#34「闇の将軍」四部作 公演情報 JACROW「#34「闇の将軍」四部作」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第3話『常闇、世を照らす』
    2020年初演。
    政界叙事詩として完成されたジャンル。こんなやり方があったとは。脚本に唸らされる。
    昭和49年(1974年)から平成5年(1993年)まで。
    ロッキード事件には余り触れない。失脚した田中角栄が何とか時期を待って返り咲く雌伏の時代。観客は彼が返り咲くことはないことを知っている。しかし舞台上の角栄はずっとそれを信じて待ち続ける。決してこんな所で終わってなるものか!「天命」という言葉を何度も何度も繰り返す角栄。彼はそれだけを頼りにしぶとく生き延びる。
    内閣総辞職、逮捕、自民党離党、それでも自民党最大派閥「田中派」の支配者として君臨。「影の総理」、「闇将軍」と呼ばれ党内人事を掌握。

    盟友・大平正芳役、内田健介氏が素晴らしい。「なあ昔、俺達が夢見た日本になったのかなあ。」
    山東昭子に福田真夕さん、菅野貴夫氏と踊る健康体操。
    秘書を3役演じ分ける青木友哉氏。
    辻眞佐に江口逢さん。
    田中眞紀子に川田希さん。声を似せる。
    小沢一郎に菊池豪氏。なんか意外な配役。
    金丸信に岡本篤氏!役者が揃った!
    竹下登(今里真氏)がキーマン。

    竹下登の十八番、『ズンドコ節』。
    講和の条約 吉田で暮れて
    日ソ協定 鳩山さんで
    今じゃ角さんで列島改造
    10年たったら竹下さん

    角栄側からの視点で政界を見るとこんなふうに見えていたんだなあ。いろんな出来事に合点がいった。
    竹下登、金丸信、小沢一郎による「創政会」旗揚げによるクーデター。(後の「経世会」)。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    辻眞佐の登場。辻和子の娘は早逝しているので、「この娘は誰か?」と思って観ていた。二人の息子を置き換えたのか?と。時代とズレたファッションといい、角栄と決して同席しない事で辻和子の妄想の娘だったことに気付く。こういうアイディアが効いている。

    一番の作品の肝になるのは竹下登の内面に渦巻く業。若き日、実父に肉体関係を迫られて懊悩する新婚の妻を酷くなじった竹下。「お前がつけこまれる隙を見せているからだ!」と。妻は帰宅してすぐ首を吊って自殺。それから竹下は全ての負の感情に蓋をして生きることとなる。内面に溜まった鬱屈したタールが吐き出す場所を求めて煮えたぎっている。
    金丸信から「何故、総理を目指すのか?」と訊かれて竹下登はこう答える。「俺の内面の業を昇華し表現する為だ」と。一気に竹下登が魅力的な男に見える名シーン。

    今ではロッキード事件とは、キッシンジャー大統領補佐官の陰謀だったと言われている。日中国交正常化、第四次中東戦争における親イスラエルから親アラブへの転換(キッシンジャーはユダヤ系)、日ソ首脳会談における北方領土返還交渉。田中角栄のやる事なす事が気に食わなかったのだ。

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    2023/12/11 00:49

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