空ヲ喰ラウ 公演情報 劇団桟敷童子「空ヲ喰ラウ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    新境地開拓的な斬新さもあり、配役にも捻りを感じた。お馴染みの役柄ではなく、ちょっと意外な設定に。勿論いつもながらの重厚な世界観はどっしり地に根を下ろしたまま。リアルに地の着いた現実を歩き通した果てからかすかに垣間見える奇跡。

    『ラ・カンパネラ』〈鐘〉はニコロ・パガニーニ作曲の協奏曲をフランツ・リストが編曲したピアノ曲。耳に入れたAirPodsでそれを聴きながら陶酔するシーンが印象的に繰り返される。空に一番近い場所で神のメロディーに打たれながら溶けていく。

    空に一番近い所でする仕事である為、空師(そらし)と呼ばれている伝統的な職人達の住む村。高所や重機の入れられない狭所で高木を伐採する。剪定、枝打ち、下刈り、玉切り。今作では山の森林保全整備を国から受注している。

    由緒正しき空師の名門「中村組」は土砂崩れの事故に巻き込まれてからというもの傾きっ放し。先代の息子の嫁である板垣桃子さんが棟梁として一人気を吐く。怪我で空師をやれなくなった息子はびっこを引き、杖代わりの金属バットを振り回しては日がな一日酒を喰らう。村の鼻つまみ者を稲葉能敬(よしたか)氏が森下創氏っぽく怪演。
    かつて自分達のもとで修業し独立していった「梁瀬組」、今では比べ物にならない会社に成長。大きな仕事を受注したことから「中村組」に声を掛けてくる。

    もりちえさんが渋く寡黙な中村組の女空師役。いぶし銀でカッコイイ。
    出戻りの井上カオリさんはムードメーカー、喋りで沸かす。
    空師を目指している大手忍さんは茶髪の都会っ子で活躍。
    梁瀬組の棟梁は原口健太郎氏、奥さんの藤吉久美子さんが美しい。娘の井上莉沙さんはセーラー服で和ませる。

    山に侵入して来たよそ者役はある意味主演の吉田知生(ともき)氏。一見、今野浩喜(元キングオブコメディ)っぽいユーモラスな雰囲気で観客に好感を持たれ易い。傑作、『飛ぶ太陽』の主演も素晴らしかった。今作では金髪が「やる気、元気、モリシ!DON'T STOPだ、この野郎!」で一世を風靡した森嶋猛を思わせる。

    かなり身体を酷使する動きが多く、怪我には気を付けて貰いたいもの。板垣桃子さんはかなり鍛えているのだろう。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    滅びていく空師の会社が劇団をイメージさせるダブル・ミーニング。若手を育てて作っていかないことには未来はない。この劇団はそれを見事にやってのけている。吉田知生氏のような有望な若手をどんどん抜擢して主要な役に配置、観客は役者の成長を毎回目の当たりにすることに。これからが楽しみ。

    後半の展開がまどろっこしい。吉田知生氏の人に言えぬ過去を暴露する稲葉能敬氏の流れがスムーズじゃない。

    かつて永遠の名作、『獣唄』のラストにBUCK-TICKの名曲、『FLAME』を重ねて涙した。今作では「僕は両手を広げ···」、やはりBUCK-TICKの『die』の詩が重ねられラストの板垣桃子さんの笑顔が恐ろしい程美しい。死ぬことは哀しくて惨めで不幸なものだけではない。空と同化してやっと到頭救われた“病んだ魂”。もうこれ以上苦しむ必要はない。山の醜い女神は強く抱きしめた。

    ※間違い訂正しました。有難うございます。

    ※許されない罪を犯して死のうと思っていた男が、山奥の集落で必要とされたことでもう一度生き直そうとする話。だが罪はそんなことを許さない。過去に追い詰められた男は山の女神にその身を委ねる。足りないのは男の犯した罪。絶対に許されない反吐が出るような犯罪であって欲しかった。そこをぬるくぼかしたせいで男の境地がぼやけた。

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    2023/11/29 15:15

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  • 太田忍さんではなく大手忍さんですね。

    2023/11/30 21:32

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