#34「闇の将軍」四部作 公演情報 JACROW「#34「闇の将軍」四部作」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第1話『夕闇、山を越える』
    2016年初演、2018年再演、2020年再々演。
    昭和22年(1947年)から昭和32年(1957年)まで。
    冒頭、田中角栄の選挙演説から始まる。とにかく新潟県民の暮らしを良くすること、その熱意。現世利益の追求、あやふやな言葉は決して使わない。具体的に何を為すべきか。『全身小説家』のように『田中角栄』という一つのジャンルの体現。誰にも真似などできない。一人の“天才”が『太閤記』宜しく『国盗り物語』を現代でやってのける痛快さ。敗戦後のどん底の日本をどうしたら繁栄に導くことができるのか?

    東京、神楽坂の芸妓置屋「金満津」で出会った円弥(辻和子)が重要な位置を占める。昭和21年(1946年)に初対面、翌年二十歳にして角栄が旦那(パトロン)になる。認知された息子2名(娘は早世)、47年間妾として尽くした。

    憲法改正をして、アメリカの属国から早く逃れたい岸信介。
    対する池田勇人は国の威信よりまず国民の生活、軍事費のかからない分、経済成長に力を入れて通商国家として身を立てるべきとの主張。
    どちら側からも陣営に誘われる角栄。

    田中角栄は狩野和馬氏。代えは効かない。有田哲平っぽくもある。
    盟友、大平正芳に内田健介氏。二瓶正也っぽい。池田勇人派。
    池田勇人に佐藤貴也氏。
    岸信介(のぶすけ)に林竜三氏。
    岸信介の実弟、佐藤栄作に土橋建太氏。「“エイちゃん”と呼べ」。宮台真司っぽい。
    福田赳夫(たけお)に小平伸一郎氏。パンクブーブーの佐藤哲夫っぽい。
    円弥に井口睦惠(むつえ)さん。
    腹心の秘書、本間幸一に青木友哉氏。
    存在だけでかなり重要な母親、田中フメに宮越麻里杏さん。今作も完全に成り切ってみせる。完全憑依女優。この方はもっと評価されて然るべき。

    そろそろ中盤かと思ったら終わってたぐらい時間の経つのが早い。田中角栄はキツイ発言をした後、必ずハーッハッハッと豪快に笑う。これのあるなしで随分イメージが変わったろう。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    凄く面白いけれど作品としては物足りない。料亭政治で政界の権力闘争が描かれるが構成が淡々とし過ぎ。観客に提示した情報を次のシーンで繰り返す場面も多く、脚本の切れ味が悪い。今作は秘書を主人公にして彼の目線で語った方が良かったかも。田中角栄はアドルフ・ヒトラーに似ていて、魅力的だけれど危なっかしい。金の遣り取りで悪党にされたが、大金を動かせてこその政治だったりもする。清廉潔白の貧乏書生では論文執筆が関の山で、海千山千のヤクザの親分に太刀打ち出来ないだろう。清濁併せ呑む器量があってこその権力者たる所以。文春の記者に政治をやらせても何もできない筈。
    政治は力だ。敵をねじ伏せ黙らせる力。「力なき正義は無力である!」。角栄は金権政治家のイメージで金をばら撒くことの不快感を観客は感じるだろう。ただ、金は誠意だったりもする。真心だったりもする。信用だったりもする。田中角栄は“何か”を間違えた人間だったが、圧倒的な“何か”があった。

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    2023/12/09 21:52

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