満足度★★★★★
わたしのお気に入りの一つになる芝居でした。
わたしの好きなロルカの「血の婚礼」を重く切なく、そして鮮やかに演出されていました。
アンダルシアの渇いた大地とそこに生きる人間の悲劇が、とても丁寧に描かれて感動しました。
元々のスペイン語が持つダイナミックさをどうアプローチするのか興味がありましたが、人間ドラマとしてしっかり仕上がっていたとのと、死を暗示する月と死に神のダンスが効果的で、とくに夜の森の場面をきちんと成立させていたことに驚きと感動を頂きました。
役者さん達も難しい芝居に挑む姿勢が気迫として伝わってきました。
特に新井純さんの、恨み戦い続ける母親の姿と残された息子に対する愛情が笑顔一つ作らずに表現していて、同業者として敬服致しました。
婚礼の席から男と逃げた花嫁と、息子を殺された母親とのラストシーンは説得力に溢れ、男性の論理ではなく女性が持つ生きる力を感じ、そして花に埋もれて運ばれてくる男たちの死体は哀しくもあり、不思議な思いに包まれました。
馬や黒い乳母車など原作にはないのですが、シンボリックで効果的でわたしは好きでした。
やはり重厚な生演奏は良いですね。
演劇はこうでなくちゃあと思ってしまいました。
皆さんご苦労様でした。
とても上質な芸術的な芝居を見せて貰い感謝します。