるけど、それが次第に気にならなくなっていくしその間が心地よくすらなっていく。台詞もあまり感情的にはならず一本調子、棒読みともとれるような「演じている感」がない。全員がほぼ出ずっぱり、袖に入っても裏を通ってすぐ出てくる、そして各自次の出番を待ちながら端っこや舞台ツラに寝転がって屋号を呼んだり時には笑ったりしながら演じる仲間を見ている。稽古場のようにも感じた。開演もシームレスなら演じている時とそうでない時の境もシームレス。

    ネタバレBOX

    舞台奥に「発端」「序幕」といった文字が浮かぶ。それだけじゃなく、その幕のあらすじ、なんなら結末まで説明しちゃう。簡潔な言葉で事実だけが書かれた文は内容知ってても不思議と驚きをもたらしてくれて時々クスリと笑えてしまう...特に清玄ね。無実の罪はきせられるは川に落ちるわ落ちぶれるわ殺されて生き返ったのに恋敵の掘った自分用の墓穴に落ちて死んで、死んでもなお桜姫にとりついて惨めな醜態を晒す、白菊を独り死なせた報いでとにかくボコボコにされてて可哀想なんだけど出てくる度に「桜姫に迫り川に落ちる」とか「桜姫に迫り穴に落ちて死ぬ」とか展開が突き抜けてて面白くなっちゃう。「穴に落ちて死ぬ」はかなり客席から笑い起きてた。そして死んだらあんなスクリーム顔の風船になるなんて思わないじゃん(笑)風の音がうるせえ(笑)2回目出てきた時は本当に清玄として命が(死んでるけど)宿ってるみたいに見えたの不思議。桜姫の言葉に反応してるように見えた。それ見てめちゃくちゃ楽しそうに肩震わせて笑ってる成河さん可愛い。
    屋号も個性的でさぁ、桜姫の紅<べに>屋はまぁ綺麗で良いと思う、成河さんもなんかそれっぽい感じで、問題なのはダルメシアン、シルバニア、ポメラニアンだよ(笑)なんだそれ可愛いな!あと「御両人」じゃなく「ニコイチ」てかけるのもズルい(笑)なるほど!って思ったけど面白すぎるだろ!
    中村橋吾さんが所作指導ではいってるから立ち回りはしっかり歌舞伎的な動きがついてた。キッパリしてた。
    ただ、それ以外は無表情無感動、視線が明後日の方や舞台に立っていないまわりの演者に向いてる、変な動きで、これはたぶん、歌舞伎ならではのあれこれを誇張してるのかな?って思った。あまり大きく表情を動かさない、台詞に独特の調子がある、客席からそう見えればいいから役者同士は目が合ってない、驚きや怒りやキャラ付けまで大きく誇張した観せる動きをする。役によって特定の動きをしていたから、キャラ付け的な部分が大きいのかも。背伸びするとか中腰で腕をぶらんとするとかゆらゆらするとか。
    歌舞伎版の言葉も使いつつ現代語訳も交えつつ、前半そこまで桜姫の言葉遣い古典こてんしてなかったと思ったけど後半権助と再開した時にはめちゃくちゃ姫言葉だったの、あれは後々言葉遣いがはすっぱになる部分をわかりやすくするためなのかな?前半「自らは」とか言ってなかったよね?
    壁にたてかけられた姿見が舞台装置にもなり、早替え用の化粧前にもなり、端に置かれたベンチも控え場と見せかけて突然本舞台になる。セットの転換も小道具の準備も衣装替えも決して急いでる様子は無い(清玄権助の早替えだけ急いでる感じあった)出番の直前まで座ってて役名を呼ばれてから立って刀さして出ていくみたいな余裕があった。なんというか、とても不思議な空間だったな。あれを成立させられてるのがすごいよ、普通成立しないよ、なにこれってなっちゃうよ、でも成立してる。成河さんがメルマガで言ってたのはこういうことだったのかもな。
    非人に寺の使いが百両持ってきた時の箱がAmazonだった。
    発端の清玄と白菊を探すそれぞれの捜索隊が少し離れた場所からぽつりぽつりと声をかけあうシーン、なんだかすごく異様だった。普通に芝居したら1分かからないようなやり取りなのに一言ごとに奇妙な間があって、それが彼らの戸惑いを表してるようでもあったしなんだかぐにゃりと捻れた回想のようにも思えた。清玄と白菊の会話も一本調子で、それなのに不思議と惹き付けられる。ゆっくり、ゆっくりと崖へ向かっていく2人のじりじりとした足取りやしっかりと互いを掴んだ手から緊迫感が伝わる。そこから白菊だけ落ちた時の「あ、」という清玄の間の抜けた声や「南無阿弥陀仏」の白々しさにギャップがあっておもしろい。
    権助と桜姫の出会いの場面で、桜姫の「捨てて」「来て」というお嬢様らしい上に立って人に命じることに慣れている言葉遣いが最高に痺れる。腕の刺青もっとよく見たい、歌舞伎のわかりやすい釣鐘と桜じゃないのよ、でも台詞では「釣鐘に桜の入れ黒子」って言ってるからなにか関係している図柄なのだろう思ってるんだけど...半月っぽい形の下にミミズののたくったような線が描かれてて、一体あれはなんなのか。歌舞伎の女性は積極的、というのを権助に大人しく組み敷かれるだけじゃなく自分から着物を脱いで乗っかっていくという演出で表現していた。かっこええ。
    歌舞伎版桜姫を前半しか観ていないもので後半の物語は完全初見だったのだけど、あんな可哀想な男女が出てくるなんて聞いてない!小雛ちゃん可哀想すぎるよ!お父さんも途中で気付いたんだな、身代わりだって、だから娘の首を斬った。台詞にもあったけど歌舞伎ヤバいよね(笑)ヤバいとは言ってなかったけど、こういう身代わりで首斬るとかえげつないことよくやるよな歌舞伎って、みたいな台詞だった。三人吉三もだけど、ほんと身代わりの2人はいい迷惑だよね。なんなら三人吉三の2人は畜生道に堕ちたのを兄が救ったという見方もできるけど、桜姫の2人はなにもしてないのに難癖つけられて殺されて本当に可哀想。しかもこの身代わりは失敗するし。奴ここで死んでたのか...残念だ。
    青トカゲの毒を飲ませる、ていうのはどっかで見たことある気がする。別の芝居にも出てくるのかな?
    可哀想な人ではあるんだけど、清玄煩悩まみれであんまり同情できないんだよなぁ(笑)やらせてくれ、じゃなきゃ死んでくれってほんとどうかしてるのよ。
    桜姫の子供が巡り巡って結局桜姫のところに帰ってきちゃうのも歌舞伎だなー!って感じした。お十さん、我が子を失った悲しみから引き取ったはいいけど、生活苦なのかなぁ、捨てるとか酷い。
    寄り合いに行きたがらない権助「今日はなだ万の弁当が出るぞ」と言われてすっ飛んで行った🍱
    最後の最後、きっとあのラストシーンは歌舞伎版とは違うんだと思う。歌舞伎っぽくなかったから。権助と我が子を家族の御家の敵として殺すところまでは原作通りなのかなって思ったけど...殺したあとに家宝の都鳥をぽいっと投げ捨てる(きれいにプールの中へ落ちてった)のは現代的だなと感じたから。歌舞伎なら間違いなく家宝は家に持ち帰るはずだし、身を隠してる弟と再会も有り得る。投げ捨てた瞬間の桜姫の吹っ切れた表情と舞台奥から投げられた「ハレルヤ!」で不思議とスッキリした気持ちになった。開放感。

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    2024/01/02 16:57

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