実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/02/05 (日) 13:00
途中休憩15分を含め上演時間3時間15分。
中央通路のすぐ後ろのほぼセンターという絶好の席での鑑賞。
鶴屋南北作で1817年に初演後は長らく再演されなかったものの、昭和2年(1927年)初代中村吉右衛門が川尻清譚の脚色により復活上演し、戦後も六代目中村歌右衛門、四代目中村雀右衛門、五代目坂東玉三郎らによってたびたび演じられる人気演目となっているが、殊に玉三郎と十五代目片岡仁左衛門(当時・片岡孝夫)による上演は「孝玉(たかたま)コンビ」と呼ばれて大人気になったことが記憶に残っている。
そもそも話の発端が修行僧・清玄と稚児・白菊丸との心中未遂であり、清玄が高僧となってからは出家しようとやってきた吉田家の息女・桜姫を白菊丸の生まれ変わりと信じて関係を迫り、一方桜姫は1年前に強姦された時の快感が忘れられず強姦した男と同じく二の腕に釣鐘の刺青を彫っている、などとかなりのドロドロの愛欲人間模様が繰り広げられる。
こうした物語を展開する手法として演出に招かれた岡田利規が採ったのはこれまた驚きの方法だった。
基本的に額縁舞台であるが、舞台中央寄りのやや奥に調整卓(に思えたが、どうやら電子ピアノだったようだ)があり、全体として劇団の稽古場かセットが組みあがった劇場といった様相で、場当たりもしくは通し稽古が行なわれている風情。演技する役者の台詞廻しはほぼ棒読みで抑揚にも乏しい。演技していない時には舞台前方や横手に寝転がったり、座ったりしており、時折見せ場と思われる個所で「●●屋」などと掛声を発するも、どこか投げやりで形だけ、タイミングもいまひとつだ。歌舞伎の様式美を徹底して拡大し、現代演劇との違いを批判的に表現しようとしているかのようだ。
あらかじめその場面の展開が簡潔な文章で字幕表示されることもあって、物語の筋はわかりやすいし、前述したようにドロドロの愛欲劇だけに面白い。
前述のように台詞はほぼ棒読みであるため、演技力があるのかないのかよくわからない。が、終始感情を交えずに棒読みするのも困難ではあろうから、その意味からはよく演じていたのかも。因みに桜姫役の石橋静河はの石橋凌・原田美枝子夫妻の次女である。