クリスマス・キャロル 公演情報 劇団昴「クリスマス・キャロル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/12/09 (金) 18:30

     クリスマス・イブの夜。けちで頑固、偏屈な老人スクルージは亡くなった同僚マーレイの幽霊と過去・現在・未来のクリスマスの聖霊たちに導かれ、時空を超え不思議な時間を過ごすという、クリスマス時期ともなると定番で映画や舞台で何回か観たことがあり、原作も読んだことがあるチャールズ·ディケンズ作の『クリスマス·キャロル』だったが、劇団昴ヴァージョンは期待以上に凄くて、怖くて、恐怖を煽りつつ神秘的、また幻想的で、少し笑えて、最後は感動的で主人公のスクルージが報われる在り方に胸を撫で下ろし、ただ、ただ、圧巻で、終わってしばらくは現実に引き戻されなかったほど、素晴らしかった。
     恐怖心を煽り、不気味な雰囲気をもり立てる感じや、クリスマスマーケットが立ち並んで賑やかで浮かれた街のイキイキとした雰囲気が観客の心をつかんで離さないを自然に照明も含めて出せていて良かった。

     冷たく、金にがめつく、ドケチで、守銭奴で、底意地が悪く、心がすっかり冷え切って、ひねくれて、頑固者な初老ぐらいにも見えるスクルージ役を演じた俳優の宮本充さんが、まさに本から飛び出てきたかのような風貌と鋭い眼光を備えた雰囲気で、スクルージの複雑な性格を身振り手振りも使って表現していて、しわがれた声も含め、さらには、幽霊を見ての恐怖心や、自分の未来の報われない死への恐れ、素直になれない気持ちなどの表し方が一人物として際立っていて、スクルージの人間味をも自然に出ていて完璧に見えた。
     ただ、スクルージ役を演っている時と、パンフレットに載っている宮本充さんの素顔の平凡で地味で困ったような雰囲気の写真とが違い過ぎ、さらには年齢も初老よりかは若く見える雰囲気だったので、二重に驚いた。
     美輪学さん演じるジェイコブ·マーレイの幽霊を演じている時のオドロオドロしく、鎖を引きずり、不気味さをたたえ、相手を凍りつかせるような雰囲気を出している時と、厳しく冷徹な校長役など、他の役を演じているときに、同一人物が違う役を演じてる感じに多少なりともならず、その見事な演じ分けぶりに感服した。
     林佳代子さん演じる過去の精霊は、衣装や持っているステッキがかなり今時アニメで流行の魔法少女ものを気持ち大人しめにしたような格好で、口調も個性的で、良い意味で眼に焼き付いて離れなかった。
     現代の精霊を演じる牛山茂さんは、王侯貴族風な出で立ちと、自信家でイケオジな感じで出てきて、その独特な魅力に引き込まれた。
     スクルージの良く出来て、明るく振る舞ってはいるが、実は病弱な妹ファンを演じた上林未菜美さんは、健気に自分よりも他人の心配をし、兄を気遣う優しく、純真な感じを引き出せていて良かった。同じく、上林未菜美さんが演じた街の少年は調子が良くて元気一杯でむぎゅい雰囲気になっていたが、ここまで早変わりで、更にその他の役も何役か努めて、それでいて上林さんは『クリスマス·キャロル』の劇中何役演じようとも一人たりとて気を抜かず、演じ分け切っているのには、役者としての才能を感じました。
     スクルージの恋人ベル役の舞山裕子さんのとてもハスキーな声に味わいがあって良かった。
     
     しかし、未来の精霊をスポットライトで表していたのは、かえって安っぽく見えたし、何よりも死を匂わせる性質上、何者か分からない、ただ、ただ恐怖心を煽る存在自体として描かなければいけない筈なのに、むしろ急激に冷めてしまったのは良くなかった。もっと、未来の精霊の表し方が他にあったのではないかと悔やまれてならない。
     少年子役が演じたクラチットの足が悪いし友達も少なく、あらぬ言葉をかけられることも多いが、明るく振る舞って見せる息子ティムは、雰囲気も出ていて良かったし、少年子役が無知を演じたときの心の底から滲み出てくる負の雰囲気、ヤバい感じを出している豹変ぶりが良かったが、他に幼いスクルージ、ベルの子供と何役も似たような役を演じ分けるには子役には無理があると感じざる負えなかった。

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    2022/12/12 00:10

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