幸福オンザ道路 公演情報 ミクニヤナイハラプロジェクト「幸福オンザ道路」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    役者の力、映像の力
    初日と10日、2度にわたって拝見しました。

    役者の動きから湧き立つイメージが
    映像にすっと取り込まれて・・。

    その空間に広がる作り手の感覚が、
    皮膚から心の中にまで
    しみこんでくるような気がしました。

    ネタバレBOX

    入場時から街の風景や、
    その中で倒れ、起き上がる人の姿と
    散らばり、時に文章として集合するアルファベットの動きが
    重なって壁面に映し出されています。

    役者が舞台に現れ、カットインするように物語が始まる。
    そして、役者たちの駆け足に度肝を抜かれる。
    その運動量に圧倒されて・・・。

    現れてくるものは
    物語というよりは、いくつものシーンの断片。
    記憶と想像が混在して納められた部屋の
    いくつものイメージが照らし出されていく感じ。
    それらが重なり合っていくうちに、
    なにかがゆっくりと溢れ出してくる。

    あいまいさと生々しさが、
    映像が示す内心の質感とからまりあって
    空間に広がっていくのです。

    役者の圧倒的な動きや台詞の切れが、
    映像による内心の具象化と重なるたびに、
    観る側に作り手の感覚がなだれ込んでくる。
    その映像は時に抽象的で、あるいは具体的で・・・。
    世界をしっかりと演じきっていく役者たちの
    演技の鋭利さが、
    感覚に深さを作り出していく。

    孤独、理性、新しい感覚の違和感、コントロールできない心情、
    閉塞感・・・。
    積もる言葉、閉じ込められた感覚、それらからやってくる痛み、行き場のなさ・・・。流れだしてくるもの、溢れくる想い・・・。

    次第に明瞭なカオスが満ちてきて、
    その中に観る側が
    なすすべもなく取り込まれていく感じ。
    圧迫感を感じる舞台から
    目が離せない。

    その世界を潜り抜けて、
    再度現出した駆け足のシーンからやってくる世界は
    冒頭とまったく違っていました。

    画像の文字が滲んで広がり、
    昇華するように輝きに変わっていく感覚が
    震えが来るほどにわかる。
    さらには街を走るスピードを伴った広がりが
    視覚から皮膚を貫いて内心を満たしていく。

    ラストシーンを観終わって
    観る側に置かれた
    作者の内心の残存感・・・、
    しなやかさや解像度に気づき
    ふたたび息を呑む。

    席を立つときには作者の創意と、
    それを支えた役者たちの力に
    がっつり淘汰されておりました。

    ちなみに初日と比べると
    10日の公演では
    カオスの部分がさらなる解像度を持ってすっきりとしていて、
    ちょっと感触の違った作品になっていました。

    公演を重ねるにしたがって
    さらに育っていく要素を持った作品でもあったのだと
    思います。

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    2010/07/12 07:24

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