河童と川邑家と何か 公演情報 劇団cMcc「河童と川邑家と何か」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    前説で、12月になったら急に寒くなった。(公演で)ほっこりしてほしい と。その言葉通り心温まる内容であった。
    物語は、縦軸に川邑家、横軸に過去・現在・未来という時(状況)を描き、人の心(想像)の移ろいを情感豊かに紡いでいく。勿論タイトルにある「河童」も登場し 川邑家に寄り添っていくが、その存在こそがテーマである。冒頭は、敢えて日本の民話の一つ 三年寝太郎〈物語では、しんたろう〉を連想…3年間寝転がってばかりの、一見 怠け者の男が、大事業をするという話に準えて、寓話性あるものにしている。

    シンプルな舞台美術だが、しっかり場景(三場面:サブタイトルあり)を現し、素早い転換によって話のテンポを保つ。第一回本公演…分かり易さを重視したようだが、刺激というかダイナミックな観せ方が出来ていない。ラストの余韻を生かすためには、途中 もう少し盛り上げる必要があった。あまりに坦々とした展開で印象が薄くなったのが、勿体なかった。
    (上演時間1時間15分 途中休憩なし) 22.12.5追記

    ネタバレBOX

    物語は三場、第一話「古のひきこもり」第二話「暴力と女神」第三話「河童の恩返し」であり、夫々の情景を作り出す。

    第一話は過去。下手に一段高くしただけの素舞台。寝太郎は女上川の氾濫で両親を亡くし、神様(女神)に復讐を考えているうちに、三年経ってしまった。ある日 河童を助けた代わりに女神の許へ連れていくよう頼む。しかし何故か河童は泳げず、やむを得ず三年かけて向こう岸に橋を架けた。村人からは感謝され、この やり遂げた達成感が復讐心を消滅させる。

    第二話は現在。寝太郎の子孫は的屋や土木関係の仕事を行っている。正面に自分の顔部分を刳り貫いた絵、上手に事務所内を思わせるベンチソファがある。女神が現れ最近 神通力が弱っていると嘆く。今の人は信仰心がなくなり、その信心こそが女神の力の源であった。そこで土木や的屋稼業を活かして神社を建て 祭りを催行し、奉ることで女神に力を回復させようと…。

    第三話は近未来。正面に赤い鳥居、奉納のぼり旗が並び、上手にベンチが置かれる。人が行き交うことが少なくなり、参拝もバーチャルで済ませる。人の想像力で生まれた「天狗」「鬼」「河童」等の存在が無(亡)くなってきた。先の女神同様、人の想像力が弱まることで架空の存在が信じられない。そこで女神は自神の代わりに河童を奉ることを未来の川邑家に頼む。

    物語は、代々の川邑家と 時々の時代を反映した世相を絡めて、面白可笑しく展開していく。三話を通して貫かれているのは、想像上のモノを自然界に置き換えれば、人と自然の調和と共生というテーマが浮かび上がってくる。描き方は、正面というよりは 斜めに切り取った印象である。表面的には新しさや見た目重視が先行しがちな現代に、信仰心という押し付けではなく、想像するという違った切り口・・楽しみを感じさせる。

    見た目といえば、河童は顔の大半を緑色塗り、衣装は鱗柄で 全身=全体が被り物をしているような。進化(文明)の裏返しのように描いた「信仰」、古(いにしえ)のモノはエモいだけではなく、新しい発見もある。そこに色々な意味での共存共栄、それを仲立ちするかのような心の持ちようと科学…が 描き過ぎると寓話性を強く感じてしまう微妙な作品だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/04 20:05

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