枝折り 公演情報 中央大学第二演劇研究会「枝折り」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     タイトルが暗示するように、小説家、モデルや俳優、スポーツ選手など若者のなりたい夢へのチャレンジとその夢の実現への過程で経験する家族との関係、自らの病や怪我、社会へ出てからは実生活と夢実現の為に必要な様々な訓練との相克が社会人として生きる人間関係の障害との争闘とも相まって立ち塞がる様を描く群像劇。尺は約105分。尚、チケットは漢字は異なるが栞になっていて、ヒロインの名と発音が同じだ。

    ネタバレBOX


     秋公演は1年生主体の公演で如何にもフレッシュな感性に彩られた作品だが、詩的感性を舞台化することの難しさをも提示しているように思った。というのは今公演を拝見すると今作の作・演出を担当した三谷 陸人さんが書いた短編集「ちいさな青写真」が頂ける。今作に出てくる神社にも関係するような短編集で文章からは実に詩的な感性が見て取れ、この作家は本質的には詩人なのだということが良く分かる。そしてその分、詩的感性を演劇に落とし込む際の難しさを感じるのだ。というのも詩は、矢張り言語(各単語レベルでの意味や音韻などの醸し出すリズム、各単語を繋ぎ合わせる際の意外性やイマージュの飛躍等が日常的な言語表現とは矢張り隔絶している)表現であるから、それを身体を用いて表現する演劇にした時に言語表現が意図したもの・ことを十全には表現し難いからである。これに対するには例えば間の取り方があると考えられるが、これがまた大変に難しい表現方法なので、間の取り方だけ観れば名優か否かは即座に判定できるほどなのである。
     若い演劇人がこの難題を克服する方法は、無論他にもある。例えばつか作品の圧倒的な台詞爆射や若い頃の唐十郎作品の持っていた圧倒的エネルギー、寺山修司の意外で奇矯な換骨奪胎等である。
     今作では、詩的感性を日常性に落とし込むように努力した跡が随所にみられ、結果的にそれが作品のインパクトを弱めた気がする。その分、内容的には可成り深刻で現実にそのような条件を背負わされた人物の困難が、観る者の想像力に訴えかけてくるもの・ことは深いのだが。ポテンシャルの高い中大二劇の今作創作者全員に対し、たゆまざる夢見る力と情熱、同時に現実を冷静に見極める方法獲得を期待している。
     そして、疲れた時には、珈琲でも飲んでリラックスすることも。
     

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    2023/11/11 09:22

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