アメリカン家族 公演情報 ゴジゲン「アメリカン家族」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    慈悲深くあるために。
    たとえ死ぬほど嫌いでも、どんなにひどい目にあったとしても、何とか信じていたいとおもう気持ち。
    だって家族を否定することは自分を否定するのと同じようなことだから。
    許す、許さない、アリ、ナシ。二者択一でジャッジしないで正しい心でいたいけど、期待の持てない現実に感情のバロメーターがオーバーヒートしてしまったら、何かを壊したくなったり、誰かを傷付けずにはいられない欲望に振り回されてしまっても仕方がないのかも。
    最後はボロ泣き。人間の弱さとかエゲツナさを乗り越えようと、ちいさな一歩を踏み出したことに感動した。120分

    ネタバレBOX

    所々がチープだったり、トリッキーだったりする適度に現実味のあるマンションの一室が舞台。窓はないものの下手側の奥はバルコニーになっていて、窓から差し込む光の角度や強度、色使いで何時くらいの出来ごとなのか、おおよその見当がつく。時間の経過を物語る照明がすごくいい。

    深夜のシーンからはじまって朝、慣れない食事をつくった父さんと息子3人が食卓を囲うまでの様子が舞台上で淡々と無言で繰り広げられるなか、母さんが出て行った大まかな経緯〰牧歌的に行われている誕生日会の映像がプロジェクター越しに投射されたものが並行するため、家族の回想(願望?)と家族の現実を比較しながら鑑賞できるのが画期的。

    物語は、家族の誕生日には家族揃って家族だけでお祝いをすることに強いこだわりを持つ光田家の二男のサプライズパーティー(といっても毎年恒例だからだいだいパターンは決まってるのだけど)の準備をはじめるものの、母親が居ないために争いごとが起きてしまったり、部外者がワラワラ介入してきたために、なかなか事が進まないばかりか、家族の秘密が暴露されたり、カミングアウトしちゃったりして色々と面倒なことになる・・・というもの。

    家の中では絶えず誰かが誰かを責めたてていておっかないけど、部外者が賛同すると家族は怒る。これはあくまで光田家という特別な間柄でのみ、行使できる権限らしい。自分勝手でめちゃくちゃで、何かが著しく歪んでいて、何かが底なしに欠落しているキャラクターたちが無自覚に、ストレートに壊れている様相は、ほんとうに無様で悲惨。なのに、鋭利な刃物を生身の人間に向けることや、殺しに纏わる過激な発言が幾度となく繰り返されるうちにだんだんと衝撃度が薄れはじめ、パターン化されていく壊れ方のタイミングを掴んでしまうと、妙に心地よくなったりもした。

    後半、バースデーパーティーに母が不在というあるまじき現象と、部外者へのストレスや嫌悪感や苛立ちを制御しようとする二男の背中ごしに、部外者たちが誕生日パーティーを勝手に仕切りなおす異常な光景が繰り広げられるなか、怒りを露わにしながら彼らから隠れるように身を埋めて、ソファーで不貞腐れ寝たフリしている二男に「風邪引くぞ」なんてぼそっと呟き、さり気なく毛布をかける父さんは、なんだかんだ言ったって優しい人で、二男もそんな父親を大きな存在だって認めたくないけど、ほんとうはわかってるんじゃないのかな。そう思うとたまらない気持ちになった。
    そして、この後すぐに家族が一時的にすばらしい結束力でもって他人の不幸を蜜の味にして楽しんでいる部外者たちをまるで悪霊退治をするかのように敷地内から完全に追い出した暴動は、何とも病的で、決してフェアーなやり方とは言えないけども、ガツンと来た。

    表向きは暴力的でありながら、家族の前では揃いも揃って照れ屋サンで。愛しているのに、ぶっ殺す!とか平気で言っちゃうひとたちだから。ちょっとした言葉のアヤですれ違ってしまったり、遠回りしてしまうんだな。
    みんなほんとは何がベターかわかっているのに、思った通りになかなか出来ない・・・。そんな人間の至らなさが、未熟さが、不完全さがなんだかとても愛おしかった。
    ひょっとして壊れることは、失うことがすべてではない。って信じていたいから。なのかもしれないけど。
    深い闇(痛み)が心の深奥まで到達しないように、家族たちは傷つけあいながら、かばい合って、必死に守ろうとしていたんじゃないかな。この家族を存続させるために。はなればなれになるのは寂しいけど、ちょっぴり成長した息子たちがひょっとして、家出した母さんを説得して連れて帰って来るんじゃないのかな、って、ラストのゆるやかに傾いていく陽の光のなかで、ぎこちなく言葉を交す家に残った父と子を見て、おもった。

    満点にしなかったのは、母が父からDVを受けていたくだりや、長女の真穂子と夫の関係が尻切れトンボなっちゃってたから。(アフタートークでたまたま、続編があると聞き、腑に落ちたのですが・・・。)

    あと、包丁を振り回したり、全員死ね。とか軽率にやってしまう辺り、アカルイ狂気や安直な絶望感が混ざり合うようで好きだったのですが、衝動とノリで走り過ぎていて精神面や感情面での、うねりの描写がやや追いついていない印象を受けました。それが狙いだったのかもわかりませんが・・・。突発的な行動って、子供のころの失敗談とか兄弟ゲン化カとか親に叱られた記憶とか、根に持ってるくだらないことが突然怒りにすり替わるようなイメージがあるので、ね。 

    8

    2010/05/02 06:55

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  • いえいえ。ずいぶん前といっても、2004年〰2006年くらいですので・・・。すみません。私の場合、こりっちはまだ初めてから日が浅いのでアキラさまの方がずっと先輩です。ゴジゲンは公演DVDを出しているようですね。サムライキッチンも面白そうです。

    2010/05/13 23:46

    ずいぶん前からお芝居観てたんですね。

    >ここ最近みている演劇は過去最高にオモシロイと感じています。

    そうなんですか。どうもいいタイミングで、私は観劇にはまったようです。
    私はプロフィールに書いたとおり、こんなにはまったのはごく最近なので。

    ちなみに、ゴジゲンは『サムライキッチン』からです。

    2010/05/13 07:28

    そうだったんですね。実はわたしは2006年の終わりくらいから3年近く観劇ブランクがありまして…観劇復活してからまだ半年ちょっとくらいですけど、ここ最近みている演劇は過去最高にオモシロイと感じています。なので、ゴジゲンの過去作品をリアルタイムで観れなかったことはほんとうに悔しいです。

    2010/05/11 22:11

    前作「ハッピーエンドクラッシャー」その前の「チェリーボーイ・ゴッドガール」はまさにそっち系でした。
    特にモロにタイトルにも入っている後者は、かなりこじらせてました(笑)。

    2010/05/11 05:37

    アキラさん

    再びコメントありがとうございます。
    今まではチェリー系だったんですね。そっち側も観たかったです。笑

    2010/05/10 06:16

    なるほど、家族モノ3部作なんですね。

    今までがドーテーもの○部作で(笑)。

    2010/05/10 03:01

    アキラさん

    コメントありがとうございます。続編と書いてしまったのですが、よくよく思い出してみると家族モノ3部作になる予定、というようなニュアンスでした。

    2010/05/09 11:12

    >アフタートークでたまたま、続編があると聞き

    ええっ! 続編あるんだ!

    2010/05/09 09:49

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