実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/24 (金) 19:00
15 Minutes Made(フィフティーン・ミニッツ・メイド)はMrs.fictions(ミセス・フィクションズ)が2007年の旗揚げ当初から継続的に開催しているオムニバスイベント。
6つの団体(Mrs.fictions含む)がそれぞれ約15分ずつの短編作品を一挙に上演することで、多様な舞台表現をより身近に、手軽に楽しんでもらいたいというコンセプトの元、これまでに東西ツアー等を含め延べ17回開催されているということで、今回は、このイベントの主催劇団も含めて6団体が参加しており、そのなかには緒方恵美が設立した声優事務所や、女性お笑い芸人を迎えての劇団など特殊な団体も混ざっており、それぞれの個性が存分に発揮されていて、全体として良かった。
最初のロロという劇団による『西瓜橋商店街綱引大会』という劇では、よくありそうな平凡なタイトルとは裏腹に、実際には寂れた商店街の端から端までを使って行う綱引大会というぶっ飛んだ設定の上に、俄然乗り気の中年夫婦の夫モダが綱を引っ張ると、綱を引っ張り合う相手がなぜかエイリアンで、しかもグイグイと捕食しようとしてくる上に、その状況の中でゆったりと妻ずみがしょうもない理由で離婚を切り出してきたりと、奇想天外で、不条理で、ブラックユーモアに富んでいて、ポップでサブカルな要素もあって、大いに笑え、時に背筋が凍りつき、気付くとそのどこか噛み合わない世界観に引き込まれていた。
モダ役の亀島一徳さんとずみ役の望月綾乃さんの絶妙に噛み合わない会話と独特な喋り方、身振り手振りに強烈な個性を感じ、これから俳優としてもっとグレードアップしていけると感じた。
演劇集団キャラメルボックスは、芥川龍之介作の『魔術』を息のあったボディーパーカッションと、台詞をもあくまで語り手の延長線上で話していく実験的な朗読劇の手法をとっていて、『魔術』という妖しくも摩訶不思議な掴みどころのない作品に合っていて、聴き惚れ、その完成度の高さに眼を見張りました。
ZURULABOという団体の『ワルツ』という作品では、最初のうちは交通事故で亡くなった父親が娘のピアノの発表会に行って娘に会いたい未練を謎の声が叶えてくれる所までは、どこかの少し不思議で最後は幸福になれる感動話として、映画や演劇、小説などでよくありがちだ。しかし、そこから先が予想を遥かに裏切って、露骨な下ネタ満載、余りにくだらなく、しょうもなく、シュールな内容に、思わず吹き出し、少し考えさせられた。
休憩明けは、声優緒方恵美が設立した声優事務所BreatheArtsによる朗読劇『真夜中の屋上で』から始まった。
声優さんたちだけあって朗読劇が下手ではないのだが、演劇的要素0で、声優が生で朗読している感が強かったのが非常に残念だった。つまり、キャラに特化しすぎていて、更に内容が少し不思議ではあるが、ボーイミーツガール感が露骨過ぎるのも気になった。
オイスターズという劇団による、女性お笑い芸人を役者に迎えての『またコント』という劇では、職を失った会社員が無気力に踏切で飛び降り自殺しようとしているところへ、お笑い芸人を目指し、相方探しに邁進する素人の女と、あまり乗り気でない男が飛び込んできた。
そして、その男と女に振り回され、自分が思い詰めていたことなんかどうでも良くなり、ひたすら慣れず息の合わないツッコミをし、多少滑っていることに気付かない元会社員の男とイビツで噛み合わないが、凸凹コンビで、女役の女性お笑い芸人安田遥香さんの軽妙だけれどマイペースで、鋭い毒のあるツッコミと大いに楽しめた。
最後のMrs.fictionsによる劇『上手も下手もないけれど』では、どこかの国のどこかの街のどこかの劇場、楽屋の鏡前に座り化粧をする二人の男女という設定で、子役上がりの男優初舞台を控えた新人女優に訪れる開幕と閉幕を描いた物語。
人生は演劇のようだとはいったもので、まさにこの劇を言い当てるのにぴったしな言葉だと感じた。最後、女優が舞台に向かって去っていく際に紙吹雪が飛んでくる辺り、人生の終着点と重ねているようにも思え、深く感動した。
また清水邦夫の名作『楽屋』にインスピレーションを経て、またすごくリスペクトしてできた作品のようにも思えた。