フートボールの時間 公演情報 (公財)可児市文化芸術振興財団「フートボールの時間」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    見せ場で、良妻賢母教育の権化だった裁縫の宇田先生(林田麻里)が若く開明的なミチコ先生(堺小春)にいう。「私は先生が苦手です。私を動揺させるからです」と。「しかし、私は流されたりしません。私は私の石を投げます」と。うかつながら、ここにきて、どういうラストになるかが分かった。その前、生徒たちが何よりの楽しみにしていたフートボール(サッカー)が禁止され、ボールもすべて穴をあけて捨てられて、いったいどういう風に物語をしめくくるのかと、いらぬ心配をしていたからだ。

    宇田先生が体育祭で「あなたたちを傷つけることは、私を傷つけることだと気が付きました」の言葉には無理がない。それに続くラストこそ演劇的フィクションをいかんなく発揮した感動のクライマックスで、思わず涙が出た。

    ネタバレBOX

    丸亀高校が2018年全国高校演劇大会で最優秀賞を受賞した作品。その1時間の舞台を、2時間弱に脚色した。素材、元の台本、脚色・演出、いずれもすばらしい。高校演劇大会は、最近いくつか見たが、台本は教師がつくるほうがいい作品になる(生徒がつくってなかなか物語としてメリハリがつけられない場合が多い)。しかし、高校生たち(あるいはそれと同年代の女学生たち)を中心に描いた時に、高校演劇は最も輝く。それを痛感した。

    現実の丸亀高等女学校でフートボールをしたのが1920年ごろとすれば、その時、頑迷な人々に禁止されても、25年か30年後には時代は変わる。壁に挫折した新任女性教師は、50代で現役として戦後を迎える。女子サッカーが日の目を見る時代を見るだろう。この時代、意外と社会の変化は速い、と思いながら見ていた。

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    2023/11/05 19:05

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